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cool places – coral beach resort [TWFM 009]

 cool places - coral beach resort [TWFM 009] Cover

 – Tracklist –
 01. I: finally, you’ve arrived
 02. II: resort shoppe
 03. III: fitness center
 04. IV: karaoke bar
 05. V: outdoor pool & spa
 06. VI: jacuzzi
 07. VII: entertainment zone
 08. VIII: beach-view brews
 09. IX: water park
 10. X: grand strand getaway



 - 05. V: outdoor pool & spa


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 Release Date : 2019.08.21
 Label : tapewurm.fm

 Keywords : Electronic, Melodic, Midi, Utopian Vurtual, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ Crystal Data Enterprises


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サナダムシ!ですよ。そういえば詳しく知らないよねってことでWiki読んでたら体内がムズムズしてきたので、熱心に読むのはやめました。ここに長ったらしく引用文でも貼ろうかなと思ったんだけど、やめておきます。確認したい人はリンクからどーぞ。長いと10m以上になるものもあるんだなあ…ふーん…。そういえばサナダせんせいってキャラクターもあったけど、よくよく考えたら、子供向けのバラエティ番組でサナダムシをキャラクター化ってのも、過激…。

じゃあなくて、いやそうでもないんだけど、このレーベルの名前、tapewurm.fmってどういうニュアンスで使ってるのか分からなかったんですが、bandcampのヘッダーにデカデカと“サナダムシ”とございますので、tapewormのモジりということでよろしいんでしょうか。ちょっと話逸れますけど、Nine Inch Nails(NIN)ファンの私としてはそのtapewormという響きで思い出すのは、Trent Reznorがその昔立ち上げかけたサイド・プロジェクトにまんまTapewormというものがあってですね、これはTrentはもちろん、NINのライヴメンバーのほか、Tool, A Perfect CircleのMaynard James Keenanや 、HelmetのPage Hamilton、PanteraのPhil Anselmo、プロデューサのAlan Moulder等々が参加した、スーパーグループ、スペシャルなプロジェクトで、Trentもたびたびインタビューで言及しておったのですが、結局リリースはないままに、2004年にあえなくプロジェクト終了宣言…というものがあって、それをボンヤリ思い出したのですが、今レーベルのリリースを見ている中で一つ、ひときわ気になったのが、なんとNIN、Trent Reznorがジャケットイメージに使われている作品がある!(いやここで取り上げている作品ではないのですが。アハハ。ちなみにそのタイトル“F R A G I L I T Y 3​.​0”はNINが2000年に行ったライヴツアー“Fragility 2.0”にあやかっている)。これはTrentのインタビューを使った奇妙なSpoken Word作品で、関わっているreznorwaveは一貫してNINとVaporWaveをコンバインしたトラックを作り続けているという…そんな作品をリリースしているレーベルの名前がtapewurm.fmって何かの縁ですよね、私にとって。膨大な作品があふれているネットの中から何を聴くか、そのきっかけとなるには十分すぎるこの縁をたどって行き当たったのが、さあこの作品。ようやく。

Midiの体裁を生かした、いってみればイージー・リスニングな作品だとは思いますが、方向性はどうあれ、この現実から乖離したイメージというのはやはりVaporWaveと共振するものがあります。サンプル―ベースなのか、原曲があるのか等々は判然としませんが、チープさゆえに醸されるレトロ感、シンセサイズ感の強い音色たちが与える不思議な漂白感。その中で作り上げられる仮想ユートピア(Utopian Vurtual)というのが、この作品の肝になるかと思います。しかしながらこれはこのレーベルからのリリース、この文脈で聴いているからこその聴取感であって、また違ったとらえ方をすれば、ぜんぜんVaporWaveとは切り離して聴くこともできると思います。素直にリラクシンな空間があるわけですし、それを享受することはおかしいことではない。当たり前だけど。

そういうことでいうと、VaporWaveと共振するようなMidi風作品で異彩を放っていたものは、私の狭い聴取範囲でいうと、ここでいくつか紹介したPHAṅTom ᴀᴄᴄᴇSS hazeからの作品ですとか、Amun Dragoonの後期の作品とかです。私別にピエロ恐怖症とかではないんですが、なんていうんでしょうか、お面とかもそうだけど、貼りついた表情の裏にある正体が不明であるがゆえの不気味さっていうかね、あとはコーティングの無菌感、無機質感への憧れ―あくまで憧れだから、決してそこにはたどり着けないという諦念の裏返し―とかね、そういう不気味さとか空しさとかがあちらにはあって、こちらにはない、ような気がする。別に悪いとかではなくて、違いを感じたということです。

