ABRAcaDABRA

Netaudio explorer

カテゴリーアーカイブ: SadAlanMusic

Kinesthetiac – Kinesthetiac EP

 Kinesthetiac - Kinesthetiac EP

 – Tracklist –
 01. Deep Landscape Free 30 Day Trial
 02. Call Me Up
 03. @TheSarcasmTweets
 04. There 4 U
 05. Looking Out The Window
 06. Willow Island
 07. Kinesthetiac’s Clubhouse



 - 01. Deep Landscape Free 30 Day Trial


+ + +


 Release Page Download Free! / pay what you wish.

 Release Date : 2015.04.22
 Label : SadAlanMusic

 Keywords : Electronic, Funny, IDM, Strange, Trap.


 Related Links :
  ≫ Kinesthetiac on Facebook / on SoundCloud / on Tumblr / on YouTube / on Twitter


+ + + + + +


未来からやってきたネットレーベル、SadAlanMusicより。KinesthetiacことJared VanMatreの新しい作品がリリースされています。しかもまさかの、ここにきて、セルフタイトル作。自信があるのか何なのか。

以前“Cheese Stank EP”を取り上げたときに書きましたが、2011年に若干14歳でこの界隈に彗星のように現れたKinesthetiacは、当初はMelodicなElectronica/IDMを作っていました。初期の3作品、“Eternal”、“Gander”、“Fields Of Thought”は特に魅力的で、MelodicなElectronica/IDMのファンには是非とも聴いてほしい作品です。

しかしその後の彼は抽象的なElectronic musicを作るようになり、初期の面影はドンドン薄れていくことになり、そのことを私は残念に思っていたわけです。“Cheese Stank EP”も何だか不明瞭な作品だったし、いったいどこに向かっているのか、見当すらつかず、仕方なしに彼がたまに連投するSoundCloudのトラックをチェックしつつ、その動向をうかがっていた次第(ちなみに今作には公開済みのトラックも含まれています)。

そしてここにきてこのセルフタイトル作がリリースされたわけですが、M-1がだいぶ(ホントにだいぶ)久しぶりに、ストレートにメロディを鳴らしていてビックリした。思わず笑ってしまった! リズムはちょっと水っぽかったり、ヘンな部分があるけれど、おおらかでドリーミィなメロディはかつてのIDMサウンドを彷彿させる。なんだやればできるじゃんよ! こういうの作ってくださいよ!って声を大にして言いたい。

でもこのシリアスにもとれる路線は最初のワントラックだけで、あとはまた傾向が変わってしまうのです。Synth PopなウタモノトラックのM-2‘Call Me Up’とか、ちょっとJersey ClubっぽいM-3‘@TheSarcasmTweets’とか、確かにメロディはあるんですが、アッパーなイメージのトラックが続くのです。続くトラックも、Indutrial/Noiseなシンセサイザー・ミュージックのM-5‘Looking Out The Window’や、奇怪なコラージュM-6‘Willow Island’など、やはりどこかヘンテコなものに・・・。ファニーなジングルのようなラスト‘Kinesthetiac’s Clubhouse’もそうなんですが、彼のここのところ作ってくるトラックには、ファニーという言葉をあてはめるのが最も適当ではないかと、私はけっこう長いこと思っていまして、そして今回、ようやく、この“ファニー”なイメージに結びつくかもしれない彼の嗜好を発見しました。

それは今作のクレジットに書かれている“furries”というワード。見慣れない言葉なので調べてみましたが、ちょっと引用させていただきましょう。まずはWikipediaより“ファーリー・ファンダム”という項目がありますので、そこから―

ファーリー・ファンダム(Furry fandom)とは、欧米のカートゥーンの文化の影響を受けて、擬人化された動物のキャラクターを好むことで特徴づけられるファンダムである。

さらにピクシブ百科事典の“furry”の項目にはもっと直接的な言葉があります―

欧米などの海外圏における「ケモノ」の呼称。「ケモナー」のことを示す場合もある。英語のfur(毛皮)が語源。

なるほど“furry”で画像検索を行ってみると、一発でこのワードの持つイメージが直感的に把握できます。コミカルでファニーで、まさにそう、カートゥーンなのですね(対して“ケモナー”で検索した結果にはカートゥーンのタッチが見られないのが面白い)。つまり最近の彼が作るサウンドにはこの“furry”、ないしは“Furry fandom”が大いに影響しているというのが、私の見立て。実際彼のSoundCloudのプロフィール画像にもその嗜好は示されているし、Weasyl(ソーシャル・アート・ギャラリー・ウェブサイト)のアカウントでは、カートゥーンタッチで擬人化された動物たちが並んでいる。そして何より今作のジャケットがすでに、ですね。

残念ながら私がカートゥーンに親しんでいないので、今作とカートゥーンを強く関連付けて書くことができないのが残念ですが、でもとりあえずカートゥーン・ミュージックには影響されてなさそう・・・だけれど、その辺りもよく分かりませんので、興味のある方は考察してみてはいかがでしょうか。しかしKinesthetiacの作るトラックには謎めいた部分が多かったのですが、こうやって作り手の趣味嗜好を知ることで、何となく音楽が理解しやすくなったように感じられて、うれしいような、ちょっと残念なような、複雑な気持ちがあります。なぜ残念かって、分からないからこそ惹きつけられるっていう、その吸引力がちょっと薄れてしまった気がするからです。たとえばネッシーなんてきっといないって分かってしまったときに、何となく残念な気持ちになるのはなぜか(本来なら残念に感じる“必要”などないのに)っていうのと、仕組みは同じような気がします。

とにかく、久しぶりにMelodicな作品を作ってきたJared VanMatreに感謝しましょう。ありがとう! これからもこっそり期待しておきます。ちなみに彼、このSadAlanMusicから2014年に“Vacation”というVaporWave/Trap/Synthesizer musicな作品をリリースしてるんですが、トラックタイトルに‘Daniel Lopatin’なんて使ってて、やっぱりちゃんと意識してるんだな、ノーマルじゃんって思いました(作品全体でなんとなくの影響は感じられる)。しかしそのジャケットイメージがダサすぎてホントいい(笑)。


+ + +


Note :

Music + Artwork by Jared VanMatre
Jerome, Indiana 2015
Special thanks to my friends and the internet and furries