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カテゴリーアーカイブ: Business Casual

Fla.mingo – Fantasy [BIZC135]

 Fla.mingo - Fantasy [BIZC135] Cover

 – Tracklist –
 01. Fantasy
 02. Everything Felt So Right
 03. 浮く
 04. Die
 05. Depression Drive
 06. Aliens
 07. Heartache2
 08. Soft Lion
 09. Lovely グロー
 10. Fantasy II



 - 01. Fantasy



 - 07. Heartache2


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 Release Date : 2017.01.13
 Label : Business Casual

 Keywords : ChillWave, FutureFunk, NuDisco, Pop, SynthWave, VaporWave.


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なんだよChillWaveじゃんか、とか、NuDisco/FrenchHouseじゃんか、って言われればそうかもしれないけど! せっかく天下のBusiness Casualからお出ましになっているのだから、別の目線があってもいいではないですか。ねえ。

私は作り手ではないので偉そうなことは言えないし言ってはいけないと思っているのですが、けっこう前からFutureFunkってもう頭打ちじゃないのかなあって思ってたりする口なのですが、なぜかといえば形式がド定型なイメージがあって、歌謡曲 meets Discoっていうか、そうするとメロディは原曲のものだし、リズムはたとえばIDMみたいな複雑なものにもなり得ないし、そこにユニークな要素が入る余地が残されているのだろうか(いえもちろん楽しいことには違いないのですが!)と、ちょっと前から思っているのです。そういう思いと同時に、じゃあでもそのうち飽和状態になったシーンの中から、あるいは遠く離れたところからでも、涼しい顔してFutureFunkを超えたFutureFunkっていうか、Post-FutureFunkっていうか、FutureFunk経由のユニークなサウンドってやつが出てくるのではあるまいか、それはキャベツ畑の端っこになぜか突如出現したトマトのような異彩を放ち・・・ってまあ無意味な比喩はやめるとして、別段それを私が探しまくっているというわけではなくて、ふとした拍子に出会うんじゃないかなあって、心のほんの隅っこで淡い淡い期待をしてたりしたんですよ。

Fla.mingoっていうと、この界隈だとFlamingosisもいたりするので、間違われることも多いと思うんだけど、何を隠そう私もとらえ間違っていたので、今作をきっかけに聴き直しました過去作品。リリースにおいては遡るほどにBeats/Hip-Hopの色が強くなっていて、逆に言えば近作になるほどそれは薄れているように感じられます。前作も同レーベルからの“U Melt Me”なので、レーベルのカラーに合わせてこのサウンドになっているのかもしれませんが、とにかく煌びやかでPopな方向に舵が切られている。ChillWavyな意匠の中にあるエコーイックな部分や音のゆらぎ、VHS感などの細かいエディットは、穿った見方をすればVaporWaveの残り香とも取れる。その上での、ディスコテックなリズムや、(歌謡曲ではないにしても)メロディを生かしたままヴォーカルラインを挿入して、ウタモノとしての機能も持たせたトラック作りは、だからこそFutureFunkのアプローチに思える。しかしここにあるサウンドは見事に、FutureFunkのド定型を回避している。

全体的にロマンチックな響きがあるのも好きなところで、前に何についての投稿か忘れてしまったけれど(Mirror Kissesだったかな?)、自分の頭の中でChillWave/SynthWaveとPrefab Sproutがなぜか繋がるときがあるって書いた気がするけれど、今作のM-5とかM-7とかで久しぶりにそれを、改めて感じました。シンセとドラムとヴォーカルのエモーショナルな感じなんだろうな、きっとそうだ。

というわけで始めの文章に戻るわけですが、なんだよChillWaveじゃんか、とか、NuDisco/FrenchHouseじゃんか、って言われればそうかもしれないけど! 私は今作、ユニークな作品だと思っています(ラストが寂寥感溢れるAmbient/Droneなのもイイ)。さすがはBusiness Casual、未来形を出してきたなと。でもFla.mingo、SoundCloudとか思ったよりフォロワー少なくて、ちょっとビックリです。

方向は違うかもしれませんが、SERVICE AREAの“Computer Entertainment System”ってやっぱりユニークだったな、面白かったなって、改めて思いました。当時は特にここで書くことできなかったけれど。



chris††† – a better place [BIZC060]

 chris††† - a better place [BIZC060]

 – Tracklist –
 01. 一人でNOW
 02. 浮体
 03. フィールド
 04. 囲む
 05. CATAくし
 06. 青空
 07. 壊れた窓
 08. 追跡者
 09. 緑色
 10. AFK永遠に
 11. より良い場所



 - 06. 青空


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 Release Date : 2014.11.14
 Label : Business Casual

 Keywords : 80s, Easy Listening, Electronic, Melodic, Synthesizer, VaporWave.


