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カテゴリーアーカイブ: Hallworth Collective

VHS ნ ი ღ ბ ე ბ ი – ვ ა რ დ ი

 VHS ნ ი ღ ბ ე ბ ი - ვ ა რ დ ი Cover

 – Tracklist –
 01. ლ უ რ ჯ ი
 02. მ შ ვ ი დ ო ბ ა
 03. ც ი ვ ი
 04. ტ ყ ე
 05. ი ს ე ვ მ ა რ ტ ო
 06. ა ხ ა ლ ი ს ა უ კ უ ნ ე
 07. ე ლ ე მ ე ნ ტ ი
 08. ღ რ უ ბ ლ ე ბ ი
 09. მ შ ვ ი დ ო ბ ი თ ( ს ა მ უ დ ა მ ო დ ? )



 - 06. ა ხ ა ლ ი ს ა უ კ უ ნ ე


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 Release Date : 2019.07.26
 Label : Hallworth Collective

 Keywords : Ambient, Dream, NatureWave, Rose, the end of summer, VaporWave.


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効率的、効果的なエアコンの使い方も分からないし、外へ出れば暑いし、電車に乗れば寒いし、また外に出れば暑いし、その寒暖差を繰り返し体験するうちに、体に変調をきたすし、夜は寝苦しいし、エアコンを使えど、扇風機を使えど、結局のところ何度か目を覚ますし、鼻は詰まってくるし、つまりは夏なんだけど、夏の好きなところは前にどこかにも書いたように洗濯物が早く乾くことくらいな私は、夏は嫌いだとハッキリ言える。精神のたるみ、集中力の霧散、ゆえの無産。これらを招くような気がして、要は心地よくない。

雲が多い日が続いて、陽が隠れることが多くなって、少し(少しだ)涼しくなって、一瞬だけ夏の終わりを錯覚する。その瞬間。とても心がアガる。要は心地よい。その一瞬の心地よさが、ここに、今作には封じ込められているように、そう感じた次第。

豊潤な、深みのある、ふくよかな、音空間。その空間には夏の記憶が封じ込められている。遠くで聴こえる鳥の声、虫の声が、ヴァーチャルな記憶を助長する。いもしなかった、過ごしもしなかった、イマジナリ―な夏の記憶はドリーミィ以外の何物でもなく、仮初の夏の終わりの喜びと相まって、より一層に心地よい。

アーティスト名も作品名も、トラックタイトルも、なんのこっちゃよく分からない。機械翻訳という文明の利器に頼ったところで、やっぱり、さっぱり分からない。文字による表現を意図的に排除、回避しているようにも取れる。そうであるならば、こっちの聴きたいように聴いてやろうという(いや聴かせていただきます、です)、そんな思いを引き延ばしていくと、夏の終わりに行き着いた。

不思議なことに、水の音は聞こえないのに、私の頭に最初に浮かんだのは、水滴が水面に落ちて波紋が広がる様子だった。ミルクのような霧が立ち込める渓谷で、さまざまな自然音が周囲には飛び交っていて、けれど私は結局どこにもいないという。決して観測されることのない、傍観者。誰の目にも止まらないという安心感。このウェットな膨張感、夢心地(より具体的にいえば環境音に施されたエフェクト)は、一瞬、Brian EnoとHarold Buddの共作たちと交錯した。

―そうして夏は遠ざかるそぶりを見せる。私は嬉しさと同時に、寂しさを感じる(何かが離れていくときはいつもちょっと寂しい気がする)。でも、また夏は来るんですよ。そして私の目は覚める。

水も滴る、なんて的確とは思えない表現が真っ先に頭に降ってきた。あるいは“熟れる”というワード(たとえばAVIONの作品につかったような)。花に対して熟れるという表現が使われるべきなのかは分からないけれど、そういう意味で薔薇(ばら)がイメージに使われているのかしらん、とか思ったりもしましたが、関係ないかな。一瞬、サイケデリックなスペース・アンビエントに片足突っ込みかけるような気もしますが、非常に包容力のある空間で、気持ち良いですね(風呂に似合いそう)。ところどころで滲む一抹の寂しさが、個人的には惹きになってます。



