ABRAcaDABRA

Netaudio explorer

タグアーカイブ: Fantasy

Final Heal – Fata Morgana[QNR019]

 Final Heal - Fata Morgana[QNR019]Cover

 – Tracklist –
 01. Anna’s Journal
 02. My Blue Heaven
 03. Millennium Fantasy X
 04. Never Die
 05. From Here On Out
 06. Invitation to Elegy
 07. VIRUS
 08. Dream Tower
 09. Wind
 10. Telepathy
 11. Fly Away
 12. People, Memories, Places
 13. Snowman
 14. Sinner’s Lullaby
 15. Faerie Song

 - 15. Faerie Song


+ + +


 Download Page Free!

 Release Date : 2018.08.20
 Label : Quantum Natives

 Keywords : Breakbeat, Electronic, Fantasy, Orchestral, Piano, Strange, VGM.


 Related Links :
  ≫ Final Heal on SoundCloud


+ + + + + +


プロフィールは不詳ですが、このFinal Healの背後にいるのは、おそらくはAmun Dragoonではないかという指摘を見かけました。私も何とはなしにそう思っておりましたので、“そうだよね!”と共感した次第です。まあ結局よく分かっていないんですけれど。でもそう思わせる要素というのはあって、まずはやはりAmun DragoonのSoundCloudにFinal Healのトラックが(2年も前に)リポストされていること。私がFinal Healの存在を知ったのもそこからでした。単純に気に入ってリポストしただけという可能性もありますが、このつながりに加えて音楽性も類似しているのです。

Amun DragoonはVaporWaveの文脈に入れられることもあるし、実際トラックによってはその傾向も強くありますが(特にNewAge調のトラック)、現時点の最新作2015年の“Socotra Island”などはMIDI風のサウンドに傾倒している節があって、もはやVaporWave作家というイメージは私の中では薄れつつありました。そしてその先に何を出してくるのかという興味も持っていたのですが、それ以降動きはなく、まあ突然活動を止めてしまう(ように見える)アーティストも全然珍しくないので、Amun Dragoonも終了してしまうのかと危惧しておりましたところ、突然現れたのがこのFinal Healでして、聴いてみたところ、正直当初公開されていたトラックからはAmun Dragoonとのつながりは見いだせなかったのです。だってヴォーカル入ってるし(どこかたどたどしい)、何かメロディはポップだし、オーケストラルな要素もあって、ハッキリとした抒情性も感じられて、そこをつなげて考えるのは間違いじゃないかと思っておったのですが。

私がAmun Dragoonで一番好きなトラックは‘Secret Whispers From The Tamate Box’(下に張りますが最高だな!ビデオがイイ)ですが、これと共振する何かを今作の‘Dream Tower’‘Wind’, ‘Telepathy’に嗅ぎ取ったのですね。前者が陰とすれば後者は陽であるけれども、このスピリチュアルな望郷感とでもいうか、意図せず漏れ出てしまっている個性が共通しているように感じられて、ここで初めて両者をつなげて考えてもよいのかなと思い始めたのです。“Socotra Island”の延長線上というよりは、俗に寄せてきた感じ。

と、もし赤の他人だったら申し訳ありませんので、単体で触れましょう。仙人が下界に降りてきて世俗を楽しもうと思いきや、下々の常識が分からずにひっちゃかめっちゃかやってしまいました、みたいな。クロコダイルダンディ。そんなことやっちゃうのみたいな。ローファイ・エレクトリック・ファンタジー。大筋は抒情的なメロディがあって、ファンタジックで、ちょっとVGMっぽいところもあって、ストレートな聴き心地というか、ポテトチップス食べてるみたいな安心感なんですが、ところどころ異質な“何か”が混じっていて、非常に刺激的。M-2も静かに始まったと思ったら、終盤いきなりそんなデカいシンセと強いアタックのドラム入れちゃうの?っていう驚きがあり、M-4はコレ何であえて日本語の歌詞なんでしょう?カバーとかではない気がするんですがちょっとおぼつかない日本語のDIYな歌唱がまた惹きつける、M-6は9分超の大作ですがピアノでひそやかに始まってストリングスなんか入ってアラいい感じと思ってたら急にブレイクビートと共にドラマチックな展開になだれ込んで、何だかビデオゲームのバトルシーンみたいな曲調にいつの間にか連れて行かれてる、M-7もせわしないビートとシンセにアンニュイなヴォーカルが入って最終的に加速してって終わるしM-11も途中でギターなのか何なのかノイジーなフレーズが入ったり後半リズムが妙に力強かったりまたしてもミステリアスなヴォーカルを入れてくる―といった調子で、一度入り込んでキャッチされてしまえば、終始感じられるこの危ういバランス感(焦燥的でもある)と、抒情性の絶妙なコントラストが、クセになること請け合い(さらには‘Invitation to Elegy’‘My Blue Heaven’はSoundCloudで公開されているものとちょっとずつ内容が異なっているという攪乱ぶり)。人によってはスペインの雄This Deep Wellを想起する方もいらっしゃるでしょう。

