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タグアーカイブ: Melodic

cool places – coral beach resort [TWFM 009]

 cool places - coral beach resort [TWFM 009] Cover

 – Tracklist –
 01. I: finally, you’ve arrived
 02. II: resort shoppe
 03. III: fitness center
 04. IV: karaoke bar
 05. V: outdoor pool & spa
 06. VI: jacuzzi
 07. VII: entertainment zone
 08. VIII: beach-view brews
 09. IX: water park
 10. X: grand strand getaway



 - 05. V: outdoor pool & spa


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 Release Date : 2019.08.21
 Label : tapewurm.fm

 Keywords : Electronic, Melodic, Midi, Utopian Vurtual, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ Crystal Data Enterprises


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サナダムシ!ですよ。そういえば詳しく知らないよねってことでWiki読んでたら体内がムズムズしてきたので、熱心に読むのはやめました。ここに長ったらしく引用文でも貼ろうかなと思ったんだけど、やめておきます。確認したい人はリンクからどーぞ。長いと10m以上になるものもあるんだなあ…ふーん…。そういえばサナダせんせいってキャラクターもあったけど、よくよく考えたら、子供向けのバラエティ番組でサナダムシをキャラクター化ってのも、過激…。

じゃあなくて、いやそうでもないんだけど、このレーベルの名前、tapewurm.fmってどういうニュアンスで使ってるのか分からなかったんですが、bandcampのヘッダーにデカデカと“サナダムシ”とございますので、tapewormのモジりということでよろしいんでしょうか。ちょっと話逸れますけど、Nine Inch Nails(NIN)ファンの私としてはそのtapewormという響きで思い出すのは、Trent Reznorがその昔立ち上げかけたサイド・プロジェクトにまんまTapewormというものがあってですね、これはTrentはもちろん、NINのライヴメンバーのほか、Tool, A Perfect CircleのMaynard James Keenanや 、HelmetのPage Hamilton、PanteraのPhil Anselmo、プロデューサのAlan Moulder等々が参加した、スーパーグループ、スペシャルなプロジェクトで、Trentもたびたびインタビューで言及しておったのですが、結局リリースはないままに、2004年にあえなくプロジェクト終了宣言…というものがあって、それをボンヤリ思い出したのですが、今レーベルのリリースを見ている中で一つ、ひときわ気になったのが、なんとNIN、Trent Reznorがジャケットイメージに使われている作品がある!(いやここで取り上げている作品ではないのですが。アハハ。ちなみにそのタイトル“F R A G I L I T Y 3​.​0”はNINが2000年に行ったライヴツアー“Fragility 2.0”にあやかっている)。これはTrentのインタビューを使った奇妙なSpoken Word作品で、関わっているreznorwaveは一貫してNINとVaporWaveをコンバインしたトラックを作り続けているという…そんな作品をリリースしているレーベルの名前がtapewurm.fmって何かの縁ですよね、私にとって。膨大な作品があふれているネットの中から何を聴くか、そのきっかけとなるには十分すぎるこの縁をたどって行き当たったのが、さあこの作品。ようやく。

Midiの体裁を生かした、いってみればイージー・リスニングな作品だとは思いますが、方向性はどうあれ、この現実から乖離したイメージというのはやはりVaporWaveと共振するものがあります。サンプル―ベースなのか、原曲があるのか等々は判然としませんが、チープさゆえに醸されるレトロ感、シンセサイズ感の強い音色たちが与える不思議な漂白感。その中で作り上げられる仮想ユートピア(Utopian Vurtual)というのが、この作品の肝になるかと思います。しかしながらこれはこのレーベルからのリリース、この文脈で聴いているからこその聴取感であって、また違ったとらえ方をすれば、ぜんぜんVaporWaveとは切り離して聴くこともできると思います。素直にリラクシンな空間があるわけですし、それを享受することはおかしいことではない。当たり前だけど。

