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カテゴリーアーカイブ: bandcamp

Nine Inch Nails – Strobe Light

 Nine Inch Nails - Strobe Light Cover

 – Tracklist –
 01. Intro Skit
 02. Everybody’s Doing It (featuring Bono, Chris Martin & Jay-Z)
 03. Black T-Shirt
 04. Pussygrinder (featuring Sheryl Crow)
 05. Coffin on The Dancefloor
 06. This Rhythm is Infected
 07. Slide to the Dark Side
 08. Even Closer (featuring Justin Timberlake and Maynard Keenan)
 09. On the List (She’s not)
 10. Clap Trap Crack Slap
 11. Laid, Paid and Played (featuring Al Jourgensen and Fergie from the Black Eyed Peas)
 12. Feel Like Being Dead Again
 13. Still Hurts (featuring Alicia Keys)
 14. Outro Skit



 - 05. Coffin on The Dancefloor



 - 07. Slide to the Dark Side


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 Release Date : 2019.04.01
 Label : Not On Label

 Keywords : Alternative, Electronic, Mashup, Nine Inch Nails.


 Related Links :
  ≫ Atticrent Reznoss on Twitter

  ≫ nine inch nails | the official website


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Nine Inch Nails(NIN)のTrent Reznor(トレント・レズナー)は2009年の4月1日に、NINのニュー・アルバムとして“Strobe Light”のリリースをアナウンスしました。私もTwitterだったかどこだったか、正確には忘れましたが、実際インターネット上でその情報を目にしました。製作に関わったとされるのは一線級のアーティストばかりで、U2のBonoやJay-Z、Sheryl Crow、Justin TimberlakeにTOOLのMaynard Keenan、MinistryのAl Jourgensen、Alicia Keysなどなど、錚々たる顔ぶれ。しかもプロデュースはTimbaland。NINがこんなメンツでアルバム作るの?って驚いたもんですが、それと同時に何かおかしくね?って思ったことも覚えています。ジャケットイメージもNINぽくないというか、絶妙にハズしている感じだし、違和感満載だったんですが、それもそのはずというべきかどうか、このアルバムはトレントのかましたエイプリルフールのジョークだったんですね(詳細はNinWikiを参照)。何だよおかしいと思ったハッハッハッと笑ったあの日から早10年―

2019年4月1日、ファンメイドによる“Strobe Light”がインターネット上に現れました。完全フリーという形で。裏にいるのはAtticrent Reznossという、NINの右腕であるAtticus Ross(アッティカス・ロス)とトレントの名前をもじったかのようなユーザー名を持つ人物。アカウントには“seed9”というワードが使われています。トレントがこの作品に反応しているのかどうかは調べていませんが、NINの美術監督も務めるRob Sheridanは関知しているようで、Twitterでこのアルバムを取り上げています。

トラックリストも2009年にアナウンスされたものがそのまま使われています。どういった内容になっているのかが気になるところですが、これまでのNINの楽曲、それからフィーチャーリングとしてクレジットされているアーティストのヴォーカルを使った、マッシュアップなアルバムになっています。もともとNIN自体がリミックスワークには積極的だし(オリジナルアルバムのほとんどにリミックス盤が存在する)、“YEAR ZERO”に対するリミックス盤“Y34RZ3ROR3M1X3D”の後に開設されたRemix.nin.com(現在はアクセス不可)においてはファンに自身の楽曲のソースを公開し、自由にリミックスとアップロードを許可したり、“GHOSTS Ⅰ-Ⅳ”のリリース時には、“Ghosts film festival”と称してYouTube上で楽曲に対する映像作品を募るなど、常にファンの創作意欲を刺激するような、そんな姿勢をとってきた。そんなトレントだから、今作についても特別に目くじら立てるなんてことはないと思いますし、興味をもって聴いているかもしれません。

