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カテゴリーアーカイブ: Nueva Forma

IG88 – Breathing Suit [NF119D]

 IG88 - Breathing Suit [NF119D]

 – Tracklist –
 01. Drowning in Pinwheels (feat. Bed of Stars)
 02. Oxen Free
 03. A Subtle Separation (feat. Jenni Potts)
 04. Writing Your Name On Foggy Windows
 05. Patiently Waiting
 06. Breathing Suit (feat. Michael Harris)
 07. Trail of Bread Crumbs
 08. Less Than 3
 09. Lethargic Swans Trumpeting Yawns
 10. Fedora the Explorer
 11. Amoeba in Reverse (feat. Michael Harris)
 12. Dot to Dot



 - 03. A Subtle Separation (feat Jenni Potts)



 - 07. Trail of Bread Crumbs


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 Release Page :
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 Release Date : 2013.04.02
 Label : Nueva Forma™

 Keywords : Ambient, ChillWave, Dubstep, Electronica, IDM, Melodic, Trip-Hop, Vocal.


 Related Links :
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オレゴン州はポートランドのレーベル、Nueva Forma™より。シアトルのミュージシャン、IG88ことBranden Clarkeの新しい作品が実質フリーという形でリリースされています。私が彼を知ったのは、2009年にIDMf Labelからリリースされた“Mutual Mastication”でした。2010年にはSummer Rain Recordingsから“EP”をリリース(現在レーベルはクローズ。作品は上記IG88のbandcampから入手可能です)、2011年には“Blackberry Light”をセルフリリースと、コンスタントにリリースを行ってきています。近年は活動のペースがあがっているようで、2012年には今作と同じレーベルから“A Loom And Not Me”のリリースがありますし、またJesus Chris WIllisと組んだNever Beenとしても、Heaven Noise Recordingsから“Fever”のリリースもあります。さらには、リミックス・ワークも広く行っていて、いずれも高いクオリティを保っていることから、シーンにおけるその知名度・評価は、決して低いものではありません。

以前と比べても、今作のクオリティはさらに高いものになっていると思います。音の厚みや複雑さが増し、音に立体感、一体感が生まれている。それぞれの音が独立して響きながらも、複雑に絡まり合い、ひとつのトラックを形成している。結果として、とても空間的な音楽ができあがっている。確かに以前の作品もAmbient、空間的な要素は多分にあったけれど、今作の方がフラットなサウンドイメージが払拭され、包容力では上を行っている。

また彼のサウンドの特徴として、ヴォーカルを取り入れたウタモノがある。作中のいくつかのトラックにヴォーカリストを招いて、メロディを唄わせるという、これまでにもあったスタイルが、今作においても披露されている。これがまた素晴らしい。冒頭の‘Drowning in Pinwheels’だけで、もう惹きつけられる。唄っているのはBed of Starsというオルタナティヴ・バンドのEvan Konradのようですが、このさびしげで伸びやかな歌声。弦楽器の音色と、丸みのあるリズム、Electroacoustic/Trip-Hopテイストのサウンドと結びついて、とてもエレガントな(そして少し物憂げな)空間を作り出す。これまでにも協演したことのある女性シンガーソングライターJenni Pottsを招いたM-3、‘A Subtle Separation’もよい。ノスタルジックな天上のきらめきを思わせるハープのような音色、対するダビーなベースラインと煙ったリズム、その真ん中で浮遊する、甘く美しいヴォーカル。ふとBowsの“Cassidy”を思い出したりした(Bows – Luftsang on YouTube)。Michael Harrisを招いたトラックは、重厚なリズムと、ソウルフル、エモーショナルなヴォカールが印象的な、ある意味まっとうなウタモノになっている。タイトルトラック‘Breathing Suit’の、美しさの中にある力強さなどは、Massive Attackを彷彿させる。

ウタモノがTrip-HopやDowntempeoであるとするなら、対してそれ以外のトラックには、ChillWave/IDMを感じさせる部分があって、その対比具合が作品にメリハリを与え、リスナーを飽きさせない役目を果たしている。Ambientな音空間と、ドリーミィなシンセのメロディ、アナログタッチのリズムが導き出す、スローな景色の流れは、とても甘美だ。ときたま挿入されるアコースティックな楽器の音色―ピアノや弦楽器などの響きが、いくらかの感情性、人間性を生み出していて、いわゆるストレートなChillWave/IDMサウンドとは一線を画している。

DubstepやHip-Hop、Trip-Hopといったブラックなエッセンスをもちながらも、決してそちらには傾きすぎず、ChillWave/IDM的なドリーミィ、幻想的な空間作りが行われている。さらには、Electroacousticな、フラジャイルな一面もあるんだけど、すべてがバランスよく配合されていて、全編聴いても、リスナーの中で作品のイメージは一定に保たれる。凸凹とした歪さがないのだ(この辺がすごい)。ややもすると類型的なサウンドに落ち込んでしまいそうなんだけど、どこにもハマっていない。まさにハイブリッドな作品。すばらしい! なので紹介せざるを得なかった。気になった方は是非ぜひ、他の作品も軒並みチェックしてみてくださいね。


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Artist(s) featured: IG88