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Final Heal – Fata Morgana[QNR019]

 Final Heal - Fata Morgana[QNR019]Cover

 – Tracklist –
 01. Anna’s Journal
 02. My Blue Heaven
 03. Millennium Fantasy X
 04. Never Die
 05. From Here On Out
 06. Invitation to Elegy
 07. VIRUS
 08. Dream Tower
 09. Wind
 10. Telepathy
 11. Fly Away
 12. People, Memories, Places
 13. Snowman
 14. Sinner’s Lullaby
 15. Faerie Song

 - 15. Faerie Song


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 Download Page Free!

 Release Date : 2018.08.20
 Label : Quantum Natives

 Keywords : Breakbeat, Electronic, Fantasy, Orchestral, Piano, Strange, VGM.


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プロフィールは不詳ですが、このFinal Healの背後にいるのは、おそらくはAmun Dragoonではないかという指摘を見かけました。私も何とはなしにそう思っておりましたので、“そうだよね!”と共感した次第です。まあ結局よく分かっていないんですけれど。でもそう思わせる要素というのはあって、まずはやはりAmun DragoonのSoundCloudにFinal Healのトラックが(2年も前に)リポストされていること。私がFinal Healの存在を知ったのもそこからでした。単純に気に入ってリポストしただけという可能性もありますが、このつながりに加えて音楽性も類似しているのです。

Amun DragoonはVaporWaveの文脈に入れられることもあるし、実際トラックによってはその傾向も強くありますが(特にNewAge調のトラック)、現時点の最新作2015年の“Socotra Island”などはMIDI風のサウンドに傾倒している節があって、もはやVaporWave作家というイメージは私の中では薄れつつありました。そしてその先に何を出してくるのかという興味も持っていたのですが、それ以降動きはなく、まあ突然活動を止めてしまう(ように見える)アーティストも全然珍しくないので、Amun Dragoonも終了してしまうのかと危惧しておりましたところ、突然現れたのがこのFinal Healでして、聴いてみたところ、正直当初公開されていたトラックからはAmun Dragoonとのつながりは見いだせなかったのです。だってヴォーカル入ってるし(どこかたどたどしい)、何かメロディはポップだし、オーケストラルな要素もあって、ハッキリとした抒情性も感じられて、そこをつなげて考えるのは間違いじゃないかと思っておったのですが。

私がAmun Dragoonで一番好きなトラックは‘Secret Whispers From The Tamate Box’(下に張りますが最高だな!ビデオがイイ)ですが、これと共振する何かを今作の‘Dream Tower’‘Wind’, ‘Telepathy’に嗅ぎ取ったのですね。前者が陰とすれば後者は陽であるけれども、このスピリチュアルな望郷感とでもいうか、意図せず漏れ出てしまっている個性が共通しているように感じられて、ここで初めて両者をつなげて考えてもよいのかなと思い始めたのです。“Socotra Island”の延長線上というよりは、俗に寄せてきた感じ。

と、もし赤の他人だったら申し訳ありませんので、単体で触れましょう。仙人が下界に降りてきて世俗を楽しもうと思いきや、下々の常識が分からずにひっちゃかめっちゃかやってしまいました、みたいな。クロコダイルダンディ。そんなことやっちゃうのみたいな。ローファイ・エレクトリック・ファンタジー。大筋は抒情的なメロディがあって、ファンタジックで、ちょっとVGMっぽいところもあって、ストレートな聴き心地というか、ポテトチップス食べてるみたいな安心感なんですが、ところどころ異質な“何か”が混じっていて、非常に刺激的。M-2も静かに始まったと思ったら、終盤いきなりそんなデカいシンセと強いアタックのドラム入れちゃうの?っていう驚きがあり、M-4はコレ何であえて日本語の歌詞なんでしょう?カバーとかではない気がするんですがちょっとおぼつかない日本語のDIYな歌唱がまた惹きつける、M-6は9分超の大作ですがピアノでひそやかに始まってストリングスなんか入ってアラいい感じと思ってたら急にブレイクビートと共にドラマチックな展開になだれ込んで、何だかビデオゲームのバトルシーンみたいな曲調にいつの間にか連れて行かれてる、M-7もせわしないビートとシンセにアンニュイなヴォーカルが入って最終的に加速してって終わるしM-11も途中でギターなのか何なのかノイジーなフレーズが入ったり後半リズムが妙に力強かったりまたしてもミステリアスなヴォーカルを入れてくる―といった調子で、一度入り込んでキャッチされてしまえば、終始感じられるこの危ういバランス感(焦燥的でもある)と、抒情性の絶妙なコントラストが、クセになること請け合い(さらには‘Invitation to Elegy’‘My Blue Heaven’はSoundCloudで公開されているものとちょっとずつ内容が異なっているという攪乱ぶり)。人によってはスペインの雄This Deep Wellを想起する方もいらっしゃるでしょう。

気になった方は是非Amun Dragoonも辿ってみてくださいネ。にしてもQuantum Nativesのサイトデザインやべえ。あえて不便さを強いてくるような突き放し感がヘヴンリー。


