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Yô gô – train surf music [SEL58]

 Yô gô - train surf music [SEL58]

 – Tracklist –
 01. The waves of an old and new conflict on the road at the far eastern sea
    (Nihonbashy-Hodogaya)
 02. oEDO Metro runs like a snake!!!
 03. Tokyo numbed
 04. Go! Go! andiamo Kiha3710 (feat. Mutsutoshi Muraoka)
 05. Gokuraku (train for east heaven)



 - 02. oEDO Metro runs like a snake!!!


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 Release Page :
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 Release Date : 2013.05.22
 Label : Selva elettrica

 Keywords :
  ≫ Electronic, Field Recordings, Traditional japanese instrument, Techno, Train.


 Related Links :
  ≫ Yô gô on YouTube


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イタリアはローマとUKはロンドンをベースにするネットレーベル、Selva elettricaより。Yô gôの作品が実質フリーでリリースされています。リリースページの情報によれば、Yô gôはローマ生まれの日本人。今作が1stアルバムになるようです。

すごく面白い作品です。アルバムやトラックのタイトルにも表されていますし、実際聴き始めるとすぐに分かりますが、今作にあるのは“Train”のイメージです。駅のアナウンスや列車の走行音のサンプリングが随所で使われています。トラックタイトルをみると、路線名や駅名、列車の型まで表記されているので、Yô gô自身、日本の鉄道に対して強い興味・関心があるのかもしれません。

駅で聴こえてくる環境音を収めたField Recordings作品というのは、珍しくありません。水の音や森林での環境音を録音した作品と同じように、Ambient作品として、そういった作品はまま存在するでしょう。その点、このYô gôがユニークなのは、Techno musicの中に、先に書いたような列車に関係した環境音を埋め込んでいるところ。トラックによって環境音が占める割合は異なりますが、最もエキサイティングなのはM-2。どうもリズムに妙なひっかかりがあるなと思って、それでも最初はあまり気にせず聴いていたんですが、よくよく聴いていると、これは分断された電車の走行音を反復することでリズムにしている! 考えてみれば確かに列車の走る音ってのは機械的でリズミカルだし、つまりそれはそのままリズムに成り得るわけだ。特にM-2の後半などは、リズムがひたすら繰り返されるのだけれど、もはや耳に聴こえているリズムが走行音なのか電子音なのか、だんだん区別がつかなくなってくる。

そしてもうひとつ。このYô gôのサウンドが面白いのは、彼が日本人という部分も無関係ではないでしょう、上のような環境音を散りばめたTechno musicに、伝統的な日本音楽を埋め込んでいるところ! M-2の中で飛び出してくるのは、雅楽のような、祭囃子のような、とってもジャパニーズな音たち。祭りということでいえば、花火の音も聴こえてくる。さらにはそこにHip-Hop調のサンプリングも重なってくるし、もうすんごいカオス。祝祭感はないんだけど、この狂騒的な音像はすごいなあ。列車の走る音ってなんとなく焦らされるんだけど、その焦燥感にさらにオリエンタルなお祭り的盛り上がりが重なってきて、終盤は読経みたいな声も聴こえてくるし、ある種サイケデリックな空気が発生している。ちょっと怖いくらいのエネルギー。

そんなM-2を通過したあとは、ひたすらピアノ連打のIndsutrialでアグレッシヴなM-3と、ちょっぴりファニーで短めのM-4を通過して、終着駅の極楽へ。サイケデリックな旅の終わりにはGokurakuが待っています。このM-5だけはAmbientなトラックで、ゆるやかなレイヤーと、スローでおおらかなメロディ。旅の終わりのChill Out。何だか汗が乾いてくような、気だるい心地よさ。

他に作品のリリースがないので、これが彼のスタイルなのかどうか、判断できませんが、ここにあるパッションとテンションは相当なものです。列車とTechnoと伝統的日本音楽と、その他もろもろ―それらをこんな形でひとつにパッケージするなんて。刺激的過ぎる。とても面白い。あと余談ですが、日本の通勤ラッシュにある、あの混雑っぷり、カオスっぷりを音で表すなら、こんな感じなのかなあと思ったりも。流し聴きするよりも、ひたすら音に耳を澄ます聴き方が面白いかもしれません。