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カテゴリーアーカイブ: STC Records

ダークホルム – relivedナイトライフ [STC-015]

 ダークホルム - relivedナイトライフ [STC-015]

 – Tracklist –
 01. あなたがでステップ
 02. だまさ
 03. そんなに悪くありません
 04. 順番
 05. 逃げ場ありません
 06. 夜長
 07. ゲーム私たちは遊びます
 08. お入りください
 09. 前衛
 10. 認識カント
 11. dreamland夢の国



 - 07. ゲーム私たちは遊びます


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 Release Date : 2015.11.13
 Label : STC Records

 Keywords : Chopped & Screwed, Electronic, Melodic, SynthWave, VaporWave, Vocal.


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これは凄い。

VaporWaveは基本脱力しているというか、力強さとは無縁だという認識が私の中にはあるのだけれど、この作品は別。奇妙に力強い。しかもメロディを十二分にもっている。なんか分からんが押される。気圧される。凄くパワフルなバイブをもっていて、圧倒される。しかもそれはVaporWaveから派生していった向きもあるFutureFunkの享楽的な力強さとはまた別のものなのです。新しい次元の扉が開かれたような。

なぜか私の頭の中には、ホントに“なぜか”なのだけれど、プロレスのイメージがふとよぎったりもして、このノイジーで狂騒的な空間、そしてこちらに浸食してくる得体の知れないパワーが、そんなイメージを抱かせたのかもしれません。実際にプロレスを観覧したことのある方は分かるかもしれませんが、あの決して広くないリングで筋肉をまとった大きな身体同士がぶつかり合うことで発生するエネルギーの量というのは大層なもので、近くで見ていると、本当に押されるのです。触れられていないにも拘らず。と、はて、私は何について書いているのでしょう。軌道修正をば。そう、M-2~3など、なんならちょっとおどけたような調子もあって、たとえるなら魔界の運動会のBGMのようではありませんか! 水飴のようにしつこく粘るグロテスクヴォイスはときに獣の咆哮のようにも聴こえ、野性的・プリミティヴな力を感じさせつつも、どこかミステリアスで、不可思議なのです。サウンドはシンセオリエンテッドのようにも聴こえますが、そのあたりもプロレスラーの入場曲っぽいですよね?(いったい誰に語りかけているのか!)

ノイジーに膨張する空間と、Chopped & Screwedによる地底ヴォイス、排水溝ヴォイスがど真ん中で幅を利かせる中で、ふと聞き取れるメロディがあるのですが、それが“宇宙戦艦ヤマト”や“There Must Be An Angel”だったりするのです。やはりこのメロディの使い方がニクらしい。そんなようにPopなメロディを(スローモではありますが)ハッキリ鳴らしているのでそれを享受していると、ヴォエエエ、ヴォアアアとしたデス声にも通じるヴォーカルが後ろから突っ込んできて、これはちょっと新感覚VaporWaveじゃないですか。バックとヴォーカルがどっちも歪んでるんだけど、妙に乖離しているというか。(メロディとヴォーカルで)個別にエディットかけてるのかなと思ったりもするのですが、どうなんでしょう。どういう作り方してるんだろう。スタイルは確かにVaporWaveなんだけど、ノスタルジアや、過去を引用・異形化してリヴァイヴさせるのとはまた違った価値観を持っていると思います。面白い。不思議とリピートしちゃう。ウタモノVaporWaveっていうとまた違うのよな。なんかちょっとVGMっぽさもあるし。

ボーッと聴いてると引用されているメロディに気づかないのだけど、ふとカチッとチャンネルが合う瞬間があって、それはまるでラジオのアンテナがたまたま電波をキャッチして音声を拾ったかのようで、そんな感覚も面白く感じました。何気なく登場してるけど、怪作にして快作。

