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カテゴリーアーカイブ: Liminal RECS

medkit – thread [LimREC142]

 medkit - thread [LimREC142]

 – Tracklist –
 01. cats turn into flies
 02. himalayan blues
 03. half hearted
 04. zavtra ne nastupit
 05. ears
 06. safari’s fires
 07. 0f s01itud3 and b0und13sn3ss
 08. girl
 09. death
 10. thread



 - 01. cats turn into flies



 - 02. himalayan blues


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 Release Page :
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 Release Date : 2014.04.27
 Label : Liminal RECS

 Keywords : Electronic, IDM, Melodic, Shoegaze, Vocal.


 Related Links :
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ロシアン・ネットレーベル、Liminal RECSより。medkitことDenis Borisovichの作品がフリーでリリースされています。けっこう多作の方ですし、ネットレーベル界隈でリリースを重ねてきています。私もこれまでにいくつか作品を聴いてきましたが、その中での感想を言わせていただくと、今作は頭ひとつ抜け出ている気がします。

Melodicという点はこれまでと変わらないんですが、一番印象的なのは女性ヴォーカルをフィーチャーしている点です。あとは随所で聴けるギターサウンド。彼はDigital Shoegazeという言葉を自身の音楽に使ってもいますが、今作はまさにそこから想起されるサウンドイメージを裏切らない。電子的で硬質なバックトラックにPopなメロディ、浮遊感ある女性ヴォーカル。ギター、あるいはシンセによる、多層感の圧力。なによりやはりメロディがサウンドの中心で大きな存在感を放っていて、これまでになくPopな方向性を示しているのが、意外で驚きでした。

たとえばM-1‘cats turn into flies’(さりげなくネコの鳴き声が入っている)を聴いたときに頭をよぎったのが、先ごろZOOM LENSからリリースされたLLLLのアルバム“Paradice”だったんです。あちらも、IDMやSynthWave、ChillWaveやIndustrial、さまざまなElectronic musicを咀嚼した上で吐き出されたPop musicの側面が立った傑作でしたが、そのDigital Shoegazeな音像や、女性ヴォーカルによる冷たく透明な浮遊感、そして重厚な金属感というやつが、不思議なくらいに今作と共振しているように感じられて、とても興味深く思いました。“Paradice”に関してもっといえば、Popに接近したことも関係あるのか、日本のART-SCHOOLやSpangle call Lilli lineに通じるものも感じられて(共通するワードはShoegazeだろう)、ということは今作にもそれが嗅ぎ取れるだろうかと思って耳を傾けてみましたが、どうも、そこまでではなかったようです。

さて、再び今作の話ですが、‘himalayan blues’ではWorld musicやTranceを感じさせるイントロを設けたり、‘girl’ではやはりイントロに、フェスティバルのようなField Recordingsを差し挟んで郷愁を誘ったり、また‘death’ではPianoを生かした深みのある歌を聴かせるなど、小技が効いています。IDMやSynthWaveのようなElectronicでMelodicなスタイルを基調にしながらも、決してそれ一辺倒になっておらず、随所にフックが盛り込まれています。

上手く説明できませんが、やはりメロディはロシアっぽいんですよ。このブログではこれまでにもロシアのウタモノエレクトロニックミュージックをいくつも紹介してきましたが、やはり共通する何かってのはあると思います。でもそれは決して日本人の琴線に触れないものではないですし、むしろ今作は積極的に聴かれるべきすばらしい作品だと思います。聴かないのはもったいない。今後もこの路線を希望。


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действующие лица:
Регина – пение(歌) https://vk.com/reginalda
Никита – гитара(ギター) https://vk.com/nick_percev
Денис – всё остальное(他すべて) https://vk.com/denisborisovich


(CC)  by - nc - nd 3.0



Giallo – Iamaway [LimREC135]

 Giallo - Iamaway [LimREC135]

 – Tracklist –
 01. Today
 02. Winter’s soul
 03. Insomnia
 04. Yellowhead’s happy
 05. Robbie
 06. Unbearded prince
 07. Bob fine
 08. Lake
 09. Iamaway



 - 02. Winter’s soul


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 Release Page :
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 Release Date : 2013.04.20
 Label : Liminal RECS

 Keywords : Ambient, Electronic, Melodic, Trip-Hop, Vocal.


 Related Links :
  ≫ giallo
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ロシアンネットレーベル、Liminal RECSより。5人組バンドGialloの作品がフリーでリリースされています。オフィシャルサイトを見る限り、メンバーはKAMILLA(vocal), ALIYA(vocal/keyboards), VASIL(bass), IVAN(drum), VLADIMIR(guitar/percussion/sampler)の5名であるようです。ちなみにバンド名のgiallo(ジャッロ)というのは、“イタリアの20世紀の文学ジャンル、映画のジャンル”です(wikipediaより抜粋)。もともとは、フーダニットの構造をもつミステリー小説を出所にしているようですが、私にはDario Argento(ダリオ・アルジェント)の映画に使われているワードとしての方が、なじみが深い。“過度の流血をフィーチャーした引き伸ばされた殺人シーンを特徴とし、スタイリッシュなカメラワークと異常な音楽のアレンジをともなう”(同上)という特徴は、まさに彼の映画に当てはまります。

