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タグアーカイブ: Classical

Hevel – Nowhere Have You Gone

 Hevel - Nowhere Have You Gone Cover

 – Tracklist –
 01. Sleeping Beauty
 02. Love From Dirt
 03. Whereof One Cannot Speak
 04. Thereof One Must Remain Silent



 - 02. Love From Dirt


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 Release Date : 2019.06.03
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Classical, Drone, NewAge, Orchestral.


 Related Links :
  ≫ Hevel on SoundCloud / on bandcamp / on Spotify


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以前にも“Insides”を紹介したHevelの新しい作品が、bandcampを通じてリリースされています。

彼のサウンドスタイルはAmbient/Drone。ミニマルな持続音の起伏で、抑制されていながらも抒情的な美しいメロディを奏でているような、そんな作品が多くありました。ときには明確な、エディットされたギターの音がそこに加わったりもしましたが、それはやはり楽器の音を意識させるというよりは、空間的な演出が意図されていたように思います。

そんな、これまでの作品と比較すると、今作はある種のチャレンジがあるのではないかという気もします。ピアノやストリングスが惜しげもなく、ストレートに、つまりメロディを鳴らすために用いられていて、ここまでにはあまり見せていなかったClassical/Orchestralな要素が顔をのぞかせているからです。

厳かな楽器音と、それによって奏でられるメロディは、これまでにも増して抒情性をもってリスナーを包み込み、静かに、想像力を掻き立てます。また楽器音に加えて従来からの電子音も巧みに織り込まれているので、方向転換というよりは、あくまでもこれまでの作品の延長線上にあるサウンドだと思います。今までよりもサウンドが直接的になっている分、Ambient/Droneからは遠ざかっているようにも受け取れますし、そこに寂しさを覚えるリスナーもいるのかもしれませんが(メロディが強すぎるというかね。瞑想的なイメージからはやや離れています)、個人的にはこのAmbient/Drone~Classical/Orchestralなスタイルはとっても好きです(じんわりしたAmbient/Droneも勿論ヨイデスケドね)。映画のサウンドトラックのようですね。お気に入りの何がしかの映画とか、あるいは本の中の物語とか、思い浮かべる人もいるんじゃないですかね。

だんとつ白眉はM-2‘Love From Dirt’。上にも書いたように、直球でピアノとストリングスなトラックですが、この作品のこの位置にあることですごくこのスタイルが映えていると思います。M-3‘Whereof One Cannot Speak’の複数レイヤーによるセンチメンタルな奔流から、ラスト‘Thereof One Must Remain Silent’における光と決意を感じさせるような、荘厳なラスト。総じてドラマチックに仕上がっていると思います。

小粒かもしれませんが、良作です! 気に入った方は他の作品も是非。



John D. Reedy – The Great Long Distance

 John D. Reedy - The Great Long Distance

 – Tracklist –
 01. Dreams of Budapest
 02. 60 Days
 03. 30 Days
 04. Heathrow / Stansted
 05. Dreams of Athens
 06. Sehnsucht
 07. Athens International
 08. Summer’s Afterglow
 09. The Great Long Distance
 10. Lost Dog
 11. We Remain
 12. Together



 - 04. Heathrow / Stansted


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 Release Date : 2017.02.17
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Cinematic, Classical, Long distance relationship, Piano, Soundscape.


 Related Links :
  ≫ Evæl on SoundCloud / on bandcamp

  ≫ John D. Reedy on SoundCloud / on bandcamp


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イギリスのミュージシャン、John D. Reedy。以前にはEvælの名義でリリースもあります。Neo folk/Neo classicalな音楽性のメランコリックなウタモノ“Breath”を経て、リアルネームで挑んだ今作のテーマは、“long distance relationship”。

遠距離恋愛の12ヶ月(なので12トラック)を表現した音像になっているようですが、ClassicalなPianoのメロディとAmbientなエフェクトが描き出すのは、ドラマティックでロマンティックなサウンドスケープ。ジャケットイメージから想像を膨らませると、時は中世、航海士の男と、港町の娘の恋、といったところでしょうか。航海によってはいつ帰ってくるかも分からず、命の保証すらないような、危険極まりない、船の旅。もしかしたらもう会えないかもしれない。大げさではなくそんな可能性があるのだから、旅立ちのとき、そして生還のときに、それぞれの心中には、それはそれは強い気持ちがあったことでしょう。