そういうことでいうと、VaporWaveと共振するようなMidi風作品で異彩を放っていたものは、私の狭い聴取範囲でいうと、ここでいくつか紹介したPHAṅTom ᴀᴄᴄᴇSS hazeからの作品ですとか、Amun Dragoonの後期の作品とかです。私別にピエロ恐怖症とかではないんですが、なんていうんでしょうか、お面とかもそうだけど、貼りついた表情の裏にある正体が不明であるがゆえの不気味さっていうかね、あとはコーティングの無菌感、無機質感への憧れ―あくまで憧れだから、決してそこにはたどり着けないという諦念の裏返し―とかね、そういう不気味さとか空しさとかがあちらにはあって、こちらにはない、ような気がする。別に悪いとかではなくて、違いを感じたということです。

だから今作はストレートに、真っ当に、ここにあるcoral beach resortをね、楽しむべき作品なんじゃないかなって、そう思います。


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Č∂є hλs tɘλmɘd up with thɘir pλrtnɘrs “cool places”. A trλvɘl λgɘncy f๏cusɘd ๏n sh๏wing thɘ pɘ๏plɘ ๏f ɘλrth λmλzing plλcɘs t๏ disc๏vɘr whilɘ thɘy’rɘ λlivɘ. Wɘlc๏mɘ t๏ thɘ Coral Beach resort, t๏night is disc๏ night λt thɘ kλrλ๏kɘ bλr.


Produced by: cool places
crystaldataenterprises.bandcamp.com

Radiophile – Serrated Love[IDMF057]

 Radiophile - Serrated Love[IDMF057] Cover

 – Tracklist –
 01. Serrated Love
 02. Xanax
 03. Brutalism
 04. 359°



 - 01. Serrated Love


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 Release Date : 2019.06.29
 Label : IDMF Netlabel

 Keywords : Ambient, Electronica, IDM, Melodic, Psychedelic.


 Related Links :
  ≫ Radiophile on SoundCloud


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IDM Forumsのレーベル面であるIDMforums Netlabel。気づけば10年選手ですね! コンスタントなリリースという点では中だるみもあったような気もしますが、ネットレーベルとして10年というのは長寿といっても良いと思います。IG88とはかこのレーベル経由で知ったように記憶しています。

Radiophileはアイルランドのトラックメイカー。2018年に同じレーベルからObscurityをリリースしています。あまりウェブ上での動きは活発ではないようで、ほとんど足跡は残っていませんが、その隠密な雰囲気も好きですよ私は。トラックだけ投げつけてササッと身を隠す感じね。なのでどういったバックボーンがあるのかとか、詳しいことは分からないのですが、ひとつ言えることは過去作よりこの最新作が良いということです。

何が良いってメロディが強くなってる点。MelodicなIDM/Electronica好きとしては、ここは推しポイントです。M-1‘Serrated’やM-2‘LoveXanax’のシンセな音色とゆるやかな流れは荘厳な気配もありつつ、ちょっと感傷的な旋律はビューティフルで、なんだか御大mosaikを彷彿させるじゃあありませんか。鼓膜と心を震わせる。でもコテコテにメロディに寄っているわけではなくて、どのトラックでも絶対一回道を外れるというか、あえてミニマルな展開を拒否しているような節がある。メロディ一発で突き進んでもいいのになあと思ったりもするんですが、一回途中で脳みそに電極ブッサして違う反応を引き起こそうとしているような、甘美な夢の中、視界の端に薄暗い一角をあえて作り出そうとしているような、挑戦的な姿勢が感じられます。そういう意味でサイケデリックなテイストもありますね。最終的に元の道、元の視界に戻すのかと思いきや、そうでもなくて、M-4‘359°’などはノイジーな響きでフェイドアウトしていく(360°に1°足りないってどういうニュアンスなんだろう。完成されていない何かというイメージ)。その辺りがユニークな音作りに思います。

