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わたしのココ – hue drone

 わたしのココ - hue drone

 – Tracklist –
 01. wh
 02. tmk
 03. r15
 04. char
 05. omatsuri
 06. r4-2
 07. k11
 08. 2
 09. scanal
 10. k6
 11. atair
 12. aocma
 13. r12
 14. canon
 15. kj
 16. eien
 17. k15
 18. odom
 19. 7
 20. yuurei



 - 02. tmk



 - 07. k11



 - 16. eien


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 Release Date : 2016.02.14
 Label : Not On Label

 Keywords : Alternative, Ambient, Dark, Dream, Drone, Techno.


 Related Links :
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ななめ上からきた! きてしまった! 以前に“落穂拾い2010​-​2013”(あえなくデリート! 残念)を紹介しましたが、そのときに私は何と書いただろう。“これ以降、どんな方向に舵を切るのか分かりませんが、私個人としてはこの路線が続くとうれしいなあって、素直にそう思います。”と、そう書いています。だが全然そうはこなかった! “そう”ってどうなの?って話ですが、それは前の記事を読んでもらえばよいんですが、簡潔に言うと、ジェイポッピーなサウンドと、“つらいこともあったけど今は何とか元気にやってます”な歌詞が、すごく励まし(慰めじゃなくて)を与えてくれる、とても風通しの良い、清々しい作品だったのです(実際コンピレーション的なニュアンスが強かったようですが)。

ところが今作はどうだ。まさかのAmbient作品になっている! しかもダークだ! ビックリした! 歌すらほとんど入っていない。色のない空間、息苦しい圧迫感、徐々に心を蝕んでくる不安感、それはさながら精神世界の迷宮のよう。そういった世界を舞台にした映画やゲームのBGMにすらなりそうな、そんな感想を持ちました。

確かにそういった鬱屈した音像っていうのは、もともと持っていた要素だし、まったくこういったサウンドのエッセンスがこれまでに見られなかったわけではありません。Ambient, Dark。できる限り耳を通してみた中では、kessonshoujo名義でリリースされている“An-Min”が一番近しいサウンドではないかと思います(実際タイトル違いで重なってるトラックもあります!)。しかし今作の方がトラック数も増え、よりその路線は強化されている。不安な中にも不思議な聴き心地があって、何だろうって考えたら、どこかドリーミィなところなんですよ。不安なのにドリーミィってどういうことだよって思われるかもしれませんが、たとえばAphex Twinの“Selected Ambient Works Volume II”とか“Drukqs”っていえば、伝わりますでしょうか。実際今作ではときおりピアノの小品が差し挟まれていて、これがまたほかのトラックとの対比もあるんでしょう、たいそう抒情的なものになっていて、自然と“Drukqs”を想起したのも確かです。

今作を一言でいうなら、“不安な夢”ってのがピッタリくるわけですが、たとえばデビッド・クローネンバーグの映画が内臓感覚といわれることがありますが、聴いているとどこかグロテスクな映像がイメージされてくるという部分では、今作も内臓感覚を内包しているような気がします。まあこちらは音楽ですけれど、でも私は音楽で内臓感覚を生じたことがなくて、強いていえばNine Inch Nails(NIN)くらいなのです(でもあれもビデオの映像によるところが大きいのかもしれない)。そういえばNINのキャリアの中でも、ときおり“Still”や“Ghosts I-IV”というインストゥルメンタルのアルバムがリリースされているけれど、これまたなんとなく、今作にはそこに重なるイメージを抱いてしまったのです(ホントにちなみにだけど、“Still”は当初ライヴアルバム“And All That Could Have Been”のボーナスCD扱いだったのです。のちに単体で発売もされますが。きわめて評価が高い作品です)。

こんなように、人を不安にさせるアルバムを作れるってことは、当然ながら本人の中にそういった不安というかメンタリティがあり、それが見事に音像化されているということだと、私は思うんです。浮世の不安と、浮世を離れること(拡大解釈すると“死”)に対する憧憬というか恍惚というか、それらが表裏一体、背中合わせになって、ここに存在している、ように感じたのです。そしてそれは言うまでもなく、これまでのわたしのココの作品にも内包されていた要素なわけで。それがDarkなAmbient、Drone、Techno的なサウンドになって表面化しただけで、確かに根底にあるものは何も変わっていない。より抽象性が強いかもしれないけれど、しかしわけのわからない、モヤモヤとした不安のようなものは、だからこそ、よりハッキリと、描かれているのかもしれません。しかしそんなことより何より、私は“落穂拾い2010​-​2013”からのふり幅のデカさにビックリ笑いを発してしまった。

しかしこのジャケットイメージなんだろう、最初見たときはブラウン管に吸盤が現れているのかと思ったけれど、よく見たら向こうに車が見えるので、電車とかバスとかの窓に目玉、眼球がへばりついているシーンなのかもしれない。いずれにせよ、やはり先に書いたような、不安感、内臓感覚(ブヨブヨとした不快感)といったグロテスクな精神世界に結びついていく。とてもよいジャケットイメージだと思います。今作、完全フリーですし、欲しい人は今の内に手に入れておくべきですよ! さあ! 

あと、個人的にはM-5の‘omatsuri’が好き。重苦しい空間の向こうから、かすかに、でも確かに聴こえてくる祭囃子のメロディが、とてもスウィートな、向こう側の世界を呼び起こすのです、私の頭の中に。ノスタルジアと死が結びつくような。真夜中の散歩道。遠のいていく現実感覚。

下にあるのは、NINの“Still”収録曲。せっかくだから、貼ってもよいでしょうか。共振するもの、伝わるでしょうか―


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Nine Inch Nails – Adrift And At Peace, The Persistence Of Loss




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