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カテゴリーアーカイブ: netlabel

Omega Sapien – New Intelligence [TKX-400]

 Omega Sapien - New Intelligence [TKX-400]  Cover

 – Tracklist –
 01. Drifts
 02. Evolution
 03. Stalker
 04. Above All Others
 05. Proud Dystopia
 06. Ruins (ft. Sangam)



 - 02. Evolution


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 Release Date : 2017.10.26
 Label : TKX

 Keywords : Ambient, Creature, Cyberpunk, Dark, Haunting, Space-age.


 Related Links :
  ≫ Omega Sapien on SoundCloud / on Twitter


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東京為替がリブランディング(商標変更とはよくいったもんだ)後のTKXよりリリースされた記念すべきカタログ番号400番。

醜く、まがまがしく、それでいて厳かで神々しい空間。Hauntingで思わせぶりな、つまり雰囲気たっぷりのDark Ambient/Drone作品。そのさまはまるでクトゥルフ神話(いや前にも書いたように私はファンではないけれども)。

サウンドトラック的な佇まいで全編行くのかと思いきや、Techno~Hard Vaporなアプローチも見せる中盤~後半部に意表を突かれる。シンセチックなレイヤー(ジョン・カーペンターみたいだ)や、マシーナリーなビートから漂いくる、Space-age、サイバネティクスのヴィジョン。そこにある性急さが不安を駆りたてる。宇宙時代に太古の遺跡に眠るアンノウンな存在から逃げまどう未来人はあまりにも無力で。シネマティックでIndustrialな‘Proud Dystopia’で、なすすべない圧倒的存在の気配を感じさせて(決して姿は見せないのだ。それが恐怖をあおる)、ラストの‘Ruins’では抒情的なフレーズで以て、破壊後の悲哀を漂わせる。

何ら新しいことってのはないのかもしれないけれど、ここにある、ここで見せるイメージが私はとても好きです。初聴きで思い出したビデオゲームがあって、それがセガ・サターンや、PlayStationなどの(あの頃の)次世代ゲーム機用のソフト、“Creature Shock”なのです(懐かしいなオイ)。確か中古で買ったけど難易度激高で結局かなり序盤で挫折した記憶がありますネ・・・。同じような設定だと“ENEMY ZERO”も思いつくんだけど、そっちじゃあないんですよね。

で、どんなゲームかって気になるでしょう? 以下に貼りますよ。この絶妙なノスタルジアと(私にとって謎なまま終わっているが故の)アンノウンなところが、今作と共振するんだろうな。そしてその辺りが、やはりVaporWaveの何たるかと通底しているようにも思う。その絶妙なさじ加減、バランス感覚はさすがのTKXというべきか。ジャケットデザインもグッド。



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 Note :

Artwork by @baojiaxiang www.instagram.com/baojiaxiang/

“Thick limbs, disproportionately small thorax, hairs sprout out of the skin like weeds in a desert. That repulsive odor.
Keeping us chained, leaching, a parasite. Sucking the life blood out of us, blinded by their own instinct. That same blindness, their achilles heel.
They destroyed themselves like they destroyed us, it was only a matter of time until the next rose from their ashes. The new intelligence nestled in their ruins.”



Various Artists – Cómplices

 Various Artists - Cómplices

 – Tracklist –
 01. Gnomo – Desaparecidos
 02. Oceanozero – En Desobediencia
 03. pHunk – La Noche
 04. Datashit a.k.a. 00.2.7x – Basura
 05. Safoh & Venus – Hemeo Aztinomia
 06. In-seckt – Get Out Of My Head
 07. pHunk – Mucha Policía



 - 03. pHunk – La Noche


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 Release Date : 2017.10.06
 Label : Incordia Netlabel

 Keywords : Compilation, Breakcore, Electronic, Glitch, IDM, Jungle, Noise.