イージーな言い方をすれば、異なる楽曲のバックトラックとヴォーカルを組み合わせてひとつのトラックに仕上げているというのが、今作なわけですが、ファンとしてはその組み合わせの妙を楽しむことになりますね。で、感想としましては非常にクオリティが高いと思います。すべてAtticrent Reznoss(seed9)の手によるものなのかは分かりませんし、詳しく調べてはいませんが、もともと何処か―たとえばNinremixes.comなど―で公開されていたものではなさそうです。上に書いたようにNIN自体がリミックスに対してオープンなので、ウェブ上にはファンによってリミックスされたトラックが沢山ありますし、私も少ないながら耳を通しています。まあリミックスとマッシュアップでは同じラインで比べられませんが、直感的な感想では、数多あるリミックスと比べても、頭一つ出てると思います。

全曲を分解したり感想を書いたりするのは長くなりすぎるので、かいつまんで。マッシュアップという手法も関係しているのでしょう、基本的にはリズムが活きていたり、ディスト―ショナルなギターが入ってくるような、ノリの良いトラックが多いです。でも流れとしてはきちんと緩急がつけられていて、アルバムとしてのまとまりが意識されている印象です。

カッコいいなあと思った意外な組み合わせは、M-3―‘Into The Void’のバックトラックに‘Terrible Lie’のヴォーカル。ぜんぜん違和感ないのな。もともとがハンマービートな感じなので、‘Into The Void’の引き締まったリズムが合うんでしょうね。M-5も巧みな組み合わせでこれまたカッコいい―‘The Hand That Feeds’の分かりやすいリズムに、‘Discipline’を組み合わせ、間には‘Survivalism’を挟み込みながら勢いをつけ、徐々に‘All The Love In The World’を重ねつつ、ラストは完全にそのテンションで塗りつぶすという、スゲーなあ。そこから続くM-6で‘Wish’のリズムが走ってるのがまた堪らんですね。しかも合わせてるのは‘March Of The Pigs’っていう。吹き荒れるディスト―ション。

その次のM-7も‘The Big Come Down’のリズムっていう、かなりヘンテコなリズム使ってるんですが、そこに重ねてくるヴォーカルがなんと‘Burn’ですよコレ! しかもサビ的に‘Meet Your Master’を使うっていう、‘Burn’ってのあのギターが突っ走る感じがクライマックスになってると思うんですが、それがなくても見事に楽曲としてのテンションが持続しているというか、お見事ですね。すげーカッコいい。

M-11は‘Starfuckers, inc.’に‘Every Day Is Exactly The Same’というありそうもない組み合わせで盛り上がりを作りつつ、Ministryの‘T.V.II’からのシャウトも織り交ぜて爆発させたままM-12が‘Dead Souls’(Joy Divisonのカバーですね)のリズム! そこに‘Sanctified’を合わせてくるという、またこの妙! ダイナミックなリズムとギターで迎えられた‘Sanctified’のメロディは確実に新たな魅力を獲得しています。

しっとりトラックっていうのかな、緩急の‘緩’にあたるトラックには言及しませんが、ラストは‘Hurt’で締めくくってくれます。

ということで、楽曲のクオリティはもちろん、NINらしいテンションの作り方、またアルバムとしてのバランスも考えられていて、これはNINファンならマスト、ファンならずとも耳を傾けてみても損はない作品。そしてNINのオリジナルアルバムが聴きたくて堪らなくなりますねえ(というか実際聴いてました)。気になってしまった人は今からでも遅くはない、NINのファンになりましょう。


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(CC)by – nc – sa 3.0



Salfumán – IWYL

 Salfumán - IWYL Cover

 – Tracklist –
 01. IWYL
 02. Y no te das cuenta
 03. Disco Chill



 -  02. Y no te das cuenta


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 Release Date : 2018.08.05
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Chill, Pop, SynthWave, Vocal.


