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タグアーカイブ: Piano

keyseeker – existence

 keyseeker - existence Cover

 – Tracklist –
 01. existence
 02. apathy



 - 02. apathy


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 Release Date : 2017.11.19
 Label : Not on Label

 Keywords : Ambient, Piano, Sad, Scene.


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John Cageの“4’33″”を引き合いに出すまでもなく(だから話は早速ズレるけれど)、無音というのは十分に作品たり得ると思っています。というのも無音の外から聞えてくる音が我々の心に何がしかの影響を与え、その中に感じられるものが確かにあって、それは無音あればこその感覚だと思っているからです。

keyseekerのこの作品を聴いていて、そんな思いを改めて抱きました。ピアノの短いメロディ、フレーズが流れた後の、一瞬の間―だから正確には、ここにあるのは無音ではないでしょう―、その瞬間に心の中に広がる感情、景色。それは確固としたものではなくて、漠然とした、いつかの思い出のような、あるいはどこかで見た景色のような、ひょっとしたら実際に体験さえしてないかもしれないけれど、けれど確実に頭蓋の中を一度は通り過ぎて行った、つまりは知覚された、アブストラクトな何か。呼び起こされるのは悲しみを伴う懐かしさ。ノスタルジャーな私はその懐かしさに何度でも触れたくて、わずか2トラックで3分前後という短いこの作品を、何度でも再生してしまう。結局何もつかめないのだけれど。

keeseakerは、かつてはafterstoriesの名義で活動し、現在もnermuri winterの作品に参加しながら、温かみのある抒情的でMelodicなElectronicaを作っていますが、こういうピアノ一発っていうスタイルはあまりなかったような気がします。余計なもの差っ引いて抒情性が浮き彫り、みたいな、ある意味グロいっていうか、聴取感はジンワリなんだけど、心へのインパクトはファイヤーバード・スプラッシュを喰らった時みたいな(すいませんフザケマシタ。もちろん喰らったことはありません)。シネマティック、風景的で、とても好きなんですねえ。音が鳴って、自分の中に景色が流れてくるこの感覚、音楽の醍醐味だと思うわけですよ。たまにやっぱり音楽は魔法だなって思うんです。そんな作品。

bandcampやSoundCloudを辿れば他の多くの作品を聴くことができるでしょう。そしてkeeseakerの最新トラックは(おそらく)“Olive”。nemuri winterで公開されています。下に張らせていただきますのでどうぞお耳を―



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(CC)by – nc 3.0



Final Heal – Fata Morgana[QNR019]

 Final Heal - Fata Morgana[QNR019]Cover

 – Tracklist –
 01. Anna’s Journal
 02. My Blue Heaven
 03. Millennium Fantasy X
 04. Never Die
 05. From Here On Out
 06. Invitation to Elegy
 07. VIRUS
 08. Dream Tower
 09. Wind
 10. Telepathy
 11. Fly Away
 12. People, Memories, Places
 13. Snowman
 14. Sinner’s Lullaby
 15. Faerie Song

 - 15. Faerie Song


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 Release Date : 2018.08.20
 Label : Quantum Natives

 Keywords : Breakbeat, Electronic, Fantasy, Orchestral, Piano, Strange, VGM.


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プロフィールは不詳ですが、このFinal Healの背後にいるのは、おそらくはAmun Dragoonではないかという指摘を見かけました。私も何とはなしにそう思っておりましたので、“そうだよね!”と共感した次第です。まあ結局よく分かっていないんですけれど。でもそう思わせる要素というのはあって、まずはやはりAmun DragoonのSoundCloudにFinal Healのトラックが(2年も前に)リポストされていること。私がFinal Healの存在を知ったのもそこからでした。単純に気に入ってリポストしただけという可能性もありますが、このつながりに加えて音楽性も類似しているのです。

