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タグアーカイブ: Industrial

전자와 혈액 – 육지

 전자와 혈액 - 육지 Cover

 – Tracklist –
 01. 지난 달
 02. 한밤중
 03. 월광
 04. 위성
 05. 오아시스


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 Release Page Deleted!

 Release Date : 2016.11.04
 Label : Crypticorps

 Keywords : Ambient, Dark, Electronic, Industrial, Oriental, VaporWave.


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イギリスのレーベル/コレクティヴと思しきCrypticorps。調べてもちょっと情報が出てこなくて、SoundCloudもFacebookもTwitterもないのだろうか、なかなかの潔さ。誰かの名義だろうかとも考えたが、空隙の作品のリリースなどもあり、その可能性も考えにくい。

作り手の전자와 혈액に関しても同様に情報はない。名義は韓国語で、訳すなら“電子と血液”となるようであり、かつて“electronicsandblood”というアカウントでbandcampが存在したようだが、それも今はない。横のつながりのようなものも、今のところ見受けられない(私のサーチ力のなさというところもあるかもしれないが)。唯一今作に関してはコラボレーションの相手として、Herculesという名のトラックメイカーが表記されていて、彼/彼女のbandcampへとはたどり着ける。一旦はそこで行き止まりに思えたが、Herculusは空隙とコラボレーションした過去もあり(“Tormenta Oscura”)、かつてNinety/총/Fiveという名義を使っていたことが分かる。しかし現在はHerculusというひとつの名義に統一されているようで、そこから先へはやはり進めなかった。

というのはちょっと脇道に入り込み過ぎている気がしなくもありませんが、作品に関して書くと、今作はVaporWave以降に位置づけられるかもしれません。たぶんもともとはそっちの人ではないような気がします。VHS感やモコッとしたウェットな質感は感じられますが、料理でいうなら使われている素材が違うというか、調味料が違うというか、“らしくない”聴き心地なのです。いきなりショッキングなのが、Dark Ambientな空気とOrientalな旋律、重金属なビートが合体した‘한밤중’。VaporWave/Industrialってのはまあ珍しくないと思いますが、このOriental感が新鮮です。ドラムはしかしエコーイックではなくて、とがった輪郭で以て鼓膜をビリビリと刺激するのです。ウェット・アンド・ドライな触感は、まるでサクサクパイとトロ~リシチューが合体したポットパイみたいな(なんか例えが上手くない気もするが許してください)。

その流れを引き継いだ‘월광’は、重厚さは共通しながらも、“らしい”トラックに。Wavyなシンセとエコーイックなドラムの7分間。続くトラック‘위성’ も重々しいのですが、ドラムが徐々にフェイドアウトして、スローモでシネマティックなサウンドスケープへと変化していく個所があって、この辺がHerculesっぽい気もします。Herculusもヘンテコなトラックの作り手でして、Orientalな音色やOrchestral/Classicalな意匠でシネマティックな空間を作りながら、そこにBreakcore/Industrialな破壊的リズムを持ち込んだり、かと思えばLow-bitでファニーなメロディを鳴らしたり、ビデオゲームからのヴォイスサンプルを突っ込んできたり、唐突に無邪気な側面を見せたりする(その混乱具合はサンプルに由来するのかもしれないが)。お勧めするなら現時点での最新作“Hajimashite”(5トラックで5分にも満たない!)か、“Colossus”(deleted)。せっかくなので1曲―



 - Cathedral (from “Hajimashite”)

なんだかHerculusの紹介みたいになってきましたが、話を전자와 혈액に。そう上に書いたように、“전자와 혈액”の和訳は“電子と血液”という言葉になりますが、これが言い得て妙だと思うわけです。一見相容れなさそうなものが、同居しているこの不思議な空間。面白い作品だと思います。VHS感漂うジャケット画像もよい感じ。モノクロ画像に毒々しい赤。不吉な哀愁とでもいうか。ああそれは、ラストのトラック―鳴りはAcousticなんだけど、たぶん極端にスローにしてるんでしょう、ブヨブヨしてて、寝起きの意識みたいなもどかしい気だるさ―にピッタリあてはまる気がする。


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collab with hercules-antaeus.bandcamp.com



Oceania LTD – big ol’ brain

 Oceania LTD - big ol' brain

 – Tracklist –
 01. Troma
 02. I’m in love with Jesse Starr
 03. Carl Gustav Junglist
 04. wax doll
 05. New India
 06. BL
 07. Berlin 1993
 08. Coffee Break
 09. E
 10. Thank you for your call



 - 04. wax doll


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 Release Page Download Free!

