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タグアーカイブ: Japan

XBF3 – 間奏

 XBF3 - 間奏 Cover

 – Tracklist –
 01. M-1
 02. M-2
 03. M-3
 04. M-4
 05. M-5
 06. M-6
 07. M-7
 08. M-8
 09. M-9



 - 03. M-3


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 Release Date : 2019.06.21
 Label : Not On Label

 Keywords : Broken transmission, Commercial music, Japan.


 Related Links :
  ≫ XBF3 on SoundCloud / on bandcamp


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公称イタリアのトラックメイカーXBF3。一貫してBroken transmissionスタイルの作品をリリースし続けています。bandcampにも多くの作品がありますが、SoundCloudにおいても多くのBroken transmissionトラックが公開されており、その数は現時点でトータル753(と、書いているうちに770に到達)という、なかなかの数。ワントラックは短いですが、それでも圧倒的。

(主に)コマーシャルソング等をサンプリング、編集して作品として提示するというのがBroken transmissionの大枠であると私は解釈しているけれども、このスタイルの金字塔といえばやはりFuji Grid TVの“Prism Genesis”。今この手の作品を出すにあたって影響を受けていないということは、おそらくないでしょう。そのくらいストレートにBroken transmissionであり、スタイルとして“Prism Genesis”のフォロワーを匂わせる作品です。

この作品においてはマテリアルがコマーシャルソングだろうとナレーションだろうと、ニュースキャスターの言葉だろうと、基本的には“まんま使い”であるけれども、だからといってその素材自体が持つメッセージを表現に利用しているのかというと、そんなようにも受けとれない(少なくとも私は)。しかし作品によっては明らかにフィーリングに違いがあり、それがどうしてなのかと考える。

XBF3は、たとえば海外のコマーシャルソングをサンプリングした作品も数多くリリースしていて、“Laborwave Transmission”の中には、“Soviet commercial”のワードがついたトラックもある。こういったものは私にとっては壊れたラジオといった印象で、面白くないことはないけれども、耳に引っ掛かるものではないし、聴いていて自分の中に何がしかの広がりが生まれてくるものではなく、“編集されたマテリアル”という印象が強い。“The hard Japanese T R A N S M I S S I O N broke”や“日本の広告 nihon no kōkoku”においては今作と同様日本のコマーシャルソングが使用されているが、それらマテリアルは比較的最近のもので、なぜかしら私の印象は先と同様に“編集”である。

では今作はどうなのか。音源―マテリアル自体がもつレトロスペクティヴな方向性が醸し出すノスタルジアが私自身の聴取感に影響を及ぼしているのは疑いようがない。この感覚、何かなあ、何に近いかなあ、って自身の内側を探ってみたら、ひとつ出てきました。“ドラえもん 謎の回「タレント」”です。これがドンピシャということではないですが、(以前から何回か書いているフレーズですが)“ノスタルジアが狂気に転じる”ような感覚といいますか。懐かしいような“アレ”がいびつに歪んでいくことで表れる非日常。それがこの“間奏”にはあるのです。音楽作品が持ち得るひとつの重要な機能“どこでもないどこか”への誘いを、この作品はBroken transmissionという特異なスタイルで以て、やってのけてくれるのです。

執拗な反復(ちょっとした狂気)がこのXBF3の特徴かなあとも思いますが、別々のマテリアルをコンバインして(わざとかどうか)聴き手を脱臼させるようなことをやってくるのが面白いですね。M-3のガス料金の支払いについてのナレーションから、“知~らないぞ知らないぞ、先生に怒られる♪”って繋げてくる部分、吹き出しました。他の作品、たとえば“Water Transmission”では、全編に水音をフィーチャーしながらのBroken transmissionであったり、その裏バージョンと思しき“Satan Transmission”ではノイズに寄ってみたり、“KEN IL GUERRIERO”では全編でアニメ“北斗の拳”をサンプリングしていたりと、Broken transmissionの中でもいろいろなスタイルを見せてくれています。そしてSoundCloudで公開中の‘////////////////////Fish project’では頭から最後まで静謐なAmbientを披露するなど(!)、懐の深さをうかがわせます。