気になった方は是非Amun Dragoonも辿ってみてくださいネ。にしてもQuantum Nativesのサイトデザインやべえ。あえて不便さを強いてくるような突き放し感がヘヴンリー。


+ + + + + +


Amun Dragoon – Secret whispers from the tamate box


Final Heal – Millennium Fantasy X(directed by Final Heal)



+ + + + + +


Artwork by Aisha Mizuno & Galen Erickson
https://www.instagram.com/doctor_zoom_octopus/
https://www.instagram.com/chaos_egg/



teams. – VGM 1

 teams. - VGM 1

 – Tracklist –
 01. cave (seiken densetsu 2)
 02. avalanche (final fantasy 7)
 03. pk starstorm (earthbound)
 04. sorry, but it looks like I won’t make it back (chrono cross)



 - 02. avalanche (final fantasy 7)


+ + +


 Release Page Download Free! / pay what you wish.

 Release Date : 2017.10.07
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Dream, Electronica, Fantasy, VGM.


 Related Links :
  ≫ teams. on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp / on Twitter


+ + + + + +


ビートメーカー、teams.の新しい作品は、VGM(Video Game Music)。teams.っていうから、グループとかコレクティヴだと勘違いしていましたが、個人活動ということでよろしいでしょうか(間違っていたらスミマセン)。

これまでにもアンビエンス漂うHip-Hop/Beats作品を多くリリースしてきていますが、今作はビートがございません。自身が最も好んでプレイしてきたビデオゲーム―時代的には一昔どころではなく前になるけれどしかし不朽の名作である“聖剣伝説2”、“ファイナル・ファンタジー7”、“MOTHER2(英題はearthbound)”、そして“クロノ・クロス”、これらの音楽を作ってみた、というのが今作、今シリーズのコンセプトのようです。作ってみた、と書いたのは、オリジナルをアレンジとかリミックスしたわけではなくて、自身でゲームの特定のシーンをイメージして作ってみた様子だからです。というのも私は“聖剣伝説2”と“クロノ・クロス”のオリジナル・サウンドトラックは所持していますが、おそらくこのteams.の作品に入ってるトラックはそこには見てとれないからです。

でも完全オリジナルってなると、サンプリングありきのHip-Hopの手法からは外れるし、それはteams.っぽくないような気もするので、もしかしたらサンプル使用とか、極端なアレンジとかいう可能性もありますが、少なくとも私には分からない。オリジナルを使っているにしても、コレは、とピンとくる素材は使われていないように思います。

まあ、それはさておき、非常にAmbientに傾いた作風です。これまでも包容力あるサウンドを多く作ってきていますが、先にも書いたようにココにはビートがない。夢の中にきらめく星明り、あるいは電子の瞬きか。ドリーミィなサウンドスケープの中にある電子的冷たさが、ビデオゲームの空気を醸している。聴き方によってはShogaze/Noise的な側面も見いだせるかもしれません。

各トラックには題材になったと思しきゲーム名が付されているけれど、どれも特別にゲームのシーンを思い出させるような作りにはなっていなくて、説明がなければおそらくそれぞれのゲームに関連付けられることはないだろうと思います。なので件のゲームをプレイしていない人が楽しめないということは全くなくて、純粋にAmbientとして魅力を持った作品になっています。逆にプレイしてきた人は、思い出のシーンに当てはめてみるのも楽しいかもしれません。トラックタイトルもその助けになるでしょう。

今作はシリーズの第一作ということで、続編も控えているようなので、期待しましょう。お気に召した方は、過去作の“visual novel.”も近しいサウンドかと思いますので、ぜひ。


+ + +


 Note :

when i started making music I started off making video game music, bgm etc. This is the start of a small series of video game music I do. This one consist of my favourites like final fantasy 7, chrono cross, earthbound and seiken densetsu 2. There are more soundtracks of these games I did. Just got to get around finishing them. Series 2 will be up soon.


