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カテゴリーアーカイブ: 術ノ穴

エンヤサン – まさかサイドカーで来るなんて2 [sna-042]

 エンヤサン - まさかサイドカーで来るなんて2 Cover

 – Tracklist –
 01. どうしたって君だった
 02. それはそれでハッピーエンド
 03. UP TOWN(FUMI HIRANO cover)
 04. TONIGHT3
 05. まさかサイドカーで来るなんて2


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 Release Date : 2018.05.23
 Label : 術の穴

 Keywords : Acoustic, Alternative, Hip-Hop, Japanese, Pop.


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私はまだ(まだ!)買ってなくてスイマセンな“大メインクライマックス”(by ヘイポー)から約半年、エンヤサンのアコースティック(ミニ)アルバム“まさかサイドカーで来るなんて2”がリリースされました。“2”とあるからには1作目もあるわけで、そちらはこのブログでも紹介いたしました。そちらもフリーでのリリースだったわけですが、今作もまたフリー(※SpotifyやApple Musicでも配信予定ですがカバー曲は含まれません。なおiTunesは有料)! ありがとうございます。

Twitterでは“そんなにアコースティックでもない”、“電気もバンバン使ってる”と、ご本人笑ってらっしゃいますが、そんなことはいいんです。私にとってはぜんぜんアコースティックです! そして良い作品です。なんでこんなのフリーで出しちゃうんだろうなあって不思議です。

エンヤサンって私の中では、もしかしたら音楽シーンの中でも、微妙な立ち位置にいるような気がします。ぜんぜん私Hip-Hopとかクラブミュージックとか、興味ないし、積極的に聴かないんですけれど、エンヤサンてそっちフォーマットの曲も多いじゃないですか。でも聴いてしまうんですよ。POP志向っていうか、歌心があるところが、一番のツボなのかなあって自分としては思ってるわけですが、でもそれだけじゃなくて、このシリアスとジョークを渡り歩く華麗なセンスもすごい好きで。最近でいったら“大メインクライマックス”のCMとかすごいふざけてるし、“▽”の‘Aizuchi’も雪男との会話だし、Y-クルーズ・エンヤの‘Special Thanks’はセクシー女優名をひたすら読み上げていくという(トラック担当は食品まつり)だし、かと思ったら‘あるく’は深夜のウォーキング中の物思いが人生の捉え方につながっていくような、シリアスな内容だし(でもユーモアも忘れてない)、‘きれいごと’というネガティヴな言葉を受容するまでを描いたような(歌詞の意味は明らかにされていないけど)、‘きれいごと’も涙腺刺激するし、恋愛における曖昧さを“未確認”と表現し、そこから“UFO”へと繋がり、“「フォー・ユー」反対から読んで”という歌詞に着地する“UFOr”も切なさ沁みてくるし、このふり幅というか懐の深さよ。



そしてこのシリアスな側面は往々にして装飾を削いだアコースティックなトラックで際立ってくるし、またメロディも同じく。つまり今作はエンヤサンのシリアス(に見える)面がギュッと詰まったスペシャルな盤なのです。映画を観ながらのシチュエーションに絡めて“バッドエンドもいとわない 愛してる”と唄うラブソングな‘どうしたって君だった’、気まぐれで始まった関係性に酩酊感を絡めながら思い巡らせる‘それはそれでハッピーエンド’、サイケデリックな脱力POP/NewWaveな平野ふみさんのカヴァ―UP TOWNは見事なハマりっぷり。

続く‘TONIGHT3’は、日付の変わるころ、深夜の物思いを歌ってて、これは‘あるく’の延長線上だなあ、いいなあ、タイトルは“深夜”から“トゥナイト”へつながり、そこから“トゥナイト2”にひっかけたのかな、それも面白いなあなんて思って聴いていたら…、ご本人“競艇の歌です”って。ええ? どこが? ってミュージックビデオ観て、笑ってしまいました。競艇に妙に重なる。“横目に見える 紙切れが舞う 最後に笑う 笑う”って、競艇場で舞ってる紙切れって!! 勝手に深夜のアーケード街で頭の横をチラシが舞ってるような侘しいシーンを思い浮かべていたのに! でもこのどっちにも取れる感じがもうエンヤサン! “まさかサイドカーで来るなんて”に入っていた‘つまる うまる おもい こよい’も恋愛関係の終わりにも取れるし、長年住んだ部屋とのお別れにも取れるっていうダブルミーニングソングだったので、この捻りっぷりはエンヤサン節。そして間違いなく作中のハイライト。いい曲。



