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カテゴリーアーカイブ: Endless Plains Records

Tmmrw – Vision EP [ENDPR010]

 Tmmrw - Vision EP [ENDPR010]

 – Tracklist –
 01. Mchnsm
 02. Vision
 03. Rain
 04. In The Nature (To Mend)
 05. In The Nature (To Mend) (Aeirs TV Edit)



 - 02. Vision


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 Release Page :
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 Release Date : 2012.12.07
 Label : Endless Plains Records

 Keywords : Ambient, Deep, Drone, Glitch, Water.


 Related Links※all links are dead.) :
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イギリスの新興ネットレーベル、Endless Plains Recordsより。プロフィール不詳ですが、Tmmrwなるミュージシャンの作品が、フリーでリリースされています。

Ambientと深海のイメージというのは、なぜかしら相性が良い。なぜか。ここで考えてみる。地球のほとんどが水で覆われているということは、多くの人が知る事実であるけれど、はたして深海というものがどういう定義で、どの程度の範囲に広がっているものなのか。Wikipediaによれば、“一般的に海面下 200 m より深い海を指すが、厳密な定義は存在しない”ということだ。さらに、“地球の海の平均水深は 3,729 m であり、深海は海面面積の約 80 % を占める”とある。なんと海面面積の80%が深海であるという、衝撃の情報。続けて、“21 世紀の現在でも大水圧に阻まれて深海探査は容易でなく、大深度潜水が可能な有人や無人の潜水艇や探査船を保有する国は数少ないなどから、深海のほとんどは未踏の領域である”と、記されている。

人智を超えた、ミステリアスな領域(そこにはある種のロマンも含まれている)。暗く静かで、スローなイメージ。倫理が存在しない、虚無的な空白がみちびく、不思議な解放感。なるほど考えてみると、まさにAmbientを聴取した際のフィーリングと、深海に対するイメージには、共通するものがある。

そしてこのTmmrwの作品は、その深海のイメージというヤツに、非常によく合致する。Ambientといっても、種々さまざまだ。深海とは対照的に、おだやかな空中飛行をイメージさせる作品だってあるし、精神世界へのダイヴを促すような、スピリチュアルな傾向のものだってある。その中にあって、この作品は、深海だ。

全編で水の音が聴こえてくる。風の音のような電子雑音のような、ザワザワとしたエフェクトが、さびしさを誘う。重なり合い、リフレインするDeepなシンセと、エコーするコーラスは、ゆるやかにめぐる、深海の水の流れを思わせる。隙間から湧き上がるようなシンセ音は、水中を上る泡をイメージさせる。重く、それでいて浮遊感のあるレイヤーは、海底の暗さと、重苦しさに、つながっていく。M-3では強いGlitchが用いられているけれど、これも考えようによっては、奇妙な造形の、深海生物たちを想像させはしまいか(トラックのタイトルは‘Rain’であるけれど)。

作中でひときわ静かな‘In The Nature (To Mend)’に続くのは、aeirs tvによる、そのリミックス。オリジナルよりもアナログ感を強調し、鼓動のようなリズムと、遠いささやき声、かすかなGlitchを加えたアレンジは、より深海のイメージをたくましくしている。

netalabel/netaudio界隈で、すぐれた深海Ambientというと、私の中ではNubiferousによる“Behind The Megalithic Walls”があるのですが、今作もそこに仲間入りです。静かに浮遊し、深く潜り込むようなサウンドは、とても瞑想的で、神秘的だ。ちなみにTmmrw、今作と同時に、bandcamp上で“Echoes”という作品をやはりフリーでリリースしています。今作でみせたスタイルとはやや異なり、DeepなAmbienceにリズムを加えて、 けれどDeep Technoとはまた異なる、IDMにも通じるサウンドを鳴らしています。興味のある方は是非。