+ + + + + +


ちなみに、ということで、せっかくなんで、私の好きな、“聖剣伝説2”と“クロノ・クロス”からのトラックをいくつか以下に―


時のみる夢(from “クロノ・クロス オリジナル・サウンドトラック”)
とはいってもコレは本編では使われていないはず。






海月海(from “クロノ・クロス オリジナル・サウンドトラック”)






時の草原(from “クロノ・クロス オリジナル・サウンドトラック”)






天使の怖れ(from “聖剣伝説2 オリジナル・サウンドトラック”)






ねがい(from “聖剣伝説2 オリジナル・サウンドトラック”)




Elevation – No DnB in the 音楽室

 Elevation - No DnB in the 音楽室 Cover

 – Tracklist –
 01. Professional People Watching ft. Shanic 
 02. Auricom Labs
 03. I’ll Be Beautiful ft. Selerac
 04. Still Playing Pointless Newgrounds Games
 05. Honda



 - 03. I’ll Be Beautiful ft. Selerac


+ + +


 Release Page : Download Free! (* = pay what you wish.)
 ≫ [ SoundCloud ] / [ bandcamp*

 Release Date : 2016.10.24
 Label : Palettes

 Keywords : Drum’n’Bass, Electronic, Fantasy, Melodic, Sample-Based.


 Related Links :
  ≫ ☁Elevation☁ on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp / on Twitter
  ≫ Pursuing Paradise on Facebook / on SoundCloud / on YouTube


+ + + + + +


アメリカのトラックメイカーElevation(Pursuing Paradiseの名義も持っています)の作品です。2014年に設立されたレーベル/コレクティヴ、Palettesからのリリース。レーベルはbandcampも持ってるんですが、そちらはなぜかコンピレーション・シリーズのリリースしか掲載されておらず、他の作品たちは異なる場所からリリースされています。crapfaceの“:):):)”(これもすばらしい)は特設ページおよびmediafireからだし、今作もSoundCloudのみでリリースされている様子。なので熱心に追っている人しか耳にできないような気がして、そこはちょっと気になるところです(追記:2017.01.22 現在はbandcampでも公開中)。

business casualBedlam TapesからリリースされたPursuing Paradise名義の作品もこれまで紹介してきましたが、そちらはコラージュ感覚の強い―VaporWaveにも通じますが、私の中ではちょっと違う―、アブストラクトで混沌とした音像が特徴的でした。全編地続きの一大混沌絵巻という表現をしたかと思います。

対してこのElevationではより分かりやすい、メロディに傾むいたサウンドを作っている印象があったのですが、今作もそこから外れておらず。しかし確実にPursuing Paradiseも垣間見せる個性的なDrum & Bass(Drum’n’Bass)だと思います。ストレート、ストイックなDrum’n’Bassが苦手(かといって享楽的なのもちょっと敬遠)な私のアンテナが受信した時点で何か他とは違う部分があるのでしょう。それをとらえてみたいと思う次第―

M-1のJazzフィーリングなPianoやブラスと高速ブレイクビーツの対比、というのは珍しくないと思うんですが、このどこかしらに滲むドラマチック、ファンタジックな空気、伝わりますでしょうか。M-2も回転する高速ビートがカッコいいのはいわずもがなで、中盤のベースとブラスとドラムを交えたこのシリアスなムードから、何か木琴みたいなチャイルディッシュな効果音やディレイの効いたヴォイスのサンプリングで醸される密かな狂気性、そのコントラスト。そしてM-3が私の中ではもっともPursuing Paradiseらしさを感じるの白眉のトラックなのですが、冒頭のこのファンタジー感たるや。VaporWaveからの影響も見えるスローモかつディレイなサンプリング・ヴォイス、しかしそれはメロディを湛えていて、リスナーを包み込むようで、また、Aphex Twinを想起させる優雅なストリングスとBreakbeatsの対比もトラックタイトル通りに、実にビューティフル。楽園を追及するPursuing Paradiseのエッセンスが濃度高めで注入されています。すごく好き。

硬派な展開の中にしっかりMelodicなフレーズとアクセントを入れたM-4や、Ambientな包容力と豪快なアタックが同居するM-5も、やはりそれぞれユニークで、EP全体でバランスに優れた良作だと思います。編集感覚、編集センスの賜物かもしれませんが、繰り返し聴いても飽きがきにくい。狂気性からくる美しさ、のようなものがチラチラと瞬いていて、非常に魅力的。惹きつけられるのです。あとタイトルもイイ。ネットリリースだから、いつ消えるやもしれないし、ダウンロード不可になるかもしれないので、入手は早めが吉だと思います!

