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タグアーカイブ: Breakbeat

Final Heal – Fata Morgana[QNR019]

 Final Heal - Fata Morgana[QNR019]Cover

 – Tracklist –
 01. Anna’s Journal
 02. My Blue Heaven
 03. Millennium Fantasy X
 04. Never Die
 05. From Here On Out
 06. Invitation to Elegy
 07. VIRUS
 08. Dream Tower
 09. Wind
 10. Telepathy
 11. Fly Away
 12. People, Memories, Places
 13. Snowman
 14. Sinner’s Lullaby
 15. Faerie Song

 - 15. Faerie Song


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 Release Date : 2018.08.20
 Label : Quantum Natives

 Keywords : Breakbeat, Electronic, Fantasy, Orchestral, Piano, Strange, VGM.


 Related Links :
  ≫ Final Heal on SoundCloud


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プロフィールは不詳ですが、このFinal Healの背後にいるのは、おそらくはAmun Dragoonではないかという指摘を見かけました。私も何とはなしにそう思っておりましたので、“そうだよね!”と共感した次第です。まあ結局よく分かっていないんですけれど。でもそう思わせる要素というのはあって、まずはやはりAmun DragoonのSoundCloudにFinal Healのトラックが(2年も前に)リポストされていること。私がFinal Healの存在を知ったのもそこからでした。単純に気に入ってリポストしただけという可能性もありますが、このつながりに加えて音楽性も類似しているのです。

Amun DragoonはVaporWaveの文脈に入れられることもあるし、実際トラックによってはその傾向も強くありますが(特にNewAge調のトラック)、現時点の最新作2015年の“Socotra Island”などはMIDI風のサウンドに傾倒している節があって、もはやVaporWave作家というイメージは私の中では薄れつつありました。そしてその先に何を出してくるのかという興味も持っていたのですが、それ以降動きはなく、まあ突然活動を止めてしまう(ように見える)アーティストも全然珍しくないので、Amun Dragoonも終了してしまうのかと危惧しておりましたところ、突然現れたのがこのFinal Healでして、聴いてみたところ、正直当初公開されていたトラックからはAmun Dragoonとのつながりは見いだせなかったのです。だってヴォーカル入ってるし(どこかたどたどしい)、何かメロディはポップだし、オーケストラルな要素もあって、ハッキリとした抒情性も感じられて、そこをつなげて考えるのは間違いじゃないかと思っておったのですが。

私がAmun Dragoonで一番好きなトラックは‘Secret Whispers From The Tamate Box’(下に張りますが最高だな!ビデオがイイ)ですが、これと共振する何かを今作の‘Dream Tower’‘Wind’, ‘Telepathy’に嗅ぎ取ったのですね。前者が陰とすれば後者は陽であるけれども、このスピリチュアルな望郷感とでもいうか、意図せず漏れ出てしまっている個性が共通しているように感じられて、ここで初めて両者をつなげて考えてもよいのかなと思い始めたのです。“Socotra Island”の延長線上というよりは、俗に寄せてきた感じ。