 Release Date : 2015.03.18
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Electronic, Industrial, Jazz, Jungle, Lo-Fi, Noise, World music.


 Related Links :
  ≫ Oceania LTD on bandcamp


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ゴーイングマイウェイなスウェーデンの音楽プロデューサ、Oceania LTD。以前に“Tokyo Mall”を紹介した時は、こんなに作品を連投するとは思ってもいませんでした。前から作っていたものを小出しにしている可能性もありますが、“Tokyo Mall”を2014年の11月に公開後、今作以外に4作品(“Silicon Dreams”, “Hotel Anhedonia”, “911 Calls”, “Visor från urskogens avskilda ödeshemman”)が公開されていることは、少なくとも事実です。

おそらく彼/彼女は複数の名義を使い分けていて、今作もその内のひとつにすぎないのでは、というのが私の見立てです。探ってみれば、このOceania LTDが関わっていると思しきプロジェクトは見つけられますが、中でもこのOceania LTDがもっともメロディからは離れているように思います。“Tokyo Mall”こそ、Mallsoftと呼ばれるサウンドを踏襲していましたが、以降はアブストラクトなElectronic musicを貫いています。ちょっと簡単に振り返ってみましょう―

“Silicon Dreams”は長尺でジャンクなIndustrial/Jazz~Improvization風味のサウンドで、引き伸ばされたスローモなエディットはVaporWaveに通じなくもないですが、これをそこに当てはめるのはやや無理があるような・・・。5トラックで1時間以上はある一大絵巻は、音楽的快楽というよりは疲労をもたらしそうな気さえします。“Hotel Anhedonia”は逆にピッチを速めたような部分も感じられますし、エディットしたミニマルなフレーズをリピートさせているだけのラフなトラックが多数詰め込まれています(23トラックという数は、やはりトゥー・マッチなイメージ)。後半からはサンプルなのか演奏しているのかは分かりませんが、Metal musicやJazzといった、後発の作品にも通じる要素を垣間見ることができます。どこか習作のような雰囲気もあり。

“911 Calls”はNoiseな冒頭部から、Doomの気配も感じさせる重量感のあるDark Ambientに転じていく、不安感・緊張感が保たれているシリアスな作品ですが、中盤の2トラックが15分を超えるなどしていて、やはりロングな作りになっています。“Visor från urskogens avskilda ödeshemman”では、ハッキリとHeavy Metal/Doomに舵を切っていて、Lo-Fiでノイズな音作りの中で、ときにエモーショナル、ときにシネマティックな、重金属サウンドがさく裂しています。

というように、作品によって、ちょっとずつ作風が変わっているように感じるのですが、 軸にあるのはAmbient/Noiseという、ふたつの要素ではないかと思います。今作のM-1を聴いて、久しぶりにVaporWaveに通じるサウンドが帰ってきたかと思ったんですが(ブンブンと振動するNoiseの彼方で、PCの効果音のような、何かが瞬いている)、以降を聴いてみると、一周、いや一周半回って、また別のところに着地している気配。ちなみにこのM-1は10分近いんですが、いきなり曲がプログレッシヴに切り替わります―レトロなシンセ/ディスコサウンド~TVからの引用BGM~そして不穏なAmbientへ。M-2はミニマルなリズムにインドのシタールを取り入れたような、World musicなノリ、かと思えば次のM-3は急にJungleなリズムで攻めてくる。この辺りのイージーな調子は“Hotel Anhedonia”に近しい気もします。