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Amun Dragoon – Secret whispers from the tamate box






Final Heal – Millennium Fantasy X(directed by Final Heal)



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Artwork by Aisha Mizuno & Galen Erickson
https://www.instagram.com/doctor_zoom_octopus/
https://www.instagram.com/chaos_egg/



Kinesthetiac – Kinesthetiac EP

 Kinesthetiac - Kinesthetiac EP

 – Tracklist –
 01. Deep Landscape Free 30 Day Trial
 02. Call Me Up
 03. @TheSarcasmTweets
 04. There 4 U
 05. Looking Out The Window
 06. Willow Island
 07. Kinesthetiac’s Clubhouse



 - 01. Deep Landscape Free 30 Day Trial


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 Release Date : 2015.04.22
 Label : SadAlanMusic

 Keywords : Electronic, Funny, IDM, Strange, Trap.


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未来からやってきたネットレーベル、SadAlanMusicより。KinesthetiacことJared VanMatreの新しい作品がリリースされています。しかもまさかの、ここにきて、セルフタイトル作。自信があるのか何なのか。

以前“Cheese Stank EP”を取り上げたときに書きましたが、2011年に若干14歳でこの界隈に彗星のように現れたKinesthetiacは、当初はMelodicなElectronica/IDMを作っていました。初期の3作品、“Eternal”、“Gander”、“Fields Of Thought”は特に魅力的で、MelodicなElectronica/IDMのファンには是非とも聴いてほしい作品です。

しかしその後の彼は抽象的なElectronic musicを作るようになり、初期の面影はドンドン薄れていくことになり、そのことを私は残念に思っていたわけです。“Cheese Stank EP”も何だか不明瞭な作品だったし、いったいどこに向かっているのか、見当すらつかず、仕方なしに彼がたまに連投するSoundCloudのトラックをチェックしつつ、その動向をうかがっていた次第(ちなみに今作には公開済みのトラックも含まれています)。

そしてここにきてこのセルフタイトル作がリリースされたわけですが、M-1がだいぶ(ホントにだいぶ)久しぶりに、ストレートにメロディを鳴らしていてビックリした。思わず笑ってしまった! リズムはちょっと水っぽかったり、ヘンな部分があるけれど、おおらかでドリーミィなメロディはかつてのIDMサウンドを彷彿させる。なんだやればできるじゃんよ! こういうの作ってくださいよ!って声を大にして言いたい。

でもこのシリアスにもとれる路線は最初のワントラックだけで、あとはまた傾向が変わってしまうのです。Synth PopなウタモノトラックのM-2‘Call Me Up’とか、ちょっとJersey ClubっぽいM-3‘@TheSarcasmTweets’とか、確かにメロディはあるんですが、アッパーなイメージのトラックが続くのです。続くトラックも、Indutrial/Noiseなシンセサイザー・ミュージックのM-5‘Looking Out The Window’や、奇怪なコラージュM-6‘Willow Island’など、やはりどこかヘンテコなものに・・・。ファニーなジングルのようなラスト‘Kinesthetiac’s Clubhouse’もそうなんですが、彼のここのところ作ってくるトラックには、ファニーという言葉をあてはめるのが最も適当ではないかと、私はけっこう長いこと思っていまして、そして今回、ようやく、この“ファニー”なイメージに結びつくかもしれない彼の嗜好を発見しました。

それは今作のクレジットに書かれている“furries”というワード。見慣れない言葉なので調べてみましたが、ちょっと引用させていただきましょう。まずはWikipediaより“ファーリー・ファンダム”という項目がありますので、そこから―

ファーリー・ファンダム(Furry fandom)とは、欧米のカートゥーンの文化の影響を受けて、擬人化された動物のキャラクターを好むことで特徴づけられるファンダムである。

さらにピクシブ百科事典の“furry”の項目にはもっと直接的な言葉があります―

欧米などの海外圏における「ケモノ」の呼称。「ケモナー」のことを示す場合もある。英語のfur(毛皮)が語源。

なるほど“furry”で画像検索を行ってみると、一発でこのワードの持つイメージが直感的に把握できます。コミカルでファニーで、まさにそう、カートゥーンなのですね(対して“ケモナー”で検索した結果にはカートゥーンのタッチが見られないのが面白い)。つまり最近の彼が作るサウンドにはこの“furry”、ないしは“Furry fandom”が大いに影響しているというのが、私の見立て。実際彼のSoundCloudのプロフィール画像にもその嗜好は示されているし、Weasyl(ソーシャル・アート・ギャラリー・ウェブサイト)のアカウントでは、カートゥーンタッチで擬人化された動物たちが並んでいる。そして何より今作のジャケットがすでに、ですね。