と、もし赤の他人だったら申し訳ありませんので、単体で触れましょう。仙人が下界に降りてきて世俗を楽しもうと思いきや、下々の常識が分からずにひっちゃかめっちゃかやってしまいました、みたいな。クロコダイルダンディ。そんなことやっちゃうのみたいな。ローファイ・エレクトリック・ファンタジー。大筋は抒情的なメロディがあって、ファンタジックで、ちょっとVGMっぽいところもあって、ストレートな聴き心地というか、ポテトチップス食べてるみたいな安心感なんですが、ところどころ異質な“何か”が混じっていて、非常に刺激的。M-2も静かに始まったと思ったら、終盤いきなりそんなデカいシンセと強いアタックのドラム入れちゃうの?っていう驚きがあり、M-4はコレ何であえて日本語の歌詞なんでしょう?カバーとかではない気がするんですがちょっとおぼつかない日本語のDIYな歌唱がまた惹きつける、M-6は9分超の大作ですがピアノでひそやかに始まってストリングスなんか入ってアラいい感じと思ってたら急にブレイクビートと共にドラマチックな展開になだれ込んで、何だかビデオゲームのバトルシーンみたいな曲調にいつの間にか連れて行かれてる、M-7もせわしないビートとシンセにアンニュイなヴォーカルが入って最終的に加速してって終わるしM-11も途中でギターなのか何なのかノイジーなフレーズが入ったり後半リズムが妙に力強かったりまたしてもミステリアスなヴォーカルを入れてくる―といった調子で、一度入り込んでキャッチされてしまえば、終始感じられるこの危ういバランス感(焦燥的でもある)と、抒情性の絶妙なコントラストが、クセになること請け合い(さらには‘Invitation to Elegy’‘My Blue Heaven’はSoundCloudで公開されているものとちょっとずつ内容が異なっているという攪乱ぶり)。人によってはスペインの雄This Deep Wellを想起する方もいらっしゃるでしょう。

気になった方は是非Amun Dragoonも辿ってみてくださいネ。にしてもQuantum Nativesのサイトデザインやべえ。あえて不便さを強いてくるような突き放し感がヘヴンリー。


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Amun Dragoon – Secret whispers from the tamate box






Final Heal – Millennium Fantasy X(directed by Final Heal)



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Artwork by Aisha Mizuno & Galen Erickson
https://www.instagram.com/doctor_zoom_octopus/
https://www.instagram.com/chaos_egg/



Breakbeat Heartbeat – Kids

 Breakbeat Heartbeat - Kids

 – Tracklist –
 01. Sunrise
 02. Arcade
 03. Waterfront
 04. Stay With Me
 05. Kids
 06. Afternoon
 07. Lost & Found
 08. Snowy Theme
 09. Lamplight
 10. Underground
 11. Elsa



 - 03. Waterfront


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 Release Date : 2014.06.07
 Label : Not On Label

 Keywords : Breakbeat, Chiptune, Electronic, Melodic.


 Related Links :
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UKはイングランドのプロデューサ、Breakbeat Heartbeat(なんと甘酸っぱい名前だろう)ことEve Turnbullの作品が実質フリーという形でリリースされています。これまでにも複数の作品をbandcamp上でリリースしていますし、netlabel絡みですとThe Waveform Generatorsから“22​:​06”のリリースがあります。

Chiptune/Fakebitな作品を一貫して作り続けている彼女ですが、そのスタイルの特徴は、自身でも述べているように、Acousticサウンドのブレンドと、時折みせるBreakbeatの持ち込みでしょう。Chiptuneにそれらを取り入れること自体は別段めずらしくありません。Acousticという部分では、たとえばPianoの音色などはChiptuneの中でも多用されていますし、Breakbeatでいえば、Breakcoreのような高いテンションと破壊力・突進力をもったトラックは人気がありますし、その作り手もたくさんいるでしょう。

Breakbeat Heartbeatが用いるAcousticな音色で特に印象に残るのは、弦楽器のものです。それもどことなく和を感じさせるような、琴にも聴こえるような、雅なものや、ハープのようなチルでリラクシンなものが多用されています。またBreakbeatを用いているトラックでも、彼女が作るトラックにはまったく攻撃性・暴力性というものが感じられません。こういった部分からも、彼女の作品のイメージはジェントルで穏やかなものになっています。‘Arcade’では格闘ゲームからサンプリングした音声(よそ様のレビューからの情報だと春麗とザンギエフの声らしいヨ)を使用して作中でもっともアッパーなテンションを見せてくれますが、それとてユニークに響きはすれど、決して無軌道でカオティックな方向には入っていません。