はたしてM-4‘wax doll’が、プチプチ(ときにキュルキュル)としたノイズの中で、ブラスが煙のようにたなびき、人声のような奇妙なエフェクトがポツポツと滴る、オブスキュアながら面白い小品なのですが、サスペンスフルな電子音楽‘New India’を通過して、ノイズまみれのオールディーズ‘BL’、そして不気味に振動するNoise/Industrialな‘Berlin 1993’、ファストでミニマルなリズムにルーズなブラスを絡めた‘Coffee Break’と、Noiseに傾きつつも独特のノスタルジアを漂わせるような、ひとつの特徴性を感じさせる展開に。乾いたドラムパターンと玩具的音声、対するスローなベースが、軌道を外れたDrum ‘n’ Bassを思わせる‘E’のあとに続くラスト・トラックがいきなりMelodicな‘Thank you for your call’で、カオスを抜け出たあとの安心感、あるいは爽快感のようなものを感じてしまう始末。なんだかひと昔前のビデオゲーム、そのスタッフロールとかにありそうな曲調でもあり、レトロなフィーリングが喚起されます。

とこのように見てくると、決して革新的とか度を越して複雑怪奇とか、メロディが芳醇とか、リピート必至とか、そんなことはないのですが、何だかよく分からないけど突っ走ってる感じがして、気になってしまう存在なのです。NoiseやJazzの要素を感じさせながらも、一貫性が見えないところからして、やはり格納庫的なニュアンスで、多数のトラックを公開しているのかもしれません。タイトルの“big ol’ brain”というのは、“大きな年老いた脳”という意味合いなのか、それをもって何を示そうとしているのか、それを探るべく今作をリピートしてみるのも、一興、かもしれません。今後もリリースを重ねる可能性は十分にありますが、きっと何だかんだいいながら、私はまた聴いてしまうのでしょう。VaporWave/Mallsoftは戯れだったのか、それとも―



Arca – &&&&&

 Arca - &&&&&

 – Tracklist –
 Arca – Knot
 Arca – Harness
 Arca – Fossil
 Arca – Feminine
 Arca – Anaesthetic
 Arca – Coin
 Arca – Century
 Arca – Mother
 Arca – Hallucinogen
 Arca – Pinch
 Arca – DM True
 Arca – Waste
 Arca – Pure Anna
 Arca – Obelisk





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 Release Page Download Free!

 Release Date : 2013
 Label : Not On Label

 Keywords : Abstruct, Ambient, Beats, Dub, Edit, Electronica, Glitch, Hip-Hop, Industrial, Strange.


 Related Links :
  ≫ www.arca1000000.com
  ≫ Arca on Facebook / on SoundCloud / on Instagram / on YouTube / on Twitter


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You don’t know just I feel…

分かりたいのに分からないという、上手くいかない恋人同士のようなイメージを、このArcaのサウンドには持っています。いや、そもそも“分かる”ってどういうことなんだろう―それはArcaに限らず、音楽に限らず、“分かる”とはどういうことなんだろう? 今作その他のArcaの作品を聴いていると、そんな難しい問いが、頭に渦巻いてくるのです。音楽を分かるためには何が必要なのでしょうか。いや、何か必要なのでしょうか。何かを知らなければ、彼のサウンドを正当に(そんなものあるのか知らないけど)評価することはできないのでしょうか。生い立ちや音楽的ルーツ、影響源、彼につながる先人たちなどを抜きにして、音に対する表現だけを行おうとするとき、“言葉にできない”という表現は、確かに今作によく似合います。

当たり前だけど聴いて感じたことが真実です。真実は主観的なもので、つまり私にとっての真実を書くと、今作は“よく分からんな”という作品になります。私にとって音楽的な気持ちよさというのは、ここにはありませんでした。でも巷ではやたらと話題(賛否を含め)になっていた2013~2014年、という事実があります。ここで初めの言葉に戻りますが、そう、分かりたいのに分からないのです! なんで、どうして、ぜんぜん良さが分からんなあ、オレおかしいのかなあ、なんて思っちゃったりもして、何回も聴くわけですが、音楽ファンにありがちな“それほどよくないのに何回も聴いて何となく良いんじゃないかと思わせようとする”パターンも成功せず、手に入れてからしばらく評価は定まらず、時間だけが過ぎていきました。まあ(特に今作は)Hip-Hop/Beatsの向きが強いし、自分はブラックミュージックに反応できないし、そこんとこが大いに関係しているんだろうな、なんて思って、悔しくも諦めていたんですが、ヴィジュアル面での表現を見て、興味が再燃しましてですね。