残念ながら私がカートゥーンに親しんでいないので、今作とカートゥーンを強く関連付けて書くことができないのが残念ですが、でもとりあえずカートゥーン・ミュージックには影響されてなさそう・・・だけれど、その辺りもよく分かりませんので、興味のある方は考察してみてはいかがでしょうか。しかしKinesthetiacの作るトラックには謎めいた部分が多かったのですが、こうやって作り手の趣味嗜好を知ることで、何となく音楽が理解しやすくなったように感じられて、うれしいような、ちょっと残念なような、複雑な気持ちがあります。なぜ残念かって、分からないからこそ惹きつけられるっていう、その吸引力がちょっと薄れてしまった気がするからです。たとえばネッシーなんてきっといないって分かってしまったときに、何となく残念な気持ちになるのはなぜか(本来なら残念に感じる“必要”などないのに)っていうのと、仕組みは同じような気がします。

とにかく、久しぶりにMelodicな作品を作ってきたJared VanMatreに感謝しましょう。ありがとう! これからもこっそり期待しておきます。ちなみに彼、このSadAlanMusicから2014年に“Vacation”というVaporWave/Trap/Synthesizer musicな作品をリリースしてるんですが、トラックタイトルに‘Daniel Lopatin’なんて使ってて、やっぱりちゃんと意識してるんだな、ノーマルじゃんって思いました(作品全体でなんとなくの影響は感じられる)。しかしそのジャケットイメージがダサすぎてホントいい(笑)。


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Note :

Music + Artwork by Jared VanMatre
Jerome, Indiana 2015
Special thanks to my friends and the internet and furries



Arca – &&&&&

 Arca - &&&&&

 – Tracklist –
 Arca – Knot
 Arca – Harness
 Arca – Fossil
 Arca – Feminine
 Arca – Anaesthetic
 Arca – Coin
 Arca – Century
 Arca – Mother
 Arca – Hallucinogen
 Arca – Pinch
 Arca – DM True
 Arca – Waste
 Arca – Pure Anna
 Arca – Obelisk





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 Release Page Download Free!

 Release Date : 2013
 Label : Not On Label

 Keywords : Abstruct, Ambient, Beats, Dub, Edit, Electronica, Glitch, Hip-Hop, Industrial, Strange.


 Related Links :
  ≫ www.arca1000000.com
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You don’t know just I feel…

分かりたいのに分からないという、上手くいかない恋人同士のようなイメージを、このArcaのサウンドには持っています。いや、そもそも“分かる”ってどういうことなんだろう―それはArcaに限らず、音楽に限らず、“分かる”とはどういうことなんだろう? 今作その他のArcaの作品を聴いていると、そんな難しい問いが、頭に渦巻いてくるのです。音楽を分かるためには何が必要なのでしょうか。いや、何か必要なのでしょうか。何かを知らなければ、彼のサウンドを正当に(そんなものあるのか知らないけど)評価することはできないのでしょうか。生い立ちや音楽的ルーツ、影響源、彼につながる先人たちなどを抜きにして、音に対する表現だけを行おうとするとき、“言葉にできない”という表現は、確かに今作によく似合います。

当たり前だけど聴いて感じたことが真実です。真実は主観的なもので、つまり私にとっての真実を書くと、今作は“よく分からんな”という作品になります。私にとって音楽的な気持ちよさというのは、ここにはありませんでした。でも巷ではやたらと話題(賛否を含め)になっていた2013~2014年、という事実があります。ここで初めの言葉に戻りますが、そう、分かりたいのに分からないのです! なんで、どうして、ぜんぜん良さが分からんなあ、オレおかしいのかなあ、なんて思っちゃったりもして、何回も聴くわけですが、音楽ファンにありがちな“それほどよくないのに何回も聴いて何となく良いんじゃないかと思わせようとする”パターンも成功せず、手に入れてからしばらく評価は定まらず、時間だけが過ぎていきました。まあ(特に今作は)Hip-Hop/Beatsの向きが強いし、自分はブラックミュージックに反応できないし、そこんとこが大いに関係しているんだろうな、なんて思って、悔しくも諦めていたんですが、ヴィジュアル面での表現を見て、興味が再燃しましてですね。

この作品を聴いたときに、最初に頭の中でリンクしたのが、不思議と(?)Nine Inch Nails(NIN)だったんです(あんまり関連付けている文章はないかもしれないけど、でもどっかにあるとは思います)。Pop度でいったらぜんぜんNINの方が上だけれど、先人たちの作ってきたサウンドを踏まえた上で、エポックメイキングな、新奇性の高い(そして情報量過多な)サウンドを作り上げてきたという点で相通じる部分がありますし、何より先日の投稿に書いたように、私が初めに聴いて“よく分からんな”と感じたところが、まんま重なるのです。もちろんArcaの紹介には奇才Aphex Twin(Richard D. James)が関連付けられることが多いですし、Arca(Alejandro Ghersi)と映像作家Jesse Kandaのコンビが、RichardとChris Cunninghamの関係を彷彿させるというのも、大いにうなずけます。