ちなみにPursuing Paradise名義で11月にリリースがアナウンスされている“Lust and the Downward Spiral”のティザーもあるので、以下に―


Lust and the Downward Spiral coming November



そしてついでに、ちょっと変則的ですが、レーベルの紹介ということで、上で触れたcrapfaceの作品から、crapface x Zack Bruceによる‘U & Me’も貼らせてください。Nightcoreっていえばそうなんだけど、IDM/Electronicaっぽさもあって、Popなフィーリングも一緒にあって、作中でいっとう好きです。たまらん。



 - crapface x Zack Bruce – U & Me (from “:):):)”) :: (CC) by – nc – sa 3.0 ::


あと、まだある。日本のtoiret status(!)と組んだFlamebaitからの“T​.​D​.​I​.​M”もすばらしいので是非! Breakbeats/Hip-Hop/Sample-Basedなコラージュで、メカニカルな躍動感がめちゃかっこいい。熱い。



 - Elevation X Toiret Status – ET03 (from “T.D.I.M”)



Børne – Sea Of Turtles EP

 Børne - Sea Of Turtles EP

 – Tracklist –
 01. Sea Of Turtles
 02. Breathe
 03. Pluie



 - 01. Sea Of Turtles


+ + +


 Release Page Download Free! / pay what you wish.

 Release Date : 2015.09.04
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, ChillWave, Electronic, Fantasy, Melodic, SynthWave.


 Related Links :
  ≫ Børne on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp / on Tumblr / on Twitter


+ + + + + +


フランスはパリから現れた新進トラックメイカー、Børne。公称17歳。‘Blue’や‘Falling Into A World’、‘Bulle’といった先発のトラックが印象深くて、ずっと気になっていた作り手さんですが、満を持して(という表現は正しいのかな)、このたび3トラック入りのEPをリリースしてくれました。

意外におとなしくまとめてきた印象です。もっとPopに作ることも出来た気がするんですが、抽象的な部分、Ambientな部分が強くあって、それはもちろん手堅さとはまた違うもので。これまでにSoundCloudで公開されていたトラックと比べてみると、あえて突き抜けることを控えているような気がします。なぜ先述のトラックを今作に入れてこなかったのかは謎なところですが、確かにカラーが違うので世界観を重んじるが故の結果なのかもしれません。

M-1‘Sea Of Turtles’。ダイナミックなリズムと、雄々しさ(そして哀しさ)も漂わせるシンセのレイヤーは、ドラマチックなサウンドスケープを描き出します。Børneのオフィシャルなリリースの一発目、その冒頭を飾るに相応しい、力強さと輝かしさ。M-2の‘Breathe’はエフェクトが面白いですね。ディレイのようなエコーのような、残像的なシンセの断片のリフレイン、そしてブレイクビート(テンポは決して速くない)をを織り交ぜながら、ドリーミィで透明な、それでいてRush感のある景色を見せてくれます。M-3‘Pluie’。水滴のような電子音の転がりとコーラスのようなレイヤー、そしてほとんど4つ打ちで刻まれるシンプルなリズム(後半若干変化する)。ただそれだけで、何とはなしに聴かせてしまう、聴いてしまうのは、作り手の手腕なのか。

3トラックしかないし(いやそれでも嬉しいですよ)、どのトラックも長くはないので、あっという間に終わってしまうのです。おぉ盛り上がってきた、って思ったところでフト終わってしまう。やっぱりもっとトラック入れて欲しかったし、もっとメロディを使って欲しかったってのもありますが、でもこの流行り廃りの激しい界隈で、ある種の枠の外から―たとえばVaporWaveでもなく、Trapでもなく、FutureBassでもなく―、普遍性を孕んだElectronic musicを届けようとしてくれている点は、すごく期待しています。

Teaserには新海誠のアニメーション“言の葉の庭”(“The Garden of Words”)を使用するなどしていて、なるほどファンタジックでエモーショナルな音像は、アニメからの影響も多分にあるのかもしれない、などと思いました。下に貼らせていただきましたので、是非ご覧ください。すごく、よいですよね。