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自分の中の忘れていた自分に出会うというのは、いつもショッキングであり、そしてそれが自分の望まない自分であった場合、恐怖でもある。

最近私は愛用していたウォークマンを失くしたのである。つまり日進月歩の便利な電話モドキとは別に音楽再生装置を持ち歩いていたわけである。おそらくは食堂で下膳の際にトレーに乗せたまま、そのままベルトコンベアに託してしまったのはでないか、つまりベルトコンベアの先に待ち構えている食器や何やかんやを洗うシンクにドボンしたんではないかと考えられる。いや確認はしていないが恐らくそう。ああ。

まあ新たに買うことは決定事項であるとして(現時点で購入は果たされている)、その時間が取れるまでは、しばらく私は裸の耳で過ごさねばらななくなった。裸の耳というのは、つまりガードがないということである。

学生時代が終わってしばらくは私は携帯型音楽プレイヤーに否定的だった。尊敬していた人物の言も関係していただろう。「しゃらくせえ」と思っていた。音楽じゃなくて身の回りの音を聞けよ、なんて思っていた。が、いつからかうっかりウォークマンに手を出したらすっかり戻れない。自意識過剰で頭悪い私は、いちいち他人の視線や言が自身の矮小さを指摘しているように感じられる質なので、ウォークマンを通じて左右の耳の間に作られる世界は、そのわずらわしさから身を隠すのにうってつけだった。

はたして久しぶりにそのガードが外れてしまった私はしかたなく丸腰で電車に乗るわけだが。これが実に落ち着かない。自分でもハッキリ分かるくらいに。どれだけ音楽によるガードに依存していたのかを思い知る。そしてそんなときに私の前に立った大学生男女が充実したトークを繰り広げるものだから(内容は省きましょう)。対比的に自身の暗く鬱々とした学生時代が浮き彫りになってくるようで。耳をふさぎたくなる(目は閉じた)。お決まりの矮小感が身を貫く。逃げ場がない。“ああオレこんな人間だったな”と己の弱さに面喰い、そして精神的にうなだれる。“今畜生!”という気概もなく、ズルズルと家路を歩く。

そんな自分には再会したくなかった。

きっとそんな車内で私がウォークマンを持っていたなら、今作を再生していただろう。なんて思う。耳をふさぎたいってよりは、自分をブッ飛ばしたい気持ちかもしれない。でも聴き返してみたら、そんなにやかましくなかったネ。


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(CC)by – nc 3.0



SANDRINE DEUMIER AND PHILIPPE LAMY – TÉLÉMAQUE [DWS184]

 SANDRINE DEUMIER AND PHILIPPE LAMY - TÉLÉMAQUE [DWS184] Cover

 – Tracklist –
 01. TÉLÉMAQUE


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 Release Date : 2017
 Label : deepwhitesound

 Keywords : Ambient, Noise, Obstruction, Poetry, Spoken Word, Sound Art.


 Related Links :
  ≫ Sandrine Deumier
  ≫ Sandrine Deumier on SoundCloud / on Vimeo

  ≫ Philippe Lamy
  ≫ Philippe Lamy on Facebook / on SoundCloud


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2005年から続くエクスペリメンタル系netlabel、deepwhitesoundより。勝手にフランスのレーベルかと思ってましたが、アメリカのレーベルなんですかね。まあどこでもよろしいですけれどもネ。

アートワークが気になって聴いていたわけですが、レーベル側の説明はまあ足りないですよ。何がなんやら分からなくないですか。それもミステリアスでよいといえばよいんですが。ということで色々と付け足していきますと、まずはリリースページに書かれている文章は、今作で挿入されているSpoken Wordの一節です。ダウンロードしてもこれしか付せられていません。すべてを知りたい場合はSandrine Deumierのウェブサイト内で公開されていますので、そちらをご一読ください(≫ text “télémaque” ※下部“next”をクリックすれば次ページが読めます)。

しかして今作の成り立ちですが、もともとは2015年に製作されていた作品のようです。バックトラックといいますか背景となる音像を製作したのは、フランスのアーティストでもあるPhilippe Lamy。そして語りを担当しているのが同じくフランスの作家/ビデオアーティスト/パフォーマーであるSandrine Deumier。さらに詳しく見ると今作にはどうやら前身となる作品があるようで、それが“GogatsuByo”(五月病!)。これは今作から語りを抜いた映像作品です。つまりこの“GogatsuByo”に言葉を挿入したのが今回の“TÉLÉMAQUE”になるわけですが、これも映像作品として公開はされています。レーベル側からは特に示されていませんが、Sandrine DeumierのVimeoで見ることができます。

