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カテゴリーアーカイブ: BRAINSTORM LAB

XZICD – Rotodyne [BSL058]

 XZICD - Rotodyne [BSL058]

 – Tracklist –
 01. Endless Forms Most Beautiful
 02. Preferential Blue
 03. Magliabechiano
 04. Demimonde
 05. Tsifteteli
 06. Transient Leviathans
 07. Facixtil
 08. Brísingamen
 09. Heracleion
 10. UVB-76
 11. Quetzalcoatl (with IQbit)
 12. Demeter
 13. Xenophon’s Exile
 14. Cladonota Inflatus
 15. Runes Of Apocrypha



 - 01. Endless Forms Most Beautiful


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 Release Date : 2015.11
 Label : BRAINSTORM LAB

 Keywords : Ambient, Electronic, Field Recordings, Glitch, IDM, Nature, Sea.


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なかなかに印象的な作品です。Deep Sea IDM/Electronica、ないしはCold Sea IDM/Eletronica。XZICDの作品は全部聴いているわけではないのですが(むしろ申し訳ないことに聴いている作品の方が少ないです)、少なくともいつもいつもこの作風ではないと思います。

作品の後ろに何があるのか語られている様子がないので、こちらで勝手に考えるしかありませんが(それも楽しいです)、この作品と結び付けられそうなNetlabel/Netaudio作品がふたつ、私の頭に浮かびました。ひとつはロシアのAmbient/Drone/DoomプロジェクトであるNubiferousが生み出した傑作Dark Ambient“Behind The Megalithic Walls”(2010)、もうひとつは北ウェールズのAmbient Electronicプロジェクト、Mank(Ben Powell)が2008年にリリースした“isbjorn”。 どちらもキーワードは“海”です。前者は深海の深さや暗さといった、重い側面をDark Ambientで巧みに描き、また後者はその広大さや包容力、そして厳しさが、美しく冷たいサウンドによって描かれていました(特に“isbjorn”は極地研究のロシア探査船上で作られたという異色の出自です)。

私としてはその並び―海を音像化したElectronic music―に今作を加え、そして良作として認定したいのです。このジャケットイメージがもうスゴイ好きで。シロイルカみたいな(ハッキリはしない)生物が身体を波打たせて、暗い水中を泳いでいるような、神秘的でちょっと怖くもある、そんなイメージが、見事に今作のサウンドを象徴しているのです。海に対するイメージって人によって全然違うでしょう? 簡単にいえば好きな人と嫌いな人がいて。たとえばダイビング大好きな人もいれば、そんなの冗談じゃないって人もいるし。その広大さは怖さにも、安心感にも結びつくのです。私はどっちかっていうと神秘性を感じる方で、やっぱりそれは好きという感情とはちょっと違うんです。嫌いというよりは畏怖の対象。

この作品は海に対するそんな感情性を打ち破ったような、不思議な聴き心地なのですね。フォーマットが硬質なIDM/Electronicaということも関係しているのでしょう、冷たくクールな音像なのですが、それは決して拒絶的ではなくて、むしろフラットなのです。手を広げてもいないし、かといって背中を向けているわけでもない。ただそこにあるもの。とでもいうような。M-1の‘Endless Forms Most Beautiful’がスゴく好きなのですが、なんでしょうこのネイチャー感、イルカの鳴き声なのかな?キューキューとしたロングトーンの音がフィーチャーされていて、なおかつ水中における音のくぐもりやその動きを音像化したような絶妙なサウンドエフェクト、さらにはシュゴーッ、ゴワァァァンとした重力空間、もうたまらなくElectronicネイチャー(電子音によって自然が描かれているという意味です)。それでもリズムにはGlitchなんかも入ってるし、やっぱりフォーマット、スタイルとしてはIDMなんですよ。そこが面白いなあと。AmbientやDroningなサウンドではないというところが。M-14‘Cladonota Inflatus’なんかはちょっとDroneっぽい響きもあるけれど、でも奇妙なリズムとエフェクトで上手いこと回避されている。M-6‘Transient Leviathans’の断片化したアコースティックな響きを雑音的に散りばめたサウンドメイクもユニーク。映画のスコアっぽい。IQbitを招いた‘Quetzalcoatl’ も、軋むような水音をリズムにしつつ、別のリズムでトライバル感のぞかせてネイチャーに寄せつつも、何ならちょっとSF臭が漂う重金属感があって、これは作中でも異彩を放っています。

全編で上のElectronicネイチャー感が遺憾なく発揮されていれば傑作間違いなしだったのですが、若干のトーンダウンが見られるのと、最近私が長尺な作品を聴くのがしんどいということもあって(完全に個人的事情!)、いわゆる満点にはいたらず。でも最近聴いたこの手の音の中では非常に印象的でした。面白い。イマジネイティヴ。


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Credit :

Written and Produced by Francisco Godinho

Rotodyne Collaborations with:

IQbit – Main Synth on ‘Quetzalcoatl’ (soundcloud.com/iqbit)
Nina Kardec – Vox Samples on ‘Heracleion’ (soundcloud.com/ninakardec)

Mastering: Sonic Bat (facebook.com/sonicbat)
Cover Photography: Francisco Godinho
Cover Design and Layout: GeeOhDee (geeohdee.com)
Released by: Brainstormlab (brainstormlab.org)

(CC) by – nc – nd 3.0