話をNINとArcaに戻しますが、まずArcaの‘Thievery’(“Xen”収録)のビデオを見て、グロテスク/ビューティフルなイメージと、その力強さに圧倒され、一瞬で引き込まれました。“TRAUMA Scene 1”などにもある、怖いもの見たさにも似たその吸引力がまた、一時期NINのMVが持っていたものと、非常に似通っているように、感じられたのです。ちょうど”BROKEN”から“The Downward Spiral(TDS)”の頃です。かなり直接的にグロテスクな表現を行っていて、ボンテージで身動き取れない人間の口に便所の汚水が流れ込んだり、マゾヒスティックな快楽を求める男が全身ミンチにされたり、蝿が無数に飛び交う部屋の中で、男がステーキを頬張り、ワインを飲んだりといった内容でした(公式的には世に出なかった“The Broken Movie”は、殺人過程を記録したような形で、ペドフィリアやネクロフィリアの要素も含まれた、性的に倒錯した非常にショッキングな映像になっていて、今でこそ普通に見れてしまいますが、一昔前はかなりレアな代物でした。内臓感覚どころか内臓露出な映像なので、ご覧になる方はその点承知の上でお願いします。ちなみにディレクターはPeter Christopherson)。

そんなように、倒錯した内面性の発露とでもいえる、強い感情性をうかがわせる点で、ArcaとNINのサウンド/ビジュアルに共通項を感じ、またArcaのサウンドにRock的なものを感じたのです。そして視覚的要素の力というのは凄まじいもので、Arca & Jesse Kandaの作品に触れていく中で、私の中にArcaフォーマット、Arca受容体とでもいえるものが誕生したのです。感覚的にいうと、“ああ、こういうふうに聴いてよいんだな”と、(ある意味)“分かった”ということです。

なぜこんなにもArcaの表現がセクシャルなのかというのは、ele-kingさんの記事―“interview with Arca ベネズエラ、性、ゼンとの出会い”を読むと、分かるような気がします。どれほどArcaの表現がシリアスなのかというは分かりませんし、もしかしたら無邪気なものなのかもしれないですが、でもArcaのサウンドイメージをここまで見事に視覚的に表現してみせる、そして決定づけるJesse Kandaの役割というか、2人の関係性というものには、神秘的なものすら感じてしまいます。

音だけでいうと、聴いた中ではこの“&&&&&”が一番好きです。冒頭の‘Knot’にある、振動する空間とかかなりシビれます(私の中ではこの辺のダビーな感じも、NINに通じるんです)。“Xen”収録の‘Bullet Chained’もよいです―ストレンジなビートとレイヴなシンセはレゲエのミュータントのようでもあり。真似しようと思っても誰も真似できないでしょうね。映像も含めると、やはり‘Thievery’が好きで、ずっと見てたいくらいです、この動き。あとは‘Now You Know’の機械的浮遊感とコズミックな美しさも好きです。超高圧縮な人造感覚。

余談ですが、NINとAphex Twinは昔に組んでいるんです。TDSに対するRemix盤“Further Down the Spiral”の中で、‘At the Heart of It All’と‘The Beauty Of Being Numb’の後半(“Section B”と呼ばれる)を、Aphex Twinが担当しています。RemixというよりはNINにインスパイアされた結果作ったような、オリジナリティあふれるトラックで、当時非常に魅了されました。何が言いたいかというと、次にNINのRemix作があれば、是非Arcaに参加してほしいなあということです。在り得なくはないんじゃないか、と思います。

※私の持っていた“Arcaの何がそんなにすごいのか”という問いに、もっとも食い込んできたのはthe sign magazineにある竹内正太郎さんの記事でした。≫ “2014年最大のセンセーション、アルカの「新しさ」を紐解くコンテクストとは何か?その① 「ネット上で生まれた、創造主なき新たな生命体としての音楽」


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מוסיקת פופ – מכשפה

 מוסיקת פופ - מכשפה

 – Tracklist –
 01. שיר אהבה
 02. צעד מוות
 03. שפתיים רופפות
 04. מטוס
 05. שיר פופ   
 06. לרצוח אותימבפנים



  - 05. שיר פופ


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 Release Date : 2014.11.09
 Label : Idle christ

 Keywords : Electronic, Retrospective, Strange, Synthesizer, VHS, Witch.


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UK基盤のレーベル、Idle christより。מכשפהの作品がリリースされています(どうもこの文字はヘブライ語のようで、訳すと素直に“魔女”となるようです)。これまでにも同レーベルからは2011年に“בן זונה”を、2014年半ばに“השטן הוא בעצמך”を、それぞれリリースしてきており、今作が3作目となります。素性も気になるんですが、この匿名性が全盛の時代にヘブライ語のネーミングときて、音楽性も決して華々しいものではないだけに、とっかかりがつかめません。つまり私のガッツが足りなかったという分けですが、気になる人は自分で調べますよね、うんきっとそうだ。だからここでは音源にしか触れません(触れられないのだ)。

