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カテゴリーアーカイブ: Orchid Tapes

Various Artists – ANGELTOWN [OCT031]

 angeltown

 – Tracklist –
 01. Foxes in Fiction – Breathing In
 02. R.L. Kelly – Feels Real
 03. Euphoria Again – Cold Bones (Demo)
 04. HAPPY TRENDY – Gross One (Frankie Cosmos cover)
 05. Elvis Depressedly – Thou Shall Not Murder (Single Mix)
 06. MEISHI SMILE – Us
 07. The Sweater I Gave You – Sink (Alternate Version)



 - 06. Meishi Smile – Us


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 Release Date : 2013.09.28
 Label : Orchid Tapes

 Keywords : Electronica, Indie, Lo-Fi, Pop, Singer-Songwriter.


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カナダはトロント発、ブルックリン基盤のレーベル、Orchid Tapesより。7組のアーティストのレア&未リリーストラックを集めたコンピレーションがリリースされています。もともとは2013年9月にカリフォルニアで行われた、レーベルのショウケースで販売されたカセットテープのようです(手書きのサンキューメッセージとレーベルステッカー付き)。ショウケース後もネット販売していましたが、現在は完売。販売終了しています。そしてつい先日、mediafireでダウンロード可能、つまりフリーで入手可能な状態になりました。

個人的な目玉はなんといってもMeishi Smileの未リリーストラックである“Us”。でもその前に、頭から聴いていく。1曲目はレーベルのオーナーでもあるFoxes in Fiction(Warren Hildebrand)のトラック。どちらかというと、電子感の強い、Ambientなトラックになっていて、作品の世界に手招きするような、深遠な雰囲気が漂よっている。エフェクトの効いたテクスチャーと薄いヴェールのような声部は、どことなくShoegazeっぽくもある。AmbientとPopを行き来する彼の作風の内、Ambientの方が強く出た形だ。R.L. Kellyのトラックはシンプルな構成のウタモノ。力の抜けた歌唱とミニマルなギター、メロディが心地よく、自然に耳に入ってくる。

Euphoria Againは、まさにDemoな質感のLo-Fiな歌を聴かせてくれる。ザラついたギターと歌声のみで作られるLo-Fiな空間は、奇妙な寂寥感と哀愁を滲ませる。HAPPY TRENDYはシンプルなドラムとシンセをバックに、 Frankie Cosmosをカバー。オリジナルに漂う若干の清涼感すら抜き去って、気だるさ満開のダルな空気を振りまいて、わずか2分弱をのんびりと駆け抜ける。

続くElvis Depressedlyは、クリアなギターと対峙する、ふわりとした空間とディレイする歌声の妙でもって、ノスタルジックでPOPなサイケデリックフレイバーを散布。たちどころにリスナーの中にはドリーミィな空間が形成されかかる。と、そこに待ってましたとばかりに流れてくるのが、Meishi Smileの‘Us’! Singer-Songwriter的な向きが強い、今作の中で、異彩を放つElectronicでドリーミィなPost-Popを響かせる。なぜこの人の作るトラックはこんなにも私の心のスイッチを押すのだろう。懐かしさと喪失感が同時に襲ってきて、私はホントに泣きそうになる。ある晴れた冬の日に、街を独りで歩いていたら、あの娘を見かけた気がして。あわてて振り向いたら、でもそこには知った顔はなくて、誰かと誰かが楽しそうに笑ってるだけで。それは、“失った”、という事実の再確認。日本のi-flsとも共通するようなこの世界観が、私を魅了してやまない。

ラストはちょっとジャングリーなギターと口笛のようなシンセに包まれた、これまた脱力した歌声で締めくくられる。総じてみると、非常にLo-FiかつIndieな佇まいのコンピレーションで、おそらく好き嫌いが分かれることでしょう。しかし私にとっての‘Us’のように、ひとつでもピンとくるトラックがあったならば、この機会に迷わずダウンロードしておきましょう。で、どうやってピンとくるかを確かめるかって? ありがたいことに、bandcampでストリーミング再生できるんです! 早速いってみましょう! ※ちなみに‘Us’に関しては、Meishi SmileのSoundCloudで単体でダウンロードできます。



MEISHI SMILE – LUST [OCTO20] / [ZL-12]

 MEISHI SMILE - LUST  [OCTO20] / [ZL-12]

 – Tracklist –
 01. AJS
 02. PALE
 03. STILL
 04. SUMMER BLUE
 05. AI
 06. HONEY
 07. HEART
 08. TEARS


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 Release Date : 2012.09.22
 Label : Orchid Tapes / ZOOM LENS

 Keywords :
  ≫ Electronica, J-Pop, Nakata Yasutaka, Post-Pop, Shoegaze, Techno-Pop, Vocoder.