ということで、トラックだけでなく映像も含めての感想です―

無菌的な部屋の中で白い簡素な衣装に身を包んだ女性。頭も白いモノで覆われており、顔だけが露出している。あえてなのかそうでないのか、映像の作りは決して研ぎ澄まされてはいない。最低限の立体感のみが確保されていて、動きも不自然だし、スローだし、表情もなく、動きや表情から感情をうかがい知ることはできない。それが全編にある不気味さを助長してることは間違いない。

“GogatsuByo”に付されたテキストと合わせて考えるに、おそらくはインターネット活動(受動的であれ能動的であれ)に関わることによる自我の変容について、ここでは描かれているように思います。作品内にあるそれぞれの動きや、他者との接触が何を意味しているのか、それが単純にリアルライフを示しているとは思わないんですが、じゃあ何なのかと問われると、考えあぐねてしまう。最後の方に出てくるもう一人の自分(のような存在)が、なぜローラースケート(のようなもの)を装着しているのかも分からない。流れる時間の違いを表しているのか? いや分からない。孤独から始まりまた孤独に戻るという流れがあるような気もするが・・・果たして・・・。

意味のある言葉が羅列はされているのだが、そこに文脈を見いだせない。でもそれでも良いのかもしれない。何ならそこには音楽の一つの機能である異常への誘いがあるのだから・・・。フランス語のまろやかな発音、左右のパン、後ろに流れるソフトなノイズ・・・、精神的閉塞感の中にある不思議な安心感。それは幻か。

結局のところ、自由に聴き、自由に見るのが良いと思います(丸投げ)。タイトルの“TÉLÉMAQUE”はギリシャ神話の登場人物テーレマコスに由来しているのだろうか。だとしたらその意味は―


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(CC) by – nc – nd 4.0


Various Artists – PlayGround [#001]

 Various Artists - PlayGround [#001]

 – Tracklist –
 01. 10 – Candy Shop
 02. polu – Chewing Gum
 03. WyvernP – Bouncing Ball
 04. Levi Polis – Toy WarZ
 05. Alisweet – Feeling

 - 02. polu – Chewing Gum


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 Release Date : 2017.12.19
 Label : Palette

 Keywords : Compilation, Dance, EDM, Electronic, Glitch-Hop, Pop.


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韓国のトラックメイカー、ARForestとLevi Polisが中心になった新興レーベルPaletteより。第一弾コンピレーション“PlayGround”がリリースされています。初っ端ということで大量のトラックを詰め込んでくる手もあったとは思うんですが、内容は5トラックということで、厳選されているイメージです。

個人的にはまた(何度目だろう)姿を消したと思っていたpoluが再び姿を見せているのがうれしいところですが(でもSoundCloudにはこの1トラックしか残されていない!)、頭から聴いていきましょう。

10の‘Candy Shop’はタイトルは甘いんですが、中身はぜんぜん違いますね。抒情的なメロディに細かなブレイク、ダイナミックなドラムを加えて、とてもドラマチックな仕上がりになっています。シリアスな予感めいたイントロや、ほんのりVGMな雰囲気があるところも好きです。

poluの‘Chewing Gum’はBleepyなシンセやブレイクが挟まってはいますが、コロコロした電子音や編集したヴォーカルなどをまぶしたglitterなポップチューンで、相変わらずの手腕。4ru名義の頃に見せていたストレートにエモいトラック作りを封印しているような気もしますが、またいつか見せてほしいものです。いずれにせよ、頼むから消えないでほしい…。

WyvernPの‘Bouncing Ball’はいかにもGlitch-Hopなタイトルじゃあないですか。実際一番ブリブリしてると思います。でもド頭から突っ走るわけではなくて、出だしのjazzyなピアノからベースが入り、徐々にDance/EDMへ流れ、またふいにちょっぴりjazzな軽やかピアノを入れてくるあたりが、面白くて、カッコいい。ちゃんとメロディも生きててポップにまとまってるし上手いなあって思います。

Levi Polisの‘Toy WarZ’はメロディとリズムが素直に結びついたストレートな聴き心地。メロディもさることながら、遊びでChipsoundを織り交ぜる辺りでやはりPop指向を感じます。ラストのAlisweetによる‘Feeling’はChipstyleに寄せた作風で、小奇麗にまとまっている印象です。騒々しいんだけれどもPopでCuteでキラキラしているという、今作のカラーをもっとも簡潔に表しているトラックかもしれません。