ラストはね、絶対こういうのねじ込んでくると思った。前作もタイトルトラックはユーモア溢れてたし、今作もそれを踏襲。やってくれます。ラジオDJ役誰ですかね。ちょっとミドリカワ書房の作品思い出しました。DJさんのグイグイ感面白いなあ。“詰めが甘いのがウリかぁ?”に笑う。無理やり曲やらせといて“イマイチだなあ”ってどんなナビゲートだよ。最後“視聴者のみなさんも、何かしら、やってこうじゃん。生きてんだしさ”ってどういうまとめ方だよ! “DJぐっちぃのまるでアレだよね”聴きたかった…。

ということで、激オシなんで、未聴の方は是非。歌詞カードもついてます。しかも今作に合わせて前作も再リリースされたので、これは一緒に聴くしか。私が“まさかサイドカーで来るなんて”から彼らのファンになったように、この作品からファンになる人がまた、いるんじゃないですかね。まあファンだったら早く“大メインクライマックス”買えよって話ですよね。おっしゃる通り!



エンヤサン – 寄せて上げてLP [sna-009]

 エンヤサン - 寄せて上げてLP [sna-009]

 – Tracklist –
 01. 告げ口 
 02. きっかけ
 03. 無垢
 04. どこまでも土色、こぼれて
 05. グッデイグンナイ
 06. Killing Me Softly feat.鈴木陽一レモン
 07. Start a Conversation(POURING OUT Remix) pro.鷹の目
 08. imo
 09. mono(ラフ)
 10. 新宿駅出れないダイジェスト


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 Release Page :
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 Release Date : 2014.11.06
 Label : 術ノ穴

 Keywords : Alternative, Hip-Hop, Japanese, Pop, Spoken Word.


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ボーカルを務める兄 Y-クルーズ・エンヤとギター・トラックメイクを務める弟 Jr.TEAからなる兄弟シンガーソングライターユニット〝エンヤサン〟。彼らのフリーアルバム、“寄せて上げてLP”が術ノ穴からフリーでリリースされています。エンヤサンは以前にも“まさかサイドカーでくるなんて”をフリーでリリース(現在配信終了)、私もブログで紹介させていただきました。

今回は“コンピ収録曲や特典音源、未発表曲も網羅したまさに寄せて上げた全10曲”ということで、編集盤/企画盤といったところでしょうか。‘告げ口’‘Killing Me Softly feat.鈴木陽一レモン’“新宿駅出れない”の特典音源、‘無垢’は術ノ穴コンピレーション“HELLO!!! vol.4”の収録曲、‘mono(ラフ)’は名前の通り‘mono’“新宿駅出れない”に収録)のラフヴァージョン、までは分かるんですが、あとはどこが初出なのかよく分かりません。というわけで私のような新参者には、初めて聴く音源も多くあり、非常にお得な10トラックとなっています。

“まさかサイドカーでくるなんて”は非常によく聴いていますし(正直“新宿駅出れない”よりも多い!)、なので私の中ではエンヤサンのイメージが図らずもアコースティックなサウンドになっているんですが、今作を聴くと、少なからずそれは覆ります。2ndミニアルバム“▽”を聴いたときのような、混沌としたイメージがフラッシュバックしてきました。