メロディ全開にしたトラックも聴いてみたい、そんな気になるトラックメイカーさんです。


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 Credit :

Composed by: Radiophile
Cover art by: nostromer (ft. stills from Radiophile)

(CC) by – nc – sa 3.0



Samsara inc. – Simple Stories[CUNTROLL115]

Samsara inc. - Simple Stories[CUNTROLL115] Cover

– Tracklist –
 01. Forgetting
 02. Owls
 03. Forgotten amusement park
 04. Waterfalls
 05. Spring
 06. Hero(in)side
 07. Millenium
 08. Musicbox

 - 02. Owls


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Release Date :2018.03.01
Label : Cuntroll

Keywords : Ambient, ChillOut, Downtempo, Electronica, Guitar, Melodic.

Related Links :
≫ Samsara inc. on SoundCloud / on VK


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ロシアンネットレーベル、Cuntrollより。同じくロシアントラックメーカーのSamsara Inc.(Rodion Kudryavtsev)の作品です。以前にも同レーベルからの“Possible Worlds”を紹介しています。

私の偏見かもしれませんが(おそらくそうでしょう)、ロシアのミュージックって、音の組み合わせ方とか音のバランスとか、要は音作りが独特というか、極端であるイメージなんですが、今回のSamsara inc.のサウンドは統制が取れている。いや独特な部分もそれはもちろん感じられるのだけれど(どっちだよ)、私の中ではバランスが取れているということです。

小気味よいリズムにピアノやシンセの澄んだ音色を織り交ぜてAmbientiveでありながらしっかり動きのある空間を作るんですが、このSamsara inc. の特徴といえば何といってもギターでしょう。しかしながら流れる景色の中で感情性を醸し出すギターの音色は今回そんなに自己主張してこなくて、全編通してみると総じてサポートに回っている印象です。だからかどうか、曲調もちょっとメロウによっている気がします。そのせいでしょう、前作に書いたような、インディギターバンドみたいなイメージはちょっと薄れました(ダイナミックな音像はM-5, 7くらいですか)。細かいGlitchだとか、トライバル、パーカッシヴなリズムだとか、演出、エフェクトにこだわりが向けられている気もします。

M-6の‘Hero(in)side’だけ、夜の底で思考がトグロ巻いているみたいな粘着性がありますが、あとはもう総じてMelodicですね。‘Musicbox’のプィーンとした電子音とかちょっとVGMっぽい響きで、ノスタルジックで堪りませんねえ、そこからのラストへ向けて疾走するBreakbeatも哀愁を加速させる。M-2‘Owls’の静かな風景もよろしい。ありきたりな風景かもしれないけれどそれが大事っていうか。まあいってしまえばEasy Listening的な部分もあるんだけれど、見慣れた景色ってやっぱり安心するじゃないですか。海外旅行の刺激もよいけれど、やっぱり帰ってくるのは我が家っていうか。安心があるんですよ。そんなM-2から続くM-3‘Forgotten amusement park’は、キラキラした音色をバックにギターとピアノが風景を流れていく哀愁の透明感トラック。電子的なリズムの上でギターが血を通わせるM-4‘Waterfalls’もクールです。

シンプルなストーリでもそこには確かに物語があって、リスナーはそれによって何がしかの感情を引き起こされるのです。そしてその感情に嘘偽りはない。作品に付されたメッセージはきっとそんなことを言っているのだと思います。Samsara inc.は他のレーベルからも作品をリリースしていますので、気に入った方はディスコグラフィーをチェックしてみてくださいね(Discogsとか)。


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(CC)by – nc – nd 3.0



Light Pillar – Phantasmagoria [#389]

 Light Pillar - Phantasmagoria [#389] Cover

 – Tracklist –
 01. Shadowplay
 02. Cell Transplant
 03. Fallopia in the Sky
 04. Evolutionary Eclipse
 05. Evening Stars
 06. Phantasmagoria
 07. Lunar Storm
 08. If you were sound
 09. The Mondrian Cube (as a bonus on Bandcamp)



 - 05. Evening Stars


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 Release Date : 2017.09.01
 Label : Kahvi Collective

 Keywords : Ambient, Electronica, IDM, Melodic.