この界隈(どの界隈だよというツッコミは受け付けませんヨ)で予想されるサウンドを大きく裏切ることはありませんが、逆に言えば安定のクオリティが確保されている作品です。そしてまだ先かとは思いますが、ピアノを主体にした別のコンピレーション“Memory of Childhood”が予定されているようなので、そちらも期待して待ちましょう。



mLaD3n° – UNKNOWN ISLAND [012]

 mLaD3n° - UNKNOWN ISLAND

 – Tracklist –
 01. #_Q
 02. !ERR
 03. (G
 04. )()()()()
 05. “¤{{ DD
 06. SS=W
 07. E#!.-



 - 02. !ERR


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 Release Date : 2017.02.20
 Label : TV FEH

 Keywords : Ambient, Deep, Future City, Underwater, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ mLaD3n° on bandcamp


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小さいころ、自分が雨の日を好きだったのは、それが外に出なくてよい口実になっていたから、かもしれない。“雨降ってるし”、という言い分。“お腹が痛い”とか“熱がある”とかと同じ理屈なんだろう。そうやって自分だけの空間、時間に逃げ込むことで、安心を手に入れていたのだろう。当然、大人になればそんな理屈は通りにくくなるし、それと合わせるように私は雨の日が嫌いになってきた。

今の私がたびたび逃げ込むのは深海、海中のイメージだ。その人知の及ばない神秘的なイメージに惹かれている人は多くいるだろう。そのある種の異世界は現実から自分を切り離し、身を沈めるのに打ってつけではある。しかし実際深海まで潜れるわけもないし、よしんば潜ったところで怖すぎるので(ワガママだ)、私が好むのはあくまでイメージに留まっている。

そう、水族館もその異世界感に近しいものを醸しているけれど、しかし周りに第三者がいるという時点で、少なからず現実は残ってしまう。・・・そういえば、自分の身の回りに水族館の年間パスを持っている人がチラホラといて驚いたことがあるが、案外その事実に潜んでいるのは、現実とは異なる世界を欲する心なのかもしれない。なんて。

深海や水中のイメージといえば、それをコンセプトにしたビデオゲームも存在する。“アクアノートの休日”…は、プレイしてないな。PSの“DEPTH”はよくやった。



最近だと“ABZÛ”が記憶に新しい。スリリングな側面もあるけれど、プレイヤーがデッドすることはないし、総じてリラクシンだ。独特のグラフィックも美しく、魅力的。



あとは“SOMA”もある。深海探索SFホラーアドベンチャーであるけれど、ストーリーは自己の在り方を問うような、悩ましいものになっている。ラストに待つ希望と絶望のコントラストに何を感じるかは人それぞれでしょう。これは恐怖も孕んではいるが、神秘的な世界観がもつ没入感は極めて強い。



と、遠回りをしていますが、音楽の存在を忘れてはいけません。水族館やビデオゲームも結構ですが、深海や水中のイメージをもった音楽も古今東西たくさんあるでしょう。いつも挙げるのは深海Dark Ambientの傑作、Nubiferousの“Behind The Megalithic Walls”ですが、ベクトルは異なりながらもこの“UNKNOWN ISLAND”もかなりの深海、水中感でもって、私を包み込んできます。没入。Discogsなんかでみると、アーティスト名がUNKNOWN ISLANDとなっていますし、レーベル側ではレーベル名のTHE FEHとなっているんですが、mLaD3n°のbandcampからもリリースされているので、ここではmLaD3n°名義にしております。

“UNKNOWN ISLAND”というよりは、個人的には海中に建設されたドームの中にある未来都市といったイメージです。ドームの天井に映されるのは架空の空。絶対的に地上とは何かが違っていて。そこにある悲しみやミステリーの気配。深海の閉塞感と同居する、奇妙な安心感。いいですね。頭の中に広がる世界。没入。M-2とか水中での目覚めみたいな、不思議なサウンド。音の揺らぎは水中を、鳥のさえずりが朝の訪れを、告げる。幻想的です。作中では長尺のM-6もよい水中感。鼓動と同期するようなリズムと、スローな音の波と、わずかな電子感。深海でパワースーツ着て機械端末いじってる光景。少し危険、みたいな。

mLaD3n°はTV FEHを基盤にして多くの名義を使って作品をリリースしている様子なので、気になった方はぜひ他の作品もチェックしてみてください。同名義の“(専用イダ)”も好きです。