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  ≫ John Zobele


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VaporWaveをメインフィールドにしつつ、決してそこに留まらない、新しい(そしてストレンジな)サウンドを追うアメリカンネットレーベル、Business Casualより。レーベル設立者でもある、chris†††(John Zobele)の作品が実質フリーでリリースされています。彼はBye-Product、stab something(melanie stanleyとのユニット)といった別名義も持っていて、どちらも活動を継続、2014年にもリリースを行っていて、精力的な活動は相変わらずです。

chris†††名義の作品では、以前に“包容”を紹介しました。そこから今作までに、2作(“new wounds”“waiting”)がリリースされています。“包容”で見せた、commercial musicあるいはNewAgeの大胆な引用について、“Vaporマナーを逆手にとったような、この強行的な提示、音の在り方”とか私書きましたが、その後の2作においては、その傾向は鳴りを潜めていました。“new wounds”はGlitchyなシンセサイザー・ミュージック(Eccojamともいえるかもしれません)で、シンセのタッチにVaporWaveのエッセンスはあれども、その聴き心地にはシャープでフレッシュな部分があって“包容”のそれとは異なりました。“waiting”もエコーイックなビートにサンプルボイスを絡めたもので、確かにその部分はVaporWaveな意匠ですが、しかしメロディは廃されていて、やはり“包容”とは異なる路線。John Zobeleは、特にchris†††名義ではVaporWaveを意識したサウンドを追及しているように感じますが、“包容”以降、あのようなサウンドは見せておらず、やはり彼の中でも異色作(意欲作)だったのかと、そう判断していました。

と思っていたところに届いたこの“a better place”で、再びあの路線を披露しています。Easy Listening/NewAge調の大仰なシンセ(サンプルベースの部分もあるでしょう)が全編にわたって鳴り響いています。前半はほとんどビートが入っていないのも特徴で、これが今作の浮遊感に結びついているようにも思います。レトロなフィーリングと、(形式的)ドラマチックなメロディ。これらは言うまでもなく、レトロスペクティヴな思考を促します―

ウインドウチャイムのような澄んだ電子音の乱反射は、遠い夏の日差しを思わせます(M-4, M-11)。ときおり現れる温かな包容力ある空間は、夏の夕暮れ、日は落ちて家へ帰る時間(M-2)。スピリチュアルで深遠な空気は、子供の頃に家族旅行で訪れた見知らぬ土地での朝の目覚め、そこにあった空気(M-10)。また、その旅先で訪れた郷土資料館や、観光地の展示室のような、ひんやりとした静けさ、染み出る旅情(M-3)。‘追跡者’の原色的シンセの響きは、そのまま70~80年代のサスペンス/ホラー映画を想起します―子供の夏に観るホラー映画は網戸の外にある闇がすごく怖かった。そう、私が今作を聴いて思い出すのは、子供の頃の“いつか”ばかりで。知らないものばかりで、自分の生活とは切り離された“どこか”にすごくワクワクできた頃。その“いつか”や“どこか”が封じ込められているのが、今作なのです。私にとっては。もちろん聴く人によって受け取り方はぜんぜん違うだろうけれど、私はVaporWaveに―というより音楽全体に、少なからずそれを求めている傾向があるのです。そのニーズ、嗜好を満たしてくれるのが、他ならぬ今作であるわけです。

相変わらずブツ切り感がありますが、でも曲のつながりは“包容”よりも意識されているように思いますし(?)、聴きやすさはコチラの方が上だと思います。音楽的にどうこうというものではないと思うんですが、これが作品として成り立って、そして聴いて喜ぶリスナーがいるっていう、この状況は、やっぱり特異じゃあないですかね。音楽っておそろしいですね。VaporWaveだって結局正体のわからんものだと思いますし、だからこそみんないろんな形で魅せられて自分なりに正体を暴きにかかろうとするんだと思います(研究者みたいなものです)。でもたぶんもはや客観的な答えはでないように思うので、こういうある種放ったらかしの状態を主観で楽しむのも吉なんだと思います。あと、今作が好きだといっても、じゃあいわゆるNewAgeやEasy Listeningを聴けば私が刺激されるのかっていうと、必ずしもそうでないから、これまた不思議です。何かキーがあるのでしょうが、そして自分の中で突き詰めれば何かしら見えてきそうですが、疲れるので、それも放っておきます(笑)。