Amun DragoonはVaporWaveの文脈に入れられることもあるし、実際トラックによってはその傾向も強くありますが(特にNewAge調のトラック)、現時点の最新作2015年の“Socotra Island”などはMIDI風のサウンドに傾倒している節があって、もはやVaporWave作家というイメージは私の中では薄れつつありました。そしてその先に何を出してくるのかという興味も持っていたのですが、それ以降動きはなく、まあ突然活動を止めてしまう(ように見える)アーティストも全然珍しくないので、Amun Dragoonも終了してしまうのかと危惧しておりましたところ、突然現れたのがこのFinal Healでして、聴いてみたところ、正直当初公開されていたトラックからはAmun Dragoonとのつながりは見いだせなかったのです。だってヴォーカル入ってるし(どこかたどたどしい)、何かメロディはポップだし、オーケストラルな要素もあって、ハッキリとした抒情性も感じられて、そこをつなげて考えるのは間違いじゃないかと思っておったのですが。

私がAmun Dragoonで一番好きなトラックは‘Secret Whispers From The Tamate Box’(下に張りますが最高だな!ビデオがイイ)ですが、これと共振する何かを今作の‘Dream Tower’‘Wind’, ‘Telepathy’に嗅ぎ取ったのですね。前者が陰とすれば後者は陽であるけれども、このスピリチュアルな望郷感とでもいうか、意図せず漏れ出てしまっている個性が共通しているように感じられて、ここで初めて両者をつなげて考えてもよいのかなと思い始めたのです。“Socotra Island”の延長線上というよりは、俗に寄せてきた感じ。

と、もし赤の他人だったら申し訳ありませんので、単体で触れましょう。仙人が下界に降りてきて世俗を楽しもうと思いきや、下々の常識が分からずにひっちゃかめっちゃかやってしまいました、みたいな。クロコダイルダンディ。そんなことやっちゃうのみたいな。ローファイ・エレクトリック・ファンタジー。大筋は抒情的なメロディがあって、ファンタジックで、ちょっとVGMっぽいところもあって、ストレートな聴き心地というか、ポテトチップス食べてるみたいな安心感なんですが、ところどころ異質な“何か”が混じっていて、非常に刺激的。M-2も静かに始まったと思ったら、終盤いきなりそんなデカいシンセと強いアタックのドラム入れちゃうの?っていう驚きがあり、M-4はコレ何であえて日本語の歌詞なんでしょう?カバーとかではない気がするんですがちょっとおぼつかない日本語のDIYな歌唱がまた惹きつける、M-6は9分超の大作ですがピアノでひそやかに始まってストリングスなんか入ってアラいい感じと思ってたら急にブレイクビートと共にドラマチックな展開になだれ込んで、何だかビデオゲームのバトルシーンみたいな曲調にいつの間にか連れて行かれてる、M-7もせわしないビートとシンセにアンニュイなヴォーカルが入って最終的に加速してって終わるしM-11も途中でギターなのか何なのかノイジーなフレーズが入ったり後半リズムが妙に力強かったりまたしてもミステリアスなヴォーカルを入れてくる―といった調子で、一度入り込んでキャッチされてしまえば、終始感じられるこの危ういバランス感(焦燥的でもある)と、抒情性の絶妙なコントラストが、クセになること請け合い(さらには‘Invitation to Elegy’‘My Blue Heaven’はSoundCloudで公開されているものとちょっとずつ内容が異なっているという攪乱ぶり)。人によってはスペインの雄This Deep Wellを想起する方もいらっしゃるでしょう。

気になった方は是非Amun Dragoonも辿ってみてくださいネ。にしてもQuantum Nativesのサイトデザインやべえ。あえて不便さを強いてくるような突き放し感がヘヴンリー。


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Amun Dragoon – Secret whispers from the tamate box






Final Heal – Millennium Fantasy X(directed by Final Heal)



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Artwork by Aisha Mizuno & Galen Erickson
https://www.instagram.com/doctor_zoom_octopus/
https://www.instagram.com/chaos_egg/



PLAYLIST : H2 2018




 I am Capricious.