だから今作はストレートに、真っ当に、ここにあるcoral beach resortをね、楽しむべき作品なんじゃないかなって、そう思います。


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Č∂є hλs tɘλmɘd up with thɘir pλrtnɘrs “cool places”. A trλvɘl λgɘncy f๏cusɘd ๏n sh๏wing thɘ pɘ๏plɘ ๏f ɘλrth λmλzing plλcɘs t๏ disc๏vɘr whilɘ thɘy’rɘ λlivɘ. Wɘlc๏mɘ t๏ thɘ Coral Beach resort, t๏night is disc๏ night λt thɘ kλrλ๏kɘ bλr.


Produced by: cool places
crystaldataenterprises.bandcamp.com

LOSTSLEEP – L O S T S L E E P

  LOSTSLEEP - L O S T S L E E P

 – Tracklist –
 01. foolish heart
 02. me & you
 03. love again
 04. sinner’s blood
 05. fuck yourself
 06. told you
 07. be mine



 - 01. foolish heart


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 Release Date : 2020.03.31
 Label : Ezhevika

 Keywords : Chill, Electronic, Indietronica, Synth, Vocal.


 Related Links :
  ≫ LOSTSLEEP on SoundCloud / on VK


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時間の感覚がずれている。遅いような、早いような、不思議な感覚が続く。どういった時間の過ごし方が最も自分にとってよいことなのか、考えるが、心に巣食っている不安というヤツが、いつも邪魔をする。集中を妨げる。どんな状況になっても結局不安というヤツは消えていかない。水道の蛇口からゆっくりと水をだし、空のヤカンに水を満たしていく、そこに生まれる波紋に視線を向け、とめどなく動き続ける水流を、グルグルと追っていく。さながら私の心の中のようではないか、ゆっくりと、ゆるやかに、何かが渦を巻きながら、貯まっていき、そしていつかは溢れ出る――

などということを私がやっている最中も、世界には、相変わらず――本当に相変わらず、音楽が流れていた。

ベラルーシはミンスクのレーベル、EzhevikaからリリースされたLOSTSLEEPのセルフタイトル作。ウクライナ、ドラツクのトラックメイカー。おそらくは初作だと思うんですが、いい意味での裏切りが耳を引きますね。M-1, 4はヴォーカリストを招いてのウタモノトラックになっているんですが、この歌声のエレガントな調子からして往年のトリップホップなリズム系が似合うんじゃないかなあ、というか、そういうドゥビーン、ズブゥーンというダビーでヘビーでスロウなリズムを予想してしまっている私がいたんですが、全然違った…。4つ打ちバスドラムが響いた瞬間のこの新鮮な空気たるや。そしてアンバランスにも思えるデカめのシンセによるアンビエンス。そこからさらにリズムの手数は増えて慌ただしくなっていく中で、歌声は優雅に響き続けるという。M-4もいろんなエフェクトを散りばめた上で醸されるこのチルな空気のウタモノトラック、いいですねえ…ちょっぴりノスタルジア。

M-2はやはりシンセの包容力ある空間とBreakbeatも交えてちょっとアブストラクトな出だしでダークな方向にいくかと思いきや、まさかの哀愁ブラスが鳴り響いて、夕暮れの都市風景が目に浮かんでしまうじゃありませんか。M-3もこの冒頭の音色、なんていうんですかコレ、不勉強で分からないんですが、この音色すごく好きなんですよ。夜の底っていうか、都市の夜景が浮かぶような、しっとりラウンジな感じで行くかと思いきや、でもやっぱりそこから転じて、Electronicな方向でMelodicにまとめるっていう。M-6もPost-Punkみたいなフレーズが初っ端に出てきて通底するんですが、なんでここにコレなんだろうなあーという不思議な按配です。そのままなだれ込むM-7も尖がったシンセフレーズから始まって、徐々にいろんなサウンドフレーズが重なってビルドアップされていくにぎやかなトラック。もっとよい再生環境で聴けばまた違った印象になりそうな気もします。