初期の航海では遭難や難破、敵からの襲撃、壊血病や疫病感染などによって、乗組員の生還率は20%にも満たないほど危険極まりなかった。しかし遠征が成功して新航路が開拓され新しい領土を獲得するごとに、海外進出による利益が莫大であることが立証された。健康と不屈の精神そして才覚と幸運に恵まれれば、貧者や下層民であっても一夜にして王侯貴族に匹敵するほどの富と名声が転がり込んだ。こうした早い者勝ち の機運が貴賎を問わず人々の競争心を煽り立て、ポルトガル・スペイン両国を中心にヨーロッパに航海ブームが吹き荒れるようになった。(from Wikipedia

そんな“大航海時代”という大きな大きな流れの中で見れば、船乗りと町娘の恋なんていうのは塵(ちり)のようなものなのかもしれないけれど、でもきっとあったと思うし、そこにあった気持ちの強さっていうのは、どんな物差しでも測りきれないものだったでしょう。大航海時代というロマンチックな(けれど厳しい)時代の中に埋もれたロマンスが、ここに記されている、そう考えると、時間にして決して長い作品ではありませんが、非常に重みが感じられてきます。1冊の本や、1本の映画にも負けていないような。12のトラックに物語は付されていませんが、聴いた人がそれぞれ、想像してみるのも、面白いかもしれませんね。

音楽的には特別なことが成されているわけではありません。穏やかだったり、ハッピーだったり、ピースだったりというよりは、どちらかというと、切なかったり不安だったりといった、sadな感情性が強いようにも感じられます(それはそうか)。意外に、ということもないんだけれど、メロディで引っ張る感じではなくて、大きなうねり―つまりサウンドスケープ―で空間を演出している感が強いので、その辺りがタグに用いられている“post-rock”に通じるのかなと思います。

ひとつ気になるのは、この物語がハッピーエンドなのか否かという点なのですが・・・。ラストが‘Together’なのでポジティヴに解釈できそうですが、その前の‘We Remain’はどう捉えるべきなのだろう。ジャケットイメージにしたって、これが出発の前なのか、それとも帰還の後なのかで、またそこに生じるものが大いに変わってくる。と、ここでJohn D. ReedyのSoundCloudを覗いてみると、わずか3トラックが残されていて、タイトルにはそれぞれMonth 22, 23, 24とつけられている。これは今作に収められなかった“その後”なのだろうか、果たして・・・。

リラクシンとはまた違うと思いますが、自身の頭の中に物語を作り上げることができたなら、終幕のときには涙が頬を伝う可能性もあるでしょう。というように、非常にイマジネイティヴな作品でもありますが、音楽単体でみても素晴らしい作品だと思います。



DDRKirby(ISQ) – Rain Original Soundtrack

 DDRKirby(ISQ) – Rain Original Soundtrack

 – Tracklist –
 01. Memoir
 02. Teardrop
 03. Teardrop [With Hope]
 04. Memoir (Reprise)
 05. Teardrop (Unused Version)
 06. Sprinkle (Unused Track)
 07. Memoir [With Rain]
 08. Teardrop [With Rain]
 09. Teardrop [With Hope] [With Rain]
 10. Memoir (Reprise) [With Rain]



 - 06. Sprinkle (Unused Track)


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 ≫ Play it directly in your browser here : goo.gl/cr3lL4
 ≫ Learn more about Rain here : sites.google.com/site/ddrkirby/coding-projects/rain


 Release Date : 2014.09.27
 Label : Not On Label

 Keywords : Classical, Electronica, Melodic, Piano, Soundtrack, VGM.


 Related Links :
  ≫ DDRKirby(ISQ)’s Site o’ Stuff
  ≫ DDRKirby(ISQ) on Facebook / on bandcamp / on Twitter / on YouTube


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DDRKirby(ISQ)ことTimmie Wongの新しい作品は、ふだんのChiptuneとは異なって、ピアノをメインにした物悲しいサウンドトラック。Rainというフラッシュゲーム(公式ではatmospheric interactive pieceという表現がなされている)に使用したBGMをコンパイルしたものになっています。Rain自体もDDRKirby(ISQ)とKat Jiaが協力して作り上げたもので、ゲーム本体の制作から音楽までと、このサウンドトラックを通じて彼の幅広い才能を感じることができます。