軸がChiptuneなのでさすがに作品ごとに大きな変化はないんですが、それでも前作“Hold On”と比較すると、今作の方がAcousticというか、楽器音の比率が高い気がします。対して前作はエフェクトをかけたヴォーカルを取り入れるなどして、電子的なタッチが強い。その電子的響きによって醸されるチルな空気というのも私は大好物なのですが、しかしながら今作にある有機性がもたらすジェントルな波というのも、また美味しく感じるのです。つまりどっちもよい!ってことです。

‘Waterfront’で海岸線ドライヴして、‘Stay With Me’でビーチでまったり、みたいなサマー感、トロピカル感のコンボが好きです。‘Snowy Theme’のおとぎ話みたいなファンタジックなムードもいい。総じてホッコリ×2できる仕上がりなんですが、砂浜で海からの風を浴びているような、そこはかとない爽やかさとノスタルジアが宿っている点がまたニクいですな。

あ、前作もかなり好きなんで以下に1曲だけでも―



 - Hold On (from “Hold On”)



violet familiar – wild empathy

 violet familiar - wild empathy

 – Tracklist –
 01. bbvio
 02. pale moon
 03. lost in the woods
 04. waterproof
 05. anything
 06. let me b w u
 07. fire glyph
 08. fizzy_p0p_3



 - 03. lost in the woods


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 Release Date : 2014.06.09
 Label : Aural Sects

 Keywords : Breakbeat, Electronic, IDM, J-Pop, Melodic.


 Related Links :
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フロム・インターネットのザ・ネットレーベル、Aural Sectsより。violet familiarの作品が実質フリーという形でリリースされています。これが初作かと思いきや、2012年にはPrettyFacesSplitOpenとのスプリット“Tomorrow Already Happened”をリリースしています(フリー)し、Fluorescent Recordsのコンピレーション“Fluorescent Presents: For Someone Who’s 1”にも参加しています(これもフリー)。

パッと聴き、古典的なIDMのにおいを感じさせてくれます。Breakbeatも交えた細かいリズムですとか、クリスタルライクなシンセですとか、VGMを彷彿させる柔らかいメロディですとか、この冷たい幻想感は、いわゆるElectronica/IDMのフィーリングというのを強く持っていて、Aural Sectsっぽくなくない?なんて思った次第(っていうほどAural Sectsのリリースを聴けてないけどネ)。

聴きにくさにも通じるような重いトーンは一切なくて、音色自体にも軽い印象があります。随所で用いられているGlitchやDrum’n’Bassなリズムパターンなども重さには結びついておらず、この辺りのライトな聴き心地と、フワリとしたメロディが呼び起こすのは、ノスタルジア。そんな中でも、M-2の半覚醒状態のまま疾走するような、不思議な緊張感ですとか、M-3のコズミックな浮遊感から一転してのメカニカルな音像ですとか、M-4のドリーミィなサウンド中に展開するドラマチックなBleepyシンセだったり、この辺り、けっこう意表をついてくる形で、聴かせてくれます。

しかし最も意表を突かれたのは、M–6ですね。タイトル‘let me b w u’を見てピンとくる人もいるでしょうが、これはなんと‘Let Me Be With You’のエディットなのです。J-Popを経由したnetlabel/netaudio界隈ではおなじみのこの曲をここにきて持ってくる辺り、彼の自信と不敵さを感じてやみません。メロディの断片は残しつつも切り刻んだエディットになっていて、しかしそこまでのElectronica/IDMな流れとは明らかに違う方向に持っていくあたり、ネタとしての利用なのかもしれませんが、このトラックひとつで今作のイメージがだいぶ変わりました。いきなり時代を飛び越えた感が。実際ここからちょっとシフトチェンジしてM-7はChillWaveやTrillWaveのようなチルな展開になっているし、ラストの‘fizzy_p0p_3’もShoegaze/Noiseを飲み込んだチルでドリーミィなTrip-Hopといった様相で(ヴォーカルの断片も聴こえる)、なかなか飽きさせません。