OVI – Artificial Sweetener

 OVI - Artificial Sweetener Cover

 – Tracklist –
 01. Lazy memories
 02. Busy Shiba
 03. Gold Watch
 04. My night in Shibuya
 05. Keiichi



 - 01. Lazy memories


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 Release Date : 2017.02.26
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Chill, Downtempo, Hip-Hop, Lonely, Piano.


 Related Links :
  ≫ OVI on SoundCloud / on bandcamp


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窓の外は雨。テーブルの上には未払いの光熱費請求書。回り続ける浴室の換気扇の音が、低く響く。

冷蔵庫はもうじき空で、けれど外に出るのも億劫で。

読みかけの文庫を開くが、すぐに閉じる。

訪ねてくるものもなく、予定もない。

心臓の鼓動だけが、生きている証のような。

静かな休日。

そんな“とき”に、似合いはしないでしょうか。

Pianoの澄んだ音色とメロディは漂白的で私の心を白く塗りつぶし懐かしさへといざなう。ルースなHip-Hopのビートはぼんやりとした憂鬱にピッタリだ。

と、うつつを抜かしていると、急に差し挟まれる日本語のセリフに目を覚まされる。“買いに行ったら売切れてたんだよね”と謝る男、“ボヤボヤしてるからでしょ”と怒る女。“ケンタくんはサキちゃんに何をお願いしてたかなあ?”という教育番組のようなナレーション。いったい何が示されているのかといぶかしんでいると、“焼きそばパン!”と声が上がり、“焼きそばパン終わっちゃったな、ゴメンね!”と別の声が答える。そして“売切れてたんだよね”、“ボヤボヤしてるからでしょ”という冒頭のやりとりに戻る。問があって、それに対する一応の答えは得られているわけだが、それがここにおいて何の意味があるんだろうか。甚だ疑問だ。

町の雑踏(ここも日本語だ)とChipsoundのような煌びやかな音色が組み合わさった‘My night in Shibuya’も不思議なトラックだ。ドリーミィでサイケデリックで、都会の夜の喧騒に包まれながら一人歩いているような、(仮想的)孤独感がよくあらわされている。にぎやかさとの対比で己の孤独感が浮き彫りになるのだな。だから都会の夜は奇妙に―真っ当にではなく奇妙に―さびしいのだ。その寂しさに侵食され、取りつかれた者たちが、知らず知らず、何かにおぼれていくのであろう―と、どうしようもない想像をしてみる。

ラストの‘Keiichi’もまた、古ぼけたエレキピアノのような音色に、サワサワとした雑踏の声(のようなもの)が、静かに絡み合う。足元のビートはトボトボとした家路への道だろうか。どこか夕暮れどきの住宅街が思い起こされ、我知らず、追憶。

そんな仮想的な孤独感と追憶が途切れたときに、己が実際部屋に一人であることに気づき、現実的な孤独感に襲われるのであった―いや襲われてはないけどな。

OVIさんがどこのどなたか全く存じませんが、なかなかに私の日常に寄り添ってくるではありませんか。短いけれど印象深い作品です。ちなみにタイトルの“Artificial Sweetener”(人工甘味料?)はDaisuke Tanabeさんのトラックから拝借しているそうですよ。


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Note :

Taking a name from a favorite song by Daisuke Tanabe, “Artificial Sweetener” is a vibrant EP that focuses on things in life we rarely remember. The small details in our routine that create such melody, yet we forget to listen.



John D. Reedy – The Great Long Distance

 John D. Reedy - The Great Long Distance

 – Tracklist –
 01. Dreams of Budapest
 02. 60 Days
 03. 30 Days
 04. Heathrow / Stansted
 05. Dreams of Athens
 06. Sehnsucht
 07. Athens International
 08. Summer’s Afterglow
 09. The Great Long Distance
 10. Lost Dog
 11. We Remain
 12. Together



 - 04. Heathrow / Stansted


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 Release Date : 2017.02.17
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Cinematic, Classical, Long distance relationship, Piano, Soundscape.