これだけBroken transmissionに固執し続ける作り手さんも珍しいと思います(フェティシズムすら感じませんか)。ジャケットイメージも含めてグレイゾーンいやブラックなのは必至なので、いつ消えてしまうか分かりません。欲しい方はお早めに! ちなみにジャケットイメージにあるサンキョーのCMはなぜか前作“///”で使われているようです。謎。

 - ////////////////////Fish project



テレビ体験 – The City Never Ends [TKX-018]

 テレビ体験 - The City Never Ends [TKX-018]

 – Tracklist –
 01. Forever The City
 02. Infinite
 03. The Neon Sleep
 04. An Empty Glass, An Empty Bar
 05. Darkwalker
 06. Her Music Box
 07. Last Chance Casino
 08. Full Moon
 09. An Empty Bottle, An Empty Street
 10. The Aphotic Sleep
 11. The End?
 12. It Never Ends



 - 01. Forever The City 


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 Release Date : 2015.05.29
 Label : 東京為替

 Keywords : Ambient, Japan, Synthesizer, VaporWave.


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DREAM CATALOGUEのミックスなどにその名を見ることができる、VaporWaveメイカー、テレビ体験。彼/彼女の、東京為替からの二作目がこちら“The City Never Ends”。東京為替のカタログ番号一発目を飾った“Y. 2089”においては、Fuji Grid TVをモデルとしたような、CM引用型VaporWaveを主軸に、それをさらにクラッシュさせたような、ノイジーな作風でしたが、今作ではだいぶメロディに寄った印象。

もっとも私が注目したのが、今作にある“和”の音色、旋律です。具体的に何、ということは記述できないのですが、これはありそうでなかったスタイルではないかと思うんですよね。日本のトラディショナルな音楽をVaporWave化するという所業。たとえば実在する日本の雅楽をサンプルにしているとか、具体的な言及はやはりできませんし、もしかしたらサンプリングですらないのかもしれません。しかしテイストやフィーリングという点だけで見ても、意識的にそちらに寄せられているのは明らかです。前作“Y. 2089”におけるM-18‘江戸の街’にはその萌芽がありますし、同レーベル内のリリースだとTHE DARKEST FUTUREの“????????”の一部において、似たようなスタイルが見れますが、それをさらに推し進めたような形です。レーベル関係なくいえば、Koyahの‘Lady Gagaku’という雅楽トラックもありますが、これはどこかVaporWaveとは言い切れないもどかしさがある(出オチではない、と思う)。すなわち今作の新奇性はやはり際立っているのです。

確かにVaporWaveの意匠を身にまといながら、しかし新しい景色を描くことに成功している、ユニークな作品だと思います。“和”一辺倒ではなくて、シンセサイザーによるベートーベンの‘月光’なども収録されており(M-8‘Full Moon’)、このシンセによるクラシックの再生(というと大げさですかね)は、冨田勲によるドビュッシーの‘月の光’などを想起させまして、電子音楽・現代音楽への関心を感じ取ることも出来ます。またM-11‘The End?’では、シンセチックなヴォイスを利用した宗教的気配が漂っており、OPN(Oneohtrix Point Never)の“R Plus Seven”の影響を見ることも出来ますが、その中にさらに“和”を忍ばせている点が面白い。さらにいえばオーソドックスなVaporWaveトラック‘Last Chance Casino’もあったりして、しっかりVaporWaveへの愛も感じ取れる。

前作とは打って変わってAmbientな空気が充満しているのですが、ハッキリとメロディが存在している点も、私にはポイント高いです。そうだ、ラストはまさかのディスコテックで! 雷鳴の音からはじまってビコビコ・デケデケしたシンセとストレートなリズムでリスナーを呆気にとりつつ、駆け抜けていく。何というか、人を食ったような展開。‘The End?’からの‘It Never Ends’なので、終わらせねーよという気概がここに込められているのでしょうか。どうなんでしょうか。