 Related Links :
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いいですねえ、このジャケットイメージ、ビビッときますよ。黒いシャツに黄色いジャケット(コートかな?)、周囲を囲むのは緑の植物たち。リラクシンな空間に刺す、イエローという一筋の刺激。そして赤いルージュ。モダンなような、レトロなような、不思議なフィーリングですが、これは彼女の音楽にそのまま通じるような気がします。ちなみに前作のジャケットイメージにも黒、黄色、緑は用いられていて、自身の中で何かキーになっている色なのかもしれませんね。あと植物も良く使われてます。

そんなSalfumánは、スペインのシンガーソングライターSandra Rapulpのソロプロジェクト。Love Our Recordsを活動の基盤にしているようで、いくつかの作品はそちらからリリースされています。

コケティッシュといってよいんでしょうか、ウィスパー気味のヴォーカルが彼女の音楽のもっとも分かりやすい特徴かと思います。ギターも使われていはいますが、それほど主張はしておらず、むしろシンセによるAmbientな空間作りや、合成的ドリーム感が印象的です。歌詞もスペイン語なんでしょうか、聴いていてエキゾチックな感覚がありますね。

近作になるにつれてPopになってきていると私は勝手に思っているんですが、どうでしょうか―特に“C Y C A”(2016)から“Ambiente Satén”(2017)の辺り、これまでより高いポイントに達している感があります。‘Satén’のストレートにSynthWaveな佇まいとか、それまでにあまりなかったと思うし、このドライヴ感、堪らない(シンセと拮抗するギターの音がヒューマンエモーショナル)。じゃあなんで敢えてこの作品を選んだのかっていう話になりますが、逆にちょっと抜いてきたというか、角度をずらしてきたような聴き心地があって、面白かったからです。

M-1‘IWYL’はシンセも使われているもののそれはぜんぜんSynthWaveのタッチを感じさせるものではなくて、完全に添え物、簡素なギターとリズムで構成された余白の多いトラックにささやくヴォーカルが乗り、アダルティな空気が醸される。M-2‘Y no te das cuenta’もミニマルなリズムとシンセに不定型なヴォーカルラインが乗っかって、そこに生まれるのはChillWaveにも通じる気だるげなサマーヴァイブという、これまであまり見せていないスタイル。割と短めで、インタールードのような役割なのかもしれませんね。ハッキリとした歌もないままに終わってしまいますし。M-3‘Disco Chill’はタイトル通りにディスコテックなリズムではあるものの、フワッとしたシンセと、わざとメロディを崩したようなヴォーカルスタイルが印象的で、不思議な聴き心地ですね。だからDisco Chillなのか。

ということで、全3曲とコンパクトですが、特徴豊かなトラックが収められていて、よい作品だと思います。ときおりPrefab SproutとかNew Orderとか、最近だったらMirror Kissesとか感じたりしなくもないので、その辺のファンの人にもアピールする部分があるかもしれません。思い切り余談ですが、Salfumánの声は誰かに似てるなあと思って、ずっと記憶をほじってたんですが、出てきたのが12 RoundsのClaudia Sarneでした・・・ぜんぜん音楽的に違うけどな。

近作になるとタグにVaporWaveがついていますが、どの辺りなのかなあ、音楽的にはソフトなラウンジ感というか、スムースジャズやフュージョンからの影響があるのかもしれませんね。あとは意匠的には当初から影響受けてる気がします。



 - Satén (from “Ambiente Satén”)



 - C Y C A(from “C Y C A”)


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Arte de Eugenia Gómez


(CC)by 3.0



keyseeker – existence

 keyseeker - existence Cover

 – Tracklist –
 01. existence
 02. apathy



 - 02. apathy


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 Release Date : 2017.11.19
 Label : Not on Label

 Keywords : Ambient, Piano, Sad, Scene.


