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カテゴリーアーカイブ: Ezhevika

LOSTSLEEP – L O S T S L E E P

  LOSTSLEEP - L O S T S L E E P

 – Tracklist –
 01. foolish heart
 02. me & you
 03. love again
 04. sinner’s blood
 05. fuck yourself
 06. told you
 07. be mine



 - 01. foolish heart


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 Release Date : 2020.03.31
 Label : Ezhevika

 Keywords : Chill, Electronic, Indietronica, Synth, Vocal.


 Related Links :
  ≫ LOSTSLEEP on SoundCloud / on VK


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時間の感覚がずれている。遅いような、早いような、不思議な感覚が続く。どういった時間の過ごし方が最も自分にとってよいことなのか、考えるが、心に巣食っている不安というヤツが、いつも邪魔をする。集中を妨げる。どんな状況になっても結局不安というヤツは消えていかない。水道の蛇口からゆっくりと水をだし、空のヤカンに水を満たしていく、そこに生まれる波紋に視線を向け、とめどなく動き続ける水流を、グルグルと追っていく。さながら私の心の中のようではないか、ゆっくりと、ゆるやかに、何かが渦を巻きながら、貯まっていき、そしていつかは溢れ出る――

などということを私がやっている最中も、世界には、相変わらず――本当に相変わらず、音楽が流れていた。

ベラルーシはミンスクのレーベル、EzhevikaからリリースされたLOSTSLEEPのセルフタイトル作。ウクライナ、ドラツクのトラックメイカー。おそらくは初作だと思うんですが、いい意味での裏切りが耳を引きますね。M-1, 4はヴォーカリストを招いてのウタモノトラックになっているんですが、この歌声のエレガントな調子からして往年のトリップホップなリズム系が似合うんじゃないかなあ、というか、そういうドゥビーン、ズブゥーンというダビーでヘビーでスロウなリズムを予想してしまっている私がいたんですが、全然違った…。4つ打ちバスドラムが響いた瞬間のこの新鮮な空気たるや。そしてアンバランスにも思えるデカめのシンセによるアンビエンス。そこからさらにリズムの手数は増えて慌ただしくなっていく中で、歌声は優雅に響き続けるという。M-4もいろんなエフェクトを散りばめた上で醸されるこのチルな空気のウタモノトラック、いいですねえ…ちょっぴりノスタルジア。

M-2はやはりシンセの包容力ある空間とBreakbeatも交えてちょっとアブストラクトな出だしでダークな方向にいくかと思いきや、まさかの哀愁ブラスが鳴り響いて、夕暮れの都市風景が目に浮かんでしまうじゃありませんか。M-3もこの冒頭の音色、なんていうんですかコレ、不勉強で分からないんですが、この音色すごく好きなんですよ。夜の底っていうか、都市の夜景が浮かぶような、しっとりラウンジな感じで行くかと思いきや、でもやっぱりそこから転じて、Electronicな方向でMelodicにまとめるっていう。M-6もPost-Punkみたいなフレーズが初っ端に出てきて通底するんですが、なんでここにコレなんだろうなあーという不思議な按配です。そのままなだれ込むM-7も尖がったシンセフレーズから始まって、徐々にいろんなサウンドフレーズが重なってビルドアップされていくにぎやかなトラック。もっとよい再生環境で聴けばまた違った印象になりそうな気もします。

M-8がようやっと、私が初めに今作に抱いたイメージに近い音像、かな、という感じです。スロウでダビーな空間処理で、ちょっぴりダークっていう。最後のトライバルな調子とか雄々しくて面白い。全体通して聴いてみると、今作って似た音色が多いような気もするんですが、各トラックは意図的にコネクトされているそうなので、敢えての作りなのかなと思います。“All tracks are connected with each other, from youthful exuberance to self-perception. All that is left is to walk on and aim for the best.”とあるので、みなさん自分なりにここから何かを読み取ってみるのも、また一興かと思います。