この作品を聴いたときに、最初に頭の中でリンクしたのが、不思議と(?)Nine Inch Nails(NIN)だったんです(あんまり関連付けている文章はないかもしれないけど、でもどっかにあるとは思います)。Pop度でいったらぜんぜんNINの方が上だけれど、先人たちの作ってきたサウンドを踏まえた上で、エポックメイキングな、新奇性の高い(そして情報量過多な)サウンドを作り上げてきたという点で相通じる部分がありますし、何より先日の投稿に書いたように、私が初めに聴いて“よく分からんな”と感じたところが、まんま重なるのです。もちろんArcaの紹介には奇才Aphex Twin(Richard D. James)が関連付けられることが多いですし、Arca(Alejandro Ghersi)と映像作家Jesse Kandaのコンビが、RichardとChris Cunninghamの関係を彷彿させるというのも、大いにうなずけます。

話をNINとArcaに戻しますが、まずArcaの‘Thievery’(“Xen”収録)のビデオを見て、グロテスク/ビューティフルなイメージと、その力強さに圧倒され、一瞬で引き込まれました。“TRAUMA Scene 1”などにもある、怖いもの見たさにも似たその吸引力がまた、一時期NINのMVが持っていたものと、非常に似通っているように、感じられたのです。ちょうど”BROKEN”から“The Downward Spiral(TDS)”の頃です。かなり直接的にグロテスクな表現を行っていて、ボンテージで身動き取れない人間の口に便所の汚水が流れ込んだり、マゾヒスティックな快楽を求める男が全身ミンチにされたり、蝿が無数に飛び交う部屋の中で、男がステーキを頬張り、ワインを飲んだりといった内容でした(公式的には世に出なかった“The Broken Movie”は、殺人過程を記録したような形で、ペドフィリアやネクロフィリアの要素も含まれた、性的に倒錯した非常にショッキングな映像になっていて、今でこそ普通に見れてしまいますが、一昔前はかなりレアな代物でした。内臓感覚どころか内臓露出な映像なので、ご覧になる方はその点承知の上でお願いします。ちなみにディレクターはPeter Christopherson)。

そんなように、倒錯した内面性の発露とでもいえる、強い感情性をうかがわせる点で、ArcaとNINのサウンド/ビジュアルに共通項を感じ、またArcaのサウンドにRock的なものを感じたのです。そして視覚的要素の力というのは凄まじいもので、Arca & Jesse Kandaの作品に触れていく中で、私の中にArcaフォーマット、Arca受容体とでもいえるものが誕生したのです。感覚的にいうと、“ああ、こういうふうに聴いてよいんだな”と、(ある意味)“分かった”ということです。

なぜこんなにもArcaの表現がセクシャルなのかというのは、ele-kingさんの記事―“interview with Arca ベネズエラ、性、ゼンとの出会い”を読むと、分かるような気がします。どれほどArcaの表現がシリアスなのかというは分かりませんし、もしかしたら無邪気なものなのかもしれないですが、でもArcaのサウンドイメージをここまで見事に視覚的に表現してみせる、そして決定づけるJesse Kandaの役割というか、2人の関係性というものには、神秘的なものすら感じてしまいます。

音だけでいうと、聴いた中ではこの“&&&&&”が一番好きです。冒頭の‘Knot’にある、振動する空間とかかなりシビれます(私の中ではこの辺のダビーな感じも、NINに通じるんです)。“Xen”収録の‘Bullet Chained’もよいです―ストレンジなビートとレイヴなシンセはレゲエのミュータントのようでもあり。真似しようと思っても誰も真似できないでしょうね。映像も含めると、やはり‘Thievery’が好きで、ずっと見てたいくらいです、この動き。あとは‘Now You Know’の機械的浮遊感とコズミックな美しさも好きです。超高圧縮な人造感覚。

