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カテゴリーアーカイブ: Adv. Materials

開花 tree – Fiori di l’amuri [AM014]

 開花 tree - Fiori di l'amuri [AM014] Cover

 – Tracklist –
 01. رؤى حديقة
 02. 完璧な晴天
 03. 今まで私があれば
 04. 森の秘密
 05. 月明かりに照らされた湖
 06. Cunchiusioni



 - 02. 完璧な晴天


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 Release Date : 2016.09.05
 Label : Adv. Materials

 Keywords : Ambient, Drone, Flower, Love, Melodic, Mystic, Nature, World.


 Related Links :
  ≫ TDS on bandcamp


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2015年設立のAdv. Materialsより。開花 treeの作品です。といっておきながら、“by TDS”というクレジットがありますね。Vaporholicな方ならいざしらず、私のようにTDS=The Downward Spiral?なんて思う人はいないかもしれませんが、まあとにかく誰ですか?ということで、いつの間にかめっきりこの界隈(だけじゃないかもしれない)の作家を網羅し始めているDiscogsを頼ってみましょう。するとTDSはTelepathic Data Storage、あるいはDefunctの名義を持っていて、さらにはsaki 夢も参加する“Aquatic Airlines 魚の平面”のメンバーでもあることが分かります。またDiscogsでも関連性は示されていませんが、TDSはDOAT―Death Of A Telepathでもあり、Pure Lightでもあるようです。複雑ですね。

しかし今TDSのものと思しきbandcampを訪れても上記の名義による作品は一つとしてなく、Soceco(社会経済学:Hantasi & Seoul?)へのリンクがあったりして、頭を整理するはずが逆に混乱をしてしまいました。どこかにミッシングリンクがあるのかもしれませんが(偏執的にディグれば関連がありそうな他の名義も出てくる)、それを探すことがこの投稿の本願ではないので、追及はここまで(しかしVaporな音楽のこういったディグり甲斐―サンプルの元ネタも含め―というやつも、その魅力の一つではありましょう)。

DOATの“Wolrd 1”ではストレートなChip music、“Deep Into The Rave”ではRaveでありつつもストレンジなElectronic musicを、pure lightの“ߣ≠©«¡ø≈¥αåø”ではささくれ立ったHardvapour、defunctの“aquatic sketchbook”では、ミニマルでfish dreamなAmbient musicと、名義、作品ごとにスタイルを変え、その芯を見せることをしない不思議な作家さんです。本当に一人なのか、複数人ではないのかと疑問も浮かびますが、“aquatic sketchbook”について“defunct (known for her work as DOAT) ~”という記述があるところを見るに、どうやらソロのよう。何にせよ、気になる方は深く掘ってみてください。

肝心の本作はといえば、Ambient/Droneサウンド。無味無臭、ピュアなトーンのそれとはまた違っていて、ゆるやかでミニマルなフレーズがリフレインすることで、淡いメロディが形作られている。虫の声や風の音にも聴こえる効果音や、ウィスパーヴォイス、エスニックな音色も散りばめられていて、知らず、私の脳裏には、霧に包まれた山々とでもいったような、神秘的で幽玄な景色が浮かんでくる。

他の作品についても決してVaporWaveに正面からアプローチしたサウンドではないけれど、それは今作も例外ではなく。Adv. Materialsのカタログには排水溝ヴォイスを活かしたVaporWaveサウンドが多いけれど、そのような背景、文脈を無視すれば、およそ今作はVaporWaveとは関連性を見いだせない。ラストのトラック‘cunchiusioni’に至っては、Piano、ストリングスの感傷的なメロディにDowntempoなリズムを持ち込んだ、ちょっと涙腺が緩むくらいの抒情的なものになっていて、それはこれまでのTDSに絡む作品とも違うし、開花 tree名義の前作“ドリーミング桜”とも違うし、また今作収録のほかトラックとも違うし、これには素直に驚かされた。

タイトルの“Fiori di l’amuri”は直訳すれば“花の愛”という意味になるようです。使用されているイメージやトラックタイトルもロマンチックなものになっていますが、作中の視点は自然の神秘性から始まり、それは徐々にミクロに向かい、花の持つ美しさとそれゆえの儚さに収斂し、そして幕を閉じるような。

トラックによってはTranceやShoegazeのエッセンスも感じられるし、開花 treeが真に上に示したような複数名義を持つならば、まったくもってその音楽的な引き出しの数と、そこにある深さは杳として知れない。


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by TDS

(CC) by – nc 3.0