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秋の訪れとともに老舗ネットレーベルKahvi Collectiveより届けられたのは、オランダからの新星Light Pillarの手になる“Phantasmagoria”。

アーティストの意志を尊重するなら、1トラック目から聴くべきなんでしょうか。どうなんでしょうか。でも聴いてほしいトラックってのがあると思うし(たぶん)、今作の場合、bandcampのプレイヤーは2トラック目から再生されるのは、そういう意味だと思います。でもやっぱり古い体質―CD世代というべきか―の私としては、いややっぱり頭から聴くべきだよね、なんつって頭の‘Shadowplay’から再生するのですが、まあこれだけ11分という長尺なわけで、その長さは作中では異質。と思っていると中身も異質で、これだけアブストラクトなAmbientトラックなんですね。メロディというかフレーズはあるけれど、どちらかというと空間が優先されているように思います。

なるほどなるほど悪くはないけどちょっとピリッとしないかなあ、なんてボンヤリ聴いていたら、あにはからんや、M-2から広がるのは極上のMelodic IDM/Electronicaだった!という次第。Popにすら踏み込みかけたメロディと、ときに生き生きとした表情を見せるリズムがAmbientな空間にフィックスされて作られる、至高のひととき。個人的にはアーリーなElectronicaのイメージがあって、まっさきに頭に浮かんだのはスウェーデンのMosaik。M-2にあったりするちょっとAncientというか、雅にも通じる趣が、特にそう強く感じさせます。

メロディはミニマルなんだけどベースやドラムといったリズム、あるいはバックグランドの流れで変化、メリハリをつけている部分も散見されて、これがまたリスナーを飽きさせないわけです。リズムがメロディ化しているのってIDMのひとつの特徴にも思うんですが、今作の場合特にM-4‘Evolutionary Eclipse’とかどうですか。いいですよね。あとはM-5‘Evening Stars’にそこはかとなく感じられるChipmusic的なドライブ感、追憶感(記憶くすぐり感ともいう)もすばらしい。かと思えばM-6‘Phantasmagoria’では流麗なストリングスと浮遊感あるElectronicaを織り交ぜて、ドラマチックでコズミックな空間を披露する。

M-6でGlitchを効かせたちょっぴり硬質なサウンドを聴かせた後が、あにはからんや(2回目)、ヴォーカルトラックなのです!(ご本人が歌唱されているのかは分かりません)。加工はされていますが朴訥なその歌声は無機質でありながら温かみのあるサウンドに実にマッチ。Pop musicとは異なるけれど、ちゃんと歌になっている。なんとなくヴォーカルフレーズ入れてみました、的な感じではない。ただのコーラスじゃね?というものでもない。抑揚がありクライマックスがある。そういうところから考えても、きっとPop志向の人なんだと思います。

M-9はbandcampだけのボーナストラックです。ミニマルなメロディを繰り返しつつ、バックが不穏に歪んでいく、その中にも郷愁を感じさせる不思議なトラックです。せっかくなのでbandcampで入手、というのもよろしいかと思います。

ところでPhantasmagoriaの意味ってみなさんご存知でしたか(私はホラーな方向のイメージしか思い浮かぶませんでしたが)。いまどき調べればすぐに分かりますが、あえて書きましょう。日本語にすると“幻影”、”幻想”の意味になるようです。移ろいゆく景色。奇妙な幻想。現れては消える幻。ぴったりじゃあないですか。