ああ、そうだ、短編小説の御大阿刀田高さんのエッセイ集“恐怖コレクション”の中だったと思うんだけど、“翻訳された海外の短編小説の中にはこれのどこが面白いんだろうと首をかしげたくなるものがある”という旨の文章があったと記憶しています(部屋のどこかに絶対にあるはずで、きちんと当該の文章を引用したいのだけど探す気合がないので曖昧な記憶でご容赦ください)。と思っていたら見つかったので、引用させてください―“とはいえ毎月翻訳される外国のミステリ短編には、どこがおもしろいのか真実首をかしげたくなる作品が少なくない。ダールやブラッドベリィなど大家の場合でも例外ではない。日本の短編の方がよほどすぐれているのではあるまいか。それとも読み手の興味が彼と我と異なっているせいなのか。いつも釈然としない。”。この文章にはすごく共感したことを覚えています。それと同じように、世の中には何か分からんが人気を集めているVaporWave作品があったりして(いやそこに限らず何でコレが?ってものは多くあります。それは私に見る目がないってこともありましょうが)、でもこの作品の方がよっぽど面白いし、すごいんじゃないかなあと個人的には思ったりもするのです。

話逸れたなあ。おしまい。



新しいコンピュータのOS 98 – 2

 新しいコンピュータのOS 98 - 2

 – Tracklist –
 01. Intro.wav
 02. バーチャカート1.5
 03. IBMのPCセール
 04. Br☯wse ☯nline
 05. 無料ダイヤルアップ!!
 06. Deep



 - 04. Br☯wse ☯nline


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 Release Date : 2015.03.28
 Label : STC Records

 Keywords : Easy Listening, Electronic, Melodic, VaporWave, 80s.


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STC Recordsから、まさかの新しいコンピュータのOS 98の新作がリリースされました。レーベルとしてもどうやら機能しているようで、意外にまともだった(失礼な物言い)! でもタイトルが“2”ってホントに投げ遣りだな・・・。

でも中身はしっかりした作りになっていて。シンプルなサウンドで、シンプルにメロディを鳴らしています。一発目の‘Intro.wav’からマンボのリズムで意表をつく出だし。典型的なVaporWaveとは異なるフィーリングに、ここでまずは「おっ」と惹きつけておいて、M-2‘バーチャカート1.5’で、80sなビッグドラムとキラキラしたキーボードの音色にシンセブラスのような華やかなサウンドで、煌びやかな瞬間を演出。またしても意表をつかれます。

さらにM-3‘IBMのPCセール’は、同じフレーズをひたすら反復するミニマルなトラックですが、どうもテンションが高い。グイグイと高みに上るようなサウンドに、いささか呆気にとられます。M-4‘Br☯wse ☯nline’が個人的に作中のクライマックスで、ここでもカラフルなキーボードがトラックを引っ張っていくのですが、途中から!ギターの音が!入ってくる!(たぶんギターだと思います)。しかもやたらとバーストしていて、VaporWaveを標榜するサウンドで、こういうギターの入れ方するのって、あまりないような気がします(VaporWave経由のFuture Funkは除きますが)。すごくエモーショナル。

‘無料ダイヤルアップ!!’もやっぱりブギーでMelodicなギターフレーズがトラックのど真ん中で鳴っていて、確かにVaporWaveにありがちなFusion/Smooth Jazz的なサウンドに近いような気もしますが、しかし特異なイージー感を放っています。Chopped & Screwedの影もないし、ストレートに潔く突っ込んでくる爽快感は、やはりユニーク。ラストの‘Deep’は落ち着いたサウンドですが、キラリとした音色とゆるやかなリズムを活かしたチルな音像になっていて、きれいに締めくくられます。そのように、イントロを設けたり、ラストをチルなサウンドにしたりと、作品としての作りもまとまっています。やはり、意外にまとも、という言葉を使いたくなります。

Easy Listeningな軽い聴き心地の中に、現実世界へ浸食するかのようなアッパーな感情性、ギリギリのテンションを封じ込めることで、見事にVaporWave以降を感じさせてくれる、面白い作品です。なかなかの手練れの予感。1作目の“新しいコンピュータのOS 98”とはまた一味もふた味も違ったサウンドになっていて、いったいどういう素養を持っているのかと、興味を抱かせる作り手さんです。