東京為替は、ミステリアスですが、面白く、そして信用できる、よいレーベルさんだと思います。最近よいなあと思うVaporWave作品はだいたいここから。



C A S I N O ☆★☆★☆ M A S T E R – ☆★☆ ボーナススピン幸運 !!! [TKX-008]

 C A S I N O ☆★☆★☆ M A S T E R - ☆★☆ ボーナススピン幸運 !!! [TKX-008]

 – Tracklist –
 01. ☆★☆ ようこそ!
 02. ❤ ❤ S E X Y S L O T S ❤ ❤
 03. あなたが勝つ! ♤ ♧ ♡ ♢
 04. ♚ スロットの王 ♚
 05. あなたが勝つ!
 06. コインを収集
 07. CASINO — LOUNGE
 08. パチンコ パチンコ パチンコ パチンコ
 09. ★ ☆ ✮ ★ ☆ ✮ 強烈なギャンブルの楽しみ!
 10. 賭 賭 賭 賭 賭 賭 賭 賭
 11. 勝利 WIN! JACKPOT ♕♕♕
 12. !!!!PACHINKOOOO !!!!
 13. ➊ ➋ ➌ ➍ ➎ GOOD WIN! ➏ ➐ ➑ ➒ ➓
 14. ★W★I★N★N★E★R★
 15. ☯☯☯ ALWAYS WINNING ☯☯☯
 16. ROLL???
 17. 感謝の意再生するための
 18. ¥¥¥ ENTER CREDIT TO CONTINUE ¥¥¥



 - 15. ☯☯☯ ALWAYS WINNING ☯☯☯


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 Release Date : 2014.12.28
 Label : 東京為替

 Keywords : Concrete music, Japan, PACHINKO, SLOT, Sound Art.


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2014年秋ごろからリリースを開始している、東京基盤という触れ込みのレーベル、その名も東京為替(Tokyo Exchange)より。C A S I N O ☆★☆★☆ M A S T E Rの作品がリリースされています。ちなみにこのジャケットイメージ、CDを模しているようで、帯も見てとれますよね(ダウンロードすると帯なしの画像もついてくる!)。しかし“ボーナススピン幸運”はまだしも、“野生の冗談”てなんだろうなあ。

この意匠を見て、またレーベルからの他のリリースも見て、VaporWaveだと思われる方は多いでしょう。実際私もそうでした。でも違う! 違いますコレは! 何だこれは! と鼻息荒くなってしまった、というかズッコけてしまったというのが実際のところなのですが、あえてカテゴリに押し込むなら、Concrete musicやSound Artが適当かもしれません。実際ホール(店舗)で録音したものなのか、どこか(たとえばTV番組)から引っ張ってきたものなのか、詳細は分かりませんが、とにかくパチンコ/スロットからの引用の連打連打なのです。出だしからいきなり“マリンモード!”、“沖縄モード!”の声がお出迎えです(これはその後も何度も引用される)。スロットのボタンを押すカチカチという音や、ドラムの回転音、それが止まるときの小さな音、店内アナウンス、ガヤガヤ・ジャラジャラしたホール内の音、などなどが、わずか13分ほどの再生時間に、ひたすらに押し込められています。

音楽的な部分はほぼ皆無といってもよいでしょう(中盤のM-7~8あたりが最も音楽的)。ときたま音楽のようなもの(って言い方もひどいですが)が聴こえてきますが、これがホールに流れている音楽なのか、それとも敢えてどこかから引用してきているのかが分かりません。私がパチンコ/スロットに親しんでいれば、あるいは出所が分かるものもあるかもしれませんが、いかんせん片手の指で足りるくらいしかやったことがないので、とてもではありませんが、ピンとくるものではありません。