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(CC) by – nc – nd 3.0



VIRTUAL PVNDA – POMONA LISA

 VIRTUAL PVNDA - POMONA  LISA Cover

 – Tracklist –
 01. Empty Feelings 空の感情 [Intro]
 02. Crystal Tears クリスタルティアーズ
 03. Ganesha High In School エレファント高校で
 04. First Romance 最初のロマンス
 05. Artificial LOVE バーチャルガールフレンド
 06. Pomona Lisa ポモナリサ
 07. Second Kiss セカンドキス
 08. Green Acre グリーンアウェイロード Road
 09. Sweet Dreams 良い夢
 10. Echos  アマルガム
 11. Her 彼女
 12. Emerald Carpet エメラルドカーペットの記憶
 13. Alone 単独で
 14. Metro Link AM Jam メトロリンクAMジャム [Outro]



 - 04. First Romance 最初のロマンス



 - 13. Alone 単独で


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 Release Date : 2016.10.01
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Electronica, IDM, Melodic, Nostalgia, SynthWave, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ VIRTUAL PVNDA on bandcamp


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子供の頃、夏休みのラジオ体操は近所にある神社で行われていた。歩いて3分もかからないところにあって、起きたばっかで顔も洗わず朝食も食べずに寝癖ついたまま、つまり寝ぼけマナコで、ちょっとだけヒンヤリした早朝の空気の中を、首からスタンプカードをぶらさげて、向かう。道中、友達の姿を見つけて、昨日のテレビの話とか、こないだの遊びの続きの話とか、しながら、歩く。形だけの体操をして、スタンプをもらって、すぐに帰る。陽が昇るにつれて、空気が少しずつ熱を帯びてきて、今日も暑そうだなあなんて思って、友達はあとでプール行こうぜっていうけれど、泳ぎが達者でない僕はちょっと及び腰で、いやお前も泳げなかったよな、なんて思って、じゃあいいかって思い直しながら、家に帰って、朝食の目玉焼きとトーストを食べる。そういえば今日は自治会対抗のソフトボール大会に備えての練習があることに気づき、不良の先輩がおっかないんだよなあと、怖気づく。太陽がギラギラと照り付け、熱気が立ち込める小学校のグランドで、汗だくになってソフトボールの練習を終えた僕は、無性にプールに入りたくなって、友達に声をかけるのもそこそこに、自転車の前カゴにグローブ突っ込んで、ペダルをこいで動き出す。水着とタオルは、もちろん持っている。

プールから出た後の、心地よい倦怠感。何もやることねえなあ、いややらなくたっていいんだ、だって夏休みだもんって、いやそんな気持ちすらなかったか。何やったってよかったんだ。疲れと心地よさが眠りを誘う。明日のことなんて考えなかった。

そんな、ドリーミィで、ノスタルジックで、サマー・ハズ・カムなサウンドです。VaporWave的な意匠をまとっているけれど、その手法ってのはほとんど感じられなくて、個人的にはIDM/Electronicaだと捉えています。とりあえず現時点で3作品が公開されていて、今作は2作目らしく、3作目も決して悪くないのだけれど、このノスタルジア、記憶くすぐり感が、何分ほかよりも勝っているのです。感傷にすぎる受け取り方だろうか。

その音の揺らぎは、水中にさす太陽の光のようで。そのメロディの反復は、当てのない思考のようで。キラキラとした、クリスタルライクな美しさをたたえている。一方で、腐りかけの記憶をあさるような、どうしようもない空しさがあるのは、私の精神状態のせいだろうか。あるいはジャケットイメージに滲む、喪失の気配のせいだろうか。美化された思い出の正体は残酷なもので。そう、私の思い出も脚色なしには組み立てられないくらいにガタがきているし、忘却の淵を転がり落ちていったものも多くある。古ぼけた音色のメロディとドリーミィな空間の裏にある、ノスタルジアの空しさが私を責めさいなむ。とても甘美だが、ここにとどまっていてはいけない、そんな気持ちにさせられる。あの夏に飲み込まれてはいけない。私はもうそこにはいないのだから。夏はまた来るけれど―