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John Cageの“4’33″”を引き合いに出すまでもなく(だから話は早速ズレるけれど)、無音というのは十分に作品たり得ると思っています。というのも無音の外から聞えてくる音が我々の心に何がしかの影響を与え、その中に感じられるものが確かにあって、それは無音あればこその感覚だと思っているからです。

keyseekerのこの作品を聴いていて、そんな思いを改めて抱きました。ピアノの短いメロディ、フレーズが流れた後の、一瞬の間―だから正確には、ここにあるのは無音ではないでしょう―、その瞬間に心の中に広がる感情、景色。それは確固としたものではなくて、漠然とした、いつかの思い出のような、あるいはどこかで見た景色のような、ひょっとしたら実際に体験さえしてないかもしれないけれど、けれど確実に頭蓋の中を一度は通り過ぎて行った、つまりは知覚された、アブストラクトな何か。呼び起こされるのは悲しみを伴う懐かしさ。ノスタルジャーな私はその懐かしさに何度でも触れたくて、わずか2トラックで3分前後という短いこの作品を、何度でも再生してしまう。結局何もつかめないのだけれど。

keeseakerは、かつてはafterstoriesの名義で活動し、現在もnermuri winterの作品に参加しながら、温かみのある抒情的でMelodicなElectronicaを作っていますが、こういうピアノ一発っていうスタイルはあまりなかったような気がします。余計なもの差っ引いて抒情性が浮き彫り、みたいな、ある意味グロいっていうか、聴取感はジンワリなんだけど、心へのインパクトはファイヤーバード・スプラッシュを喰らった時みたいな(すいませんフザケマシタ。もちろん喰らったことはありません)。シネマティック、風景的で、とても好きなんですねえ。音が鳴って、自分の中に景色が流れてくるこの感覚、音楽の醍醐味だと思うわけですよ。たまにやっぱり音楽は魔法だなって思うんです。そんな作品。

bandcampやSoundCloudを辿れば他の多くの作品を聴くことができるでしょう。そしてkeeseakerの最新トラックは(おそらく)“Olive”。nemuri winterで公開されています。下に張らせていただきますのでどうぞお耳を―



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(CC)by – nc 3.0



Hevel – Nowhere Have You Gone

 Hevel - Nowhere Have You Gone Cover

 – Tracklist –
 01. Sleeping Beauty
 02. Love From Dirt
 03. Whereof One Cannot Speak
 04. Thereof One Must Remain Silent



 - 02. Love From Dirt


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 Release Date : 2019.06.03
 Label : Not On Label

 Keywords : Ambient, Classical, Drone, NewAge, Orchestral.


 Related Links :
  ≫ Hevel on SoundCloud / on bandcamp / on Spotify


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以前にも“Insides”を紹介したHevelの新しい作品が、bandcampを通じてリリースされています。

彼のサウンドスタイルはAmbient/Drone。ミニマルな持続音の起伏で、抑制されていながらも抒情的な美しいメロディを奏でているような、そんな作品が多くありました。ときには明確な、エディットされたギターの音がそこに加わったりもしましたが、それはやはり楽器の音を意識させるというよりは、空間的な演出が意図されていたように思います。

そんな、これまでの作品と比較すると、今作はある種のチャレンジがあるのではないかという気もします。ピアノやストリングスが惜しげもなく、ストレートに、つまりメロディを鳴らすために用いられていて、ここまでにはあまり見せていなかったClassical/Orchestralな要素が顔をのぞかせているからです。

厳かな楽器音と、それによって奏でられるメロディは、これまでにも増して抒情性をもってリスナーを包み込み、静かに、想像力を掻き立てます。また楽器音に加えて従来からの電子音も巧みに織り込まれているので、方向転換というよりは、あくまでもこれまでの作品の延長線上にあるサウンドだと思います。今までよりもサウンドが直接的になっている分、Ambient/Droneからは遠ざかっているようにも受け取れますし、そこに寂しさを覚えるリスナーもいるのかもしれませんが(メロディが強すぎるというかね。瞑想的なイメージからはやや離れています)、個人的にはこのAmbient/Drone~Classical/Orchestralなスタイルはとっても好きです(じんわりしたAmbient/Droneも勿論ヨイデスケドね)。映画のサウンドトラックのようですね。お気に入りの何がしかの映画とか、あるいは本の中の物語とか、思い浮かべる人もいるんじゃないですかね。

だんとつ白眉はM-2‘Love From Dirt’。上にも書いたように、直球でピアノとストリングスなトラックですが、この作品のこの位置にあることですごくこのスタイルが映えていると思います。M-3‘Whereof One Cannot Speak’の複数レイヤーによるセンチメンタルな奔流から、ラスト‘Thereof One Must Remain Silent’における光と決意を感じさせるような、荘厳なラスト。総じてドラマチックに仕上がっていると思います。