 Related Links :
  ≫ Evæl on SoundCloud / on bandcamp

  ≫ John D. Reedy on SoundCloud / on bandcamp


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イギリスのミュージシャン、John D. Reedy。以前にはEvælの名義でリリースもあります。Neo folk/Neo classicalな音楽性のメランコリックなウタモノ“Breath”を経て、リアルネームで挑んだ今作のテーマは、“long distance relationship”。

遠距離恋愛の12ヶ月(なので12トラック)を表現した音像になっているようですが、ClassicalなPianoのメロディとAmbientなエフェクトが描き出すのは、ドラマティックでロマンティックなサウンドスケープ。ジャケットイメージから想像を膨らませると、時は中世、航海士の男と、港町の娘の恋、といったところでしょうか。航海によってはいつ帰ってくるかも分からず、命の保証すらないような、危険極まりない、船の旅。もしかしたらもう会えないかもしれない。大げさではなくそんな可能性があるのだから、旅立ちのとき、そして生還のときに、それぞれの心中には、それはそれは強い気持ちがあったことでしょう。

初期の航海では遭難や難破、敵からの襲撃、壊血病や疫病感染などによって、乗組員の生還率は20%にも満たないほど危険極まりなかった。しかし遠征が成功して新航路が開拓され新しい領土を獲得するごとに、海外進出による利益が莫大であることが立証された。健康と不屈の精神そして才覚と幸運に恵まれれば、貧者や下層民であっても一夜にして王侯貴族に匹敵するほどの富と名声が転がり込んだ。こうした早い者勝ち の機運が貴賎を問わず人々の競争心を煽り立て、ポルトガル・スペイン両国を中心にヨーロッパに航海ブームが吹き荒れるようになった。(from Wikipedia

そんな“大航海時代”という大きな大きな流れの中で見れば、船乗りと町娘の恋なんていうのは塵(ちり)のようなものなのかもしれないけれど、でもきっとあったと思うし、そこにあった気持ちの強さっていうのは、どんな物差しでも測りきれないものだったでしょう。大航海時代というロマンチックな(けれど厳しい)時代の中に埋もれたロマンスが、ここに記されている、そう考えると、時間にして決して長い作品ではありませんが、非常に重みが感じられてきます。1冊の本や、1本の映画にも負けていないような。12のトラックに物語は付されていませんが、聴いた人がそれぞれ、想像してみるのも、面白いかもしれませんね。

音楽的には特別なことが成されているわけではありません。穏やかだったり、ハッピーだったり、ピースだったりというよりは、どちらかというと、切なかったり不安だったりといった、sadな感情性が強いようにも感じられます(それはそうか)。意外に、ということもないんだけれど、メロディで引っ張る感じではなくて、大きなうねり―つまりサウンドスケープ―で空間を演出している感が強いので、その辺りがタグに用いられている“post-rock”に通じるのかなと思います。

ひとつ気になるのは、この物語がハッピーエンドなのか否かという点なのですが・・・。ラストが‘Together’なのでポジティヴに解釈できそうですが、その前の‘We Remain’はどう捉えるべきなのだろう。ジャケットイメージにしたって、これが出発の前なのか、それとも帰還の後なのかで、またそこに生じるものが大いに変わってくる。と、ここでJohn D. ReedyのSoundCloudを覗いてみると、わずか3トラックが残されていて、タイトルにはそれぞれMonth 22, 23, 24とつけられている。これは今作に収められなかった“その後”なのだろうか、果たして・・・。

リラクシンとはまた違うと思いますが、自身の頭の中に物語を作り上げることができたなら、終幕のときには涙が頬を伝う可能性もあるでしょう。というように、非常にイマジネイティヴな作品でもありますが、音楽単体でみても素晴らしい作品だと思います。



DRone 駅 – Stay Hydrated!