習作のようなニュアンスも感じられますが、さりとてこのユニーク、絶妙なバランス感覚も好ましくありますので、今後もこのPOP指向を保ちつつ、バリエーション豊かなトラックを期待しております。◎。


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 Credit

Music: Danil Markov (LOSTSLEEP)
Vocals (Tracks #1, #4): Axu Dzhuraeva
Design: Alexander Goluziy (Blood Burner)



B A I K A L – BAIKAL EP [EZH048]

 

 – Tracklist –
 01. Seagulls In The Sky
 02. Where The Summer Goes
 03. Taiga
 04. Mysterious Woods



 - 01. Seagulls In The Sky


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 Release Date : 2015.06.30
 Label : Ezhevika

 Keywords : ChillWave, Electronic, Melodic, SynthWave.


 Related Links :
  ≫ B A I K A L on SoundCloud / on bandcamp / on VK (VKontakte)


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再生したとたんに感嘆の声を上げてしまった、久々のパターン。ベラルーシのネットレーベルEzhevikaから届けられたモスクワのトラックメイカー、B A I K A L(Alexander Zharikov)のEP。それがコチラ。

考えさせる楽しみとはまた別の、音楽的快楽に満ち満ちている、極上のChillWaveサウンドがここに。何も考えずに、音の波に身を任せればそれでいい、電子音に彩られたいつかの(それはどこにもない)記憶が、リスナーの中によみがえってくることでしょう―子供たちの笑い声や、波の音、カモメの鳴く声はサマーバケーション。湧き出るシンセの音は記憶の奔流。たゆまぬリズムはピースフルなハートの鼓動。溢れるメロディは、ゆらぎながら、燦々と照る陽の光。まぶしいこと、この上なし。

一刀両断、一撃必殺、満塁サヨナラホームランのごときインパクトを持つサウンドなのですが、あろうことか、このB A I K A Lは彼Alexander Zharikovのメイン・プロジェクトではないのです。ビックリするわ。いやそれはたまにはありますよ、バンドよりソロの方が好きとか、サイド・プロジェクトの方がいいよねとか、そういうパターン、世の中にたくさんありますよ。でもやっぱりメインはメインで、そこには作り手の主軸があるわけだから、そこにつぎ込まれている諸々のものを考えると、どうしたってメインはメインでしょうと思うんですが、このB A I K A Lは完全にメイン・プロジェクトであるMoskva-Kassiopeyaを食っている気がして仕方がないです。

Sci-Fi/Electroなサウンドを鳴らすMoskva-Kassiopeyaには、確かに今作に通じる80sなバイブも感じ取れます。今作のリリースページにもあるように、両プロジェクトの違いをいうなら、“Moskva-Kassiopeya is science fiction, space, unknown and unreachable things”であり、“B A I K A L is the purest nostalgia”となるわけですが、未知に対する壮大な神秘性、そこにある畏敬の念と、記憶の中のノスタルジアでは、確かに焦点が全く違う。内か外か。その焦点の違いをハッキリ音楽で表現しきっている、その手腕は確かなもの。お見事です。

いかに情報技術が発達して、音楽のプラットフォームも整備されてきて、国境がなくなってきた感はあれども、やはりロシアはいまだ未開拓、フロンティアのイメージが強いのが現実。このブログでも以前に紹介してきた、Capo​Blancotiiizaのような、ロシアっぽくない(ロシアっぽさって何だよってツッコミは受け付けないゼ)ChillWaveがたまに浮上してきたりしますが、まだまだいるんじゃないかなあ、なんて思います。その可能性を感じさせるだけの力強さを持った、傑作がこの“BAIKAL EP”。目を閉じて、きらびやかで、懐かしい風に吹かれてください。リピート必至の中毒性です。しかも完全フリーなんて。



Samsara Inc. – Endless Autumn [EZH040]

 Samsara Inc. - Endless Autumn [EZH040]

 – Tracklist –
 01. Endless Autumn
 02. Red Light
 03. Snakes
 04. Space Between Us



 - 01. Endless Autumn


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 Release Date : 2014.12.18
 Label : Ezhevika

 Keywords : Acoustic, Chill, Downtempo, Hip-Hop, Lounge, Melodic.