小粒かもしれませんが、良作です! 気に入った方は他の作品も是非。



Noble Oak – Collapsing Together

 Noble Oak - Collapsing Together Cover

 – Tracklist –
 01. After The Ending
 02. Out There
 03. Come True
 04. Steal
 05. Hope, Expectation
 06. Dive
 07. Goes Dark
 08. Can’t Be Sure
 09. Distance Gone
 10. Hold
 11. Something More



 - 02. Out There


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 Release Date : 2017.08.25
 Label : Not On Label

 Keywords : Alternative, ChillWave, DreamPop, Vocal.


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アメリカはブリティッシュコロンビア州バンクーバーのアーティスト、Noble Oakの作品です。前にも別の作品“improvised memories”で取り上げましたね。今作は2015年から2016年にかけて作られて楽曲たちをコンパイルしたもののようです。

Noble OakといえばドリーミィなChillWaveといったイメージですし、今作もそこから大きく外れるものではありません。でもちょっと違うんですね。印象。ストレートなギターの音が積極的に使われていたり、ブラスの音が聞こえてきたり、ドラムも生き生きしているし、全体的に今までの作品よりアップテンポなところもあるんでしょうか、情熱的、エモーショナルな聴き心地になっています。外からプレイヤーを招いて録音されている楽器もあるようで(M-2, 4, 6のサックスとM-2, 6, 11のドラムはクレジットされている)、そういったところからも、幾ばくかのバンドっぽさ、生っぽさが感じられて、こういう一面もあるんだなあと感じた次第です(だからタグに“alternative”が使われているのは素直に首肯できる)。“improvised memories”もピアノの即興オンリーというスタイルで、体裁は異なりながらもNoble Oakらしさを披露していましたが、ここではまた別の側面を見せてくれています。

リバーヴやディレイといったChillWaveについてまわるエフェクトも(他作品より)抑え気味に思いますし、敢えての作りなのか、それともラフスケッチのような状態なのかは判然としませんが、個人的にはこの肉体的イメージも与える音作り、悪くないと思います。Noble Oakといえば物憂げなくせに伸びやかなヴォーカルが特長ですが、それはここでも健在で、全編ほぼウタモノトラックに仕上がっています。しかしその歌声は曲調や音作りのせいでもあるのでしょう、場合によってはいつもより爽やかな音風景を作り上げているように思います。夢の中、いつか訪れた都市で吹く夜風のような。

気になった方は、これまでにもいくつか作品がリリースされていますので、耳を傾けてみてください。どれもおしなべてクオリティは高いです。聴き比べてみると、今作がちょっと毛色が違うってのも何となく分かっていただけるかと思います。下にいくつか――



 - Hyperion(from “Past Life“)



 - Heaven(from “We Decide / Heaven EP“)


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a collection of 11 songs written over 2015 and 2016.

written, recorded, and produced in toronto, ontario by noble oak
additional saxophone on tracks 2, 4 and 6 by james bayford
additional drums on tracks 2, 6 and 11 by adam wazonek
album photos by tess paul



XBF3 – 間奏

 XBF3 - 間奏 Cover

 – Tracklist –
 01. M-1
 02. M-2
 03. M-3
 04. M-4
 05. M-5
 06. M-6
 07. M-7
 08. M-8
 09. M-9



 - 03. M-3


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 Release Date : 2019.06.21
 Label : Not On Label

 Keywords : Broken transmission, Commercial music, Japan.