M-8がようやっと、私が初めに今作に抱いたイメージに近い音像、かな、という感じです。スロウでダビーな空間処理で、ちょっぴりダークっていう。最後のトライバルな調子とか雄々しくて面白い。全体通して聴いてみると、今作って似た音色が多いような気もするんですが、各トラックは意図的にコネクトされているそうなので、敢えての作りなのかなと思います。“All tracks are connected with each other, from youthful exuberance to self-perception. All that is left is to walk on and aim for the best.”とあるので、みなさん自分なりにここから何かを読み取ってみるのも、また一興かと思います。

習作のようなニュアンスも感じられますが、さりとてこのユニーク、絶妙なバランス感覚も好ましくありますので、今後もこのPOP指向を保ちつつ、バリエーション豊かなトラックを期待しております。◎。


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 Credit

Music: Danil Markov (LOSTSLEEP)
Vocals (Tracks #1, #4): Axu Dzhuraeva
Design: Alexander Goluziy (Blood Burner)



Radiophile – Serrated Love[IDMF057]

 Radiophile - Serrated Love[IDMF057] Cover

 – Tracklist –
 01. Serrated Love
 02. Xanax
 03. Brutalism
 04. 359°



 - 01. Serrated Love


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 Release Date : 2019.06.29
 Label : IDMF Netlabel

 Keywords : Ambient, Electronica, IDM, Melodic, Psychedelic.


 Related Links :
  ≫ Radiophile on SoundCloud


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IDM Forumsのレーベル面であるIDMforums Netlabel。気づけば10年選手ですね! コンスタントなリリースという点では中だるみもあったような気もしますが、ネットレーベルとして10年というのは長寿といっても良いと思います。IG88とはかこのレーベル経由で知ったように記憶しています。

Radiophileはアイルランドのトラックメイカー。2018年に同じレーベルからObscurityをリリースしています。あまりウェブ上での動きは活発ではないようで、ほとんど足跡は残っていませんが、その隠密な雰囲気も好きですよ私は。トラックだけ投げつけてササッと身を隠す感じね。なのでどういったバックボーンがあるのかとか、詳しいことは分からないのですが、ひとつ言えることは過去作よりこの最新作が良いということです。

何が良いってメロディが強くなってる点。MelodicなIDM/Electronica好きとしては、ここは推しポイントです。M-1‘Serrated’やM-2‘LoveXanax’のシンセな音色とゆるやかな流れは荘厳な気配もありつつ、ちょっと感傷的な旋律はビューティフルで、なんだか御大mosaikを彷彿させるじゃあありませんか。鼓膜と心を震わせる。でもコテコテにメロディに寄っているわけではなくて、どのトラックでも絶対一回道を外れるというか、あえてミニマルな展開を拒否しているような節がある。メロディ一発で突き進んでもいいのになあと思ったりもするんですが、一回途中で脳みそに電極ブッサして違う反応を引き起こそうとしているような、甘美な夢の中、視界の端に薄暗い一角をあえて作り出そうとしているような、挑戦的な姿勢が感じられます。そういう意味でサイケデリックなテイストもありますね。最終的に元の道、元の視界に戻すのかと思いきや、そうでもなくて、M-4‘359°’などはノイジーな響きでフェイドアウトしていく(360°に1°足りないってどういうニュアンスなんだろう。完成されていない何かというイメージ)。その辺りがユニークな音作りに思います。

メロディ全開にしたトラックも聴いてみたい、そんな気になるトラックメイカーさんです。


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 Credit :

Composed by: Radiophile
Cover art by: nostromer (ft. stills from Radiophile)

(CC) by – nc – sa 3.0



VHS ნ ი ღ ბ ე ბ ი – ვ ა რ დ ი

 VHS ნ ი ღ ბ ე ბ ი - ვ ა რ დ ი Cover

 – Tracklist –
 01. ლ უ რ ჯ ი
 02. მ შ ვ ი დ ო ბ ა
 03. ც ი ვ ი
 04. ტ ყ ე
 05. ი ს ე ვ მ ა რ ტ ო
 06. ა ხ ა ლ ი ს ა უ კ უ ნ ე
 07. ე ლ ე მ ე ნ ტ ი
 08. ღ რ უ ბ ლ ე ბ ი
 09. მ შ ვ ი დ ო ბ ი თ ( ს ა მ უ დ ა მ ო დ ? )



 - 06. ა ხ ა ლ ი ს ა უ კ უ ნ ე


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 Release Date : 2019.07.26
 Label : Hallworth Collective

 Keywords : Ambient, Dream, NatureWave, Rose, the end of summer, VaporWave.