 Related Links :
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  ≫ Hear Me Out: Meishi Smile | lights and music


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個人的にここしばらくで最も待ち望んでいた作品が、ようやくリリースされた。もう何か月も前から、リリースのアナウンスだけはされていたものの、一向に動き出さないので、心配していた。アメリカ在住のYūko Imadaによって運営されるZoom Lens、そしてFoxes in FictionことWarren Hildebrand(彼もまたインディファンには大人気だ)とBrian Vuによって運営される、トロント発ブルックリン基盤のOrchid Tapes。この二つのレーベルによる共同リリースが、今作、MEISHI SMILEの”LUST”。Zoom Lens側からはフリーで配信されているが、Orchid Tapesからはスペシャルなカセットテープという形で購入が可能!(しかし販売開始後、一日待たずに完売しました!)

彼―Yūko Imada(これはペンネームのひとつだろう)が、敬愛する中田ヤスタカに手紙を送ったという話を以前書いたことがあるけれど、この作品を紹介するには、その内容に触れないわけにはいかない。これは彼のTumblrに掲載されていた(現在は当該記事はなくなっている様子だ)-“LETTER TO NAKATA YASUTAKA“。彼のTumblrを少し眺めてみれば、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅといった中田ヤスタカプロデュースのPost-Popだけでなく、日本の80年代アイドルの音楽にも興味・関心をもっている様子がうかがえる。またエロ(’kawaii’も含む)や日本のアニメ、ビデオゲームといったサブカル・アングラ的な世界にもごく自然に身を置いているようで、彼のキャラクターを考えたときに、ごくストレートに’OTAKU’という言葉が浮かんでくる。そんな彼はZoom Lensというレーベルないしはミュージック・コレクティヴを牽引し、また自身でもエクスペリメンタルなNoise作品、ElectronicなPop musicを作って、配信している。

日本の文化に影響を受けて、それを音楽に落とし込んでいるアーティスト、ミュージシャンはままいるでしょう。特にアニメやビデオゲームの要素を持ち込んでいる人が多く感じるのだけれど、もちろんこのMEISHI SMILE(言い忘れたけれど、これはYūko Imadaのソロ・プロジェクトだ)も例外ではない。ただ彼の作るPop musicにおいては、’中田ヤスタカの音楽’というものが、大きな柱のようにそそり立っている。残念ながら音楽理論を知らない私には、どこにどういう形で現れている、とは指摘できない。けれどエレクトロな響きの中に、高揚感と同時に悲しみを響かせるこの在り方は、すごく中田ヤスタカの作るJ-Popに似たものを感じさせる。悲しみを振り切ろうとして全速力で走っているうちに、やがて景色は猛スピードで流れはじめ、けれど反対に、感情と身体はゆるやかに分離していくような。身体は感情を失くしたはずなのに、なぜか眼からは涙が流れている。だからこの作品は、少しだけ、悲しい。

リリースページによれば、’An album about the cycle of heartbreak’とのことだ。ダンサブルなリズムに乗って、いつまでも回り続けるハートブレイク。輝くシンセが生み出す感傷性は、輪のように回り、リスナーの心を占領する。特にM-1やM-6がフェイバリットだ。現実を捨て、思い出主義者に早変わり、いつまでもこの切なく輝く輪の中に、身を置いていたくなる。鳥肌が立つような高揚感、静かに涙が出るような切ない思い。M-5やM-8では、Shoegaze(これも彼の音楽的バックグラウンドのひとつだろう)にも通じるような粒子の粗いテクスチャーを使って、どこか近未来、サイバー感覚の風景を描いてみせる。マッドでキッチュで阿呆なものが大好きそうな彼が、こうやって感情に訴えるシリアスな作品をドロップしてくるという、この二面性、大好きです。私にとって非常に魅力的な人物です。

本当にすばらしい作品で、私は”ありがとう!”と言いたい。多くの人に聴いてほしい。特に日本のリスナーには。中田ヤスタカの音楽が海を越えてアメリカの少年の心をゆさぶったように、この”LUST”によって、心を動かされる日本の少年/少女たちもまた、現れるはず。そして、彼らの音楽が、世界に向けて発信される日が、いつかきっとくるでしょう。迷わず聴くべし。コレをPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅと一緒に、携帯型音楽プレーヤーに入れたっていいんだ。そう考えるとすごいな。自分が作った音楽と、大きな影響源になった音楽が、顔も知らないどこかの誰かの音楽プレーヤの中で並ぶなんて。夢のようじゃないか。

ちなみにアートワークは、日本人のOshima Tomokoさんが手がけている。Zoom Lensのイメージに恐ろしいほどピッタリだ。Tumblrも面白いので、下記のリンクから覗いてみてください。


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Credits:

Artwork by Oshima Tomoko
Contact: tomokoo0909@gmail.com

tmsowacl.tumblr.com
twitter.com/tmsowacl_
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Mastered by Jeff Matthews
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