 DRone 駅 - Stay Hydrated! Cover

 – Tracklist –
 01. Puddles
 02. Ocean
 03. Thunder
 04. Rain
 05. Drowning
 06. Waterfall



 - 02. Ocean


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 Release Date : 2016.09.17
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Drone, Hydrate, Piano, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ DRone 駅 on SoundCloud / on bandcamp


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DRone 駅は素性不明。SoundCloudで唯一フォローしているのがIn-DreamviewというPost-Rockを主にしたInstrumentalプロジェクトなので、そちらと何がしかの関係があるのかもしれません。関係ないかもしれないので深くは追いませんが、そちらはそちらで素敵な音楽です。

DRone 駅の1作目は“Stereo Sunset”で、そちらはSample-Basedで気だるげな、つまりは真っ当なVaporWaveなのですが、この2作目はどうも毛色が違っている様子。タイトルにも表れているように水がテーマになっているようで、VaporWaveの気配はほとんど感じさせない、静かな作品になっています。M-1などDroningなレイヤー(スローなストリングスか?)が浮き沈みする中で、ギターの弦だろうか、シャラシャラと鳴り響き、また讃美歌のようなヴォーカルラインのようなものが重ねて流れてくる。その重さを持った浮遊感は荘厳な感覚にも結びつき、儀式的(あるいはRitual Ambient)なイメージもあり。この粛々とした調子は非常に好み。

M-2もポワン、トロンとした電子音の玉が瞬く、ドリーミィにして不穏なトラック。イメージは夜の海だろうか。月明かりの冷たくファンタジックな光と、その足元で寄せては返す波の動き。落ち着いた静けさの中にフト滲む海からの不安。M-3はかろうじてChopped & Screwedが用いられているけれど、されどこれをもってVaporWaveといってしまうのは、いささか強引か。エコーイックなドラムとまどろむようなギターの爪弾きは、VaporWaveと関連の強いJazzというよりは、Post-Rockのにおいが強いように感じられる。

今作の特徴のひとつにPianoがある。M-4‘Rain’、M-5‘Drowning’、M-6‘Waterall’では抒情的なPianoの旋律が用いられていて、これも今作のイメージを“静”の方向に近づけている。サンプルを使っているにしても過剰なエディットもかけられておらず、かといって80sのヴァイブを感じさせるようなメロディが使われているわけでもなく、VHSな質感があるわけでもない。そう、思えば今作について認(したた)めるのにVaporWaveのタグはいらなかったな・・・。そのワードに踊らされてしまった感がある。その側面から聴かないと魅力がない作品なのかと問われれば、そんなことはない(特にM-1~M-2が好みである)。

“Hydrate”というワードをなぜ用いたのか、そこにある真意は分かりませんが(なぜ“Water”ではないのか)、水の持つ静かなイメージと、また一抹の不安(のようなもの)は確かに感じられます。と、ここからいつもの関係ない話にいってしまうのですが、このダークブルーを基調にした、曲線の少ないジャケットイメージ、これが私の脳裏に呼び起こしたのは、ビデオゲームの“Outer World”(原題“Another World”)のデザインなんですねえ。あのゲームも地下世界を舞台にしていて水と無関係ではないし、どこかでつながったんでしょうね。世界観は違うけれど―



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EmEss Musicのチャンネルでは、DRone 駅の“ぬれた臓器”というトラックに映像をつけて公開がされているけれど、このトラックはどこから持ってきたのだろう。これもPianoのトラックで、映像はEmEss Music側でつけたものだろうけれど、緊張感と暴力、そして静寂がないまぜになった映像は実に好みです。“セッション”(原題:Whiplash)や“アメリカン・サイコ”、“ファニーゲーム U.S.A.”、大友克洋の作品などが使われている。個人的には北野武監督の作品も似合ったような気がする。


DRone 駅 – ぬれた臓器




Vortex of leaves – Cacotopos [nocti22]

 Vortex of leaves - Cacotopos [nocti22]

 – Tracklist –
 01. The moment of the hidden and lost
 02. The moment of lost things
 03. The paradox warehouse
 04. Reshaped and broken
 05. Impossible conjunctions
 06. Westernmost point
 07. Torque
 08. The arrowhead concerns
 09. Arches of dark water
 10. The outskirts of the cacotopos



 - 01. The moment of the hidden and lost


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 Release Date : 2012.05.29
 Label : Noctilucent

 Keywords : Ambient, Downtempo, Electronic, IDM, Piano.