何が意図されているのかすら分からないミステリアスな作品ですが、当初はパチンコ/スロットの催眠的・眩惑的な部分が少なからず再現されているのかな、と思いました。もちろん今作は音のみで構成されていますから、パチンコ/スロットにとって非常に重要な視覚的要素は含まれていません。ですが音のみでもあの狂騒―店舗の自動ドアが開いた瞬間に聴こえてくる、あの音の洪水ときたら―を感じさせようとしているのが、この作品なのかなと思ったんです。その一面も確かにあります。もっと極端にウォール・オブ・ノイズにしてしまえば、パチンコゲイズ、スロットゲイズという新ジャンル―というか唯一無二の不滅の業績、つまり金字塔を打ち立てることもできたかもしれません。が、しかし、そうなってはいません。それに今作、意外に音の隙間が多いんですね。ホールって実際は絶え間なく音楽が流れていると思うんですが、今作では音楽がまったく聴こえない時間というのが結構あります。スロットの音しか聞こえない瞬間とかあったりして、非常にシュールで、狂騒とは切り離されたイメージがあります。

ではここで感じられるのが何なのかという話ですが、狂騒の中の孤独です。前述の通り私はパチンコ/スロットに縁がありませんもので、酒の席をたとえにしましょう。まあステレオタイプな表現ですが、ある程度の人間が集まった酒の席ってウルサいでしょう。大勢の人間が複数のグループに分かれて、それぞれに話をし、酒の勢いもあって声はでかく、リアクションもデカくなり、周りの声もデカいから、自分たちの声も自然とデカくなり。そんな中でグループからあぶれた人間! 黙々と酒を飲み、黙々と目前の料理をたいらげる、機械的作業に終始。狂騒の中の孤独。という図式がパチンコ/スロットに当てはまるか分かりませんが、たぶんちょっと違うでしょう(そう思うなら何で書いたんだろう・・・)。

ということで改めて考えると、光と音の洪水によって理性が麻痺したところに、リーチのワクワク感がアドレナリンを注ぎ込み、恍惚とした表情で機械的にパチンコ/スロットを打ち続ける、という図式、光景。そこにある、一種の空しさが今作には封じ込められているように思います。上に書いた、音楽が途切れる瞬間に、ハッと一瞬、目が覚めるような感覚に襲われるのです―理性がフワリと戻ってくるような。だから静寂の中でスロットをポチポチと打ち続けるようなトラック構成に、シュールさを感じたのでしょう。そしてまた熱病に侵されたように、理性は眠りにつくのです。

祭りの後の空しさ、とはまたちょっと違うんですが、ギャンブルの狂騒と空しさを、聴覚経由で(かなり直接的に)感じさせてくれる怪作です。同じスタイルで次があるとは思えませんが、もしあるなら、ぜひウォール・オブ・ノイズにしてほしいですね。パチンコゲイズ。



小川純 – ロマンティックな予定 死 その他 [FLLR-0001]

 小川純 - ロマンティックな予定 死 その他 [FLLR-0001]

 – Tracklist –
 01. 新しい踊り
 02. 親密さ
 03. wonderland
 04. シーン
 05. 感覚の世界
 06. 朝陽が来るまで
 07. 夜の子供たち
 08. HOLIDAY
 09. かがやきの闇
 10. 軽蔑
 11. ナルシズムの方
 12. WEATHER
 13. 別人
 14. 平熱
 15. 私



 - 01. 新しい踊り



 - 12. WEATHER


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 Release Date : 2014.03.08
 Label : filler

 Keywords : Alternative, Japan, Pop, Rock, Singer-Songwriter.


 Related Links :
  ≫ 小川純 on Twitter


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ホシナトオルが立ち上げた(というよりでっち上げた)レーベル、fillerより。日本のシンガーソングライター、小川純のアルバムが完全フリーでリリースされています。ホシナさん、もともとこのアルバムを出すために見切り発車でレーベルを立ち上げてしまったようで、先の動きについては見通しは立っていない様子です。

私がこの作品を知ったのは、Hi-Hi-Whoopeeさんの記事だし、もっと突っ込んでいえば、そこで@tacker_domingoさんが“声が五十嵐隆っぽくて好きだったりする”(引用スイマセン)とか書いたりしちゃっていたから、syrup16gファンの私としては聴かないわけにはいかなくなったのです。