 Related Links :
  ≫ Samsara Inc. on Last.fm / on SoundCloud / on PROMODJ


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ベラルーシはミンスクのレーベル、Ezhevikaより。アバカン(ロシアはシベリア南部にあるハカス共和国の首都)から現れたRodion Kudryavtsevのワンマンプロジェクト、Samsara Inc.の作品がフリーでリリースされています。

リリースページにはこんな言葉があります―“If a musician lives in Siberia it doesn’t mean he is doomed to play post-rock. The great example is right here.”。ちょっと皮肉っぽいですよね。シベリアだからってPost-Rockじゃねえゾ!って。そのよい見本がここにあると。

そして何の気なしにM-1を聴いた瞬間、声を漏らしてしまいました。“あぁ”って。ピアノの哀愁ある響き、重なるアコースティックなギターの爪弾き、Downtempo/Hip-Hopのスムースなリズム。特にギターの音が好きですね。金属的な響きもあるんだけど、澄んでいて、シャラシャラと心地よく耳をくすぐります。バックに聴こえるささやかなノイズは雨音でしょうか、情感ある光景を作り上げることに一役を買っています。

非常にMelodicで、Loungeな向きもある、気持ちの良い音楽がここにあります。まさにChill。音楽の役割はこれだと言わんばかりに、余計なことは考えさせません。開けた空間の中での孤独な視点とでもいったような、さわやかさと寂しさの同居。視界に収まりきらない海や草原を眺めているような、彼方に吸い込まれる視点。自然と思考も物思いに耽りはじめます。

M-2などはパーカッシヴなリズムと、むせびなくエキゾチックなギターフレーズなどが相俟って、どこかリゾート感すら漂っています。後ろに流れている薄いシンセがまた抜群の効果を発揮していて、それによって作られるアトモスフィリックな空間がたまりません。海からの風が、湿った髪を撫でていくような、心地よさと、幾ばくかの切なさ(それは喧噪の終わり)。Post-Rockどころか、シベリアをイメージさせる冷たく澄んだ音像すら、ここにはありません。

M-3は少し毛色を変えて、アラビックな雰囲気の旋律と、ヘビーなリズムを使って、‘Snakes’=蛇のイメージを音像化することに成功。低音も強調された音作りで、作中でもっともダークでヘビーなトラックです。M-4で、アレ、ちょっとPost-Rockぽい雰囲気もあったりするかもしれないゾ、コレはってトラックがやってきます。スローなベースと、スローなドラム、その上でエモーショナルに翻るギターフレーズ。まさに曇天の空をいく雲のような、シネマティックなサウンドは、Post-Rockといっても決して過言ではないでしょう。

なるほどここまで聴いた上で、再度頭から耳を澄ましてみると、確かにギターを使った風景的かつ情感的なサウンドという部分で、Post-Rock的な聴き方、受け取り方をできることが分かります。そう考えると、Post-Rockを経由しつつのHip-Hop/Downtempo、Loungeという一面もあるわけで、初めは気づきませんでしたが、存外にユニークなサウンドなのかもしれません。

と、そうやって聴きながらいろいろ考えるのも、もちろん楽しいのですが、単純に音を聴いて“お、いいじゃん”ってのが一番ですし、私が一発目に聴いたときのあのトキメキは、まさに音楽の魔法といってよいでしょう。シーンとか、その中での立ち位置とか、音楽的意義とか、まあいわば文脈を気にした聴き方は私はできないのですが、その魔法的な力というやつは“そんなもの気にしなくていいんだヨ!”と、背中を押してくれているようで、その辺も、今作を好きな理由のひとつです。


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Music by Rodion Kudryavtsev.
Cover design by Dmitry & Konstantin Kourianov.

(CC) by – nc – nd 3.0