前半部のコズミックな浮遊感も私は大好きですし、その方向で通してくれても何も文句なかったんですが、この後半部の意表を突く展開は、これはこれで面白いです。どちらかのテイストが彼の本質なのかといえばきっと前者なのでしょうが、今後この分離された領域が彼の中でどのように互いを侵食していくか、気になるところです。上に挙げた“Tomorrow Already Happened”収録の‘flicker’などが、理想的なトラックかもしれません。



 - flicker (from “Tomorrow Already Happened”)



Iwant – false sense of familiarity

 Iwant - false sense of familiarity

 – Tracklist –
 01. SECT02
 02. The Code
 03. A run through the forest
 04. Mountainpunk (is not dead)
 05. 80mph
 06. GLADIO作戦


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 Release Page Deleted! ≫ 一部はSoundCloudから入手可能です。

 Release Date : 2013.04.22
 Label : Not On Label [on bandcamp

 Keywords : Breakbeat, Electronic, Industrial, J-Pop, Jazz, Sample-Based, Trance.


 Related Links :
  ≫ Iwant on SoundCloud / on bandcamp

  ≫ ArtCore Kirbies


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ベルギーのトラックメイカー、Iwant。彼の作品“false sense of familiarity”が面白かったので、こうして何やら書き記しています。近作は2013年6月の“sudden paradigm shift”ですが、そちらはアブストラクト、ダークな方向に寄っていて、今作と比べるとPopなテイストが薄れています(パルス・サウンドを感じさせる冒頭の‘the taste of glass’や、Sample-House/Nu-Discoなラストのトラック‘The New Japanese Disco?!’は面白いです)。

作風としては、サンプルをベースにしたマッドでクラッシュなものが主になっています。時流でいえばアニメやビデオゲームからの引用も含めた、VaporWaveのようなWavyなサウンドが期待されますが、彼の場合はその定型を意図的かどうか、見事に破っているところが面白く感じます。今作の1曲目からしてスコア/サウンドトラック風の、ゴシックテイストなストリングスの遊泳から始まっている。やがてElectronicなBreakbeatが入り始め、奇妙なコーラスも重なり、まるで古びた洋館の中を彷徨っているような、Psychedelicな空気が充満します。

Drum’n’Bassも彼の得意とするスタイルかと思いますが、M-2ではRapを織り交ぜた、やはりシアトリカルなスピード感あるトラックを披露。M-1とは趣が異なっていて、この時点ですでに彼の作風が固定的でないことがうかがえます。続くM-3は、アブストラクトなビートにJazz的なブラスを絡め、なおかつIndustrial/Noiseなレイヤーをバックに垂れ流し、クレイジーなテンションをさく裂させています(Industrial/Jazzという部分ではFoetusことJ. G. Thirlwellを思い出したりもしました)。

上に示したArtCore Kirbiesでは、彼はビデオゲームについてのレビューを投稿しているようですが、その辺りとも無関係ではないでしょう、J-Popやアニメへの愛情もうかがわせるのが、次の‘Mountainpunk (is not dead)’。Techno的なフラットなリズムに突如乗っかってくるのが、アニメ“ハイジ”の主題歌‘おしえて’のイントロにながれるヨーデル! かと思ったら、終盤では“ルージュの伝言”をいきなりサンプリング! 圧倒的にご陽気でPopなテンションで駆け抜けます。そして次の‘80mph’が、アコギをフィーチャーした、落ち着いたDrum’n’Bass/Liquid Funkな出だしになっていて、狙っているとしか思えないオトしっぷり。

ラストはシリアスなショートトラックで締めくくられますが、全編に満ちる、このクラッシュなバイブ、テンションはなかなか魅力的です。ひとつ前の作品“intriguing attempts at communication”では、アニメネタを使ったBreakcore/Lolicoreを披露していて、やはりアニメへの愛情・関心をうかがわせますし、2012年作“unusual circadian rhythms”の中では、Hi-Posiのトラックをエディットすることで、ネオアコ/Shibuya-Keiへの関心もうかがわせるなど、音楽的守備範囲の広さが垣間見れます。繰り返しになりますが、その守備範囲の中からピックアップしたマテリアルをぶっ込んで仕上がってくるトラックたちが、(netlabel/netaudio界隈における)同時代性を微妙に回避しているような気がして、すごくクールに感じてしまうのです。面白い!