でも彼らGialloの音楽が、ある部分でスプラッターともリンクする芸術ジャンルとしての“giallo”と結びつくかといえば、そうはなっていない。Gialloの音楽は一言でいえばTrip-Hopであり、そこにある気品は、アルジェントの映画がもつ極彩色で大仰なイメージとは切り離されている。確かにシネマティックな音作りは特徴的で、たとえばディストーショナルなギターが聴けるトラックもあるのだけれど、それは感情表現というよりも、トラック/空間を形作るひとつの要素として機能していて、いわばパーツ。トラックの中にピタリとはめ込まれていて、過剰に飛び出しては来ない。だから、音像は非常に落ち着いている。Ambient、空間的な音作りが目立つ作風だ。冒頭のGlitchyなテクスチャーが印象的な‘Yellowhead’s happy’においては、ピアノや鍵盤に陽性の響きがあって、Lounge musicのような味わいがあり、これもユニークだ。

歌声にしてもそうだ。ヴォーカリストは2人いるようだけど、いずれも女性。Trip-Hopにあるような湿った調子は、強くない。のびやかで、絶妙の丸みをもった歌声は、ときにエモーショナルで、ときにドリーミィで、とても美しい。ほんの少しだけ、なんだけど、奥の方に甘さを秘めていて、Ambient色の強いM-2などにおいては、Cocteau TwinsのElizabeth Fraserを感じたりする場面もあった。

“giallo”との関連は強くないと書いたけれど、作中でもっとも“giallo”につながるものを感じたのが‘Bob fine’だ。このトラックの冒頭にあるシネマティックなフィーリングは、スリラー映画のそれに通じる。白いシーツをかぶった人影が、スローに揺れているような、幻想的でミステリアスなシーンが浮かんでくる。霧の立ち込める石畳の街角で、誰かが皮手袋をはめるシーンでもいい(なんかステレオタイプなイメージだけどな)。ショッキングなシーンへの前兆のような、緊張感が心地よい。

ラストのトラックがまたね、それまでと一風変わって、ライヴ感を打ち出していてインパクトあり。ジャジーなピアノとリズムを軸にして、情感のある深い歌声が響き渡る。螺旋的なストリングスの音色が脳裏に映像をひらめかせ、まるで映画のエンドロールのような、余韻が訪れる。4月に行われたライヴは、ストリングス・カルテットを招いて行われたそうだけど、是非そのときの音を聴きたいものですね(写真はVKで見れます)。きっと素敵だったでしょう。


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Giallo – Yellowhead’s happy



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(CC) by - nc - nd 3.0



Luktpion – EP [LimREC130]

 Luktpion - EP [LimREC130]

 – Tracklist –
 01. Vesper
 02. Antique
 03. Lambs
 04. Expr
 05. Unif
 06. Outward



 - 06. Outward


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 Release Date : 2012.11.12
 Label : Liminal RECS

 Keywords : Ambient, Downtempo, Electronica, IDM.


 Related Links :
  ≫ Luktpion on Last.fm / on SoundCloud / on bandcamp

  ≫ Luktpion on FFM (Far From Moscow)

  ≫ Loribet Arkadyevna on VK (VKontakte)


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ロシアはサンクトペテルブルグのネットレーベル、Liminal RECSより。Luktpionの作品がフリーでリリースされています。女性ミュージシャンということは分かっていますが、そのくらいの情報しかなく、上記のVKで、少しばかり動きを追うことができるくらい。かのFar From Moscow内でも、非常に短い記事しか書かれていない。まあもっともっと闇につつまれているミュージシャンはいると思うので、ネット上に活動のスペースがあるだけマシ、喜ぶべきなのでしょう。

そんな彼女のEPは、リリースページでは“a taste of the soviet sci-fi movies.”という、きわめて短い文章で、説明されている。でもソヴィエトのSF映画って、私見たことないんですなあ。イメージすら湧いてこないので、どうしても今作と結びつけることができなかった。

レトロスペクティヴな白黒映画、というイメージは、聴いていると、浮かんでくる。アナログタッチの丸いリズムと、こもったような、湿ったような、音空間。ところどころで挿入される、ぼやけたSpoken Wordは、私には意味なんて分からないんだけれど、でも映画のセリフのように聴こえてくる。深みのある空間処理とふるぼけたようなサウンド、メロディが脳内に広げるのは、深遠な森のイメージだったり、あるいは抽象性の高い図画のイメージ(ロールシャッハテストのアレみたいな)だったりする。またあるいは夢の世界の海の底。温もりのある水中で、気持ちよくまどろんでいるような。そうすると、そうだ、聴こえてくる声たちは、外の世界からの刺激なのだ。たとえが二転三転するけれど、それは休日の朝の布団の中で聴こえてくる、外界からの話し声なのだ。それはもう、まったく自分には関係なくて、そんなものは放っておいてとにかく俺寝ちゃうもんねヘヘンっていう、あの安堵感っていうんですかね、それに似たものが、ここにはあるように思いますね。

特にメロディに富んでいる、という作品ではないので、やはりその音空間から感ぜられるイメージ、サウンドスケープに没入できるかどうかが、好き嫌いの分かれ目になる。太古から変わらぬ心臓の鼓動のようなリズムと、生命の源たる水の流れのような、ゆるやかなシンセのレイヤー。そして上記のような安堵感。とくればこれはもう、母親のお腹の中―胎内に対するイメージと、重なりはしまいか。ドリーミィな中にある神秘性も、そのイメージと合致するように思う。ガラスのようなメロディにほんのりと漂っている感傷性が、ノスタルジックに記憶をくすぐる様も、私は好きですね。インパクトはなくとも、不思議と気になる作品です。次作もあるのであれば、聴いてみたい。


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voice – Kvasnyuk Zoe
text – Rosohovatsky Igor Markovic
music – Luktpion



(CC)  by - nc - nd 3.0