+ + +


Sea of Turtles EP (teaser)




memory cards – save points

 memory cards - save points

 – Tracklist –
 01. homecoming
 02. bell jar
 03. moonrise castle
 04. crescent harbor
 05. crestfallen
 06. spoken softly
 07. river dreams
 08. starlit canals
 09. chalk cabins
 10. life aquatic
 11. needless, captivating
 12. every glance
 13. winter formal
 14. ever quickening
 15. skyloft
 16. haunted
 17. romance dawn
 18. light slip
 19. insubstantial
 20. crystalized
 21. cascading light
 22. continuum
 23. nothing said
 24. iris touch



 - 01. homecoming



 - 11. needless, captivating



 - 15. skyloft


+ + +


 Release Page Download Free! / pay what you wish.

 Release Date : 2015.05.10
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Beats, ChillWave, Cloud Rap, DreamWave, Fantasy, Nostalgia, Trap.


 Related Links :
  ≫ memory cards on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp / on T R A K T R A I N / on Twitter


+ + + + + +


Welcome back!! memory cardsが春先の宣言通り、渾身のダブルアルバム“save points”を引っ提げて帰ってきました。24トラックのフルボリューム。M-1のタイトルが‘homecoming’であることからも、彼自身、今作に帰還の意を込めているのが見てとれます。

もともとmemory cardsは、2013年からコンスタントにリリースを重ねていました。サンプルを主軸にしたファンタジックなChillWave/Cloud Rapを展開、Dreamcast Aways Collectionではジャパニーズ・ソングも取り入れつつ(その後この傾向はみられない)、メロディにあふれたトラックたちをコンパイルし、そのノスタルジャーぶりをさく裂させ、確固たるポジションを築きました。その後“Slot”シリーズを5作までリリースし、Twin Snakes(シングル)、Descent (Halos I​-​IV)と順調にリリースを重ねていたところで、2014年末に突如Facebookに投稿されたメッセージ―“Farewell and thank you for listening.”―が、大きな波紋、とまではいかなかったかもしれませんが、ファンにショックを与えたのは事実です(Ikaros イカロスのリアクションが実にアツい)。

年をまたいで、2015年頭、Facebook上で謎めいた投稿が行われました。アニメ“カウボーイビパップ”の最終回から(といっても私はツマミ見しかしてないので、知ったかぶりである。兄がファンだったのは事実だが)、“バン………!”のシーンを引用したりして。主人公スパイク・スピーゲルの生死が明確に描かれなかったラストシーン、それを引用する意図を考えると、どうしてもmemory cards自身の活動に関連付けてしまう。つまり、終わってしまった、のかどうかハッキリしない、という、ファンならば非常にヤキモキさせられる展開。なんというニクい演出。

実際そのあとmemory cardsは沈黙。さらにはTwitterからも消えてしまい(今は復活している)、どうやら死んだ(終わった)という見方が私の中でされ始めていました。

そこから沈黙することおよそ2カ月・・・3月末にようやくFacebookに写真を投稿という、嬉しいんだか嬉しくないんだかよく分からない動きを見せ始め(でもその画像の1枚には“Believe”という文字が入っていて、胸が熱くなった)、4月に入って、ついに帰還のメッセージを届けてくれたのです。“冬休みだった”みたいな感じですが・・・休む必要があったということでしょう。そして同時にアナウンスされたのが、今作のリリースについて。いや長かった。実際2カ月なんてボーッとしてたらあっという間ですが、インターネットという空間がボーッとするなんてことはない―常に情報が流れまくっているので、ネット上での2カ月の不在、沈黙というのは、正直長すぎたんじゃないかと思ったんですが、今アルバムに先駆けて公開されていたトラックへのリアクションを見ると、待っていたファンは多くいたようです。忘れられてなんていなかった。

前作(といっても2014年末だし、ぜんぜんインターバルは空いていないのだが)―“Descent (Halos I​-​IV)”では、サウンドに変化があったように感じられました。メロディよりもAmbientな包容力が優先されているように感じられて、ビートも主張してこないし、聴き心地は悪くないのですが、インパクトは薄めでした。そういった路線になるかと思っていたんですが、先行で公開された‘moonrise castle’を聴いて、その思いは覆されました。Hip-Hop~Trapを経由した太いビートにMelodicなフレーズが弾けるイントロで早速ノックアウト。遠くで聴こえるさりげないヴォーカルとホーリー(神聖)なレイヤーがファンタジックな空間を作り上げ、まさにmemory cards節なドリーミィ・サウンドがそこに。ときおり挿入される“memory…”というささやきも(ミックステープではこの形は常套手段ですが)、雲間から射す光のようにキラリと光る。何という高らかな帰還のあいさつかと、ファンの私はこっそりニンマリ。