余談ですが、NINとAphex Twinは昔に組んでいるんです。TDSに対するRemix盤“Further Down the Spiral”の中で、‘At the Heart of It All’と‘The Beauty Of Being Numb’の後半(“Section B”と呼ばれる)を、Aphex Twinが担当しています。RemixというよりはNINにインスパイアされた結果作ったような、オリジナリティあふれるトラックで、当時非常に魅了されました。何が言いたいかというと、次にNINのRemix作があれば、是非Arcaに参加してほしいなあということです。在り得なくはないんじゃないか、と思います。

※私の持っていた“Arcaの何がそんなにすごいのか”という問いに、もっとも食い込んできたのはthe sign magazineにある竹内正太郎さんの記事でした。≫ “2014年最大のセンセーション、アルカの「新しさ」を紐解くコンテクストとは何か?その① 「ネット上で生まれた、創造主なき新たな生命体としての音楽」


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Iwant – false sense of familiarity

 Iwant - false sense of familiarity

 – Tracklist –
 01. SECT02
 02. The Code
 03. A run through the forest
 04. Mountainpunk (is not dead)
 05. 80mph
 06. GLADIO作戦


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 Release Page Deleted! ≫ 一部はSoundCloudから入手可能です。

 Release Date : 2013.04.22
 Label : Not On Label [on bandcamp

 Keywords : Breakbeat, Electronic, Industrial, J-Pop, Jazz, Sample-Based, Trance.


 Related Links :
  ≫ Iwant on SoundCloud / on bandcamp

  ≫ ArtCore Kirbies


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ベルギーのトラックメイカー、Iwant。彼の作品“false sense of familiarity”が面白かったので、こうして何やら書き記しています。近作は2013年6月の“sudden paradigm shift”ですが、そちらはアブストラクト、ダークな方向に寄っていて、今作と比べるとPopなテイストが薄れています(パルス・サウンドを感じさせる冒頭の‘the taste of glass’や、Sample-House/Nu-Discoなラストのトラック‘The New Japanese Disco?!’は面白いです)。

作風としては、サンプルをベースにしたマッドでクラッシュなものが主になっています。時流でいえばアニメやビデオゲームからの引用も含めた、VaporWaveのようなWavyなサウンドが期待されますが、彼の場合はその定型を意図的かどうか、見事に破っているところが面白く感じます。今作の1曲目からしてスコア/サウンドトラック風の、ゴシックテイストなストリングスの遊泳から始まっている。やがてElectronicなBreakbeatが入り始め、奇妙なコーラスも重なり、まるで古びた洋館の中を彷徨っているような、Psychedelicな空気が充満します。

Drum’n’Bassも彼の得意とするスタイルかと思いますが、M-2ではRapを織り交ぜた、やはりシアトリカルなスピード感あるトラックを披露。M-1とは趣が異なっていて、この時点ですでに彼の作風が固定的でないことがうかがえます。続くM-3は、アブストラクトなビートにJazz的なブラスを絡め、なおかつIndustrial/Noiseなレイヤーをバックに垂れ流し、クレイジーなテンションをさく裂させています(Industrial/Jazzという部分ではFoetusことJ. G. Thirlwellを思い出したりもしました)。

上に示したArtCore Kirbiesでは、彼はビデオゲームについてのレビューを投稿しているようですが、その辺りとも無関係ではないでしょう、J-Popやアニメへの愛情もうかがわせるのが、次の‘Mountainpunk (is not dead)’。Techno的なフラットなリズムに突如乗っかってくるのが、アニメ“ハイジ”の主題歌‘おしえて’のイントロにながれるヨーデル! かと思ったら、終盤では“ルージュの伝言”をいきなりサンプリング! 圧倒的にご陽気でPopなテンションで駆け抜けます。そして次の‘80mph’が、アコギをフィーチャーした、落ち着いたDrum’n’Bass/Liquid Funkな出だしになっていて、狙っているとしか思えないオトしっぷり。

ラストはシリアスなショートトラックで締めくくられますが、全編に満ちる、このクラッシュなバイブ、テンションはなかなか魅力的です。ひとつ前の作品“intriguing attempts at communication”では、アニメネタを使ったBreakcore/Lolicoreを披露していて、やはりアニメへの愛情・関心をうかがわせますし、2012年作“unusual circadian rhythms”の中では、Hi-Posiのトラックをエディットすることで、ネオアコ/Shibuya-Keiへの関心もうかがわせるなど、音楽的守備範囲の広さが垣間見れます。繰り返しになりますが、その守備範囲の中からピックアップしたマテリアルをぶっ込んで仕上がってくるトラックたちが、(netlabel/netaudio界隈における)同時代性を微妙に回避しているような気がして、すごくクールに感じてしまうのです。面白い!