 Related Links :
  ≫ Vortex of leaves on SoundCloud


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noctilucent(夜光雲)をその名に掲げるネットレーベル。リリースはきっちり重ねてきている様子ですが、いまいち目立たないのは、公式なウェブサイトを設けていないからでしょう。そう思います。このご時世にSoundCloudもbandcampも利用せず、リリースがエクスペリメンタル(あえてカタカナで書いてますよ、ええ)に片足突っ込んでることもあって、認知度は決して高くはないと思います。リリースの多くがNemetonの作品であること、かつてレーベルのページが彼のウェブサイトに設けられていたようであること、これらを鑑みると、彼がファウンダーなのかなあと勘繰ったりもしますが、結局よくわかりません。

そんなレーベルからこっそりリリースされているのが、UKのデュオVortex of leavesの作品なのですが、彼らについても詳細は不明。Nemetonが絡んでいるのかもしれませんが、特にこれといった情報もなく、SoundCloudも最新のトラックが3年前のものという、おそらく今後動きはないであろうことが見込まれる停滞具合。そんな現状を踏まえると、今後人目に付くことが果たしてあるのかないのかといったら、おそらく“なさそう”という方向に軍配が上がるVortex of leavesですが、正式なリリースはこの作品しか見受けられません(自分もなぜここにたどり着いたのかよく覚えていないという体たらくですが、ホントなんでだったかな。Internet Archiveのフィードか何かだったかな…。しかもかつて1回聴いていたような気がするのですが、なぜそのときに引っかからなかったのでしょうか)。

さあ前ふりはこのくらいで作品の話に入りますが、Downtempo、Electronica、IDMといった言葉が頭をよぎる、意外にも聴きやすい作品なのです。ゆったりとしたリズムと、シンセのレイヤー、ときにPianoの旋律も交えて、ちょっぴりの哀愁さえ漂わせる、なかなかの佳作という印象です。Pianoはどうやらサンプルを使っているようですが、M-2‘The moment of lost things’なんか聴いていると、ふいに流れを断ち切ってPianoがポロンとなったりして、あとは即興っぽいギターも入ってきたりして、マシーナリーな中に有機的なものも感じられて、なかなか面白いのです。M-3‘The paradox warehouse’もそうだけれど、このエキゾチックなフィーリングもあるギターの挿入が良い味出してまして、ジャケットイメージやトラックタイトルを見ても、どこかの島が意識されているように思いますが、まさにその島感(変な言葉だから言い換えると異国情緒があるってことだよ!)が醸されているのです。と、ふと思い出したのが、かつてelectrosound.ruからリリースされていた、Ambidextrous & Morkvaの傑作“A & M”(今はAmbidextrousのbandcampから入手できます)。

かと思うと、M-5‘Impossible conjunctions’なんかはPianoを使ってはいるものの、スリラー映画のスコアのような、ミステリアス、ホーンティングなDark Ambientになっていて、なかなか一筋縄ではいかない作り。このあたりやはりデュオという部分が関係しているのかもしれませんね。どちらかの持ち味が出ているのかもしれません。後半に入るとPianoとGlitchを織り交ぜた硬質なElectronica/IDMも見え始め、M-9‘Arches of dark water’などは、先のDark Ambientな調子とIDM/Electronicaのテイストが結びついた夜霧漂うトラックに。ラストは島のはずれ―The outskirts of the cacotopos―で陽光浴びて光る海面を眺めているような(GlitchyなPianoが反射感)、陽性なトラックになっていて、全体としてはやはりゆるやかな自然を感じさせるような(ときには怖さも含みつつ)。

というように、イメージを念頭に置いてしっかり聴くと、味わい深い作品なのですが、おそらく今後の活動はないのでしょうねえ。ちょっと残念です。今作についても、どこのどなたが作ったのかもよくわからぬまま、ネットの中で化石のように埋もれていってしまうのでしょうか。きっとそうなんでしょうねえ…。


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(CC) 1.0 universal

Notes :

Thanks to Mary for the piano samples.