 Related Links :
  ≫ XBF3 on SoundCloud / on bandcamp


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公称イタリアのトラックメイカーXBF3。一貫してBroken transmissionスタイルの作品をリリースし続けています。bandcampにも多くの作品がありますが、SoundCloudにおいても多くのBroken transmissionトラックが公開されており、その数は現時点でトータル753(と、書いているうちに770に到達)という、なかなかの数。ワントラックは短いですが、それでも圧倒的。

(主に)コマーシャルソング等をサンプリング、編集して作品として提示するというのがBroken transmissionの大枠であると私は解釈しているけれども、このスタイルの金字塔といえばやはりFuji Grid TVの“Prism Genesis”。今この手の作品を出すにあたって影響を受けていないということは、おそらくないでしょう。そのくらいストレートにBroken transmissionであり、スタイルとして“Prism Genesis”のフォロワーを匂わせる作品です。

この作品においてはマテリアルがコマーシャルソングだろうとナレーションだろうと、ニュースキャスターの言葉だろうと、基本的には“まんま使い”であるけれども、だからといってその素材自体が持つメッセージを表現に利用しているのかというと、そんなようにも受けとれない(少なくとも私は)。しかし作品によっては明らかにフィーリングに違いがあり、それがどうしてなのかと考える。

XBF3は、たとえば海外のコマーシャルソングをサンプリングした作品も数多くリリースしていて、“Laborwave Transmission”の中には、“Soviet commercial”のワードがついたトラックもある。こういったものは私にとっては壊れたラジオといった印象で、面白くないことはないけれども、耳に引っ掛かるものではないし、聴いていて自分の中に何がしかの広がりが生まれてくるものではなく、“編集されたマテリアル”という印象が強い。“The hard Japanese T R A N S M I S S I O N broke”や“日本の広告 nihon no kōkoku”においては今作と同様日本のコマーシャルソングが使用されているが、それらマテリアルは比較的最近のもので、なぜかしら私の印象は先と同様に“編集”である。

では今作はどうなのか。音源―マテリアル自体がもつレトロスペクティヴな方向性が醸し出すノスタルジアが私自身の聴取感に影響を及ぼしているのは疑いようがない。この感覚、何かなあ、何に近いかなあ、って自身の内側を探ってみたら、ひとつ出てきました。“ドラえもん 謎の回「タレント」”です。これがドンピシャということではないですが、(以前から何回か書いているフレーズですが)“ノスタルジアが狂気に転じる”ような感覚といいますか。懐かしいような“アレ”がいびつに歪んでいくことで表れる非日常。それがこの“間奏”にはあるのです。音楽作品が持ち得るひとつの重要な機能“どこでもないどこか”への誘いを、この作品はBroken transmissionという特異なスタイルで以て、やってのけてくれるのです。

執拗な反復(ちょっとした狂気)がこのXBF3の特徴かなあとも思いますが、別々のマテリアルをコンバインして(わざとかどうか)聴き手を脱臼させるようなことをやってくるのが面白いですね。M-3のガス料金の支払いについてのナレーションから、“知~らないぞ知らないぞ、先生に怒られる♪”って繋げてくる部分、吹き出しました。他の作品、たとえば“Water Transmission”では、全編に水音をフィーチャーしながらのBroken transmissionであったり、その裏バージョンと思しき“Satan Transmission”ではノイズに寄ってみたり、“KEN IL GUERRIERO”では全編でアニメ“北斗の拳”をサンプリングしていたりと、Broken transmissionの中でもいろいろなスタイルを見せてくれています。そしてSoundCloudで公開中の‘////////////////////Fish project’では頭から最後まで静謐なAmbientを披露するなど(!)、懐の深さをうかがわせます。

これだけBroken transmissionに固執し続ける作り手さんも珍しいと思います(フェティシズムすら感じませんか)。ジャケットイメージも含めてグレイゾーンいやブラックなのは必至なので、いつ消えてしまうか分かりません。欲しい方はお早めに! ちなみにジャケットイメージにあるサンキョーのCMはなぜか前作“///”で使われているようです。謎。

 - ////////////////////Fish project



Strawberry Hospital – Grave Chimera

 Strawberry Hospital - Grave Chimera Cover

 – Tracklist –
 01. Memento
 02. Canary Mane
 03. Chimera
 04. Holoparasite
 05. Cherish
 06. Arowana’s Scarlet



 - 01. Memento


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 Release Date : 2018.08.06
 Label : Not On Label

 Keywords : Alternative, Ambient, Emo, Noise, Screamo, Shoegaze, Pop, Punk, Vocaloid.