そんなIwantはSoundCloudでもフリーで音源を公開しているのです。日の目を見ていなさそうなトラックたちを以下にピックアップさせていただきますので、是非ぜひ、ご聴取くださいませ―



 - The Future of Miniskirts : “Persona 4”からED曲‘Never More’をサンプリング。



 - ABOLISH THE AGE OF CONSENT!! : Perfume!


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(CC) by – nc – sa 3.0



NASA ULTIMA – [CHAPTER 3​]​新婚旅行 DELIGHT

 NASA ULTIMA - [CHAPTER 3​]​新婚旅行 DELIGHT

 – Tracklist –
 01. Southern Brew
 02. Do U Wnt 2
 03. Up In the Clouds
 04. Rest of our Lives
 05. Love is Stronger
 06. Taew’s Yetoob
 07. New Generation
 08. For Me
 09. Balcony
 10. @Room Service@
 11. Eccojam B8
 12. Drive



 - 03. Up In the Clouds



 - 06. Taew’s Yetoob


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 Release Date : 2013.11.03
 Label : Not On Label [on bandcamp

 Keywords : Breakbeat, Electronic, Glitch, Psychedelic, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ NASA ULTIMA on Last.fm / on bandcamp


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プロフィールは定かではありませんが、NASA ULTIMAの3作目“新婚旅行 DELIGHT”が、気になる作品だったので、感想を書いています。[CHAPTER 3​]​という言葉がついていますが、前2作にもきちんと[CHAPTER 1], [CHAPTER 2​]と付されています。関連性があるのかな? よくは分からないんですが、でも[CHAPTER 1]​が“ロング·ウェイ·HOME”、[CHAPTER 2​]が“ビジョン 上に 地平線”、そして今作が“新婚旅行 DELIGHT”となっているので、どことなく旅―それも飛行機による―を想起させる部分はありますね。

これまでの作品はちょっとIndsutrialだったり、Dark Ambientな節があったりはしましたが、わりとVaporWaveのマナーに即した作風でした。ところが今作はどうも様子が違う。冒頭の‘Southern Brew’からいきなり、Drum’n’Bassのような、細かいBreakbeatが聴こえてくる。かと思ったら、急に場面が転換して、ハンマービートとミニマルな電子音で、鈍色の夢が展開する。意表を突かれました。

以降のトラックではいかにもVaporWaveといった聴き心地のものも出てきますが、全体的にリバーヴやディレイを効かせているのと、ミニマルな展開の中にBreakbeatやGlitchといったリズム面での緩急を盛り込んできているのが、特徴的です。M-3, M-5を聴いていると特に思うことですが、このミニマルなディレイ、リバーヴによるPsychedelicな空間というヤツが、このNASA ULTIMAの個性のひとつであるようにも思います。曲のつなぎ方にも意図的なものが感じられて、特にM-4からM-5になだれ込む過程は、静から動への流れがモーフィングみたいで面白いです。

M-6ではOSの起動音をフィーチャーすることで、きっちりとInternet感を打ち出してVaporWaveのカラーを出しているように思わせつつも、GlitchyなBreakbeatを効かせた、ElectronicなHip-Hop調のトラックを披露。カッコいい! M-9で、ブラスを生かしてアダルトでムーディな空気を流した後が、ちょっぴり抽象に流れます。M-10はまだフワフワとした電子音が音楽的な力を持っていますが、M-11は重いビートとサンプリングされたヴォイスが響き渡る、ひときわPsychedeicな様相に。なんだか読経にも似た瞑想感があって、精神世界への入り口が開きそうなくらいです。サイケ!