Pursuing Paradise – Memories [BIZC044]

 Pursuing Paradise - Memories [BIZC044]

 – Tracklist –
 01. ▄ ▅ ▆Warpdrive to the Album▆ ▅ ▄
 02. The First Time I Fell in Love
 03. tακε that機會
 04. ur a dream
 05. 欲望
 06. ☁Let’s Escape This Place☁
 07. A Night Under the S⊥ªrS
 08. Everything Good To Me
 09. メークラブ
 10. …try…
 11. I Still Want ƳƠƲ Here With MƐ
 12. EmOcionAL
 13. ¿can we escape again↑
 14. Cascade of Emotion
 15. Tħe Qυıeт After тħe Sтøям
 16. I’m ƨσяяч but We Can’t Hold ᴼᴺ Much Longer
 17. 변명Letter
 18. don’t you dare speak now
 19. stop...
 20. ▄ ▅ ▆Logging Off Album▆ ▅ ▄



 - 06. ☁Let’s Escape This Place☁



 - 14. Cascade of Emotion


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 Release Date : 2014.05.21
 Label : Business Casual

 Keywords : Chopped & Screwed, Dream, Electronic, Sample-Based, VaporWave.


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Business Casual 87’改めBusiness Casualより。Pursuing Paradiseのアルバムがフリーでリリースされています。リリース前からSoundCloudでいくつかトラックを公開していて、それらはVaporWaveを意識した音作り、かつPOPな佇まいで、非常に気になった私は、このアルバムリリースを待っていた次第。しかし聴いてみると、どうも一筋縄ではいかない作品でした。

“Pursuing Paradise”というのは、直訳すれば“楽園の追求”でしょう。細かく見ていけば、その名に違わぬ作りになっているのかもしれません。そう思わせるのは、サンプリングのネタがなるほどと思わせるからです。先行で公開されていた‘The First Time I Fell in Love’、これを聴いて絶対にどこかで聞いたなあ、どこだっけなあと思って、記憶とCD棚をひっくり返しました私。たどりついたのは、Danny Boyle監督、Leonardo DiCaprio(ディカプリオ)主演の“THE BEACH”、そのサウンドトラックでした。ラストに収録されているAngelo Badalamenti & Orbitalによる‘Beached’。これこそが元ネタ。このオリジナルにはディカプリオによる劇中のセリフが挿入されているんですが、冒頭に“Trust me. It’s Paradise.” とあるんですね。パラダイス! ということで、この‘The First Time I Fell in Love’における‘Beached’のサンプリングは、きちんと“Pursuing Paradise”という言葉につながっているんですね。

同じく先行公開されていた‘☁Let’s Escape This Place☁’も、なんとなくNiGHTSっぽいという理由だけで、その方向から調べていたんですが、これはやはりセガのビデオゲーム“Sonic R”で使用された‘Diamond in the Sky’をサンプリング、エディットしているようです。その疾走感、高揚感は、やはりパラダイス的でもあるし、なんなら‘Another road that we must travel’という歌詞は、以前彼がプロフィールに使用していた、前方に伸びる道を走っていく、ファンタジックな画像に通じやしないだろうか。

と、こうやってポツポツ抜き出してみると、けっこうPOPだしまとまってるんじゃないかと思うんですが、通して聴くと何とカオスなんですね。非常に散らかっている印象で、聴くたびに混沌とした夢のイメージが浮かんできます。トラックの途中でいきなり曲が変わったんじゃないかと思わせるような強引な展開をもって来たり、アルバムも後半になると(‘Cascade of Emotion’)何とブラストビートや重金属なギターリフ、ハイトーンボイスといったMetal/Death Metal、あるいはへヴィーロック(‘변명Letter’, ‘don’t you dare speak now’)のサンプリングをためらいなく持ち込んできたり、しかもその合間に‘I’m ƨσяяч but We Can’t Hold ᴼᴺ Much Longer’みたいな、厳かなAmbientを挟み込んできたりする。

サンプリング、Chopped & Screwed、リバーヴ、ディレイ、Glitchと、手法的にはVaporWaveを踏襲しているように思いますが、この目まぐるしく動く音像は、VaporWaveの虚無的で殺風景な質感とは異なっています。20トラックでおよそ1時間の、一大混沌絵巻。そう、この一連のトラックが地続きになっているような感覚も気になっていて(ラストのアウトロには、再び‘Beached’が顔を出す)、何か意図を感じるんですが、それを推測するまでには至りませんでした。誰か解き明かしてください。と思っていたら、絶妙なタイミングでインタビューが公開されました。なかなか貴重かと思います。以下に。