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効率的、効果的なエアコンの使い方も分からないし、外へ出れば暑いし、電車に乗れば寒いし、また外に出れば暑いし、その寒暖差を繰り返し体験するうちに、体に変調をきたすし、夜は寝苦しいし、エアコンを使えど、扇風機を使えど、結局のところ何度か目を覚ますし、鼻は詰まってくるし、つまりは夏なんだけど、夏の好きなところは前にどこかにも書いたように洗濯物が早く乾くことくらいな私は、夏は嫌いだとハッキリ言える。精神のたるみ、集中力の霧散、ゆえの無産。これらを招くような気がして、要は心地よくない。

雲が多い日が続いて、陽が隠れることが多くなって、少し(少しだ)涼しくなって、一瞬だけ夏の終わりを錯覚する。その瞬間。とても心がアガる。要は心地よい。その一瞬の心地よさが、ここに、今作には封じ込められているように、そう感じた次第。

豊潤な、深みのある、ふくよかな、音空間。その空間には夏の記憶が封じ込められている。遠くで聴こえる鳥の声、虫の声が、ヴァーチャルな記憶を助長する。いもしなかった、過ごしもしなかった、イマジナリ―な夏の記憶はドリーミィ以外の何物でもなく、仮初の夏の終わりの喜びと相まって、より一層に心地よい。

アーティスト名も作品名も、トラックタイトルも、なんのこっちゃよく分からない。機械翻訳という文明の利器に頼ったところで、やっぱり、さっぱり分からない。文字による表現を意図的に排除、回避しているようにも取れる。そうであるならば、こっちの聴きたいように聴いてやろうという(いや聴かせていただきます、です)、そんな思いを引き延ばしていくと、夏の終わりに行き着いた。

不思議なことに、水の音は聞こえないのに、私の頭に最初に浮かんだのは、水滴が水面に落ちて波紋が広がる様子だった。ミルクのような霧が立ち込める渓谷で、さまざまな自然音が周囲には飛び交っていて、けれど私は結局どこにもいないという。決して観測されることのない、傍観者。誰の目にも止まらないという安心感。このウェットな膨張感、夢心地(より具体的にいえば環境音に施されたエフェクト)は、一瞬、Brian EnoとHarold Buddの共作たちと交錯した。

―そうして夏は遠ざかるそぶりを見せる。私は嬉しさと同時に、寂しさを感じる(何かが離れていくときはいつもちょっと寂しい気がする)。でも、また夏は来るんですよ。そして私の目は覚める。

水も滴る、なんて的確とは思えない表現が真っ先に頭に降ってきた。あるいは“熟れる”というワード(たとえばAVIONの作品につかったような)。花に対して熟れるという表現が使われるべきなのかは分からないけれど、そういう意味で薔薇(ばら)がイメージに使われているのかしらん、とか思ったりもしましたが、関係ないかな。一瞬、サイケデリックなスペース・アンビエントに片足突っ込みかけるような気もしますが、非常に包容力のある空間で、気持ち良いですね(風呂に似合いそう)。ところどころで滲む一抹の寂しさが、個人的には惹きになってます。



The Learning Company ® – Observations on Ritual Landscape, Pilgrimage, and Human Sacrifice in the Southern Ouvis Region [PHANTOM-22]

 The Learning Company ® - Observations on Ritual Landscape, Pilgrimage, and Human Sacrifice in the Southern Ouvis Region [PHANTOM-22] Cover