全編にあふれるメロディはおそらくサンプルベースかと思われますが、不思議なほどに統一感があって、作品全体でまるでファンタジックなRPGの世界に身を置いているような、独特のフィーリングがあります。それはChillな感覚でもあり、高揚感でもあり、またノスタルジックでもあり、同時に、畏敬の念にも通じるような神聖な空気でもあります。その中に、ボーイ・ミーツ・ガールやジュブナイルな物語にあるような、ワクワク感、冒険感も内包されていて、memory cardsの真骨頂と呼べる作品になっています。

そんな優良作品である今作には面白い仕掛けが施されていて、各トラックにはそれぞれ姉妹トラックがあるというのですね。単純に使っているネタが同じという意味なのか、あるいはモチーフにしたイメージが共通しているのか、どういう意味合いかはハッキリしませんが、しかし同一ネタに関していえば、聴いていると分かるものもあります。まずは今作で私がもっとも好きな2つのトラック、‘homecoming’‘moonrise castle’。これは使っているメロディが同じです。あとダンジョン感いちじるしい‘crescent harbor’‘haunted’も同じく。そしてストリングスとウィスパリングなヴォーカルを効かせた、作中でもひときわ流麗な‘needless, captivating’‘nothing said’も、やはり同じ素材を使っていると思います。それ以外はちょっと現時点では分かりませんが、そんなことを気にしても気にしなくても、今作を楽しめることには変わりありません。もちろんすべての姉妹トラックを明らかにすべく聴き込むのも、楽しみ方のひとつです。

ということで、満を持しての快作でした。突っ走りすぎてダウンされても困りますが、願わくばこれからもコンスタントなリリースを期待しております。余談ですが、聴いていて思い出したのが、アメリカのPost-Rock/Electronicバンド(ユニット)、Lights Out Asia。浮遊感と硬質感を合わせ持った、Electronicなクラウドのような音像は、どこか今作と相通ずる部分があるように思います(そういう意味では今作にはPost-Rockなフィーリングも感じられる)。“Eyes Like Brontide”(2008)に収録されている‘X-33’とかすごい好きでした(もちろん今でも好き)。

ちなみにジャケットイメージは以前から多用している吉田明彦氏のもの。“ファイナルファンタジーIII”のリメイク版(ニンテンドーDS)に用いられたイメージのようです。実にハマってる。


+ + +


Note :

disc 1 is tracks 1-12
disc 2 is tracks 13-24
each track has an accompanying sister track



ULZZANG PISTOL – 『HARAJUKU SUNDAY』 原宿ドンタク EP

ULZZANG PISTOL - 『HARAJUKU SUNDAY』 原宿ドンタク EP

– Tracklist –
01. 『HARAJUKU SUNDAY 』 原宿ドンタク
02. INTERLUDE (GYMNOPDIE.01)
03. LOVE!DISCO
04. M ε r m Δ i d C Δ f ε (ft. Z U N O)
05. Gee (SAILOR MERCURY REMIX)


– 01. 『HARAJUKU SUNDAY 』 原宿ドンタク

+ + +

Release Page * = pay what you wish.) :
≫ [ SoundCloud ] / [ bandcamp* ] Download Free!

Release Date : 2013
Label : Not On Label

Keywords : Electronic, Fantasy, House, J-Pop, SynthWave, Vocal.