1作目はアブストラクトでエキセントリックなシンセサイザー・ミュージックという感じでしたが、2作目でヴォーカルを取り入れ、まさかのCold Wave~Trip Hopの風味も感じさせる、いくらかメロディに寄った作風に変化、シンセを主軸にしながらも、スタイルにはあまりこだわりがないような、そんな印象ですが、今作でまた、少し作風に変化があります。作品タイトルのヘブライ語は“Pop music”という訳になるようで、非常に挑戦的ですが、今までと比べると、確かに格段にPopです―比べれば、の話ですが。

極彩色のレトロタッチ(エキゾチックでトロピカルなフィーリングもある)なシンセサイザーが全編を覆っていますが、それに加えてテープミュージック的な聴取感―ねじれや歪みが随所で聴こえてきて、レトロ感の中にも独特の眩惑感が落とし込まれています。M-1などは、さらにそこにデス声のような、地の底から響くような声が混合されていて、まさかのレトロなシンセサイザー・ミュージック+デス声という奇怪なコラボレーションを耳にすることができます。M-4なども70~80年代風の電子感の強いスペーシーなシンセサイザー・ミュージックに、奇妙に変調させたヴォーカルを合わせることで、不安感をあおるミステリアスな音像を生み出しています(この辺りはWitch Houseとリンクするのかもしれない)。

M-5なんか、出だしで“オッこれは直球でPopなんじゃないか?”と思わせておいて、即座にグニャリと音を捻じ曲げて、見事にオトしてくるという、シニカルなハズしっぷり。そのあとも頻繁に音が凸凹に飛んだり跳ねたりするので、ちっとも安心して聴くことができません(笑)。面白い。予定調和をぶっ壊しにくるような―そう暗闇の中でジェットコースターに乗るような、とてもスリリングな聴取体験を提供してくれます。

音楽的要素のストレンジな組み合わせや、予定調和を無視したメロディの歪曲で、リスナーを興奮させる・楽しませるって、よくよく考えると、これってやってること自体はPop musicに対するRemixやEditと同じようなことですよね。Pop musicにはメロディの気持ちよさがあるので、それが生かされる場合が多いですが、でもRemixやEditにおいて、私はそれがオリジナルからどれだけ離れた上で、かつ気持ちよさや興奮を提供してくれるか、そこが自身の中でひとつの尺度になっているような気がします。そんなように自分の音楽の聴き方まで考えさせる今作は、“Pop music”というタイトル以上に深い作品なのかもしれません(?)。

ちなみにM-1に関しては、どこかで似たような構造の曲を聴いたような気がして記憶を漁り、Ornitologyの‘Two green feathers (Feat Fabio Caruso)’に行き着いたんですが、今聴いたらDark Ambient+デス声という形で、ぜんぜん違っていたことをここに報告しておきます。

Idle Christもリリースは沢山あるんですが、まだぜんぜん聴けていないんで、エネルギーと時間があるときに積極的に聴いていきたいです。

※‘Two green feathers (Feat Fabio Caruso’は、Dedicated Recordsから出ていた“Concrete”(2009)に収録されていたんですが、今は手に入らないようですね・・・。




жёлтый мегамэн – у меня есть шариковая ручка [DOPEFISH034]

 жёлтый мегамэн - у меня есть шариковая ручка [DOPEFISH034]

 – Tracklist –
 01. у меня есть шариковая ручка
 02. у меня есть шариковая ручка feat. skoda the cat



 - 01. у меня есть шариковая ручка


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 Release Date : 2014.08.05
 Label : Dopefish Family

 Keywords : Bedroom, Cat, Kids, Lo-Fi, Punk, Strange.


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ジャケットイメージからあふれ出るPunkな精神がたまりません。“恐竜戦隊ジュウレンジャー”から招聘されたタイガーレンジャー。と、その下に無造作に配置された、Bicのオレンジファインぽいけど実は違う、どこぞのボールペン。インターネット感、あるいはTumblrやVaporWaveのフィールドに付随するアート、とは確実に切り離された、ストレンジなフィーリング。匂いたつ挑戦性。

ロシアン・ウェブレーベルのDopefish Familyからリリースされているжёлтый мегамэнの作品は、佇まいからして、実に奇妙です。説明らしい説明もなく、“2004”という言葉しか付されていないので、おそらくは2004年にレコーディングされたか、どこかでリリースされていた作品なのでしょう。惹きつけられるままに、耳を傾けてみたら、思わずフッと、鼻と口から空気が漏れました。つまり笑ってしまったということです。Lo-Fiな音の中でスコスコと始まるドラム(リズムマシンか?)、ベンベンと鳴るベース、それとユニゾンするように、ベロロンと力なく響くギター、突如空間に割って入る、シンセのようなメロディカのような、甲高い電子音、これらが2分半続くだけ。ただそれだけ・・・。電子音がちょっとVGMっぽい響きを醸しますが、それによってこの脱力感が消えるわけではありません。そう、この全編に満ちる脱力感がたまらなく強烈で、まるで白紙に描かれた“へのへのもへじ”のような、シュールさが漂います。何の文脈もなく、ただそこにある脱力。