ゲーム自体は非常に短いもので、方向キーとスペースキーだけで、おそらく5~10分以内に完結してしまいます。始終雨が降り続く灰色の景色の中を、小さい女の子が歩いていくだけ、それだけのものです。傘を拾ったり黒猫と出会ったりというアクションはあるものの、ほとんど道なりに歩いているだけで、目的地(家かな?)にたどり着き、そしてまた物語は繰り返されます。

雨は降っているし、景色は灰色ばかりだし、決して明るい世界観ではないのですが、愛らしいんです。絵柄のデザイン、雰囲気もそうだし、アクションもそう。曇天の中で発揮されるそういった愛らしさが、光というか希望(のようなもの)に結びついていて、プレーヤーをネガティヴな気持ちにはさせません。女の子が何で一人なのかとか(黒猫はいるけどね!)、雨は降り止まないのかとか、想像の余地が残されている部分も、世界に広がりを与えていて、よいですね。

と、ゲーム(というほどのゲーム性はないのだけれど、他に適当な言葉を思いつかないので)の内容にばかり触れてしまいましたが、音楽がまたよいんです。ちなみに今作、リリースページでは10トラックの記述しかありませんが、実際は19トラックが収録されています。ゲーム本編が上記のように短いので、使われている曲数は多くありません。19トラックもあるのは、ヴァージョン違いが多数収録されているためです(雨音が流れているものだったり、音色が加えられているものだったり。あと使われなかったトラックも収められています)。

ゲームの世界観をサポートしつつ、曲単体としても十分に成立する、すばらしいBGMたちが並んでいます。メロディのよさというのは、これまでのDDRKirby(ISQ)の作品でもすでに実証済みですが、今作はまたピアノメインということで多少毛色が異なる中、見事に安定したクオリティを保っています。少しサビしくて、でもどこかに温かみがあって、大げさに主張はしてこないけれど、そばにいてくれてる安心感は確かにあって・・・みたいな距離感がすばらしい。

19トラックある上に、基本的に同じフレーズを持った曲が並んでいるので、途中で食傷気味になるかもと懸念されましたが、1トラックが短いので、なにやら丁度良い按配に感じられます。やはり押しつけが強くないところも関係しているのでしょう。ピアノの音色に耳をゆだねているうちに、ふいに終わりが訪れます。ちょっぴりサビしい気分のときに聴くと、そっと寄り添ってくれると思います。良作。

サウンドを聴いて興味を持った方は、Rain本体の方も是非。短いので、触れてみるだけでも。

追記 : With Hopeのヴァージョンは聖剣伝説2の‘願い’を思い出しますね。すごくスキな曲です。



Eugene Naumenko – Reversion [USC-WR-1401.0201]

 Eugene Naumenko - Reversion [USC-WR-1401.0201]

 – Tracklist –
 01. Помни (Remember)
 02. Реверсия (Reversion)
 03. Однажды (Once)
 04. Паранойя (Paranoia)
 05. Домашние огни (Home Lights)
 06. Живой мир (Live World)
 07. Между нами (Between Us)
 08. Париж без тебя (Paris Without You)
 09. Пепел (Ashes)



 - 05. Домашние огни (Home Lights)


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 Release Page :
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 Release Date : 2014.01.16
 Label : USC(United Studios Corporation)

 Keywords : Ambient, Classical, Electronica, Piano, Melodic.


 Related Links :
  ≫ Eugene Naumenko on Jamendo


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ロシアン・ネットレーベル、USCより。Eugene Naumenkoの作品がフリーでリリースされています(bandcampからは購入も可能ですし、mainのリリースページからはCDのオーダーもできます)。2013年にも同レーベルから1000 лет(1000 Years)をリリースしていますが、そちらに続いて2作目となります。

ClassicalとはいってもPiano一辺倒ではなくて、ストリングスやシンセを活かした多層感のある音作りになっていて、凛とした空気の中にも情感がにじんでいます。そのあたりがどこかフラット―漂白、無色的な意味で―な聴き心地だった、前作とは異なっている部分かと思います。

広い空間をただよう鍵盤は、記憶のまたたきのようで。そこにある冷たい温もりは、いつかの思い出を呼び覚ます。ストリングスの優雅な調べは、思い出につきまとう後悔を押し流し、リスナーの中には、清々しいほろ苦さだけが残ります。

