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カテゴリーアーカイブ: Black Hymn Records

Retral & Slow Lake – Philosophy EP [BHRFREE06]

 Retral & Slow Lake - Philosophy EP [BHRFREE06]

 – Tracklist –
 01. The More Clouds in the Sky, The More People Die
 02. I Wanted the Whole World or Nothing



 - 01. The More Clouds in the Sky, The More People Die


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 Release Date : 2013.08
 Label : Black Hymn Records

 Keywords : Ambient, Beats, Electronica, Melancholy, Post-Dubstep, Post-Rock.


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イングランドのネットレーベル、Black Hymn Recordsより。RetralとSlow Lake(Jack Barry)が組んだ作品がフリーでリリースされています。スプリットというわけではなくて、共同作業の上で作られた作品の様子。RetralはEndless Plains RecordsPlastik Sound UKSilencedなど複数のレーベルで活動してますし、Slow LakeはBlack Hymn Recordsからのリリース以外にも、bandcamp上で複数の作品をリリースしています。

RetralがHip-HopやDubstep、Garageなどのビートを生かしたサウンド・スタイルであるのに対し、Slow LakeはギターによるAmbient/Post-Rockなサウンドスケープをスタイルにしている。この二人が組んで作られた今作は、実に不思議な聴き心地の作品になっている。やはり同レーベルからリリースされている、SunwinÐの“Your Heart is Free EP”に近しい聴き心地がある。それはどういった部分かと言えば、Ambientな包容力と、Dubstepのもつ陰りと湿度、そしてTrip-Hopにも通じる気品とメランコリアだ。SunwinÐはさまざまなインストゥルメンタルを巧みに埋め込んだ上で、ビートを効かせたメランコリックなAmbient空間を作り上げていた。

その点、このRetralとSlow Lakeの作品はどうか。こもったようなビート―それはDubstep的だ―の上に、Post-Rockを彷彿させる、スローでメランコリックで、そのくせ力強い、ギターフレーズが重ねられている。Dubstep meets Post-Rockとでも形容できそうな、異端児の出現。M-1の3分過ぎなどは、ビートの上からダイナミックなドラムを重ねて、まるでバンドサウンドのようなカタルシスを与えてくれる。Dubstepから展開してPost-Rockに突っ込んでいくような、こんなサウンドはなかなかお目にかかれない。

考えてみれば、Post-Rockのもつメランコリアと一部のDubstepにあるそれは、どこかで通底している。スタイルの巧みな掛け合わせで、それを示して見せた今作は、高く評価されるべきだろう。RetralとSlow Lake、どちらのサウンドの特徴も持ちながら、各々のサウンドとは明らかに異なっている。しあわせなコラボレーション。

私はこのサウンドを聴きながら、見えてくる景色がとても好きだ。海からの風が吹き付ける、煤けた丘。枯れた草木。そこにたたずむ気高い彫刻。景色の中で繰り返される生と死(トラックのタイトルを見ても、やはり死のイメージはつきまとう)。そんなイメージだ。



SunwinÐ – Your Heart is Free EP [BHR07]

 SunwinÐ - Your Heart is Free EP [BHR07]

 – Tracklist –
 01. Every Man Dies
 02. Your Heart is Free
 03. In Memory
 04. Revival



 - 01. Every Man Dies


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 Release Date : 2013.02.01
 Label : Black Hymn Records

 Keywords : Ambient, Beats, Downtempo, Electronica, Post-Dubstep.


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イングランドのネットレーベル、Black Hymn Recordsより。詳細は不明ですが、SunwinÐなるミュージシャンの作品がフリーでリリースされています。以前からアナウンスだけはされており、プレヴューとして公開されていた‘Every Man Dies’が印象的だったので、リリースを待っていた次第です。

アナログタッチのザラつき、こもったような、分厚いAmbienceが、まず耳に残る。その中にある、レイヤーのゆるやかな流れ、そこに現れる電子音たちとエフェクト、それによって描かれる感情性(主にSadなフィーリング)。M-1などは、ミスティックなAmbient空間の彼方で、鍵盤のような音が零れ落ち、それによって、リスナーの精神世界に、幻想的な波紋が広がっていく。こういった部分から、一見するとAmbient/Droneのスタイルに感じてしまう今作。もちろんそういった要素も、強くあるだろう。

音楽に限らず、対象物というものは、どの角度から視点を当てるかによって、見えてくる面が異なる。いろんな角度から目を向けてみて、さまざまな面を楽しむ、というのも音楽のひとつの楽しみ方として、あるだろう。今作を聴きすすむうちに、私の耳に聴こえてきたのは、Dubstep/Post-Dubstep、あるいはビート・ミュージックと表現できそうな、Ambienceの底で鳴動する、湿ったリズムだった(人によっては真っ先にそこに耳が行くだろう。それは基本的な視線の違いというやつだ)。

私にとって何が面白かったかというと、そのAmbient/Electronicaのタッチと、ビート・ミュージック―Dubstepのタッチが、実にうまく溶け合っているという点だ。どちらが表に出てくるでもなく、初めから一体化していたかのような、その在り方。確かに底に流れていながらも、フレキシブルに形を変えてくるリズムは、非常に自然で、ある意味アトモスフィリックだ。Brialなどに近しいものを感じたりもするけれど、リズムに重きをおかず、あくまで空間、トラックの全体的な在り方を重視している様子。だから全体としては、Ambient musicなのだ。そしてDubstepのフィーリングを持ちながらも、スモーキーな方向には傾かず、どこかに漂わせている抒情性がまた、今作を音楽的な方向に引き込んでいて、その点もすばらしい。M-3においては、かなりぼやけた形ながら、日本語の音声アナウンスがサンプリングされていて、その点も心惹かれます。

悲しみを秘めながらも、美しく、幻想的な世界がスローに流れていき。彼方からときおり聴こえる膨張した声たちは、浮世からの呼び声か。どこかに漂う死の気配はやがてノスタルジアに結びつき、いつしか諦念にたどり着く。その世界観は、まるで彼岸の一歩手前とでもいうような。好きですね、この景色。ちなみにSunwinÐ、このほかにもbandcampで作品を公開していますので、気になる方はどうぞ。


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All tracks written/produced/arranged/recoded by SunwinÐ. copyright 2013.