Related Links :
≫ ULZZANG PISTOL on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp

≫ ~SpiritOcean~オーシャンスピリット on Facebook / on SoundCloud

+ + + + + +

おそらくはフィリピンのミュージシャン、ULZZANG PISTOLことZeon Gomez。彼の1st EP“『HARAJUKU SUNDAY』 原宿ドンタク EP”がSoundCloud上でフリーでリリースされています(※現時点でM-1‘『HARAJUKU SUNDAY』 原宿ドンタク’はDL不可。ストリーミング再生のみ)。

作品を聴く前に彼の活動とリリースを整理してみましょう(自分のためにも)。まずHana Acbdとインディー・ポップ・デュオSpirit Oceanを、そしてここで取り上げたこともあるNo RomeことRome Gomezと、Rome and the Catsというバンドも組んでいます。

リリース関連は、日本と縁があるところだと、耳ざとい音楽ファンにはおなじみのFOGPAKシリーズ、これの#8に参加してます。また、mus.hibaがリミックスしたChoongumの‘Waves Of Data’に歌を乗せたり、日本のテクノポップ・デュオMargaret Spoonの作品にゲスト参加したり。他に細かいところを上げていくと、KOSMO KATも参加のD A T A F R U I T S . F Mのコンピレーション“FUNKY FREAKY FREESTYLEY”への曲提供、最近だと彼自身も編纂に関わった“Trying To Find Love In A Parallel Universe”(DL)への参加(@y0kotetsuさんも参加している!)があります。気になったところでは、Meishi Smile“LUST”へのリミックス提供も記憶に新しいla pumpkinと組んだ‘【夜の律動】feat. Yikii’がよいですね。

さて、彼の名義はカタカナ表記で“ウルザング・ピストル”とありますが、何ですコレ?って思いますよね。ウルザング=얼짱のようで、あえてカタカナで書くなら“オルチャン”になるようです。意味は“かわいい”。“かわいいピストル”。お、おう、ということで、彼も“Kawaii”に魅了されたトラックメイカーのひとりのようです。先に書いたSpirit Oceanは、いい感じに脱力したインディー・エレクトロ・ポップなんですが、このソロ・ワークはまたアタックの強い、アグレッシヴなサウンドが魅力的ですね。テクスチャーはともかく、サウンドの色はKOSMO KATっぽく感じる部分もあるし、もっと近いところだと‘LOVE!DISCO’におけるグリッターなシンセの乱舞と歌い上げるヴォーカルは、No Romeと共振するものを感じます。

作中でもっとも輝きを放っているのは、やはりタイトルトラックのM-1。エフェクトをかけたソフトなヴォーカルとダンサブルなリズム、まぶしい電子音と突き抜けるシンセは海岸沿いを吹く風のよう。また、隙間に頻出するサンプリングされた日本語“アイシテル”は絶妙なフックになっているし、日本語と英語の入り乱れた、しかし違和感なく自然に響く歌詞は、原宿で遭遇した少女に恋してしまった、夢のような心地を綴っている。この“意外にウタモノ”っていう部分が、なんとなくtofubeatsっぽく感じたりもします。

M-2ではタイトル通りGymnopédiesをベースにしたMelodicなシンセ・サウンドを聴かせてくれます(全編に挿入されている日本語のセリフは必要なのかどうか分かりませんが。ちょっと浮いちゃってる気がします。でもインタールードだからいいのかなぁ)。M-4もグリッターなシンセとHouseなリズムに日本語サンプルをまぶしながら、享楽的に駆け抜けるラッシュなトラック。ラストは少女時代の名曲‘Gee’をバリバリにエディットしてHouse/SynthWaveな仕上がりに。

他のプロジェクトも聴いてて思うのは、彼のサウンドはPOPということです。ここで触れたほぼすべてにおいてそれが損なわれていないという部分に、括目せざるを得ません。展開の仕方がSoundCloudに偏っているのが誠にもったいない。bandcampも使うべきでしょう、ここは! Spazzkidやbo en、KOSMO KAT、Meishi Smileといったような(※勝手に私が一括りにしている)新世代のポップメイカーとして、もっともっと人気を獲得できると思います。

下にいくつか気になったトラックや動画などを。いやしかしPOPだな。気になった方はドンドン掘り下げてみちゃってください。

追記:2014年9月にめでたくbandcamp開設。現在は全トラックをname your priceで公開中。なのでこれからの人はbandcampへ飛べ!


– HATSUKOI (Ft. Yikii闇童話) : これは上記のコンピレーション“Trying to find…”収録。


– la pumpkin & ulzzang pistol – 【夜の律動】 feat. Yikii

+ + +


ULZZANG!PISTOL- 『かわいい』PINK MV(Kawaii Pink)

 

Radio Libra – Magic Land [phoke97]

 Radio Libra - Magic Land  [phoke97]

 – Tracklist –
 01. Prologue
 02. Blue Land
 03. The Campfire
 04. Yellow Brick Road (Born In A Tropical Swamp)
 05. Emerald City
 06. Royal Palace (Great And Powerful)
 07. We Will Never Get Home, Toto



 - 01. Prologue


+ + +


 Release Page :
  ≫ [ main ] / [ mirror ] / [ bandcamp ] Download Free!

