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SANDRINE DEUMIER AND PHILIPPE LAMY – TÉLÉMAQUE [DWS184]

 SANDRINE DEUMIER AND PHILIPPE LAMY - TÉLÉMAQUE [DWS184] Cover

 – Tracklist –
 01. TÉLÉMAQUE


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 Release Page Download Free!

 Release Date : 2017
 Label : deepwhitesound

 Keywords : Ambient, Noise, Obstruction, Poetry, Spoken Word, Sound Art.


 Related Links :
  ≫ Sandrine Deumier
  ≫ Sandrine Deumier on SoundCloud / on Vimeo

  ≫ Philippe Lamy
  ≫ Philippe Lamy on Facebook / on SoundCloud


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2005年から続くエクスペリメンタル系netlabel、deepwhitesoundより。勝手にフランスのレーベルかと思ってましたが、アメリカのレーベルなんですかね。まあどこでもよろしいですけれどもネ。

アートワークが気になって聴いていたわけですが、レーベル側の説明はまあ足りないですよ。何がなんやら分からなくないですか。それもミステリアスでよいといえばよいんですが。ということで色々と付け足していきますと、まずはリリースページに書かれている文章は、今作で挿入されているSpoken Wordの一節です。ダウンロードしてもこれしか付せられていません。すべてを知りたい場合はSandrine Deumierのウェブサイト内で公開されていますので、そちらをご一読ください(≫ text “télémaque” ※下部“next”をクリックすれば次ページが読めます)。

しかして今作の成り立ちですが、もともとは2015年に製作されていた作品のようです。バックトラックといいますか背景となる音像を製作したのは、フランスのアーティストでもあるPhilippe Lamy。そして語りを担当しているのが同じくフランスの作家/ビデオアーティスト/パフォーマーであるSandrine Deumier。さらに詳しく見ると今作にはどうやら前身となる作品があるようで、それが“GogatsuByo”(五月病!)。これは今作から語りを抜いた映像作品です。つまりこの“GogatsuByo”に言葉を挿入したのが今回の“TÉLÉMAQUE”になるわけですが、これも映像作品として公開はされています。レーベル側からは特に示されていませんが、Sandrine DeumierのVimeoで見ることができます。

ということで、トラックだけでなく映像も含めての感想です―

無菌的な部屋の中で白い簡素な衣装に身を包んだ女性。頭も白いモノで覆われており、顔だけが露出している。あえてなのかそうでないのか、映像の作りは決して研ぎ澄まされてはいない。最低限の立体感のみが確保されていて、動きも不自然だし、スローだし、表情もなく、動きや表情から感情をうかがい知ることはできない。それが全編にある不気味さを助長してることは間違いない。

“GogatsuByo”に付されたテキストと合わせて考えるに、おそらくはインターネット活動(受動的であれ能動的であれ)に関わることによる自我の変容について、ここでは描かれているように思います。作品内にあるそれぞれの動きや、他者との接触が何を意味しているのか、それが単純にリアルライフを示しているとは思わないんですが、じゃあ何なのかと問われると、考えあぐねてしまう。最後の方に出てくるもう一人の自分(のような存在)が、なぜローラースケート(のようなもの)を装着しているのかも分からない。流れる時間の違いを表しているのか? いや分からない。孤独から始まりまた孤独に戻るという流れがあるような気もするが・・・果たして・・・。

意味のある言葉が羅列はされているのだが、そこに文脈を見いだせない。でもそれでも良いのかもしれない。何ならそこには音楽の一つの機能である異常への誘いがあるのだから・・・。フランス語のまろやかな発音、左右のパン、後ろに流れるソフトなノイズ・・・、精神的閉塞感の中にある不思議な安心感。それは幻か。

結局のところ、自由に聴き、自由に見るのが良いと思います(丸投げ)。タイトルの“TÉLÉMAQUE”はギリシャ神話の登場人物テーレマコスに由来しているのだろうか。だとしたらその意味は―


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