一番好きなトラックは‘Домашние огни (Home Lights)’です。雪解けの水のような、冷たく光るイントロからスローダウンして、遠くに花火の音が聴こえてくる。聴こえてくるPianoはいつしか、我が家を目前とした旅人の心持のような、安心感、安堵感をたたえたものに変化している。ふいに終わってしまうのがちょっと残念だけど、花火の演出も相俟って、作中でも特に余韻を残します。

‘Однажды (Once)’もよいですね。映画のラストシーンのような、清々しさと切なさが同居したサウンドは、とても好きです。作り手がどのようなシーンをイメージしたのかは分かりませんが、私の中には、とても切ないシーンが見えてきました。たとえばそう、事情があって仲間(恋人ふくむ)の元を離れていた男が、ようやく彼らのところへ戻るシーン。でも男がいつもの場所(たまり場的な)にたどり着いたときに、目に映るのは、自分がいなくても、何ら変わらぬ日常を送っている仲間たちの姿で。結局、男は、恋人や仲間と顔を合わせることもなく、その場を去り、何処かへ旅立つ。コートのポケットに手を突っ込んで、肩を丸めて歩き去る、男の口元にはさびしそうな笑み。とても青臭いんだけど、青臭いから、そうせざるを得ない。そんなラストシーン。

というように(?)、とても風景的、情景的なサウンドが収められています。目を閉じてヘッドフォンで聴きながら、想像の翼がはばたくのに任せるのもよし、記憶の中で過去に舞い戻って、ほろ苦さを味わうのもよし。もちろんシンプルに音の響きを楽しむのもよいと思います。気に入った方は、前作“1000 лет(1000 Years)”にも、耳を傾けてみてください(下に1曲、貼らせていただきます)。個人的なことですが、もう少しだけでもElectronicaの方向に傾くと、もっと好みのサウンドになりそうな予感がします。



 - Жди меня (Wait for Me)


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All instruments programmed, keyboards played, sampler, music written and arranged by Eugene Naumenko. Tracks 8 & 9 are bonus tracks. Artwork by Evgeniy Tkachenko.



(CC) by – sa 4.0

α·Pav – Pavonis ~ Piano Collection II ~

 α·Pav - Pavonis ~ Piano Collection II ~

 – Tracklist –
 01. δ
 02. β
 03. λ
 04. η
 05. ζ
 06. τ
 07. ε
 08. γ



 - 05. ζ


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 Release Date : 2013.10.01
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Classical, Piano, Melodic.


 Related Links :
  ≫ α·Pav on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp
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これまでにも何度か作品を紹介してきた中国のコンポーザー、α・Pav。彼の新しい作品、“Pavonis ~ Piano Collection II ~”がリリースされました。bandcampからは購入という形がとられていますが、YouTube上の‘δ’(今作の1曲目)のMVには、オンラインストレージへのリンクが示されています。うれしいことですね(ありがとうございます)。ちなみに2作目であることを示すタイトルですが、1作目はコチラで聴けます。

今作はタイトル通り、ピアノを主軸にした、とても静的な作品。これまでに紹介した作品でも確かにピアノが前面に出されていましたが、シンセサウンドやHouse調のリズム、オリエンタルな楽器音などの、他の要素も特徴的でした。そういった要素を脇に追いやったのが今作になるわけですが、これがまたすばらしい。決してピアノだけというわけではなくて、電子音や環境音、リズムなども、ところどころに持ち込まれていますが、それらはトラックや作品の世界観を補強するための、裏方にすぎない。全編を支配しているのはピアノの音色、その響きだ。

冒頭の‘δ’では、Erik Satieの“Gymnopédies”を彷彿させる、物憂げな空間が広がる。昼下がりの物思いを思わせる、そのボンヤリとした空気は、回顧的でもあり、また懐古的でもあり、ノスタルジアを誘発する(この1曲目からして、今作が安心して聴ける作品であると確信できる)。2曲目もその空気を引き継いで、遠くに水音や虫の声を聴きながら、ピアノの響き、その余韻に耳を澄ます内、空白の時間が流れていく。

M-3は列車の音が遠くから聴こえてくる。そしてピアノのメロディと重なるように、透明な音色がジンワリと、やわらかく明滅している。やがて聴こえてくる虫の声が夜を広げ、リスナーの目には、いつの間にか夜空が、そしてそこに光る星が、見えてくることだろう。そのまま地続きになっているM-4では、雨音だろうか、ポツポツ、サワサワとした水音が聴こえてくる。しっかりとしたピアノのフレーズがこれまでと流れを変える。夜の底で旅路を振り返るような、少しの安息感が、そこにはある。