Free On The Cloud: P u r s u i n g P a r a d i s e – Memories | Anonim Collective



b o d y l i n e – COMPUTER IMAGINA [BIZC014]

  b o d y l i n e  - COMPUTER IMAGINA

 – Tracklist –
 01. computer tide
 02. temple
 03. evening wind
 04. pacific maps
 05. memory recall
 06. platform
 07. night visual
 08. echo vision



 - 02. temple



 - 03. evening wind


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 Release Date : 2013.08.03
 Label : Business Casual 87′

 Keywords : Ambient, ChillWave, Sample-Based, VaporWave, VHS, 80’s.


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“ONLINE DIGITAL MUSIC LABEL FOR THE INTERNET GENERATION”である、Business Casual 87’より。謎のイタリアン・トラックメイカー(それも真実なのかどうか)、bodylineの新しい作品がフリーでリリースされています。数曲単位でのリリースが多いbodylineですが、今作はアルバムと呼んでも差し支えないボリューム。“VIDEO ENCOUNTERS”に続く、セカンド・アルバムといえるかもしれません。

こんなネット全盛の世の中で情報の海を泳ぎ切っている人なんていないわけで、泳いでいるつもりでも溺れていたりして、つまるところ、もうVaporWaveと呼ばれる音楽の輪郭は、私の中で崩壊しかかっている。そんなに量も聴いていないのに。何がVaporWaveで何がそうじゃないのか、その線引きは、もはやかなりあやふやになっている。と感じるようになったのは、bodylineのこの作品を聴いてから。

出所不明なサンプリングをChopped & Screwed。眩惑的なエフェクトによって漂ってくる80s/VHSのフィーリング。ざらついた色彩の海をサーフィンするようなサイケデリアと、グロテスクにゆがんだ異形音との出会いで生じる、うしろぐらい興奮。そこには、猥雑という言葉が似合う。そんなように、私にはVaporWaveは猥雑なものという印象が強かったのだけれど、この作品では、猥雑さもモチロン感じるのだけれど、それとは別にストレートな郷愁というヤツが強くあって、それが私にVaporWaveを分からなくさせたのですね。ウィンドウ・チャイムのような音色が印象的なM-2の‘temple’なんて、80sな邦画の回想シーンなんかに似合いそうで(その辺りはしごくVaporWaveっぽい)、でもその回想はすごくシリアスな感情を秘めている気がするんですよ。抒情的といってもいい。そしてこの流れからくるM-3‘evening wind’がヤバい。ピッチを落とした歌声が入ってるのがちょっと余計なんだけど(失礼だね)、それがなければ、この流れは100点満点だった! 

以降ストレートなVaporWaveスタイルなトラックが続くんだけど(ブラスが入ってたり、ラジカセの再生ボタンを押す音が聴こえたり)、M-6‘platform’がね、コレVaporWaveじゃなくね?っていう仕上がり。先述の‘temple’の流れにあると思うんだけど、なんだろうこのシリアスなノスタルジア。小雨の降る田舎駅のホーム(景色は緑の山々。線路はもちろん単線だ)で、物思いにふけりながら誰かを待っているような。こういうのをポツリとはさんでくる辺りに、VaporWaveからは感じたことのない感情性を感じたものだから、このbodylineは私にとって特別なミュージシャンになってしまった。

ラストの‘echo vision’なんかも、サンプリング基盤なのかどうかも分からないけれど、冒頭は完全にAmbient/Droneだし、なんだったらPost-Rockの匂いだって感じるくらいで、ちょっと恍惚としそうなくらいの崇高さが漂っていて、もはやVaporWaveからは逸脱している。のだけれど、途中からチープなビートとシンセが割り込んできて、一気に流れをVaporWaveにするんです。漂白された空間に猥雑を垂れ流す。すごい面白い展開。

以前紹介した“OCEAN DRIVE (7″)”を聴いたときにも思いましたが、このbodylineは良い意味で、自身のスタイルを限定していないように思います。VaporWaveを軸に、巧みに他を織り交ぜる、この絶妙なバランス感、あるいはハイブリッド感が、たまらなく魅力的。すごくPop志向な人なんじゃないかって気がするなあ。ピュアなAmbient/Drone、Electronica作品も聴いてみたい。あと今作の少し前にmediafireを通じてリリースされた“AFTERNOON RESIDUE”もなかなか好きです(現在は‘cloud’を除いた形で、“Sunset Shell”としてbandcampから配信されています)。