小川さん本人としては、そんな誰かに似てるとか言われても不本意かもしれないし、ぜんぜん関係ないし興味ないねって感じかもしれないんですが、でも、そんな邪(よこしま)な衝動で本作に耳を傾けた私でも、この作品はよいですよ!と胸を張って言えます。言わせてください。

アコギとベースとリズム、そこに曲によってさまざまな楽器―パーカッションやマリンバ?やシンセ、ブラスなど―を取り入れていますが、作りはシンプルで、アコースティックな響きの中で、歌・メロディがすごく映えています。はっぴいえんどやサニーデイ・サービスの流れを感じる瞬間もありますし、そこから派生的にシティポップの空気を感じる瞬間もあるんですが、完全にそう感じさせないのは、クールでニヒルな都市感よりも、心の中の悩みや迷い、願いといった、強い感情性(のようなもの)が見え隠れするからでしょうか。

話が少しそれますが、私は、はっぴいえんどもサニーデイ・サービスも特別ファンというわけではありません。前者は学生時代に友人宅で酒をあおりながら聴いていたところ、何だかサイケデリックが過ぎて聴き方がよく分からなくなってしまい、遠ざけてしまったのが、イケなかったような気がします。後者も曲には心弾めど、歌詞までは…という部分が大きかったように思います。でも、じゃあなんでこの作品は好きなんだろうなあと考えるんですが、どこか悲しいんですよ、朗らかではないというか。曲にもよるんですけれど、ときおりきらめく悲しみの光が、私を惹きつけるのです。

バイト上がりに彼女の家を目指すという、もっとも日常描写的なスタイルの歌詞をもつ‘シーン’でさえ、なぜこんなに悲しみが滲んでいるでしょうか。別の言い方をすれば、物思いチック。HOLIDAYの歌詞を見ましょう―“この永い休日もいつか 終わるだろうか ほんとは単純なことを こじらせてしまったみたいさ”。心に負った傷が大きくて、何もできずにいる時間を、永い休日にたとえた歌(と勝手に思っています)。 さらに別の言い方をすれば、死のイメージが漂っているというか(作品のタイトルにも“死”が使われている)。私のいっとう好きな‘WHEATHER’の歌詞-‘アルペジオ奏でたら 天国へ連れてって ここで待っていたのは 間違えてしまったみたい’。この曲は本当に好きで、サビで一気に天上に向けて願いが伸びていくような、そんなイメージがあって、聴くたびにその美しさに恍惚とします。悲しいけれど、とても美しい何か。

考えてみれば、作品のタイトルにすべて集約されているのかもしれません。“ロマンティックな予定 死 その他”。それらが、ここには優劣なく、並列に、並んでいるのかも、しれません。私の心がなんとなく“死”の部分にリアクションしただけで、“ロマンティックな予定”や、“その他”の部分に魅せられる方もいるのでしょう。ラストの‘私’で、軽やかに、颯爽と、風のように吹き抜ける、未来への視点。それは希望というべきか。このトラックのおかげで、作品を聴き終わった後の心持ちは、澄んだ空を眺めているような、清々しいものになります。“はじめまして神様 私 といいます たいして信じてないくせに お願いばかりしてました 愛しています そんな言葉を 言えるその日まで 大事に持っています”って、ここ、すごい好きです。

さらりと耳から聴くのもよいんですが、歌詞をじっくり読みながら聴くと、また違う味わいがあって、そこも魅力的。耳で楽しんだ後は、是非目と耳で。15トラックフルボリュームのこんな作品が完全フリーって、聴かない手はないですよ。本当ありがとうございます。あと、はじめに書いた声の部分ですが、母音の響き(というか、消え方というか)が確かに、五十嵐さんに似ている。はじめ聴いたとき、ちょっとドキリとしました。


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All songs written, arranged, performed, recorded & mixed by Jun Ogawa


xzyzero – paradise

 xzyzero -  paradise

 – Tracklist –
 01. radio intro
 02. かわいいkawaiixxx
 03. falling in love (feat.trippy spice)
 04. gold
 05. six여섯
 06. u+i
 07. ps2 interlude
 08. pastel blogs
 09. vaporwave.org
 10. missing you #dragedit


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 Release Date : 2014.01.03
 Label : Not On Label [on bandcamp

 Keywords : ChillWave, Electronic, Japan, LoveWave, SynthWave, Pop.


