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カテゴリーアーカイブ: Pizza Boii Records

Wire Mother – Float Songs [BOII – 001]

 Wire Mother - Float Songs [BOII-001]

 – Tracklist –
 01. Childhood
 02. I Guess This is It…
 03. You (XXXYYXXX Remix)



 - 01. Childhood


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 Release Date : 2014.12.30
 Label : Pizza Boii Records

 Keywords : Ambient, Drone, Floating.


 Related Links :
  ≫ Wire Mother on bandcamp


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アメリカ合衆国はモンタナ州ビリングスのネットレーベル、Pizza Boii Recordsより。レーベルオーナーでもあるJared Farnsworthが、Wire Mother名義で、レーベル一作目となる“Float Songs”をリリースしています。現時点でまだこの一作しかリリースがありませんし、新興レーベルといってもよいんでしょうか。

レーベルのフォーカスについて、“experimental music ranging from Vaporwave to Harsh Noise and everything in between.”と説明されています。そして今作、このGlitchyなジャケットイメージでしょう。さぞかしヘンテコな音楽なんではないかと、構えて聴いてみたんですが、意外や意外、まっとうなAmbient musicが収められていて、驚きました。M-1の‘Childhood’という言葉、そして作品タイトルの“Float Songs”という言葉、まさにこれらからイメージされる、ノスタルジックで浮遊感のあるサウンドを聴くことができます。

Jared Farnsworthが他にどんな音を作っているのか、ちょっと調べることができなかったので何ともですが、確かに一見、今作はVaporwave、あるいはHarsh Noiseとも縁がなさそうに聴こえます。M-1は、ハーモニックなレイヤーと、ガラスの向こうにあるような揺らめく透明感が印象的なAmbientですが、よく耳を凝らすと、レイヤーの膨張や揺らぎによる不穏な振動が嗅ぎ取れます。ざらつきとも形容できるそれは、絶妙に、調和を乱しにかかりそうで、かかりません。M-2にしても、トラックの中心でミニマルに起伏を繰り返す旋律のうしろで、乳白色の空間を形成しているのは、Shoegaze/Noise(DroneとしてのShoegazeというか)的な音作りです。まったく騒々しさはありませんが、引き伸ばした持続音で空間を埋めようとする在り方は、決してNoiseとも遠くはありません。

そしてラストの‘You (XXXYYXXX Remix)’は、おそらくXXYYXXの‘About You’に対するRemixかと思うんですが、オリジナルも確かに静かなトラックではありますが、Post-DubstepなトラックをまさかのAmbient/Droneに作り替えていて、ここでも意表を突かれました。ヴォーカル部分にはChopped & Screwedをかましていて、ここはVaporWaveにもコミットした結果であるのかもしれません。こうやって細かく見ていくと、今作のスタイルはAmbient/Droneではあるんですが、レーベルのフォーカスからは決して外れていないことが分かります。Noise/Shoegaze、そしてVaporWaveと、確かにエッセンスを感じ取ることができるのです。

ということで、一見とっつき難そうな門構え、面構えなのですが、今作は明らかに聴かせにきている作品ですし、面白い作品でもあります。レーベルの形骸化や開店休業状態というのは今も昔も珍しくありませんが、このPizza Boii Records、末永く続いてくれることを、期待しております。こうして書いてくると、真っ当な空間に落とされた一滴の不協和というやつが、一見適当にも思えるこのジャケットイメージには(もしかしたら)集約されているのかもしれない、とか思ったりしてしまいました。

追記:ちなみにこれはWire Motherの”Songs” seriesのパート・ワンということです。Noiseにまみれたパート・ツーは上記bandcampで公開中。