サウンド的には一致しないかもしれませんが、イメージが重なるのが、やはりVaporWave界のアウトサイダー(というかもはや離れた感のある)、Amun Dragoonとか、スペインのLo-Fi脱力Popメイカー、This Deep Well(一時期大量に公開されていた作品群、今は消されています)あたりです。



新しいコンピュータのOS 98 – 新しいコンピュータのOS 98

 新しいコンピュータのOS 98 - 新しいコンピュータのOS 98

 – Tracklist –
 01. オンラインモール/ファッションジュエリー eshopping
 02. ブー
 03. 以降を参照してください
 04. コーナー



 - 01. オンラインモール/ファッションジュエリー eshopping


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 :: LIMITED 新しいコンピュータのOS 98 CASSETTE is SOLD OUT! ::

 Release Date : 2015.02.10
 Label : STC Records

 Keywords : Ambient, ChillWave, Melodic, Nostalgia, VaporWave.


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謎の新興レーベル、STC Recordsより(レーベルとして機能してるのかも分かりませんが)。新しいコンピュータのOS 98の作品です。

まずジャケットイメージ、ギリシャ彫刻にPlayStationのロゴマークと、典型的なVaporWave的外観を身にまとっています。さあ、ちょっと話が逸れますが。そう、たとえばの話。私は音楽に傾倒し始めたのがわりと遅かったんですが、自分の中に枠組みが出来ておらず、受け入れられない―いや受け取れない音楽が、はじめは多々ありました。今でも記憶しているのがNine Inch Nailsの“The Downward Spiral”と、Marilyn Mansonの“ANTICHRIST SUPERSTAR”。今では信じられない(そして面白い)ことなんですが、ぜんぜんRock musicとしては聴くことが出来なくて、それをRockと呼んでよいのかどうかさえ、判断できなかったのですね。そう呼んでしまうと、零れ落ちるものが多すぎる気がしました。ちょうどStephen King(初期のものはよく読みましたが、近作はまったく読んでない)の小説をホラーと呼んでしまうと、どこかに違和感があるような、それと似た感覚です。

ああ、ひとしきり逸れましたね(笑)。この作品もVaporWaveって呼んでしまうと、違和感があるんです。それでちょっと関連して、思い出話をしてしまいました。この作品には、チョップとスクリューっていうVaporWaveの定番エディットも一部にありますが、私の中ではVaporWaveというよりも、IDM/Electronicaに近い気がしていて、あるいはよりナウな方向に寄せたとしても、ChillWaveといったところでしょうか。後者に関しては、ところどころにあるTropical/Islandなサウンドも、そのフィーリングを助長しているかもしれません。特にこのM-1‘オンラインモール/ファッションジュエリー eshopping’などは、タイトルからして作り手はmallsoftチックな、muzakを意識している節が伺えますが、私はドリーミィなビーチをイメージしてしまうのです。休日の昼下がり。人気のないビーチ。思い出に耽りながら、海からの風を浴びる。そんな風景。ちょっとロンリー。ちょっとノスタルジー。それは一部のVaporWaveが強く醸す、無味乾燥なVirtual Plaza感とは遠く離れているのです。

まあつまるところ、私の好きなノスタルジア特化型VaporWaveということもできるかもしれませんが、イージーでMelodic(かつノスタルジック)でよいのです。錬金術のように、ある音楽を別の音楽へとトランスフォームさせることで発生する、VaporWaveマジックもここにはない(ように思えます)。よくよく見れば、“新しいコンピュータのOS 98”というワードには、新しさと古さが同居している(新しいくせに98だぜ!)。この感覚は、過去を喰らいながら、消費しながら、未来に向かうような(温故知新とは違う)、VaporWaveの在り方にリンクするような気もします。

この手のサウンドには尺の短い構成が珍しくないけれど、今作もだいぶ短くて、全体で10分もない。もうちょっと長ければ、良くも悪くも、違った印象だったかも、しれません。モコモコとした水っぽい質感には、VaporWaveという形容も似合うけれど、Tape musicの方がしっくりくるかもしれません。


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(CC) by – nc – nd 4.0



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