 – Tracklist –
 01. Mountains of Sustenance and Cliffs of Paradise in Uvaisan Pilgrimage
 02. The procession leaves the village with drummers, flutists, ritual officials, and red banners – proceeding to Mount Uwei. They ascend and play their instruments until they reach the summit; there they play all night until the third day and do not sleep so they can preside over their Gods.
 03. Uvaisan Ritual Object
 04. What It Looks Like to Us & the Anthropological Terms We Use to Describe an Evil
 05. Uvaisan Pilgrims Ascend Mount Uwei
 06. Acropolis flanked by cliffs, ritual architecture, large zoomorphic figures, and three lakes
 07. Curved mountain that resembles depictions of Shu’ve in Uvaisan codices, near the Kajai’sha River
 08. Cannibal Women Descending a Stone Causeway
 09. The Apparition of Mary Above Pilgrims at the Shrine of Uvaisan
 10. Ritual Cave at the Ruins of Uwei
 11. One tribe’s sacred pilgrimage to a Shu’ve hidden temple goes haywire when the cave turns out to also be a backdoor to a wrathful jungle deity
 12. Uvaisan shrine of piled stones in a pool of blood at the end of a tunnel
 13. Incense burners light the way to an exit
 14. Uvaisan Pilgrims Sacrifice a Young Male at a causeway terminus, Crest of Zaisan
 15. Blood & Springwater Flowing Over a Ritual Cliff at Zaisan
 16. Mouth of the Sacred Shu’ve
 17. Line of Basalt Monuments Near Mounds, Spring, and Hills, Zaisan
 18. Ouvis Islands & Ritual Waters
 19. Conclusions: Neutralization/Sword of Saint Michael



 - 06. Acropolis flanked by cliffs, ritual architecture, large zoomorphic figures, and three lakes


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 Release Date : 2019.02.19
 Label : PHAṅTom ᴀᴄᴄᴇSS haze

 Keywords : Dungeon Synth, Midi, NewAge, RPG, Synth, VaporWave, VGM.


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“懐かしく思い出した。本格ミステリィの潔さを”。というのは、周木律さんの書いた推理小説“堂”シリーズの第一作“眼球堂の殺人”に、森博嗣さんが寄せた惹句。今作を聴いていてそんな言葉がよみがえったのは(ちなみに“堂”シリーズは2019年2月刊行の“大聖堂の殺人”を以て、完結した)、懐かしく、潔い、というワードがあてはまったからに違いない。

てっきり動きを止めたと思っていたPHAṅTom ᴀᴄᴄᴇSS haze(ex. ♱ )がちゃっかりカムバックしていることに気づいて、リリースをチェックする中で、圧倒的異彩を(というかこのレーベル/コレクティヴのリリース全体が異彩な気もする)放っていたのがこの作品。そもそもレーベル/コレクティヴなのか、一人が複数名義を使って作品をリリースしているだけなのか、いまだに判然としませんが、今作の作り手はThe Learning Company ®。“原子カフナCAFE”の拡張版、“原子カフナCAFE (a moderately enhanced audiophonic experience) ”の作り手としてその名前を見ることができますし、Karen Weatherlyの作品にもクレジットされています。

たとえばそう、Karen Weatherlyの“A Separate Reality”について、それはCarlos Castaneda(カルロス・カスタネダ)の著作に基づいた(架空の)冒険譚にあてがわれたサウンドではないかと、私は想像を逞しくしたわけですが、今作についても、これは似たコンセプトなのかなあと思い、ここに秘められている物語の源を探ってみようと試みたわけですが、さっぱり分かりませんねん・・・。各トラックのタイトルから何となく察するに、そしてタグに“RPG”と使われていることからして、やはり何がしかの冒険(それもビデオゲームの中の)がイメージされているのだろうとは思うのですが。このレトロな洋ゲー感丸出しのジャケットイメージとかどっから持ってきてるんだろう・・・知りたかったぜ。現代の少年が遺跡の中で不思議な剣を見つけて、異世界へ旅立つ・・・てまあ、ありきたりだけど、そんなお話が下地にあるのかなあ。

