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BOGATZKE – CRYSTAL TRAILS [DKA123]

 BOGATZKE - CRYSTAL TRAILS [DKA123]

 – Tracklist –
 01. Trails for the lost
 02. The dea took my crystal away
 03. Julius and Hobbes
 04. Only real when shared



 - 02. The dea took my crystal away


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 Release Page Download Free!

 Release Date : 2013.01.11
 Label : Digital Kunstrasen

 Keywords : Ambient, Electronic, Post-Rock.


 Related Links :
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2005年から稼働しているドイツのネットレーベル、Digital Kunstrasenより。Hendrik Wittenbrinkが手がけるエレクトロ-ポストロックなソロ・プロジェクト、BOGATZKEの新しい作品が、フリーでリリースされています。これまでにも同レーベルから多くの作品をリリースしてきていますし、このブログで紹介したこともあります。

リリースはコンスタントでクオリティも安定している彼の作品ですが、毎回ちょっとずつ傾向を変えてきていて、決して金太郎アメのような“どこで切っても同じ”状態にはなっていないのが、特徴。ではこの作品の傾向は、と問われたら、私は何と返すだろう。おそらく「Ambient」と返すだろう。リズムを使っている曲もモチロンあるが、全体的にアトモスフィリックで、Rock的なダイナミズムや爆発力は感じられない。もともとバンド感という部分ではリアルなバンドサウンドには敵っていなかったけれど、それにしてもこれまでに何度か聴かせていたような、荒々しく高揚感のあるギターや、疾走感のあるリズムはここにはない。Post-Rock的なグレイカラーのギターフレーズは現れるものの、ディレイやリバーヴといった、柔らかなエフェクトが目立つ。曲調もスロー、ミドルテンポのものが多く、まったりとしたサウンドスケープが広がっており、メロディやリズムで曲を引っ張ろうとしている様子はない。あくまで空間の広がりが重視されている。

M-2やM-4では、Electronicなリズムが鳴らされていて、そこにポスト・ロッキンなギターを重ねることで、ベッドルーム的なPost-Rockを聴かせてくれる。この手法は、彼の真骨頂であり、面目躍如といっていいだろう。ただ、そういった十八番のトラックにも多少の風通しのよさはあるが、そこにあるミスティックな空気が消えるほどではない。“CRYSTAL TRAILS”という、美しく、浪漫を秘めたタイトルから感ぜられるような、宇宙的な空間の広がりと、その神秘性。それを表現するがゆえの、4トラックという考え方もできるか。じんわりとした光を放つクリスタルの軌道が残す、その航跡は、こんなように、幻想的で、どこか温かいものなのかもしれない。

決して悪い作品ではないのですが、私の中では、2010年にリリースされたフルレングス“ON THE WEAK END”が、BOGATZKEのマスターピースとして君臨している。単純に比較するべきではないけれど、あの完成度には、やはり及んでいない。メロディ、躍動感、抒情性、シンプルな聴きやすさ、今回の作品にはないものが、あそこには確かにあった。今作はどこか意欲作のような、模索的な節もあり、その姿勢は好ましいのだけれど。どちらに転ぶにしろ、突き抜けることを期待しています!


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(CC) by – nc 3.0