 Release Date : 2013.12.07
 Label : Phonocake

 Keywords : Ambient, Electronica, Fantasy, IDM, Melodic.


 Related Links :
  ≫ Radio Libra on SoundCloud / on bandcamp


+ + + + + +


2003年から運営されているドイツはドレスデンのネットレーベル、Phonocakeより。ロシアの若きプロデューサ、Radio LibraことAnton Shapovalovの作品がフリーでリリースされています。

リリースページによると、今作はロシアの数学者であり小説家でもあるAlexander Volkovが作り上げた物語―“Magic Land”(あるいは“Goodwinia”)シリーズに捧げられているそうです。ちなみにこの“Magic Land”というシリーズ、下敷きはLyman Frank Baumの“OZ”シリーズのようですが、非常に意訳的な傾向が強く、人物名の変更や、設定の変更、章の付け足しなどが行われているとのことです。ロシアでは非常にポピュラーで、世界中で訳されているようですが、“OZ”ファンの間ではどういう受け取られ方なんでしょうね。まあ、それはさておき―

“Magic Land”シリーズを読んでいないことはもちろん、“OZ”シリーズについても記憶があやふやな私は、その内容と関連付けて、今作を聴くことはできません。しかし私のようなリスナーでも、今作はキッチリとその役目を果たし、つまりはファンタジーの世界へと導いてくれる。まずはアルバム自体の作りがそうだ。各トラックの前、あるいは終わりには、本のページをめくる音がさりげなく挿入されていて、リスナーは音楽を聴きながら、しかし本のページをめくるように、今作を味わうことになる。収められているトラックたちも、ほとんど切れ目なく、地続きになっているので、自然とリスナーの脳内には、この作品全体から成るひとつの大きな物語が形成されていき、やがてリスナーはそれに飲み込まれていくことになる。特に新しい手法ではないけれど、私自身はこういうコンセプチュアルな作品が大好きなので、この点もとても好印象です。

肝心の音ですが、これがまた良いんです。M-1で早くも心をつかまれました。柔らかく優しいメロディと、ゆったりしたリズム。ドラマティックな高揚感。Ambientな包容力。もうホント夢見心地で、直球のMelodic IDM。思わず笑みがこぼれてしまいました。今こういう音を鳴らす人はあまりいないと思うんですけれど、それでも敢えて鳴らしてくるってことは、よほどこういう古き良き(といってよいのかな)IDMサウンドが好みなんでしょうね。M-3でSecedeの“Born In A Tropical Swamp”をリミックスしてくる辺り、そしてそれが違和感なくハマっている辺りからも、クラシカルなIDMへの傾倒ぶりがうかがえます。

そんなクラシカルサウンドをリバイブさせているというだけでも、私はうれしく思うんですけれど、彼の面白いところは、やはり若い世代ということもあるんでしょうか、そこはかとなく、時流のサウンドが滲んでいるという点。“Emerald City”の冒頭では、いきなりの太いリズムと、変調させた機械的なヴォーカルをぶつけてくる。ラストの“We Will Never Get Home, Toto”もそうですが、ドリーミィな世界に突然現れるエレクトロ調のエディット感は、どこかChillWaveにも通じているように感じられます。また、終盤の“Royal Palace”にあるジャジーなフィーリングとエディットによる音の歪み、不協などには、VaporWaveの十八番であるChopped & screwedの影響を感じたりもします(穿ち過ぎだとは思いますが)。

そんなように、クラシカルなIDMの中にも新しさを感じさせ、なおかつファンタジーな世界をキッチリと描いてみせ(随所にあるストリングスやハープの音色は強く印象に残る)、さらにはPop志向を披露した今作は、傑作といってよいでしょう。細かいことをいえば、最後は本を閉じる音で終わってほしかったような。いや、でも、物語はまだ続くという意味で、閉じる音を使わなかったのかな。今後の活躍にも期待してます。他の作品もぜひ聴きたい。


+ + +


All tracks and Artwork by Radio Libra ; http://radiolibramusic.bandcamp.com ;
Track 4 is a remix of the track “Born In A Tropical Swamp” by Secede



(CC) by - nc - nd 3.0 de