曲はMIDI風の音源で軽快な部分もあるんですが、トラックタイトルはけっこう穏やかじゃないですよね、M-12は‘Uvaisan shrine of piled stones in a pool of blood at the end of a tunnel’だし、M-14, 15も‘Uvaisan Pilgrims Sacrifice a Young Male at a causeway terminus, Crest of Zaisan’‘Blood & Springwater Flowing Over a Ritual Cliff at Zaisan’と、血のプールに石を積み重ねて作られた建物だったり、生贄や儀式と、血なまぐさいイメージが並んでいます。そういった部分のせいもあるんでしょうか、曲自体に圧力は決してないんですが、どこか重々しく、グロテスクに感じられてしまうのです。なんなら導入部のM-1にいつかのOPN(Oneohtrix Point Never)を感じたせいもあるかもしれません。メロディはあるけれども決して明るくはなく、ときおりバロック音楽やフォークロアを感じさせ、なおかつVGMを匂わせるという体裁からは、Dungeon Synthと共振するものを感じますし、積極的にその方向から紹介する人がいてもおかしくない。MIDI風のサウンドにごまかされてしまう部分もありますが、よくよく聴くと、面白いし、よくできている作品だと思います。私の中では名うてのトラックメイカーですね。

そう、“懐かしい”MIDI風のサウンドを、“潔く”使っていながらも、なんで”VaporWave”なん?て言われたら正直分かりませんよそんなもん。明らかに“過去”のものであるMIDIサウンドをNewAge調の大仰なサウンドと共にリバイヴさせているという点、プラス、その大仰さの中に漂う不穏なサウンドが、VaporWaveの何たるかを感じさせるからでしょうか。・・・にしてもタイトル長いなあ、いや、長いよなあ。

なぜか聴いていて思い出したビデオゲームがあってですね、いずれもKEMCO(ケムコ)が発売した作品で、“シャドウゲイト”と“悪魔の招待状”でした。不気味なんだけど、どこか滑稽、そして世界はファンタジーという部分で、リンクしたのかもしれません。以下に―













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Some rights reserved. Please refer to individual track pages for license info.



Samsara inc. – Simple Stories[CUNTROLL115]

Samsara inc. - Simple Stories[CUNTROLL115] Cover

– Tracklist –
 01. Forgetting
 02. Owls
 03. Forgotten amusement park
 04. Waterfalls
 05. Spring
 06. Hero(in)side
 07. Millenium
 08. Musicbox

 - 02. Owls


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Release Date :2018.03.01
Label : Cuntroll

Keywords : Ambient, ChillOut, Downtempo, Electronica, Guitar, Melodic.

Related Links :
≫ Samsara inc. on SoundCloud / on VK


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ロシアンネットレーベル、Cuntrollより。同じくロシアントラックメーカーのSamsara Inc.(Rodion Kudryavtsev)の作品です。以前にも同レーベルからの“Possible Worlds”を紹介しています。

私の偏見かもしれませんが(おそらくそうでしょう)、ロシアのミュージックって、音の組み合わせ方とか音のバランスとか、要は音作りが独特というか、極端であるイメージなんですが、今回のSamsara inc.のサウンドは統制が取れている。いや独特な部分もそれはもちろん感じられるのだけれど(どっちだよ)、私の中ではバランスが取れているということです。

小気味よいリズムにピアノやシンセの澄んだ音色を織り交ぜてAmbientiveでありながらしっかり動きのある空間を作るんですが、このSamsara inc. の特徴といえば何といってもギターでしょう。しかしながら流れる景色の中で感情性を醸し出すギターの音色は今回そんなに自己主張してこなくて、全編通してみると総じてサポートに回っている印象です。だからかどうか、曲調もちょっとメロウによっている気がします。そのせいでしょう、前作に書いたような、インディギターバンドみたいなイメージはちょっと薄れました(ダイナミックな音像はM-5, 7くらいですか)。細かいGlitchだとか、トライバル、パーカッシヴなリズムだとか、演出、エフェクトにこだわりが向けられている気もします。

M-6の‘Hero(in)side’だけ、夜の底で思考がトグロ巻いているみたいな粘着性がありますが、あとはもう総じてMelodicですね。‘Musicbox’のプィーンとした電子音とかちょっとVGMっぽい響きで、ノスタルジックで堪りませんねえ、そこからのラストへ向けて疾走するBreakbeatも哀愁を加速させる。M-2‘Owls’の静かな風景もよろしい。ありきたりな風景かもしれないけれどそれが大事っていうか。まあいってしまえばEasy Listening的な部分もあるんだけれど、見慣れた景色ってやっぱり安心するじゃないですか。海外旅行の刺激もよいけれど、やっぱり帰ってくるのは我が家っていうか。安心があるんですよ。そんなM-2から続くM-3‘Forgotten amusement park’は、キラキラした音色をバックにギターとピアノが風景を流れていく哀愁の透明感トラック。電子的なリズムの上でギターが血を通わせるM-4‘Waterfalls’もクールです。