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 Note :

SECRETS INSIDE THE CITY
UNKOWN ISLAND
RESORT



Light Pillar – Phantasmagoria [#389]

 Light Pillar - Phantasmagoria [#389] Cover

 – Tracklist –
 01. Shadowplay
 02. Cell Transplant
 03. Fallopia in the Sky
 04. Evolutionary Eclipse
 05. Evening Stars
 06. Phantasmagoria
 07. Lunar Storm
 08. If you were sound
 09. The Mondrian Cube (as a bonus on Bandcamp)



 - 05. Evening Stars


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 Release Date : 2017.09.01
 Label : Kahvi Collective

 Keywords : Ambient, Electronica, IDM, Melodic.


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秋の訪れとともに老舗ネットレーベルKahvi Collectiveより届けられたのは、オランダからの新星Light Pillarの手になる“Phantasmagoria”。

アーティストの意志を尊重するなら、1トラック目から聴くべきなんでしょうか。どうなんでしょうか。でも聴いてほしいトラックってのがあると思うし(たぶん)、今作の場合、bandcampのプレイヤーは2トラック目から再生されるのは、そういう意味だと思います。でもやっぱり古い体質―CD世代というべきか―の私としては、いややっぱり頭から聴くべきだよね、なんつって頭の‘Shadowplay’から再生するのですが、まあこれだけ11分という長尺なわけで、その長さは作中では異質。と思っていると中身も異質で、これだけアブストラクトなAmbientトラックなんですね。メロディというかフレーズはあるけれど、どちらかというと空間が優先されているように思います。

なるほどなるほど悪くはないけどちょっとピリッとしないかなあ、なんてボンヤリ聴いていたら、あにはからんや、M-2から広がるのは極上のMelodic IDM/Electronicaだった!という次第。Popにすら踏み込みかけたメロディと、ときに生き生きとした表情を見せるリズムがAmbientな空間にフィックスされて作られる、至高のひととき。個人的にはアーリーなElectronicaのイメージがあって、まっさきに頭に浮かんだのはスウェーデンのMosaik。M-2にあったりするちょっとAncientというか、雅にも通じる趣が、特にそう強く感じさせます。

メロディはミニマルなんだけどベースやドラムといったリズム、あるいはバックグランドの流れで変化、メリハリをつけている部分も散見されて、これがまたリスナーを飽きさせないわけです。リズムがメロディ化しているのってIDMのひとつの特徴にも思うんですが、今作の場合特にM-4‘Evolutionary Eclipse’とかどうですか。いいですよね。あとはM-5‘Evening Stars’にそこはかとなく感じられるChipmusic的なドライブ感、追憶感(記憶くすぐり感ともいう)もすばらしい。かと思えばM-6‘Phantasmagoria’では流麗なストリングスと浮遊感あるElectronicaを織り交ぜて、ドラマチックでコズミックな空間を披露する。

M-6でGlitchを効かせたちょっぴり硬質なサウンドを聴かせた後が、あにはからんや(2回目)、ヴォーカルトラックなのです!(ご本人が歌唱されているのかは分かりません)。加工はされていますが朴訥なその歌声は無機質でありながら温かみのあるサウンドに実にマッチ。Pop musicとは異なるけれど、ちゃんと歌になっている。なんとなくヴォーカルフレーズ入れてみました、的な感じではない。ただのコーラスじゃね?というものでもない。抑揚がありクライマックスがある。そういうところから考えても、きっとPop志向の人なんだと思います。

M-9はbandcampだけのボーナストラックです。ミニマルなメロディを繰り返しつつ、バックが不穏に歪んでいく、その中にも郷愁を感じさせる不思議なトラックです。せっかくなのでbandcampで入手、というのもよろしいかと思います。

ところでPhantasmagoriaの意味ってみなさんご存知でしたか(私はホラーな方向のイメージしか思い浮かぶませんでしたが)。いまどき調べればすぐに分かりますが、あえて書きましょう。日本語にすると“幻影”、”幻想”の意味になるようです。移ろいゆく景色。奇妙な幻想。現れては消える幻。ぴったりじゃあないですか。