そんなIwantはSoundCloudでもフリーで音源を公開しているのです。日の目を見ていなさそうなトラックたちを以下にピックアップさせていただきますので、是非ぜひ、ご聴取くださいませ―



 - The Future of Miniskirts : “Persona 4”からED曲‘Never More’をサンプリング。



 - ABOLISH THE AGE OF CONSENT!! : Perfume!


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(CC) by – nc – sa 3.0



Alesaparanoid – Dead People

 Alesaparanoid - Dead People

 – Tracklist –
 01. Enter
 02. Life is not Eternal
 03. Dead People
 04. Dead Scream
 05. Waiting
 06. Die
 07. Last Day
 08. Turn Around
 09. KTA2
 10. Eternal Agony
 11. Hope
 12. Block Rockin Beats
 13. Escape



 - 04. Dead Scream



 - 12. Block Rockin Beats


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 Release Page:
  ≫ [ main ] / [ mirror ] Download Free!

 Release Date : 2012.01.13
 Label : Not On Label [on bandcamp

 Keywords : Digital hardcore, Electronic, Industrial, Rhythmic noise.


 Related Links :
  ≫ Alesaparanoid on Last.fm / on SoundCloud / on bandcamp


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ウクライナの(おそらくは)ソロ・ユニット、Alesaparanoid。彼の作品がbandcampを通じてフリーで配信されています。現時点での最新作は2013年のAparanoiaですが、今作の方がジャケット画像も含め、私の好みにマッチしているので、こちらを取り上げています。

あんまりこういう作品はとりあげてきていないので、何だよ急に?って思われるでしょうか。別にBiSの”STUPiG“がデジタル・ハードコアだったからとか、そういうことではないです。このブログを隅々まで読んでくれている人なんていないと思いますが、それでも何となく私がIndustrialなサウンドが好きだったり、ホラーが好きだったりと、破壊的、退廃的なイメージを好んでいるようだと、気付いている方もいるかもしれません。そう! もともと好きなんですよ(とかいってもAtari Teenage Riotとかまるで聴いていないんですが…。きっと私の中にあるこういった音のルーツは、NINやMinistry、その周辺なんでしょう)。

ということで、この作品のよいところを。まずGothの要素がほとんど嗅ぎ取れない(次作の“Aparanoia”にはちょっとだけその匂いがある)。これはタイミングの問題もあるのでしょうが、Industrialかつシアトリカルな空気に飲み込まれたいときも確かにあります。でも逆にそれが野暮ったく感じられるときもあるんです。つまりその野暮ったさがない。これが一点目。

次に歌が入っていないこと。これが二点目。Gothの話にもつながってきますが、この手のサウンドにNew Wave経由の耽美的な歌声を入れてくるバンドなりアーティストさんなりはままいると思いますし、それが作品の世界をより強固なものにしてる場合も、もちろん多くあります。けれどその逆に、サウンドにアンマッチな歌声が、その世界を損なってしまっている場合もまた、多くあるように、私は感じています。サウンドはすごくカッコいいのに、歌が入ったとたんガックリというのは嫌なものです(上から目線でスイマセン…)。そのガッカリが回避されているというのが、今作のよいところ、二点目。

あとは説明不要というか。硬質にして重厚なギターリフの応酬。ドラムを使わなくてもリズミカルなのはデジタル感がたっぷりだからでしょう。マシーナリーなブレイクが巧みに織り込まれていて、ノイジーな壁と壁の間にある一瞬の空白が、さらなるカタルシスに結びついていきます。空から途方もなくバカでかい鉄の塊が落ちてくるような、それをなす術もなく眺めているような、‘Dead Scream’、Melodicな電子音のフレーズと、バイオレンスなギター、ノイズ、マシンビートを組み合わせた‘KTA2’、その流れを引き継いだ、凶暴な音像の中にメロディをにじませた‘Eternal Agony’、うねるギターリフと呼応するリズムが作中でもっとも肉体性を感じさせる‘Block Rockin Beats’、最後はしっとり締めるかと思いきや、そうは問屋が卸さない‘Escape’、などなど、聴きどころ多し。ゴリゴリのDigital hardcore/Industrialサウンドの中でも、上手に変化をつけてきています。そして後半にいくにつれて盛り上がる構成。

