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カテゴリーアーカイブ: Batona Music

At Work – A Thousand Blended Notes [PATH20]

 At Work - A Thousand Blended Notes [PATH20]

 – Tracklist –
 01. The Air
 02. Every Flower
 03. Seemed
 04. All I Can
 05. Sate
 06. The Least Motion
 07. Twigs Spread
 08. Fair Works



 - 01. The Air


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 Release Date : 2016.04.08
 Label : Batona Music

 Keywords : Ambient, Electronic, No Beats, Sorrow, Early Spring.


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アメリカはニュージャージー州パインバレーのレーベル、Batona Musicより。At Workの作品がリリースされています。以前にも“My Property”(2012)を紹介したことがありましたが、それ以来です。

リリースページのテキストによれば、early springを意図して作られたとのことです。これまでの8年間の毎(早)春に作りだされてきたというトラックたちですが、全8トラックであることを考えると、1年あたり1トラックという計算でしょうか。

早春というとみなさん何を、どんなことをイメージするでしょうか。私などはいささかの胸のときめきというか、ざわめきというか、これから訪れる新しい季節へのワクワクというか、ポジティヴとはまた違うのだけれど、心を前進させるような何かを感じたりもするのですけれど、ここにあるもの、このサウンドに込められているものはちょっとそれとは趣が異なっているように、私には感ぜられるのです―

It may be best experienced alone, perhaps on walks; from the first sign of spring to when that fresh spring green in the leaves turns to a more mature green. Then put it away till the early part of the season repeats again.

―確かにそう、ここにあるような孤独、のようなものが、今作を聴いていると、ひしひしと感じられてくるのです。なぜにこんなにも悲しい聴き心地なのだろうと、驚いてしまうくらい、悲しいのです。早春の何が悲しいのだろうと、考えてしまいます。冬が終わってしまうことへの悲しみでしょうか、あるいは春が始まってしまうことへの悲しみでしょうか。始まることよりも終わることの方が悲しい気がするので、前者でしょうか。早春にある終わりのイメージというと、私の中に出てくるのは、卒業式だったりするのですが、それとは無関係なのでしょうか。

申し訳ないことですが、私はAt Workのすべての作品に耳を通してきているわけではありません。そんな私が聴いてきた中では、これほどにAmbientに傾いた作品はなかったように思います。敢えてNo Beatsというワードが用いられていることからも分かるように、今作は彼のキャリアの中でも異色なのではないかと思います。普段は決して、明るいとは言えませんが、それでも電子的なビート、リズムを利用したトラックを多く作っていて、そこには多分に陰りもありますが、しかし今作のような露骨な感情性といやつを感じたことはありませんでした。

私が特に好いているのは、1曲目の‘The Air’で、聴くたびに、まさに胸が締め付けられるような、そんな感覚に陥ります。悲しみとはまた違うような気がするのですが、しかし危うく泣きそうになったことを考えると、やはり悲しみという表現が一番近しいのかもしれません。年齢を重ねるにつれて、感性が鈍くなっているような気がするということは、みなさんよくあると思います。多くの方がそう感じるということはそれは紛れもない事実なのかもしれません。成長して、自分につながる色々なものが増えて、そちらの方にエネルギーを使っている、使うようになってきている、ということも関係あるのかもしれません(この場合のエネルギーってなんだよって話ですが、厳密に定義はできませんので、感覚的にとらえて、察してください)。空の色の変化や、草木のにおい、空を飛ぶ鳥や地を歩く虫、確かに存在していながらも、私の中で忘れられていた何か、に気づかされたときに感じた喪失感、それが悲しみに結びついているのかもしれません。ひどく抽象的ですが、屋外に出たときに、鼻からいっぱいに空気を吸い込んで、鼻の奥がツンとしたときに、感じる何か、のような、そんな感じもあります。

確かに抽象的なサウンドかもしれませんが、メロディは流れているし、作品の方から明確にイメージを打ち出してきているので、聴きやすい作品だと思います。At Workはこんな作品作る方だとは思ってもなかったんですが、がぜん好きなってしまいました。今思えばPCの効果音などを利用したサンプリングミュージックの側面が強い“My Property”にしても、異色の作品だったのかもしれません。


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 Credit :

Lines written, programmed, and produced in early spring by At Work.
Made in New Jersey.

Design: Nice Looking Designs

(CC) by – nc – sa 3.0