2曲目はなんじゃい、どんなんじゃいと思って耳を傾けると、そしてタイトルを見ると、”feat. skoda the cat”とあるように、ただ猫の声が足されただけ!! なんだけど、1曲目にかぶせただけではなくて、どうやらテイクが違うようなのがまだ救い?なのですが、この猫の声もしっかり鳴いてなくて、のどをグルグル鳴らしてるあの感じの声が挿入されているっていう・・・、ここでも脱力だわ! 猫の声ぐらいしっかり入れればいいのによ!! 作り込み感ゼロの、あらゆる意味づけを拒否する、まさに音だけがそこにあれば他には何もいらないと言わんばかりの、往復ビンタ食らってるんだけどアレぜんぜん痛くないみたいな(ちょっと何言ってるか自分でも分からないけれど)、つまり痛みはなく往復ビンタを食らったという衝撃だけがそこにはあるとでもたとえましょうか(まあホントはこんな言葉もいらないんだけど)、柔道の技的にいわせてもらえばツバメ返しのような(キメにいった足払いをスカされて足払いで返される)。

にしてもこの音をこのタイガーレンジャー見ながら聴いてると、どうしてもニヤニヤしてきちゃうんですよねえ(笑)。何が面白いんだろう。緊張と緩和なんだろうか。で、なんでペンなんだろう、なんでタイガーレンジャーなんだろうって思うじゃないですか。調べるわけですよ。なんなんだろうって。アーティスト名の“жёлтый мегамэн”は、どうやら“イエロー・メガマン”という意味になるようで、メガマンってのはカプコンのビデオゲーム“ロックマン”の海外での名称ですから、この言葉は、黄色いロックマン、あるいはイエローデビル(ロックマンに出てくる黄色くて巨大なモンスター)を指しているんでしょう。それを象徴しているのがタイガーレンジャーだと考えることができます。じゃあペンは? ってなりますが、これは作品タイトルにヒント(あるいは答えか)がありました。Google翻訳―“у меня есть шариковая ручка” ≒ “私はボールペンを持っている”。ノーゥ!! 日本のバンドが作品タイトルに“This is a pen.”ってつけるようなもんじゃないか!! 大した意味なんてなかったんだ・・・。いや、捉えようによっては、やはりPunkなのか・・・。

いったい誰なんだ!?って、気になりますよね。こんな、あらゆる意味で力抜きまくった作品だしてきたのは!って。ここまできたら後には引かないぞって、力入りますよね(もしかして、もうみなさんは興味を失くしているでしょうか)。で、どうやらkakashtlaさんが事情を知っているようで、なぜなら、このжёлтый мегамэнのトラックをSoundCloudで公開しているんです。そこにある記述を読んでみると、このжёлтый мегамэнは、どうやら彼が学生時代にもっていたバンドのようです。なるほど・・・。今は音楽を作っている節がなさそうですが、リンク先をのサイトやブログを訪れてみると、ロシア語・キリル文字でさっぱり理解できませんで、人となりは雰囲気でしか分かりませんが、アーティスティック、アカデミックな思考の持ち主なのかもしれません。

と、ここまでくると、このトラックも何やらシリアスに聴こえなくもないから不思議です。最初の衝撃はどこへやら。笑うこともためらわれるではありませんか。音楽というのは何がしかの文脈が与えられれば、それによって評価は如何様にも変わりうるということですね(“評価”というのは、すべてそうかもしれません。現代アートなんて顕著ですね)。

ということで、今回の投稿では、音楽を聴く上で、アーティストの背景を知るのが良いのか悪いのかっていうことを、考えさせられたような気がします。そんな唐突な締めで終わりますが。

ちなみにDopefish Familyはこういうリリースばっかりではないし、そんなイメージもなかったんですが、今回フラッとサイトを眺めていたら、動画に“こんにちは!焼きうどんが登場しましたよ。是非お試しください!”と、説明をつけていたりして(まったく謎)、自分の中でレーベルのイメージが塗り替えられていきそうです。

※風邪薬で非常にフワフワした頭で記事を書いたものだから、なんかタッチが違いますが、大丈夫、自覚的です。




Kinesthetiac – Cheese Stank EP

 Front_s

 – Tracklist –
 01. PART I (IRL)
 02. PART II (PROTOANTHROPOMORPH)
 03. PART III (ONLINE FRIENDS)


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 Release Date : 2014.08
 Label : Not On Label

 Keywords : Abstract, Electronic, Glitch, IDM, Noise, Strange.