PLAYLIST : 2017.05



 どんなにそれが絵空事でも 飛ぶしかない夜





Mikk Rebane – Pending

 Mikk Rebane - Pending Cover

 – Tracklist –
 01. Connected
 02. Misty Windows
 03. Pending Devotion
 04. Parallax Wizdom
 05. Shore of Singularity
 06. Ex Masha
 07. Groupshift
 08. Blind Fox’s Rain
 09. Hysterical Contagion
 10. Paper Home
 11. Premortem



 - 07. Groupshift


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 Release Date : 2016.07.03
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Electronica, Glitch, IDM, Melodic.


 Related Links :
  ≫ Mikk Rebane on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp / on Twitter / on YouTube


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BFW RecordingsBump footからもリリースのあるエストニアのトラックメイカー、Mikk Rebane。2017年には“Margins”をリリースしていますが、こちらは2016年の作品。

正直もうリバイバル的にでもこの手の音にスポットライトが当たることはないのかなあと、思っていて、だから一定層にしか好まれなくてファンが拡大するってことはないのかもしれないけれど、私はこういうサウンドが大好きなのです。冷たいサウンドの中に滲む抒情性と言いますか。それはミニマルテクノとかに比べたらはるかに機械的な質感は薄いし、感情性もあるように思うけれど、それでもラップトップ特有の冷たさっていうのはやはりあると思う。その冷たいテクスチャーに差し挟まれるメロディが、私の場合は、肝になってくるのだけれど、このMikk Rebaneはこのメロディセンスが素晴らしい。

ネットリリースを行うこの手のサウンドのトラックメイカーで私がファンと公言できる人物は何人かいる。いつも挙げるのは、“Transhumante”も記憶に新しいCrisopaや、寡作ながらその才能は折り紙つきのMosaik、GlitchyにしてビューティフルなIDMメイカーEnabl.ed (aka iameb57)、この3人がトップ3だったわけですが、今作や最新作を聴いて、このMikk Rebaneもそこに食い込む勢いですね。コンスタントなリリースと、クオリティが押しなべて高いというのがポイント。

Ambientな包容力、あるいはGlitchの妙、というよりは、メロディに寄っている印象が強くて、それがこのMikk Rebaneのキャラクタ―であるようにも思います。あとは‘Ex Masha’に顕著なように、楽器音―ここではギター(シンセサウンドかもしれませんが)を使ったトラックメイクも披露している―というのも特徴かと。たぶんこういう形じゃなくても、ギターとかピアノだけでも素敵な曲を作れるんではないかなあと思ったりもしましたが、いかがでしょうか。

(自分の中で)ザ・エレクトロニカなイントロを持つ‘Groupshift’も素晴らしい。(これまた私の中で)深海IDM/Electronicaと呼ばれるカテゴリーがあるのだけれど、そこに属する。まあ深海なんて行ったことないわけだけれど、真っ暗で光もささず、何ら感情性のない冷たい流れがある中で、微細なクランプトンの死骸―マリンスノー―がゆるやかに舞い、降り注ぐ、冷たくて幻想的な、そして神秘的な風景。ロングトーンなシンセがコーラスと共にうねる‘Blind Fox’s Rain’も、陽光乱れる川面の流れにさまようノスタルジアなイメージでよい。

そして今作で(最も)特筆すべきはラストの‘Premortem’でしょう。ストリングスサウンドで以て繰り広げるドラマティックで壮大なサウンドスケープは作品の終幕にふさわしい。Classicalな気配もありながら、しっかり電子音もまぶしつつ、それまでのどのトラックとも違っていて、悲しみや別れ、何がしかの決意を感じさせるような、とても感動的、情動的なものになっている。

IDM/Electronicaが好きな方は、是非ぜひ、過去作も含めてどうぞ。


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(CC) by – nc – sa 3.0