私がいまだ彼らにミステリアスなイメージを持っているのは、ライヴを観ていないせいもあるかもしれません(ぜひ観たいデスね)。なので、スタイルをつかみきれていないんですが(そこも魅力です)、やはりクラブミュージックやHip-Hop、R&Bが根っこにあるのかなあと、、今作を聴いて改めて思いました。M-2やM-4, M-5などは、Hip-Hop/R&Bテイストのサウンドに軽やかな歌メロを乗せて響かせるんですが、私いわゆるブラック・ミュージックっていうんですか、まったく反応しないタイプなんですが、なんでエンヤサンの曲には惹かれるのでしょう。ちょっと考えます。

まず声かもしれません。浮遊感ある伸びやかな歌声。声って歌のイメージを左右する、すごく大きい要素かと思うんですが、この空間的な感じ、Ambientって言えるかもしれないけれど、これが私の琴線に触れるのかもしれません。この声の気持ちよさというか、特性を非常に強く感じられるのが、M-3の‘無垢’です。スポークン・ワードと歌メロを組み合わせた、ダビーなポップスですが、この浮遊感たるや。浮世離れという言葉が実にふさわしい。吸い込まれそうな夏の日の空が目に浮かびます(MVは雨模様ですけどね・・・)。気持ち良いとかなんとかいうよりも、圧倒的ですね。

次に、Hip-Hop/R&Bなシティ・フレーバー・ポップスと対をなすような、アコースティック・サウンドも、ひとつポイントかもしれません。今作でいうとM-1とか、M-9ですか。特にM-9の‘mono(ラフ)’などは歌メロを思う存分響かせるポップスなんですが、シンプルなサウンドの中で浮き立つメロディのよさったら(“まさかサイドカーでくるなんて”にはこれが充満してたわけですね)。こういうアコースティック・サウンドで生きるメロディの強さっていうのも、エンヤサンの魅力です(言うまでもないか!)

あともうひとつ、歌詞にみられる二面性(あるいは多面性)も私は気になっています。物事の見方はひとつじゃあないよ、ということをさりげなく、教えてくれる気がするんです。‘告げ口’には、“誰かの話を口にすると/誰かが泣いている気がした”とかありますし、‘mono(ラフ)’には、“白と黒だけ/でも答えならいくつもあるから/狭い視界の外を 覗きにいこうよ”とあります。この後者なんかホントに上手いなあって思います。歌はゆるキャラオカザえもんの応援ソング的な立ち位置ですが、オカザえもんの色がモノクロであることから、“白と黒”につながり、そこから“白黒つける”=“答えを出す”という連鎖がつながり、“でも答えならいくつもある”という歌詞にたどりつき、答えはひとつじゃない、だから―“狭い視界の外を 覗きにいこうよ”と結ぶ、鮮やかさ。今作には入ってないけど“きれいごと”もやっぱりそう。きれいなこと唄ってるようだけど、タイトルからして“きれいごと”だし、一面的でないものを感じさせます(なんか似たようなこと前にも書きましたね、テヘへ)。それから“あるく”の“「おおっ」って忘れるんだ つまりたいしたことないんだ”の件もそうです。

あとはときおり見せるポップスの括りからハズれたような、ディープなタッチの曲ですね。ちょっとアンダーグラウンドに思えなくもない、潜ってる感じ。‘Killing Me Softly feat.鈴木陽一レモン’とか、‘Start a Conversation(POURING OUT Remix)’とかね(あと、SoundCloudで聴ける、あるく (STAGGER WALK Remix)もぜんぜんテイスト変わっててカッコいい) 。サビがまさかの“イモ”っていう、そのまんまの‘imo’ にあるみたいな、遊び心?もやっぱり楽しい。そう、だから、やっぱりポップスなんだけど、その在り方が非常にユニークなんですよ! 普遍的なポップスからなんじゃこりゃまでを縦横無尽に渡り歩くそのフットワークの軽さ。それを十分に感じられる今作はやっぱり広く聴かれるべきでしょう。フリーだし! こっからエンヤサンに触れるのも全然悪くないと思います。あと個人的には410~発売前夜~入れてほしかったデス。


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エンヤサン 『無垢』






【オカザえもん】 エンヤサン / mono(外ロケラフver.)