M-5はとても環境的だ。木の床を歩く足音、コップに水を注ぐ音、テーブルに置かれる食器の音、椅子に腰かける音、本のページをめくる音。それらを包む雨音。その空間を漂うピアノ。雨の日の休日。そのひとこまを切り取ったような、とても風景的なトラック。M-6では、穏やかながら暗さを宿した旋律に、リズムが入りはじめる。風の音だろうか、炎の音だろうか、ザワついた音が小さく聴こえてきて、どこかしらに不安が滲んでいるトラックだ。

そんなM-6を通り過ぎて、ゆっくりとした夜明けの光を思わせる、2分弱のM-7のあと、作中でも最も華やかでPOPな‘γ’で、作品は幕を下ろされる。ストリングスとピアノの掛け合いでドラマチックな展開を作り出す、この‘γ’は、何だか映画のエンドロールのようで、作品の終わりにつきまとう、寂しさと清々しさが、同居している。雨垂れに想いをのせて過ぎ去りし日々を回想するようなM-1~7に対して、このM-8は、まるでその物思いからの目覚めのときを知らせるかのようだ。作品はとてもキレイに締めくくられている。

これまでの作品が気に入っている方だったら、きっと今作にも心が動くことでしょう。ノスタルジックでMelodicな、α·Pavのエッセンスを、強く感じることができる良作です。余談だけど、各トラックのタイトル、何だか不思議ですよね。ギリシア文字。タイトルでイメージを限定したくなくて、適当に割り当てただけなのか、あるいは逆に、何か特別な意味を持たせているのか。


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α·Pav – δ – Pavonis ~ Piano Collections II ~【MV】




Ryuta Aoki – MINUS 8

 Ryuta Aoki - MINUS 8

 – Tracklist –
 01. Smile for me
 02. in the room
 03. また明日
 04. ぽつまる
 05. HanaHana~alt sax ver.~
 06. Midnight Navigation
 07. Path to Choose



 - 01. Smile for me


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 Release Date : 2013.07.08
 Label : Yae Records

 Keywords : Ambient, Classical, Electronica, Piano, Melodic.


 Related Links :
  ≫ 青木隆多 Ryuta Aoki Official Web Site
  ≫ 青木隆多 on MySpace / on Twitter


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日本のネットレーベル、Yae Recordsより。これまでにも何回か作品を紹介させていただいた、青木隆多(あおき・りゅうた)の新しい作品が、実質フリーでリリースされています。

Pianoを主軸にしたAmbient/Electronicaサウンドは健在で、安心して聴くことのできる作品です。Pianoの透明感ある響きを生かしながら、その中で巧みに光と影を生み出す、いわば二面性のような部分も変わらず発揮されており、時間でいえば朝から夜までを、感情でいえば喜哀楽(怒は抜かして)を、季節でいえば春夏秋冬を、感じられるような、幅広い聴き心地がある。

冒頭のM-1は、ピアノのメロディに、リズムやギター、ストリングス調のシンセを織り交ぜた、とてもシネマティックなトラック。メロディには感傷的な調子があって、タイトルの‘Smile for me’と合わせて考えると、このサウンドの中にあるのは‘願い’ではなかろうか。風に消えていく背中に向けて、心の中で願いをかけるような、切ないシーンが見えてくる。M-3ではピアノの長い余韻や、深い響きと拮抗するような、チャイルディッシュな音色が印象的です。深い夜の底でゆるやかに流れる時間と、今日という終わっていく日への哀愁、そして明日への光が、ひとつのトラックの中に内包されている。

‘ぽつまる’はインタールード的な役割なんでしょうか、非常に短いながら、作中でもっともにぎやかなトラックで、トライアングルやギロとおぼしき音色まで聴こえてきます。ずんぐりむっくりしたキャラクターがよちよち歩いているような、明るく可愛らしい調子は、心を和ませてくれます。続く‘HanaHana~alt sax ver.~’は、ピアノとアコースティックなギターの音色を従えた、アルトサックスの音色が全編を彩っています。とてもおおらかでジェントルな波を感じられるトラック。耳を凝らすと、バックにささやかながら電子的エフェクトが聴きとれて、これまでの作品と同様、おおらかさの裏にあるデリケートな部分に気付かされます。