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(CC) by – nc – nd 3.0



MAREVICK – PERSONAL PARKWAY

 MAREVICK - PERSONAL PARKWAY Cover

 – Tracklist –
 01. Spontaneous Wish
 02. Ease
 03. Borderline
 04. Painted Scene
 05. Rosario
 06. Dust In Inhibited
 07. Veins Of Light Under Downpour
 08. Accidental Effect



 - 07. Veins Of Light Under Downpour


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 Release Date : 2017.06.28 (2016.06.23)
 Label : Bestiar Netlabel

 Keywords : Acoustic, Instrumental, Jazz.


 Related Links :
  ≫ Marevick on bandcamp / on VK


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どうやら“家畜”を意味するらしい“Bestiar”(カタルーニャ語?) Netlabelから。ロシアのミュージシャンMAREVICK の作品がリリースされています。レーベルからは2017年のリリースですが、もともとは2016年にリリースされていた作品のようです。

Internet Archiveって今どうなんですかね? 音楽を発表する場としては主流ではない? ネットレーベルが盛り上がっていた(ように感じられたころ)は、フリー音源と言えばInternet Archiveって感じ、ありませんでしたか(もちろんInternet Archiveの貯蔵は音源だけではないですが)。あとsonicsquirrelとか。Free Music Archiveとか。ついでにいえば(ってのも失礼だけど)Jamendoとか、Electrobelとかにも、頻繁にお世話になってた。その界隈の音楽は、今ではbandcampに集約されている感があって、そこにはいかがわしい雰囲気など微塵もないし―つまり開かれている―、検索も容易だし、ふと振り返ると、ああ、昔みたいな掘る楽しみってのはいつの間にかなくなったのかなあなどと、手前勝手なことを思ったりもします。でもアマチュアミュージシャンの方たちはたとえばbandcampを利用することによって、経済との結びつきを獲得できたりもすると思うので、良いことなんだと思います(日本ではまだ認知度が低い気がするけれど)。

まあそんなことを思ったのもBestiar NetlabelがリリースをInternet Archiveで行ってるからですね。ちょっとした物思い。でもMarevick自身はbandcampでリリースしてるので、一応時の流れには沿ってる。

おっと作品の話。アコースティックでリラクシンなサウンド。リバーヴとかディレイとか、多少はエフェクトがあるんだろうけれど、ギターの音のみで構成されています。私自身の問題なのかもしれないけれど、アコースティックな作品って、聴いていて途中でこう、申し訳ないんですが、飽きが来てしまうことが多いんですね。誰の何とは言いませんけれど。でもこの作品はそれがない。なんでかって考えると、1曲が短いってのがまずあると思います。あとメロディが抑制的。マイルドという言葉がよく似合う。バチーンとメロディがあるのも悪くないとは思いますが、ギター一本でアルバム全編通してやられると、さすがにしんどいかなと思いませんか。この作品では、現れそうで現れないメロディが、心地よい。変な言い方だけれど。ある意味Ambientというか。

完全に即興ではないと思いますが、即興的に感じられる部分もあって、そのテンションの流れが、タグに使われている“Jazz”の部分なのかなあと思います。メロディに捉われないというのも、Jazz的なのかもしれませんね。とてもリラクシンでカフェなんかでかかっていても違和感のない音楽だと思います。やさしい陽だまりとか、緑の植物とか、そういうイメージです。でもやっぱりどこかに感情性があるんですよ。先のJazzという部分にもつながるのかもしれませんが、ルースな部分というか、人間性。その一滴が、今作のスパイスになっているのではあるまいか。ふと玉手箱あけたら、中から懐かしい思い出の幻が出てきて、でもそこにぶらさがっている一抹の悲しさ。なぜなら、それは今はもうないものだと、頭のどこかで分かっているから。のどかでありながら、ちょっと悲しい。

空間を生かした余韻ある‘Spontaneous Wish’や、情景的な‘Veins Of Light Under Downpour‘が、よいですね。

bandcampで公開されている他作品は、ちょっとテイストが違うものもあったりるすので、興味がある方は是非―


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(CC) by – nc 3.0



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