スマートで分かりやすく、きっちりカタルシスを与えてくれる、すばらしい作品だと思います。気に入った方は、是非ほかの作品も聴いてみてください。

The Mechanical Mass – Desintegration of Persistance [PICPACK184]

 The Mechanical Mass - Desintegration of Persistance [PICPACK184]

 – Tracklist –
 01. Follow the space renovation
 02. Illuminate
 03. Millennium
 04. Embraced
 05. The next door is 473
 06. Oblivion



 - 02. Illuminate


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 Release Page :
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  (※ifolderからのダウンロードについてはこちらを参照してください)

 Release Date : 2013.09.29
 Label : PICPACK

 Keywords : Electronic, Hardcore, IDM, Industrial, Metal.


 Related Links :
  ≫ The Mecanical Mass
  ≫ The Mechanical Mass on SoundCloud / on VK (VKontakte) /


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ウクライナのネットレーベル、PICPACKより。The Mechanical Massの作品がフリーでリリースされています。

ハードコアなギターリフをフィーチャーしたElectronic music。ソロ・プロジェクトのようで、リズムはマシーナリー(BreakbeatやGlitch含む)で、またシンセ/キーボードのような電子的な音色も、多く使われています。デス声が聴こえてきそうなHardcoreなサウンドでもありますが、聴いているとやはり異なると感じるのは、そのマシーナリーな部分からでしょうか。使われている豪快なギターにしても、実際に演奏したものなのか、サンプリング基盤によるものなのかは、ハッキリしません(‘Embraced’では、Alternative~Metalな、ドラマチックなフレーズが聴けます)。

タイトルの“Desintegration of Persistance”は、“持続性の自壊”とも訳せるのかもしれませんが、その言葉から立ち上るイメージを裏切らない音像です。ストレートに突き抜ける部分もあれば、編集感覚が顕著な、分断された音も目立ちますし、ひとつの場所からまた違う場所へと、目まぐるしく場面が転換するイメージです。また、唐突なピアノやシンセ/キーボードのような、即興的な鍵盤の音色が繰り出されてくる部分からは、やはりミニマルな印象は希薄。つまり、持続性は意図的に破壊されています。

そういった即興的な部分や、多段的な構成からは、Avant-garde/Progressiveな要素を強く感じますし、ギターを用いたHardcoreなElectronic musicに、そういった要素を重ね、なおかつリスナーを置き去りにしない(音楽的な気持ち良さが残されている)辺りに、このThe Mechanical Massの個性を感じます。中ほどと終わりに、Ambient(Darkな調子ですが)なトラックを配置していて、作品トータルでのバランス、聴き心地にも配慮がされているようで、その点でもPop志向の持ち主であることをうかがわせます。

特にお気に入りは、M-2とM-4です。M-2は冒頭のギター旋風とドラム連打の幕開けもカタルシスですが、そのあとのリズムの大胆な音色変化も聴きどころ(急にマシーナリーな音になったりします)。さらにはそこ重なるメタリックなギターもクールだし、中途から入る電子音ですかね、どこか煌びやかな音色がまた印象的で、タイトルの‘Illuminate’につながる明るさ、眩しさをもったAmbienceが広がって、ちょっぴり抒情的な気持ちにさせられます。M-4はバックの空間的広がりの中で、かなりストレートにギターが展開。終盤まではリフが目立つんですが、ラストでほんのちょっとだけ顔を出すメロディックなギターフレーズが意外性をもっていて、耳が惹きつけられますね。そのまま雪崩れこむM-5がまたカオティックで、ProgressiveでHardcoreなサウンドから、最後はLo bitな音色も交えたBreakbeat/IDMに突っ込んでいくというキレっぷり。

