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Purl – Childhood Dreams [ETNLR09]

 Purl - Childhood Dreams [ETNLR09]

 – Tracklist –
 01. Childhood Dreams





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 Release Date : 2017.02.14
 Label : Eternell

 Keywords : Ambient, Dream, Drone, Memory.


 Related Links :
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自分にとって、世界はもう長いこと―本当に長いこと―、輝いていない。いつ以来だろうと、思いを巡らせたときに、いつも思い出すのは―

学生生活を終えたものの就職できなかった私は、実家のある田舎に引き戻された。ドがつくほどの田舎ではないが、それでも町の中心部からは程遠い、近くのドブ川を跨げばすぐに隣りの市に入るような、隅っこにあるのが私の家だった。実家住まいでバイト暮らしと言えば金は貯まりそうだが、選んだ仕事の時給の安さでそうも上手くいかず、私が都内に出るときはいつも数時間かけての鈍行だった(まあ鈍行でも上れるんだから悪くはない環境だった、今思えば)。

都心に出て、異性(この書き方はいやらしいか。有体に言えば彼女だ)と、映画を観た。単館上映の映画で、地下にあるちっさい館内で、でっかいスクリーンを見上げながら、二人で涙ぐんだ。そこからきっと魔法にかかったんだろう。昼食を食べ、街をぶらつき、夜になり、帰るはずの時間にも、私(たち)は帰路につかなかった。宿泊という選択で一夜を明かした私たちは朝になってようやく家路に向かったわけだが、電車の時間を見誤って、バイトの時間が迫りまくっていた私は超がつくほど焦っていて(真面目だな)、地元の最寄駅に停めてあった自転車に跨るや猛スピードでペダルを漕いだのだった。しかし、急ぎペダルを漕ぎながらも、私の目に映るすべての景色は、確かに輝いていた―朝日を反射する川面、その川沿いに繁茂する名も知らぬ植物、空を流れる雲、道路を走る車たちやガードレール。あれほど世界が輝いていることを実感したことは、あれ以降ないと断言できる。机の上の埃にさえ、輝きを見出したことだろう。

文字通り息を切らしてバイト先へ駆け込んだ私は前髪の乱れを気にしながら他のスタッフにあいさつをしたが、いつもより早く到着した私は怪訝そうな顔で出迎えられ、変にきまずい空気が流れたのだった。

そのときのことは別のブログに記してあって、しばらくは読み返すたびに、その世界の輝きが私の中にカムバックしてきたものだった。しかしいつしかその効果も時間の流れと共に薄れていき、ついには魔法は解けてしまった。つまりは世界は輝かなくなってしまった。

この作品を聴いて世界が輝きだしたということではなくて、かつて世界が確かに輝いていたことを思い出したのです。メモリー。記憶。思い出の物語。スペル・イズ・ブロークン。それは大人になることとは違うんだろうけれど。

ああ、上記の映画、私は珍しくパンフレットを買って、それは今でも本棚の端に鎮座ましましている。


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Ludvig Cimbreliusはこの他にも多くの名義を使っていくつも作品をリリースしてるので、気になってしまった人は探ってみてくださいね!


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 Note :

Made long ago (sometime in my late teens) from the warm light of early autumn, the soft undefinable longing of the cool evening breeze playing with the leaves that just started to turn colors, just beginning to fade…

Music by Ludvig Cimbrelius

Cover art by Brian Young –
www.flickr.com/photos/stillespace/
www.instagram.com/losingtoday/