 Related Links :
  ≫ xzyzero on SoundCloud / on bandcamp / on Tumblr


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アメリカのトラックメイカー、xzyzeroの作品です。これまでにもいくつか作品をリリースしていますが、それらはオリジナルとブートレグなリミックスが混在していた傾向。今作は過去作品からの再録も含まれていますが、比較的オリジナルに傾いているのが特徴でしょうか。gayやlgbtというタグがつけられていますが、そこから今作を掘り下げることが私にはできないので、ここで触れるにとどめておきます。

過去作では、ビデオゲームから抜粋したようなドット画や、日本のアニメ調の絵柄をジャケットイメージに利用していますが、いずれもどこか暗さを秘めている。それらが醸すのは、ほのぐらいノスタルジア。収められているサウンド自体はすごくシンプルなんだけれど、その裏にある(ように感じられる)、底の見えない、形のわからない、不明瞭な闇が私を惹きつけます(この感触が、いわゆるVaporWaveと似ている。音楽的にはそのマナーは見受けられないけれど)。

ちょっと話が逸れます。今はSoundCloudやbandcamp(他にもあるだろうけれど)を利用すれば、ある傾向性をもって音楽を探索、聴くことが容易に可能になります。現時点で、私が聴いている音楽、その傾向性のひとつに、このxzyzeroのような音楽があります。しかし私はそれらを“このような音楽”としかいうことができなくて、どうにか的確に言い得る頭がほしいなあと思いながら、ぼんやり時間を過ごしました。VaporWaveでもないし、SynthWaveともどこか違う。大枠ではPost-Internetになるのかもしれないけれど、もう一歩踏み込みたい。

ときおりReggae/Rapや、あるいはミニマルでダンサブルなサウンドをねじこんでくるけれど、根本にあるのはミニマルなシンセサウンドに思える。イージーなメロディをもったそれらは、BGMチックであり、かつ電子的な響きをもっていることを考えると、VGMチックでもある。ということで、辿り辿れば、初期のシンセサイザー・ミュージックや、New Waveが源流にあるのかもしれないけれど、もっと直接的には、VGMやアニメのBGMといった、副次的な音楽からの影響が強いのかもしれない。そういう音楽から影響を受けているから、サウンド自体が大きな柱のように存在するというよりは、風景・シーンによりそうような在り方になるし、尺も自然と短いものになるのではないか。

と、ここまで考えて、でも結局そういう音楽なんて呼べばいいんだろうって、また悩んだんですが、もうここではLoveWaveに決めました(いいのかそれで…)。xzyzeroもタグに使ってるし。どこか可愛らしさがあって、懐かしさもあって、シンセを使ったwavyな部分もあって、とくればLoveとWaveでいいじゃないって、なぜか私の頭の中では筋がとおりました(とおったんです。ええ)。

ぜんぜん今作の音について触れておりませんが、早い話、‘pastel blogs’にときめいたんです。このミニマルでPOPなシンセサウンドはたまりませんね。直前には‘ps2 interlude’なんて、Post-Internet/VaporWaveなサウンドもあるし(ただの起動音の引用ですが、しかしこの効果音は人気ですね)。

この奇妙な安心感は何なのだろう。すべての人(あるいはすべての世代)に同じように響くかは分からないけれど、少なくとも私にとってノスタルジックなのは、やはりVGMとリンクする部分が大きいからではあるまいか。そんな気がします。しかつめらしい顔をして聴く作品ではなく、このイージーに醸されるノスタルジアは、非常に魅力的です。元気があるときも、疲れたときも、私の耳にやさしく響いてくれる。あ、JentleWaveでもいいかもなあ(と、だんだん適当になってきたからやめます!)。