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カテゴリーアーカイブ: Kitty On Fire Records

Dreaming Moths – Truth [KOF180]

 Dreaming Moths - Truth [KOF180]

 – Tracklist –
 01. Hey Kat
 02. The only difference
 03. Wet Dreams
 04. Kaoru Abe and the fox’s jacket
 05. Kafka and Laika



 - 01. Hey Kat


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 Release Date : 2013.04.14
 Label : Kitty On Fire Records

 Keywords : Acoustic, Breakcore, Electronica, Glitch, IDM, Sample-Based.


 Related Links :
  ≫ Dreaming Moths on SoundCloud / on bandcamp


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ラスベガスのレーベル、Kitty On Fire Recordsより。ウルグアイ出身のトラックメイカー、 Dreaming MothsことMarcelo Guaragliaの作品が、実質フリーという形でリリースされています。

コラージュ然としたジャケット画像に象徴されているように、編集感覚にあふれた作品です。GlitchyなElectroacousticから、IDM/Breakcoreまでを、縦横無尽に行き来する。多くのサンプルが用いられていることが表記されていますが、どこからどこまでがサンプリングされた素材なのかは、明確には分かりません。

特徴的なのは、大胆なGlitchや、Breakbeat(ないしはBreakcore)といった、破壊的なサウンド要素を内包しているにも関わらず、Hardcoreな方向には傾いていない点。断片的なアコースティックギターの音や、鍵盤、ストリングス、ブラス(M-4。これは阿部薫の作品からのサンプリングなんだろうか)、木琴や鉄琴といった、きちんとフレーズをもった楽器音が広く用いられていて、これが今作を音楽的な方向に導いている。リズム面にしても、決して過激に突っ走るだけではなくて、トラックのイメージにあわせる形で、その音色や、リズムパターン、BPMはコントロールされている。

また日本のアニメからと思しきセリフも散見されるし、彼のSoundCloudでは、Galileo Galileiの‘青い栞’に対するGlitchyなリミックスも公開されている(余談だけど、これはMeishi Smileのリミックスに触発されて作ったらしい)。さらには上記のように阿部薫からのインスパイアも感じられるなど、日本のカルチャー、音楽にも関心をもっている点がうかがえる。

与えられている情報によれば、彼はまだ18歳という若さ。そんな彼の中に、どれだけの音楽が蓄積されているのか分からないけれど、膨大な情報量の中からパーツを取捨選択して自分のイメージに沿ったサウンドを作り上げる―なおかつそれは独りよがりな抽象的なものではなく、音楽的快楽をもっている―のは、確かな才能だろう。編集による再構築というのは、音楽の作り方としては別段あたらしくはない。90年代的といえるかもしれない。でもどこかにあたらしさを感じるのはなぜだろう。そう、たとえば上に名前を出したMeishi Smileとも共通するような。サブカルチャーすらぶっ壊して、ひとつのパーツにしてしまっているところだろうか。だから、シリアスなElectroacousticサウンドの中に、唐突にアニメのセリフが現れたりするんだけど、もはやそれは音楽を構成するひとつのパーツにしかすぎなくて、そこに異質なものを感じてしまう私の感覚の方が、古いのかもしれない。

いずれにしろ、面白い作品です。過去のこの手法にあった感覚が編集感覚といわれたなら、ここにある感覚は、新・編集感覚とでも呼びたい。垣根の低くなったフィールドたちを、次々とつなげていくようなイメージ。場面場面、イメージにあわせたサウンドを、ジャンルを横断して構築していく在り方は、ある意味ではシネマティック(そこにはアニメも内包されるか)だろう。前作“DRMNGMTHS”の‘Pool’などは、もろにJazzで、まるで映画のスコアのようなんだけど、そのあとに続く‘Stop crossdressing as your dead girlfriend’が、ディストーションギター全開の破壊的サウンドになっていて、まさにカテゴリ/ジャンルなど無用といった様子だ。まだちょっとこじんまりした印象なんだけれども、どこかで大化けするかもしれない、このDreaming Moths。要注目だ。興味のある方は、彼のSoundCloudを訪れてみてください。多くのトラックをストリーミングで聴くことができます。


せっかくなんで、上に出た‘青い栞’のリミックスを以下に―





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note by Dreaming Moths :

To my friends, to my favourite musicians, to my family, and to you.
Music composed by Marcelo Guaraglia aka Dreaming Moths
A lot of samples were used in this album.