 Related Links :
  ≫ Kinesthetiac on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp


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みなさんはKinesthetiacことJared VanMatreを覚えてらっしゃるでしょうか(相変わらずのもったいぶった書き出し)。イギリスのネットレーベル、Retronymから若干14歳で“Gander”(2011)をリリースし、そのクオリティでnetaudioファンをうならせた彼。その後の“Fields Of Thought”(2012)もよい作品でしたし、“Gander”ともども、このブログで取り上げました。そもそもこれら2作の前にセルフリリースしていたEternal(2011)の時点で、IDM/Electronicaファンからは高い支持を得ていました。


ネット上にはものすごい数の、音の作り手さんがいますが、自分が興味を持った方々をぜーんぶフォローし続けるなんて、およそ不可能。しかもどうしても自分の中でブームになってる音の方を掘り下げてしまうので、そうじゃない方には、ちょっとアンテナの感度が弱くなったりする。で、その感度が弱まっている方面に対しての話だけど、私の場合は自然と(ってのも変だけど)、定期的に“そういえばあの人今何してんのかな”って気持ちがフワッと浮かんでくるので、そのときにちょいちょい辿ってみたりしているんですね。そうすると、音楽を止めちゃったように見える人もいるし(消息不明もよくありますよね)、別の名前で活動を続けてる人もいるし、元の名前で変わらずに音楽を作り続けている人もいて。調べてみるまでどんな結果が待ってるか分からないから、その調査にはスリルみたいのがあって、ほんのちょっと刺激的だったりもします。今思いつくだけでも、あの人やあの人のその後が、気になったりしてる。


で、Kinesthetiacは今17歳なのかな?、正直活動が停滞していたわけではないので、上の話にはちょっと当てはまらないんだけど(じゃあ何で書いたんだよって言わないでね)、バリバリ活動してくれていたにも関わらず、このブログで一向に取り上げてこなかったのには、ちょっと理由があります。

まず上記の3作品以降のリリースだけれど、せっかくだから細かく書きましょうか(リンクもつけときましょう)。“Cout Miny Candy (EP)”(2012;これは現在ダウンロードできません)、“Is It A Kind Of A Dream”(2012;これはLFD Recordsからのリリースだけど、現在リンク切れ)、“Holy Shit I’m A Werewolf (Pt. 1)”(2013;圧巻の25トラック。現在リンク切れ)、g(2014)、Chemtrails is my Fursona(2014)。あと間にLFDのコンピレーションとかもあります。ほんでもって、今作、というのが大まかな流れ。


怪傑ライオン丸、じゃなくて西武ライオンズのキャラクターであるレオを大胆に使っちゃったこのジャケット画像からして、ねえ、過去とは決別してる感じがしなくもない。タイトルも“チーズ、臭い”って感じですか? 何なんだよそれ・・・って疑問符がいっぱい。

変化の兆しはもう“Is It A Kind Of A Dream”で見えていました。当初はMelodicなElectronica/IDMを作っていた彼が、この辺りから、メロディを廃したような、抽象的で歪な音作りをするようになってきました。サンプルベースの編集的なトラックも散見されたし、ノイジーな感触も少なからず。以前私、“Kinesthetiacはこれから先、より個性的な音楽の配合を見せてくれそうで、期待しています”とか書いたんですが、“g”ではついに、やはり若さゆえの柔軟性が発揮されたのか、VaporWaveを意識したような、過剰にGlitchyで、Chopped & screwedも織り交ぜたサウンドにシフト、曲タイトルもついていない、まるで意図の見えない、ミステリアスな作品を作ってきたんです。“Chemtrails is my Fursona”もやっぱりその路線で、多少メロディが流れている感はあるけれど、それはサンプルに基づいたものであって、彼が作ったメロディによる感覚ではない。

早い話が、彼の初期作品にほれ込んだ私としては、その後の路線がちょっと残念という、そういう話なんです。今作も3トラックで25分近くある、アブストラクトな電気的絵巻物、みたいになっていて、じっくり耳を傾けようものなら、そこに広がるのは鈍色の夢。スリリングなトランス風シンセパートだったり、レトロなシンセサイザー・ミュージックをShoegaze/Noiseな味つけで補強したような肉厚パートだったり、そういったスペーシーな部分が際立つかと思えば、バウンシーなビートからエクストリームなシャウトや金属的ノイズ、アジテートなヴォイスがさく裂するようなハードなパートもあり、さらにはチャイルディッシュなIDM/Downtempoからメルヘンチックなパレードへなだれ込んだり、何気にChopped & screwedもかましてきたりして、切り貼り感も包み隠さず大胆にさらけ出し、もう、ムチャクチャじゃあないですか。何が表現されているのか、想像することすら困難で、こんな困惑リスニングはなかなか久しぶり。

でもヒント、なのかカラかっているのか、各トラックの感情性を表現するなら、ということで、3つの顔文字を当てはめてくれています。M-1が(、ン、)、M-2がT_T、M-3が=o)、ということで・・・なんとなく分かるようで、やっぱりわかんねーなというのが正直なところですか(笑)。まるでツジツマの合わない映画を見たときのような、倦怠感すらリスナーに感じさせてしまうのも、今作の力というべきなのかもしれません。その分からなさってのはもちろん面白さにも結びつくだろうし、今作の魅力のひとつかもしれないんだれけど、でもここはまだ通過点だと思いたい。スタイルを決めるにはまだ早いんじゃないかと。ここを経た上で、初期のMelodicな路線に戻ったら、あるいは他の方向へ羽ばたいていったら、いったいどんな音になるだろう?って考えて、でも想像しきれない自分がいます。ということで、これからも注目しておきます。

以前はこんなトラック作ってたんだぜ!ってヤツを以下に貼らせてくださいよ。


Kinesthetiac – Creating My Own World (from “Eternal”)






Kinesthetiac – “Gateway” (from “Is It A Kind Of A Dream”)




Suètar – Putes al despatx

 Suètar - Putes al despatx

 – Tracklist –
 01. Bruta
 02. Putes al despatx
 03. Tenteres
 04. Empilles
 05. “Com?” El meu flow és impecable. Muacs.
 06. Sip
 07. 梶木 ~Kajiki~
 08. A Fia De La Gosda Weh
 09. Refrà
 10. Broda (hit freestyle 2013)
 11. Objectius a la vida



 - 01. Bruta


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 Release Page Download Free!