ラストのトラックがまた個性的で、“天空の城ラピュタ”から‘君をのせて’の旋律を拝借しているんですが、Hip-HopのビートやTrance調のシンセと組み合わせつつも、原曲のもつある種の暗さ(レクイエムのような)がまったく消えておらず、すごく不思議な聴き心地になっています。

思うに、根っからVaporWaveに傾倒しているわけではなくて、ひとつの要素としてしか捉えてないんでしょうね。だからさまざまなサウンドを横断するような作風になっているし、王道のソレにありがちな、だれ気味な部分が少ない(後半少し失速するけれど、前半から中盤はメリハリがあってすごくよいです)。次の[CHAPTER 4]​もあるのであれば、どんなサウンドになっているのか、興味があります。是非聴いてみたい。たぶんこういう風にラフにVaporWaveのエッセンスを取り入れたプロデューサ/トラックメイカーは、今後もっと増えるんでしょう。VaporWave側からの派生ではなくて、違う領域からの浸食というか。それもまた楽しみです。



RED UNIT – So Beautiful [ql015]

 RED UNIT - So Beautiful [ql015]

 – Tracklist –
 01. Red Flag
 02. So Beautiful
 03. Mind
 (※ mirrorでは曲順が異なります。ここではmainに従って表記しています)



 - 02. So Beautiful


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 Release Date : 2006.05
 Label : QUIET LOUNGE

 Keywords : Breakbeat, Chinese, Electronic, Revolutionary Song, Techno.


 Related Links :
  ≫ Red Unit on Last.fm


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たまにはHDにある過去の蓄積を掘り起こしてみたり。2000年代中頃から始まった日本のネットレーベル、QUIET LOUNGE(特に日本のレーベルであることをアピールはしていませんが、運営者は日本の方のようです)。そのリリース群は、アジア発のElectronic musicにフォーカスされていました。“されていました”と過去形で書いたのは、今は活動している様子がみられないから。クローズの宣言もされていませんし、サイトも維持されているので、もしかしたら急に動き出すこともあるのかもしれませんが、現時点では休眠状態にあります。

Red Unitの詳細も不明です。ソロなのか、ユニットなのか、誰かの別名義なのか。分からない部分は多くあります。しかしながらその音楽性は確固たる個性をもっていて、つまりユニーク。はじめて聴いた音源が何だったのかは失念してしまいましたが、特に印象に残っていたのは“Girls in Red”収録の、‘Tradition’だった。なのでいつか投稿するなら、“Girls in Red”についてだろうなと、漠然と思っていたのですが、でも最近聴き返していて、もっともよかったのが、この“So Beautiful”だったので、こうして何やら書き記している次第。

一言でいうなら、Chinese Technoとでも申しましょうか。聴いてすぐに“中国”というワードが頭に浮かぶサウンド。その理由は、サウンドに持ち込まれているのが、おそらくは中国の革命歌であるという点。分かりやすいメロディと、勇ましく、高らかな唱和。そういった歌を用いることに政治的思想が込められているのかは分かりませんが、もしかすると革命歌ではないかもしれませんし、その点については深く言及しません(元ネタを明らかにすることができれば、その側面から何か書くこともできましょうが、残念ながら私にはそれだけの根性がありませんでした。気になる方は頑張って調べてください!)。

また、ジャケット画像にしても、ほとんどの作品でRed Unitは、プロパガンダポスターの画像(あるいはそれを模したものかもしれない)を使用している。それらが中国共産党によって作られたものなのかは分かりませんが、劇画調のタッチと、色鮮やかな色調は、それだけでインパクトがあります。この点もユニーク。

なにより面白いのはBreakbeat/TechnoのスタイルにChinese songを融合させているという点だ。1曲だけならまだしも、これがRed Unitのスタイルであり、ほとんどのトラックでこの奇妙な融合が披露されているのだから、恐れ入る。シリアスなのかジョークなのかも分からないくらい、さりげなく融合されていて、斜に構えた様子や、パンクな精神性(メインストリームに対する反抗心)は嗅ぎ取れない。抑制されたサウンドの中に、ほのかに漂う遊び心のような。そのバランス感覚、センスはクールという他ない。スタイル自体はストレンジなのに、聴き心地はPopであるという、この親しみやすさもまた、好ましい。