VAW – Public Footpath

 VAW - Public Footpath Cover

 – Tracklist –
 01. 01_97
 02. Isøtøpɇ
 03. Think
 04. Ǝ-Numbers
 05. Hana
 06. Escapement
 07. Escarpment
 08. Cave
 09. MSGS
 10. 𝓂𝒶𝓁𝓁 𝑔𝒶𝓂𝒾𝓃𝑔
 11. 02_98



 - 07. Escarpment


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 Release Date : 2018.08.21
 Label : Hallworth Collective

 Keywords : Alone, Ambient, Drone, Field, Psychedelic, Quiet, VaporWave.


 Related Links :
  ≫ VAW on bandcamp


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みなさんは“ぬくもりが欲しくて 人混み歩いた”(By ZARD)なんてことはありますか。私はありません。“そのぬくもりに用はない”とばかりに精神的パーソナルスペースを発動してこっそりと他人を敬遠するのが私という人間の悪い癖(頭悪いな自意識過剰で)なのですが、さりとて街という人混みに出向かなければならないときもあり、そんなときはしっかりと心に武装をして(大げさ)出かけて行っているような気がなんとなく自分ではしておるのですが、そうやって一人で、否、独りで街へ出ているときにフトした瞬間に訪れる虚無感というヤツ。周りにいるのがすべて他人という事実。一生のうちに今ここでしか出会わないのではないか、つまり彼ら/彼女らとはなんの繋がりもないという断絶感。しかし頭上には太陽が照り、空気は私の頬をスルリと撫で、その横で皆は三々五々、何かを口にしながら、感情を表に出しながら、私の周りを流れ、そして散っていくという、いたって標準的な日常があり。その瞬間、見知った風景が、まるで見知らぬものに変わるような、不条理な感覚に襲われる、ことがある。自分だけが、何か大きな存在から取り残されたような、はぐれてしまったような、孤独感。周りに存在する人々の挙動、口を動かし、表情を変え、手足を動かしているその姿が、なぜか途端にグロテスクに見えてきてしまう(私はこれを職場の食堂でも感じることがある。昼時にテーブル席に着いた数多くの人間が皆、口を開けて食物というある種の物体を体内に入れていくという光景が、ひどくシュールでグロテスクに思える時が)。その一瞬のサイケデリア。たとえばそれは、つげ義春の“ねじ式”において、かみ合わない会話と知らない景色と肉体的なグロテスク、影のある描写から醸される得体のしれない不安感、のようなものにつながっていき、それはまた(私の中で)孤独につながっていく。

そんな、都市、街、における孤独感とでもいおうか、あるいはその孤独を幻想的にごまかすサイケデリアといおうか、そんなものがこの作品(楽曲だけではない。タイトルやジャケットイメージもすべて含めて)には漂っているように思います。添えられたメッセージは“I’m lost, can you help me?”。見知った街で自分の存在を見失う。精神の孤独。魂の彷徨。自分を置いて景色だけが流れていくような奇妙なラッシュ感(‘Escarpment’) 。自分が視点だけの存在になって、存在していながら存在していないような。かと思ったら陽の暖かみが私を現実に引き戻したり(‘Cave’

マルッと捉えればそれはもうAmbient(正直音だけではあまりpublic footpathなニュアンスはない。あとVaporWaveを期待して聴けるのはM9~10くらいだと思う)なんだけど、実に味わい深い。ヘッドフォンで大きい音で聴いているとその味はさらに濃厚になります。

VAWの素性は謎ですが、同コレクティヴからもう2作、“Train Thoughts”、“级联”(どちらもワントラックの長尺作品だ)がリリースされていますので、興味のある方はそちらもどうぞ―