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Old Village – Infinito [TFR578]

 Old Village - Infinito [TFR578]

 – Tracklist –
 01. Da Ancestralidade ao Infinito (Ancestry of Infinity)
 02. Na Rota do Espanto (On the Route of Astonishment)
 03. Encantos Perdidos (Lost Charms)
 04. O Despertar das Estrelas (The Awakening of the Stars)
 05. Destino (Destiny)
 06. Abyss (Abyss)
 07. Aislin (Aislin)
 08. Passagem por Sagittarius A (The Passage Through Sagittarius)
 09. O Findar dos Tempos (The End of Time)
 10. Canção das Bruxas (Witches Song)
 11. Mar Antigo (Old Sea)



 - 02. Na Rota do Espanto (On the Route of Astonishment)


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 Release Page :
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 Release Date : 2012.11.20
 Label : Torn Flesh Records

 Keywords : Ambient, Ancient, Dark, Folk, Heathen, Melancholy.


 Related Links :
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ポートランドのネットレーベル、Torn Flesh Recordsより。Old Villageの作品がフリーでリリースされています。Old VillageはJoao Ribeiroのソロ・プロジェクトですが、そのときどきでゲストを招きいれて作品を作っているようで、彼を核としたユニットと捉えるべきでしょうか。今作のオリジナルのリリースは2010年、これよりあとにも他の作品がリリースされているので、完全な新作というわけではありません。

Neo-Folkという言葉で紹介されたりもしているのだけど、正直その言葉の何たるかを私は知らない。 そしてこの作品は、リリースページにある、”influenced by legends, folklore, beliefs, landscapes, cosmos and visions of lost worlds.”という言葉で、いくらか形容されうる。およそ音楽のジャンル/カテゴリを指し示す言葉ではないのだけれど、不思議とこの言葉たちは、彼の音楽から得られるフィーリングを、われわれに想像させる。

全編で印象的に用いられている、チェンバロ(ハープシコード)、ないしはそれに類似した電子音。なぜかしら、中世の時代に対する漠としたイメージが、頭の中に立ち上がってくる。ピアノや重々しいストリングスなどのクラシカルなサウンドと、Doomyなリズムや呪術的声部といったDarkな要素、そしてElectronicなAmbience。これらが融合して、電子的な響きも多分にもった、Dark Ambient、メランコリックなElectronic musicが作り上げられている。冒頭から挿入されている雨の音、あるいは中途で聴こえてくるカエルやカラスの鳴き声などが、陰鬱、不吉なイメージを掻き立てる。外部から隔絶された、ひなびた村。古来から残る因習。崩れかけた、物言わぬ神殿。毎夜ささげられる祈り。松明の灯りと行進。異教、あるいは先史時代の宗教のような、ミステリアスなイメージ。そこにはどこかロマンがあるように感じられる。

‘秘められた暗さ’とでもいうやつが全編から放射されているのだけど、それ一色ではないところがまた今作の魅力ではなかろうか。たとえばM-3やM-7には陽性の力があるように思う。暗い風景の中で放たれる一筋の光は、救いを示しているのだろうか。特にM-3は、やわらかいAmbienceの中をピアノの旋律が流れていく、ドリーミィなトラックになっていて、短いながら、異彩を放っている(タイトルの’Lost Charms’は何を示しているのか)。このような暗くメランコリックなサウンドを好み、自らの世界観とする一方で、そのような光あるトラックもまた作り出せる、その二面性に、彼の個性を感じる。格別メロディに富んでいるというわけではなくて、過去の作品にまたがっても、似通ったフレーズは散見される。それをプラスに評価するかマイナスに評価するかは分かれるところだろうけれど、まずは、そのサウンドの一貫性、強固な世界観には恐れ入る。

今作の前にも同レーベルから”Temores Lendas e Tradições”がリリースされていますし、他にも複数のリリースがあります(彼のHomepageからダウンロード可能)。おススメするならその”Temores Lendas e Tradições”か今作といったところだが、’AncientなAmbient music’といった観点からいうと、今作に軍配が上がる(前者はElectronicなタッチが強く、Ancientなフィーリングが今作に比べて損なわれているように思う)。というわけで、今作は現時点で、彼の作品の中では最も完成度が高いのではなかろうか。アルバム全体で、一つの強固な世界が構築されている。


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