シンプルなストーリでもそこには確かに物語があって、リスナーはそれによって何がしかの感情を引き起こされるのです。そしてその感情に嘘偽りはない。作品に付されたメッセージはきっとそんなことを言っているのだと思います。Samsara inc.は他のレーベルからも作品をリリースしていますので、気に入った方はディスコグラフィーをチェックしてみてくださいね(Discogsとか)。


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(CC)by – nc – nd 3.0



VAW – Public Footpath

 VAW - Public Footpath Cover

 – Tracklist –
 01. 01_97
 02. Isøtøpɇ
 03. Think
 04. Ǝ-Numbers
 05. Hana
 06. Escapement
 07. Escarpment
 08. Cave
 09. MSGS
 10. 𝓂𝒶𝓁𝓁 𝑔𝒶𝓂𝒾𝓃𝑔
 11. 02_98



 - 07. Escarpment


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 Release Date : 2018.08.21
 Label : Hallworth Collective

 Keywords : Alone, Ambient, Drone, Field, Psychedelic, Quiet, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ VAW on bandcamp


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みなさんは“ぬくもりが欲しくて 人混み歩いた”(By ZARD)なんてことはありますか。私はありません。“そのぬくもりに用はない”とばかりに精神的パーソナルスペースを発動してこっそりと他人を敬遠するのが私という人間の悪い癖(頭悪いな自意識過剰で)なのですが、さりとて街という人混みに出向かなければならないときもあり、そんなときはしっかりと心に武装をして(大げさ)出かけて行っているような気がなんとなく自分ではしておるのですが、そうやって一人で、否、独りで街へ出ているときにフトした瞬間に訪れる虚無感というヤツ。周りにいるのがすべて他人という事実。一生のうちに今ここでしか出会わないのではないか、つまり彼ら/彼女らとはなんの繋がりもないという断絶感。しかし頭上には太陽が照り、空気は私の頬をスルリと撫で、その横で皆は三々五々、何かを口にしながら、感情を表に出しながら、私の周りを流れ、そして散っていくという、いたって標準的な日常があり。その瞬間、見知った風景が、まるで見知らぬものに変わるような、不条理な感覚に襲われる、ことがある。自分だけが、何か大きな存在から取り残されたような、はぐれてしまったような、孤独感。周りに存在する人々の挙動、口を動かし、表情を変え、手足を動かしているその姿が、なぜか途端にグロテスクに見えてきてしまう(私はこれを職場の食堂でも感じることがある。昼時にテーブル席に着いた数多くの人間が皆、口を開けて食物というある種の物体を体内に入れていくという光景が、ひどくシュールでグロテスクに思える時が)。その一瞬のサイケデリア。たとえばそれは、つげ義春の“ねじ式”において、かみ合わない会話と知らない景色と肉体的なグロテスク、影のある描写から醸される得体のしれない不安感、のようなものにつながっていき、それはまた(私の中で)孤独につながっていく。

そんな、都市、街、における孤独感とでもいおうか、あるいはその孤独を幻想的にごまかすサイケデリアといおうか、そんなものがこの作品(楽曲だけではない。タイトルやジャケットイメージもすべて含めて)には漂っているように思います。添えられたメッセージは“I’m lost, can you help me?”。見知った街で自分の存在を見失う。精神の孤独。魂の彷徨。自分を置いて景色だけが流れていくような奇妙なラッシュ感(‘Escarpment’) 。自分が視点だけの存在になって、存在していながら存在していないような。かと思ったら陽の暖かみが私を現実に引き戻したり(‘Cave’

マルッと捉えればそれはもうAmbient(正直音だけではあまりpublic footpathなニュアンスはない。あとVaporWaveを期待して聴けるのはM9~10くらいだと思う)なんだけど、実に味わい深い。ヘッドフォンで大きい音で聴いているとその味はさらに濃厚になります。

VAWの素性は謎ですが、同コレクティヴからもう2作、“Train Thoughts”、“级联”(どちらもワントラックの長尺作品だ)がリリースされていますので、興味のある方はそちらもどうぞ―