マシーナリーなリズムと豪快なギターという組み合わせは、私の好きな往年のIndustrial(Rock)にも通じますし、偏執的に目まぐるしく変わるトラックの流れも緊張感(そして仄かなサイケデリア)があって良いです。


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(CC) by - nc - nd 3.0



BLACK COCKS – Sweet Illutions [NN_EP019_02_13]

 BLACK COCKS - Sweet Illutions [NN_EP019_02_13]

 – Tracklist –
 01. Sweet Illutions
 02. K.T Dub of Death
 03. Abandoned World Part I
 04. Abandoned World Part II (Life Grow Up)
 05. Cantina



 - 02. K.T Dub of Death


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 Release Date : 2013.02.18
 Label : Nostress Netlabel

 Keywords : Ambient, Electronic, Dub, Industrial, Noise.


 Related Links :
  ≫ BLACK COCKS on Facebook / on SoundCloud / on Twitter


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イタリアのネットレーベル、Nostress Netlabelより。スペインのミュージシャン、BLACK COCKSことMauricio Diaz Varelaの作品がフリーでリリースされています。BLACK COCKSというのは、おそらく猥語としての意味で用いているのでしょう。というのもこの名前は、彼が以前行っていたパンクなプロジェクトの曲名からきているそうだから。

そんなストレートに挑発的なネーミングなのに、作品のタイトルは“Sweet Illutions”であり、ジャケット画像はノスタルジックなイメージだ。そしてサウンド自体、少なくとも表面的には、ソフトだったり、温かかったりといった、やさしいイメージはない。Dark Ambient/Industrialな質感のアブストラクトな音像がまず大きくあって、その中に細かいエフェクトとしてのノイズであったり、あるいはダビーなベースラインであったり、ストレンジなギターサウンドが埋め込まれている。

純粋に音楽的な部分で魅了するというよりは、さまざまなサウンドのユニークな配合で、新奇性の高い風景をみせようとしているような、探究心が感じられる。そのせいで、聴いてすぐ反応できるようなキャッチーな部分というのはまったくないのだけれど、聴き手にその気さえあれば、重ねられた音たちの深くまで潜っていくことができるだろう。

ギターによるAmbient/Droneだろうか、抽象的な空間と、細かく軋んだNoiseがドッキングした、暗い世界の底辺をさまようベースラインが、さらにSadで不穏なイメージを作り上げる“K.T Dub of Death”。クラシックな怪奇映画のサウンドトラックのような出だしから、徐々にIndsutrialなビートがトラックを支配し始める脅迫的な“Abandoned World Part I”。そこにあるのは精神的な瓦解のイメージで、映画“Inception”における虚無の世界を思い出したりもした(彼は日本のSF映画にも影響を受けているそうだ)。続く“Abandoned World Part II (Life Grow Up)”は、ギターだろうか繊維が細かく絡んでいくような奇妙なエフェクトと硬質でマシーナリーなリズムが交錯する中、徐々にサウンドがビルドアップされていく形で、最終的には、本当にかすかながら、人の声やオルゴールのような音色が聴こえてくる。

ラストが今作の中で一番の聴きどころではあるまいか。ストリングスとピアノ、Industrialでストレンジなエフェクト(これがビートになっている)が絡まり合って、実に混沌とした音世界を生み出している。“cantina”というのは、酒場、バー、あるいはワインセラーという意味を持っているようだけれど、なるほどここにはバーというイメージも、なくはない。ただ酒を飲むにはあまりにも重い空間。ピアノも特にメロディを鳴らしているわけではないので、およそ音楽的な快楽というのはないに等しいのだけれど、ここにある悲壮感と崩壊のイメージは、ユニークだ。エクスペリメンタルという言葉を使ってもよいかもしれない。

余談:普段あまり取り上げないタイプの作品なのでピックアップを疑問に感じる方もいるかもしれませんが、光栄にもMauricio Diaz Varela本人から直々にリクエストをいただきまして、それに応える形で投稿させていただきました(って、こういうこと、あまり書かない方がよいよね。ってもう書いちゃったけど。テヘ。何はともあれリクエストありがとうございます。Thank you for the request, Mauricio.)。


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(CC) by – nc – nd 3.0