ABRAcaDABRA

Netaudio explorer

カテゴリーアーカイブ: Noisy Arcade

LBN667 – 生きる [ARC-053]

 LBN667 – 生きる [ARC-053]

 – Tracklist –
 01. INTRO
 02. intimate
 03. colors in your hair
 04. come home
 05. halos
 06. always sometimes
 07. perfect eyes
 08. no lies
 09. sweets
 10. colors change
 11. the flower
 12. mulholland
 13. hikari
 14. things she likes



 - 09. sweets


+ + +


 Release Page :
  ≫ [ main ] / [ mirror ] Download Free! / pay what you wish.

 Release Date : 2013.10
 Label : Noisy Arcade

 Keywords : Ambient, Electronica, Hip-Hop, Lo-Fi.


 Related Links :
  ≫ LBN667 on Facebook / on SoundCloud
     on bandcamp / on Tumblr / on Twitter


+ + + + + +


アメリカはウィスコンシン州、ミルウォーキーの音楽プロモーションサイト(そしてブログでありネットレーベルでありコミュニティでもある)、Noisy Arcadeより。同じくミルウォーキーのトラックメイカー、LBN667の作品が実質フリーで公開されています。

ずっと前なら、たぶん‘Electronica’という便利な言葉で片づけられてしまったであろう、そんな音楽性ではないかと思います。Hip-Hop経由の、アナログタッチの丸っこいビート。バックに絶えず聴こえる(ヒスノイズのような)、白い雑音。アトモスフィリックかつ幻想的なシンセ。醸される、ほの暗いノスタルジア。

自身のbandcampでも複数の作品を公開していますが、それらと比較するとHip-Hopの度合いは弱くなっているように思います。もちろん基本になっているのは、いまだHip-Hop/Downtempoのドッシリとしたリズムだし、そのビートがトラックを牽引しているのは間違いない。でもリリースページでもいわれているように、たとえるならBoards of Canadaのような、Electronica的幻想感、ミスティックな空気が、濃厚に漂いはじめていて(たとえばM-2やM-3などは特に)、音作りに変化が出てきているのかなと、思います。ディレイやリバーヴを効かせた音作りによる、浮遊感やサイケデリアも含め、今様にいえば、‘ChillWave’の範疇にも含まれるでしょう。

鍵盤やギターの音なども聴こえてきますが、決してメロディが強いわけではないので、ミニマルなビートがトラックを引っ張るわけですが、各トラックが非常に短い(いずれも2分以下)ので、その反復による飽きというのはあまり感じられない。その辺りの潔さというか、シンプルなまとめ方は、個人的に好ましい。

また彼のプロフィールは不詳ですが、ネット上のスペースを見てみると、いずれにも日本のアニメ“あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。”の登場人物である、‘めんま’こと‘本間 芽衣子’の画像を用いている。しかもご丁寧に、壁紙には花のドット画が用いられ、花名が列挙されている! ナイスセンスです。アルバムタイトルにも日本語を用いていますが、彼もまた日本偏愛型トラックメイカーのひとり、であるのかもしれません(実際トラック内でもアニメのセリフがサンプリングされている)。

たとえばもっと極端な引用を行うトラックメイカーもいると思うんですが、LBN667はすごく控えめ。ホントに隠し味程度で、トラック自体は(表面的には)シリアスに響いてくるんです。でもそこに、アニメの引用表現による特異なノスタルジアの発現があり、また(意図的にしろそうでないにしろ)サブカルフレイバーの噴霧があり、そういった部分が、ひと昔前の‘Electronica’とは一線を画していると思いますし、やはりコレが新しい世代なのかなあと思ったりもします。

まあ、とにもかくにも、このモヤリと曇った空間に、小さくキラリと光るノスタルジアは、気持ち良いです。気に入った方は他の作品も是非。


+ + +


(CC) by – nc – sa 3.0