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PURE AESTHETEにも所属していたトラックメイカーStrawberry Hospital。新しい作品が2018年に出ていました(そしてこれ以外の作品は消してしまった…のか?)。

紹介文には―

Grave Chimera is a 6 track autobiographical album that emulates the complex feelings that come with issues like childhood trauma, sexual dysfunction, suicide, escapism, and gender dysphoria.

―とありますが、そこからうかがい知れるように、以前よりも内面的、内省的なアルバムになっている印象です。以前のサウンドといえば、Vocaloidが歌うPopなメロディにElectronicなバックトラック、ドリーミィな空間づくりが特徴で、それは日本人のリスナーにもアピールする心地よいものでした。対して今作はというと、少なくとも表面的にはハードでアグレッシヴな部分が目立っています。Noiseという部分でいえば、以前の作品にもShoegazeな要素はありましたが、ここではもっとハードコアな方向に振っています(何ならジャケットイメージにあるタイトルロゴもハードコア系のそれ)。

ディストーショナルなギターサウンドに加え、メロディックなパートを歌い叫ぶ(ここがVocaloidなのかは不詳)という、いわゆるEmo~Screamoに近いサウンドを鳴らしているのが今作の最大の特徴でしょう。といってもバンドサウンドではないので、リズム面でマシーナリーなエディットもあるし、フワフワしたシンセサウンドも使われている。でもこういった電子的なハードコアサウンドと親和性の高いBreakcoreな方向にはいっていないのが、ユニークに感じます(一時期のMeishi Smileなんかを彷彿とさせますね)。

精神的な鬱屈とした部分をモチーフにしているのであればもっと黄昏たサウンドになってもおかしくないと思いますが、苦しいときに強い気持ちで何かを願うような、そんな思いの強さがこのサウンドを生み出しているのでしょう。否定したい自分や、打ち消したい過去といった、誰しもが心の中に持っている影の部分に思い切って立ち向かっているが故の、焦燥感、暴力性。しかし冷静さを失わずに過去を懐かしむような目線もあり、Ambientなワンミニット・トラック‘Holoparasite’などは作中随一の郷愁。続く‘Cherish’は過去作のファンも留飲を下げるであろう、ドリーミィなVocaloidトラックになっていて、サービス精神も発揮されている。M-1のMetalっぽい耽美的雰囲気も魅力的。

Vocaloidを使用しながら、Ambient~Emo~Screamo~J-Popを股にかけたドリーミィサウンドを作り上げるこの手腕、巧みです。ラストの‘Arowana’s Scarlet’のハードコアパートとドリームパートの自由自在感とか凄いですね。しかもAmbientな哀愁で終幕させるという力技。

The ultimate goal of Grave Chimera is to serve as a form of therapeutic musical catharsis.

という言葉を見て、よくよく考えると、Strawberryというキュートでドリームなイメージと、Hospitalという(メンタル)ヘルスケアなイメージを融合させたこの名義―Strawberry Hospitalの名前に、もっともふさわしい作品なのかもしれません、今作。


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Note :

Grave Chimera is a 6 track autobiographical album that emulates the complex feelings that come with issues like childhood trauma, sexual dysfunction, suicide, escapism, and gender dysphoria.
Drawing influence from metal, j-pop, VGM, and industrial, Grave Chimera is self indulgent, nihilistic, and intimate.
Merriam-Webster defines “Chimera” as both “an illusion or fabrication of the mind; especially : an unrealizable dream” and “an imaginary she-monster compounded of incongruous parts”.
Grave Chimera explores the long term effects of psychosis, fragmenting your identity and leading you through an altered state of reality in which everything wants to destroy you.
The ultimate goal of Grave Chimera is to serve as a form of therapeutic musical catharsis. This an album for trauma survivors, for trans folk, and for anybody who can find solace in being able to relate to my experiences.
Thank you.