 Release Date : 2013.12.03
 Label : Not On Label [on bandcamp

 Keywords : Electronica, Hip-Hop, Rap, Soft, Strange, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ Passadís Gúsca
  ≫ Suètar on bandcamp / on YouTube (as Gabriel Tija)

  ≫ This Deep Well on Last.fm / on Facebook / on SoundCloud / on Tumblr


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ZOOM LENSからリリースを行っているThis Deep Well。彼のサイド・プロジェクトであるSuètarのアルバム“Putes al despatx”がフリーでリリースされています。

このSuètar、ソロなのか複数人によるユニットなのかは不明ですが、個性派ぞろいのZOOM LENS勢の中でも異彩を放っていた“From”を作り上げた彼のこと、一筋縄ではいくまいと、まずはリリースページを訪れて、ジャケット画像を一目見た私、時節柄のせいも多分にあるでしょう、“もしやVaporWaveか?”と鼻息荒くしたわけですが、聴いてみて今度は口から“フフッ”と息が漏れました。見事に予想の斜め上をいくサウンドでした。

Hip-Hop/Rapが基本にあるんでしょうけれど、まーゆるい! “ゆるふわ”どころか“ゆるゆる”ですよ。実際VaporWaveは無関係ではないと思うんです(上記のブログでも何かしら関係したことを書いているようなんですが、いかんせん言葉が分からないので、彼のVaporWaveに対するスタンスは分からないままです)。冒頭のM-1やM-2からして、このチープなシンセサウンドと、レトロなコマーシャル・ミュージックのようなムードの広がりは、やはりそこからの影響を感じざるを得ない。しかしそこに乗っかってくるのが、まさかのRap!っていう。面白いじゃないですか。しかもこれはリズムに乗っているのかいないのか(なぜだかLou Reedの歌唱を思い出させるような)、絶妙なノリ。迫りくるDIY感がたまらない。アドリブなのかどうか、途中で笑い声とか聴こえてきます。

加えて彼独特のソフトな発声・歌唱があるので、ややもするとThis Deep Wellもそうであったように、Shibuya-Keiを感じさせたりするものだから、さらに奇妙で面白い。トラックによっては、まるでお洒落なボサノバに似合いそうな雰囲気がある、ジェントルな声質。プロフィールによれば、彼はスペインはバルセロナ出身のようで、そうすると使われている公用語はカタルーニャ語、ということになるかと思うんだけど、普段聴きなれない、その滑らかな響きは、奇妙さを助長するとともに、今作の味わいをさらに独特なものにしている。

隙間の多い、ゆるゆるなHip-Hop/Rapに終始するだけではなくて、ところどころでThis Deep Wellの片鱗を感じさせてくれます。M-3, 9の脅迫的なシンセサウンドや、M-4, 11にある、浮遊感と疾走感が混じり合った、不思議な味わいなどは、“From”とも共通する部分があります。M-5はひときわPOPなんですが、このメロディ、どこかで聴き覚えがある気がして…、どこだったろう…、カヴァーかなあとも思ったんですが、結局分かりませんでした。下に動画を貼りつけておきますので、この奇妙な絵面(えづら)と共にお楽しみください。ついでに“梶木 ~Kajiki~”もどうぞ! まんま梶木だった(笑)!

VaporWaveを彷彿させるVHSなシンセサウンドと、ソフトヴォイスのRapという組み合わせはとてもユニークで、しかもそこに、こなれた様子のないDIYなフラフラした調子がスパイスになって、唯一無二のサウンドができあがっています。特にメロディに富んでいるわけではないのに、繰り返し聴きたくなるこの中毒性。それはきっと、闇に目を凝らすような感覚だと思うんです。よく分からないもんだから、必死になって正体を知ろうとするような。気が付いたときは、この奇妙なサウンドが耳に染みついて、折に触れ、頭に上ってくるようになるのです。お、恐るべし! このどこにも組しない、孤高のストレンジャー感。大好きです。ちなみにタイトルの“Putes al despatx”、翻訳にかけたら、ポンッとこんな言葉が出てきました―“オフィスでみだら”。あわててジャケット画像を見直しましたが、大丈夫、女性の顔から突き出ているのは、みだらなものではなかったようです!


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“Com?” El meu flow és impecable. Muacs.






梶木 ~Kajiki~