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カテゴリーアーカイブ: Clean Error Records

Enabl​.​ed – Anchors ep [ERR026]

 Enabl​.​ed - Anchors ep [ERR026] Cover

 – Tracklist –
 01. Comfort Pillow
 02. Reset Vitamin
 03. Inhaled Menthol



 - 01. Comfort Pillow


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 Release Date : 2016.12.27
 Label : Clean Error Records

 Keywords : Braindance, Electronica, Glitch, IDM, Melodic.


 Related Links :
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Clean Error Recordsより、主宰のiameb 57/Enabl.ed(Jimmy Batista)の作品が突如リリース。これが激アツな聴き心地で思わず筆をとる。

私が彼のサウンドを初めて意識したのは2009年に今は亡きIdeation Recordsからリリースされた“Derlka”を聴いたときだった(ちなみに現在は公開されておらず。一部トラックはm-tronicからの“Tape Deck Volume 2”で聴くことができます)。今までにも何回か名前を出しているトラックメイカーなので、このブログを隅々まで読んでいる奇特な方はきっといないでしょうが、そんな人、あるいはネットリリースのビューティフルなIDM/Electronicaを追ってきた人は、ご存知かと思います。

Hip-Hopも経由した機械的な歪なビートと、Abstractなテクスチャー、それが彼のサウンドの大きな特徴ですが、もうひとつ、忘れてはならないのは、そのビューティフルなメロディ。すべてのトラックにおいて発揮されているわけではありませんが、この電子の響きを放つクリスタルなサウンドで奏でられるメロディが立ち上がってきたときの、得も言われぬカタルシスたるや。メロディを湛えた彼のトラックを聴いていると、いつも思い浮かぶイメージがあって、それは宇宙、なのです。もっと的を絞っていくと、宇宙空間に浮かび、さまよう太古の遺跡。あるいは深海にたたずむ、物言わぬ神殿。コズミック、ロマンティック、神秘的なそのイメージ。その風景は御大µ-ziqの‘hasty boom alert’を聴いたときに感じる心象風景と、そう遠くない。今作のM-1など特に、思わず聴いてて声をあげてしまった! 常々思っていることですが、どこかにVGMにも通じる感触があって、そこが私の琴線を刺激してやまない理由、のひとつだと思います。

Discogsを見ると分かるように、彼はiameb57名義でも、Enabl.ed名義でも、過去に多くのネットレーベルからリリースを行っていました。しかし今やそのほんどが、おそらく(レーベルの閉鎖などに伴い)公開を終えています。これは非常に残念だと思いませんか。今作を聴いてその気持ちを改めて強くしました。いやもちろん最近は自身のレーベル、このClean Error Recordsからリリースを行っていますが、過去の作品も、改めてまとめて欲しいなあ、などと思う次第(自分が所持している音源の中でベストをまとめてみようか、などとはボンヤリ思っている)。

歪なバックトラックと、ビューティフル(そして抒情的)なメロディの混合は見事なバランス感覚としかいいようがなく、どちらかに傾けば立ちどころに聴き心地が悪くなりそうなところ、絶妙なさじ加減でもって、音楽的快楽をもたらす領域に在り続けている。以前からそう、私の中では十指に入るネットアーティスト/トラックメイカーでしたが、今作でその地位は揺るがぬものに。翳りのあるメロディと破裂的、破壊的なリズムの対比が不思議な聴取感を生むM-2や、ミスティックな空間と奇妙な鳴りのドラムを従えて、二本のメロディが主役を奪い合うM-3も、それぞれ素敵だけれど、とにかく、少なくとも、M-1だけは聴いてほしいのです。すばらしい。

ああ、前にも書いたかもしれないけれど、マクロな昆虫写真とかも、イメージとしてある。メカニカルな造形美。冷たく、グロテスクな、美しさ(それらは矛盾しない)。血が通ってはいないが、しかし動きはあり。それはやはり神秘。



Enabl.ed – Tape Deck Series [GIFTERROR002]

 Enabl.ed - Tape Deck Series [GIFTERROR002]

 – Tracklist –
 01. No Matches Only Fire
 02. Bread
 03. Here Is Not Forever
 04. Tibbits Park
 05. Cookies & Applejuice
 06. Twigs + Grass
 07. Grinding Toys Loop (Simple)
 08. Snk24l
 09. Adapting To Things
 10. Kunmil4 [bonus track]



 - 01. No Matches Only Fire


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 Release Date : 2013.08.10
 Label : Clean Error Records

 Keywords : Ambient, Electronica, Glitch, IDM, Melodic.