現時点ではRed Unitとしての活動自体をしていないようですが、多くの作品がQUIET LOUNGEからのリリースに残されています。気に入った方は是非レーベルを訪れて、手に入れてみてください。謎に包まれたまま時の流れに消えていくのもまた魅力的ですが、願わくば、またリリースを行ってほしいものです。


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(CC) by – nc – nd 2.5



One Day of February – The Supernatural [USC-WR-1212.0130]

 One Day of February - The Supernatural [USC-WR-1212.0130]

 – Tracklist –
 01. Evolution
 02. Blindness
 03. Falling
 04. High Sea
 05. Insul
 06. Our Fight
 07. The Supernatural





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 Release Date : 2012.12.20
 Label : USC (United Studios Corporation)

 Keywords : Breakbeat, Electronic, Emo, Melodic, Metal, VGM.


 Related Links :
  ≫ One Day of February on Last.fm / on VK (VKontakte) / on PROMODJ / on Kroogi


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2005年から活動しているロシアのレーベル、USCより。One Day of FebruaryことAlexander Minchenkovの新しい作品がフリーでリリースされています。以前にもこのブログでDrill Recordsからの“Observers”を紹介したこともありますが、それ以降の作品はほぼ、このUSCからリリースされているようです。みてみると、今作の前にも“Uncharted”、“The City of Devils”、“Another”をリリースしており(録音時期は前後しているが、いずれも2012年のリリースだ)、多作な様子がうかがえます。

この作品については2012年の録音であるとアナウンスされているので、少なくとも現時点で、もっとも新しい作品であることは間違いない。そして正直にいうと、“Observers”の印象が頭にあった私にとっては、今作は意外だった。初め聴いたときには、同名の別人かと疑ってしまった。湿った調子で、幻想性のあるElectronica/Downtempo/IDMといったサウンドは、ここにはない。

代わりにここにあるのは、シンプルでMelodic、そして雄々しい、Electronic musicだ。疾走するリズムの力強さ、輝かしいシンセサイザーの音色、愁いを秘めながらも開放感のあるメロディ。私が感じたのは‘Emo’のような清々しさと、VGM(Vedeo game music)のような反復性と、その気持ち良さだったりするんだけど、リリースページにはこんな言葉があった―‘Electronic Metal’と。

なるほど確かに、言い得て妙だ。アグレッシヴなリズムとドラマチックなシンセフレーズ、カッチリしたサウンドの輪郭、そこから立ち上る中世を舞台にしたファンタジーのようなイメージは、Metal的な様式美を感じさせる。私は聴いていて、ビデオゲーム“悪魔城ドラキュラ”(Castlevania)シリーズの音楽を想起したりもしたんだけど、その遠因にはMetal musicのエッセンスもあるだろう。

“Uncharted”や“Another”では、かなりMetalの方向に傾倒している様子があるんだけど、この“The Supernatural”は、もっとストレートな、つまりMetalのスタイルに固執しない、MelodicなElectronic musicになっているように思う。ここにある鼓舞的なパワーは頼もしい。3Dモデリングされた人間が立ち上がろうとしているような、このジャケット画像は、意図的かどうか、ここにあるサウンドに見事にマッチしている。輝かしく、力強いその音像に耳を澄ませば、どこからか、活力が湧いてきはしまいか。いざ勝負。闘いへ。

近作ではこのスタイルしかみせていないので、今後はこれが彼のスタイルになっていくのだろうか、その点もあわせて、気になるミュージシャンです。気に入った方は他の作品も是非。


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Composed by One Day of February.
All instruments programmed, music written and arranged by Alexander Minchenkov.
3D modelling by Steve Johnson. Artwork by Mike Winchester and Anna Riet.


(CC) by – sa 3.0