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Tone Color – Everything You Know Is Wrong [AF39]

 Tone Color - Everything You Know Is Wrong [AF39] Cover

 – Tracklist –
 01. Via Lucherini
 02. The Last Day
 03. City of Three Rivers
 04. GRM Bloom
 05. Yatha Bhuta
 06. MAX~
 07. Forward Then Back
 08. Maria Casarès
 09. A Thousand Summers
 10. Oltrarno
 11. Voight-Kampff
 12. Neither an end nor a beginning



 - 10. Oltrarno


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 Release Date : 2018.05.06
 Label : Assembly Field

 Keywords : Ambient, Drone.


 Related Links :
  ≫ Tone Color on SoundCloud


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前の作品も紹介してたよな、と思って、見返していたら、5年も前の作品だった。ええ、ってことは、このブログもう5年以上経ってんの?って、我ながらちょっと衝撃だったので書いておきましょうか。

ということで5年ぶりのアルバムということでよいんでしょうか。イギリスのAssembly FieldからリリースされたTone Color(Andy Lomas)の作品です。

この作品の10曲目、‘Oltrarno’、これは私の中で新たなAmbient/Droneのマスターピースです。これまでNetaudioの界隈で出会ったトラックで、記憶に刻み込まれているものがいくつかありますが、この‘Oltrarno’もそこに仲間入りです。このBrian Eno感。いやそれが重要なわけではないんですが、この深遠な気配と、静かな水面にポトリと落ちていくような、そこを滑るような、ピアノの音色、その余韻。たまりません。引き込まれます。

私は不安を回避するように寝不足を選ぶことがある。足りない睡眠のせいで頭が冴えなければ、理性の芯はぼやけ、思考は鈍り、ひいては不安の表面化が少しでもし抑えられるんじゃないかって、そんなふうに考えて、寝不足を選択する傾向があります(とりあえず職場のみなさんに謝罪)。若干の睡眠不足を意識しながら今作のようなAmbient/Droneを聴いていると、気づくことがあって、この頭の芯のしびれ具合というか、ボヤケ具合が助長されるのである。ロングトーンのピュアなAmbient/Droneは特にそうだ。私の好きな小説家が“音楽を聴いて理性的になるなどありえない”と書いていたけれど、まさにそうで、ここにおいては、理性は静まり、不安は遠のき、ややもすると恍惚が訪れる。そしてやがて眠りが私をつかまえに来るという、幸福なサイクルがそこにはある、ように思われる。目覚めたころでまた不安は襲ってくるのだけれど、たとえ短い時間でも不安を遠ざける今作の力は、音に反して頼もしい。タイトルの“Everything You Know Is Wrong”ってのも、どこか力強さ感じます。

ちなみに前作のタイトルは“The Last Day”。今作の2曲目にも同名のものがあります。どういった意味合いで用いているのかは分かりませんが、Tone Colorにとって重要なイメージなのかもしれないですね。


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All tracks composed and recorded by Andy Lomas
Mastered by Wil Bolton
Artwork by Andy Lomas



Tone Color – The Last Day [AF05]

 Tone Color - The Last Day [AF05]

 – Tracklist –
 01. Alex
 02. Vorantreiben
 03. Ebowed an’ Clear
 04. April Loop
 05. Deuxième étage
 06. Holga Sunrise
 07. June
 08. An English Summer
 09. Cumulus
 10. In Bruges



 - 01. Alex


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 Release Date : 2013.09.22
 Label : Assembly Field Netlabel

 Keywords : Ambient, Drone, Electronica, Field Recordings.


 Related Links :
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イギリスのネットレーベル、Assembly Fieldより。マンチェスターのプロデューサ、Tone ColorことAndy Lomasのアルバムがフリーでリリースされています。これまでにもAudio Gourmet Netlabelから“Today Will Not Be Like Tomorrow”のリリースや、Futuresequenceのコンピレーション“SEQUENCE3”, “SEQUENCE6”への参加があるようですが、フルアルバムは今作が初めてでしょうか。

スタイルとしてはAmbient/Droneなんですが、一本調子ではないところがよいです。シンセの柔らかい音色だったり、ギターだったり、あるいはField Recordingsだったり、種々の要素、手法を使って、サウンドを作り上げています。リリースページをみると、‘virtual tape plugins’という言葉もあります。よくは分かりませんが、カセットテープを利用したのと同じような効果をサウンドに与えてくれるんでしょう、そういったプラグインを敢えて利用しているということは、明確なイメージをもった上でトラックを生み出している、そう考えることもできます。

どのトラックもそれぞれに聴き心地の良さがありますが、‘Alex’や‘Ebowed an’ Clear’, ‘June’, ‘An English Summer’が印象的です。‘Alex’―冒頭で立ちあがる、このちょっとばかりアタックの強いシンセ。その持続の中に、正体のわからない環境音がちりばめられている。その空間はなぜかしらノスタルジアをはらんでいて、木々の葉の間でチラチラと揺れる日光が脳内によみがえる。‘Ebowed an’ Clear’―どこまでも伸びる持続音は、頭の中を記憶を彼方へスライドさせていくような、そして頭の中が無になっていくような、この手のサウンドに特有の気持ち良さがあります。‘June’―山脈や森林といった深遠、崇高な景色、そしてそこにおける早朝の空気のような、静かな、けれど身の引き締まる空間。色の薄い空をいく、緩やかな雲の流れが見えてきます。‘An English Summer’はその流れを引き継いで、少しだけ暖かみが増したような、陽の光のようなジンワリとした浸透力が魅力的。

“The Last Day”というタイトルはどこかしら悲しいイメージをもたらしますが、私が聴く限り、そういった調子は感じ取れません。どちらかといえば、warmyで、光が感じられるといってもよい。いや、ちょっと待てよ、ラストデイだからこその、暖かみや輝かしさ、なのかもしれない。思い出の中の光、とでもいうような。そう考えると、がぜん、悲しみが感じられてくる。あとから思い返した時に、“そうか、アレが最後、最後の日だったんだ”と認識したうえでの、ノスタルジア、それが、ここにあるのかもしれない。


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Written and produced by Andy Lomas

Mastered by Wil Bolton

Artwork by Andy Lomas


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