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Enabl.ebことJimmy Batistaによって運営されるClean Error Recordsより。Enabl.ed自身による“Tape Deck Series”と銘打った作品がフリーでリリースされています。

今作の趣旨としては、いわゆるお蔵入り、というとちょっと表現が悪いかもしれないので、言い直すと、日の目を見なかったトラックたちをコンパイルしたものである様子。2008年から2009年にかけて作成されていた、制作途中ないしは初期段階にあったトラックたちということです。

2008年から2009年というと、ちょうど彼がIameb 57名義でネット上に姿を現しはじめたころでしょうか。前にも書きましたが、Ideation Recordsからリリースされていた“Derlka EP”(2009)は私の中でマスターピースであり、あの作品一発で、私は彼のサウンドのファンになってしまった。その頃に作られていたトラックということも関係あるのか、近作と比べると、少しメロディに傾いている印象がある。

もともとスタイルとしてはAbstract/Glitchが主軸にある。金属の板がランダムに痙攣しているようなメカニカルな音像を下地にして、そこにクリスタルライクなシンセだったり、チャイルディッシュ、ドリーミィな電子音だったりで、メロディを鳴らしてくるというのが、彼のサウンドの大きな特徴だ。だから彼の作る音は、冷徹、暴力的なイメージにはならない。メロディへの志向が非常に感じられて、どこかノスタルジックで、哀愁があり、ややもするとVGMとしても機能しそうな、奇妙な美しさがある(実際VGMにしてはビートが歪すぎるだろうけれど)。

最近の作品ではAmbient、あるいはMelodicなIDMという点で、やや弱い印象があったのだけれど、この作品のトラックたちを聴いてやはりその印象は強くなった。たとえば今作の‘No Matches Only Fire’にあるようなストレートなメロディは、近作では記憶にない。Nueva Formaからの“Delicate Glitch”(2011)などはタイトルに象徴されるように、Abstract/Glitch(さらにいえばHip-Hop)に重きが置かれていて、メロディは脇においやられている。その辺りに寂しさを感じていた私にとっては、蔵出しシリーズだろうと、彼のBeautifulなIDMが聴けるのはうれしい限りだ。

もとから長尺なトラックを作る人ではないけれど、今作は作品の性質上、非常に短いトラックが多い。M-5, 6は共に1分にも満たないくらいだ。WIP(work in progress)という言葉を強く想起させるトラックもある。それでも彼のサウンドの何たるかが感じ取れる(作品として十分に成立してしまっていると感じるのは、私が彼のファンだから、だろうか)。真っ先に聴いてほしい作品だとは思わないけれど、彼のサウンドに興味のある人は、コレクションのひとつに加えても、きっと損はない。昆虫のマクロ写真のような、ある種メカニカルな造形美。そしてコズミックでドリーミィなメロディ。またこのテイストでアルバムなり作ってくれないだろうか。


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(CC) by 3.0



57 Shadows – Four [ERR002]

 57 Shadows - Four [EP]

 – Tracklist –
 01. Pedestrian
 02. They came in the Night
 03. Forgetting That Moment
 04. Solution



 - 02. They came in the Night


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 Release Date : 2013.04.04
 Label : Clean Error Records

 Keywords : Abstract, Electronic, Glitch, IDM.


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iameb57, enabl.edなど複数の名義で活動するアメリカのプロデューサー、Jimmy Batista。彼が新たに設立したネットレーベル、Clean Error Recordsより。Douglas Hazelwoodと組んだユニット、57 ShadowsのEPが実質フリーでリリースされています。この二人はDangerbox Recordingsという別レーベルのオーナーでもあり、またArcというユニットのメンバーとしても、共に活動を行っていました。

Dangerbox Recordingsがトランス・ミュージックにフォーカスしていたのに対して、このClean Error Recordsは“Abstract IDM, Experimental Glitch/Ambient”が主たるリリースになるようで、まさにiameb57/enabl.edのサウンドがイメージされます。

Douglas Hazelwood単体の音を耳にしたことがないので、この57 Shadowsにおいて、彼がどのような役目を果たしているのかは、正直よく分かりません。なので、あくまでiameb57/enabl.edのサウンドと比較するという形で、今作を考えてみたいと思いますが、そうするとシンセの使い方、あるいはメロディラインに、特徴がみつけられる。重量感のあるビートと、Glitchyな、断続的にゆがむ空間、そこにある金属的な、渦巻く螺旋のイメージは、iameb57/enabl.ebそのままといってもいい。ただメロディを担っている音色が、彼Jimmy Batistaが好んで使うような、クリスタルライクなもの、あるいはちょっとザラついたシンセチックなものとは異なっているように、聴こえる(加えて、感傷的なフィーリングも薄まっている)。そしてそれらはより直接的にメロディを担うかのように、前面で鳴らされていて、結果として、‘Abstract’とはいいつつも、より音楽的な作風になっている。

またM-1やM-2で目立っているのだけれど、バックで流れるレイヤーが作りだす、ストレートにシネマティックなイメージも、この57 Shadowsの個性かもしれない。M-2の冒頭、リズムが入ってくる前なんか、ちょっとAngelo Badalamentiを思わせるじゃないか。どこかに漂うエレガンス。マシーナリーにしてムーディというグロテスクなサウンドは、人造人間のような、ミステリアスな、冷たい美を作り出す。

4トラックという少ない内容ですが、なかなかの聴き応え。レーベル開始の一発目(でもカタログ番号は二番目)という、あいさつ代わりには十分すぎる作品です。レーベルのこれからの動きにも期待。いくつかリリースも控えているようです。


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All songs written and produced by iameb 57 and Douglas Hazelwood.