この陽性のトラックを通過したあとは、再び悲哀をにじませた二つのトラックによって、今作は締めくくられます。‘Midnight Navigation’が、深夜の孤独な物思いを描いているとするならば、ラストの‘Path to Choose’は、その物思いの結果導き出された、少しだけ悲しい選択を思わせる。悲しいんだけれど、でも清々しさがあって、だから心は前を向いているような。人生は選択の連続です。われわれは常に選択しながら、毎日を生きている。悔やむことも多くある。でも、‘Path to Choose’は、選んだ道に間違いはないと、そっと(ほんとにそっと)背中を押してくれるような、やさしさを秘めたトラックで、M-1と並んで今作のフェイバリットです。

ほんとにどの作品でもクオリティの高さが維持されていて、安心して耳を任せられます。これまでの同レーベルからのリリースも、自信をもってレコメンドできますし、決して裏切られないでしょう。これまでの作品を未聴の方は、是非さかのぼって聴いてほしいです。


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All tracks Composed and Arranged by Ryuta Aoki
#5 Saxophone by Masumi Hosokawa
Art work by Ryuta Aoki


(CC) by – sa 3.0



Thursday Bloom – Quiet Fire

 Thursday Bloom - Quiet Fire

 – Tracklist –
 01. Haze
 02. Sunshine
 03. A Quiet Fire In The Heart



 - 02. Sunshine


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 Release Date : 2013.03.01
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Classical, Drone, Piano.


 Related Links :
  ≫ Thursday Bloom on Facebook / on bandcamp


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オーストラリアはアデレードのミュージシャン、Thursday Bloomの作品“Quiet Fire”が、bandcampを通じて実質フリーでリリースされています。この作品は、2013年中に12作品(1か月に1作品)をリリースするという計画の、第2作目にあたります。現時点で3作目“Monolith”までリリースされていますが、いまのところ今作がもっとも好ましかったので、こちらを紹介します(でも4月の時点で3作品ということは、どこかの月で2作をリリースしないと、年内に12作品という計画は達成されないですね)。

テクスチュアとしてはAmbient/Drone。しごくかすかなGlitchであったり、環境音であったりが用いられていて、音響的な面で、さりげなくサウンドの幅を広げている―プツプツとした細かい音の泡立ちは古びた映像を、鳥の鳴き声などは、人里離れた自然環境を、それぞれイメージさせてくれる。

聴いているとAmbient/Droneに類似した聴き心地なんだけど、いわゆる電子的なレイヤーが空間に充満しているスタイルではない。シンセのタッチというのがぜんぜん強くなくて、代わりに今作を支配しているのは、ストリングスによるレイヤーだ。ゆるやかな起伏でミニマルに展開されるストリングスは、厳かで、どこか悲しげで、だからこそ、何か決意めいたものを思わせるくらいに、ある意味でエモーショナルだ。映画のワンシーンが浮かぶ。たとえば別れの言葉。それを告げるシーン。それは言葉数としては少なくて、表面的には、静かであるかもしれない。でもその裏には、とても強い感情、重い気持ちが潜んでいる。そこに至るまでの過程があってこその、別れの言葉なのだ。

ここにあるドロー二ングは、その過程というヤツを思い返すに十分な継続、持続をみせている。そしてその音の響きにある厳格さが、楽しさというよりは、やはり悲しさを想起させる。だからここにあるトラックたちは、悲しみを伴って過去を呼び戻す。静かに、けれど確かに強い感情を伴う様には、まさに“Quiet Fire”、あるいは“A Quiet Fire In The Heart”というワードがふさわしい。そして上に書いたような環境音の演出で、別れの後とでもいうべき、ロンリーな空間が形成されるんだけど、深遠な、森を思わせるその空間、イメージは、決してネガティヴではない。その場所は、日常に変えるための、一瞬の空白なのだ。だから、この作品には、別れに対する決意と、その後ろにある希望、のようなものが感じ取れる。よい作品です。残りの作品も気になります。最後に余談だけど、なぜだか分からないが聴いていて、“花とアリス”や“Blue Valentine”といった映画たちが、頭をよぎった。


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All music written and performed by Thursday Bloom
Produced, Mixed and Mastered by Thursday Bloom
Cover image by Thursday Bloom