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カテゴリーアーカイブ: SENZU ART COLLECTIVE

BVSIXSΛGE – あい [SNZ038]

 BVSIXSΛGE - あい [SNZ038]

 – Tracklist –
 01. Cry
 02. End
 03. Heartless
 04. Kiss U
 05. Remember My Name
 06. Sleepless Nights



 - 02. End


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 Release Date : 2014.03.31
 Label : SENZU ART COLLECTIVE

 Keywords : ChillWave, Electronic, Post-Internet, SynthWave, Video Girl.


 Related Links :
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以前に少しふれた、アメリカはロサンゼルスのアートコレクティヴ/レーベルである、SENZUより。南アフリカはケープタウンのトラックメイカー、BVSIXSΛGEの作品が実質フリーでリリースされています。音楽の名義って必ずしもきちんとした単語とは限らないし、造語の場合も多々あるし、ネットでは発音が分からないしで、呼び方すら不明の方が多くいらっしゃいますが、BVSIXSΛGEは、Basicsageでよいんでしょうか。今作のジャケットにも“基本せじ”とありますし、きっとそうでしょう。

BVSIXSΛGEは、同郷のトラックメイカー/プロデューサSageVideosとのコラボレーションである‘雪の降る夜/彼女の’で存在が表面化したように思いますが、まとまった作品としては今作が初めてのようですね。実際SageVideosとサウンドの傾向(とネーミング)が非常に似ているので、別名義なんじゃないかと勘繰ったりもしたんですが、どうやら違うようです―と思いましたが、やっぱり同じ人物ですよね??

桂正和の代表作である“電影少女”から天野あいを引用したジャケット画像。それは直感的に選択されたもので、大した意味はないのかもしれない。でもだからこそ、そこに意味を見出したくなります。

天野あいは、再生されたVHSのビデオテープから現れる少女で、いうまでもなく電影少女とは彼女のこと。VHSテープの再生という行為にある密室感・孤独感と、画面から少女が現れて実体化するという(マンガチックな)現象を合わせて考えるに、そこにはフィクショナブル(あるいはアンタッチャブル)で幻想的な猥雑性が見え隠れする。そこにある、“VHSテープから現実世界へ”というベクトルは、そのままポスト・インターネット―現実世界からインターネット・ワールドへ向かう流れではなく、その逆、インターネットの側から起こる現実世界への浸食―を、想起させる。そう考えて私の頭に浮かぶのは、“電影少女”(“ビデオガール”という方がイメージしやすいか)の設定は、図らずも、Post-Internetな音楽たち、ネットを土壌にして発生し、現実世界へ向かって放たれている音楽たちと、その在り様が似ているということ。大ぶろしきを広げているかもしれませんが。

はじめは新奇性があったものも、頻出すれば当然、珍しくもない、当たり前の存在になってしまう。“ポスト・インターネット”なんていう、ネットとリアルを対(つい)にしたような考え方・捉え方は、物心ついたときからスマートフォンやタブレットPCを利用できる環境にある、新しい世代には、もしかしたらピンと来ないのかもしれません。私(たち)がインターネットに感じていたような(気がする)トキメキ(のようなもの)は、彼らの内にあるのだろうか。

ああ、どうやら私は、Post-Internetとカテゴライズしてもよいであろう音楽たちに、そのトキメキ(のようなもの)を見出しているようです。そんな気がします。底の見えない、ミステリアスな深み。どん欲に周囲を取り込んだ猥雑性。あふれているゴツゴツとした欲望たちも、結局すべて均(なら)されてしまって、漂うのはのっぺりとした平面感。デジタルの悲しみ。

この“あい”というEPが、格別何か際立っているという分けでないんですが、このジャケット画像を見ながら聴いているうちに、そんな考えが頭に出てきました。だから(といってよいのかな)、この作品は、図らずもPost-Internetを上手いこと表しているなあと、私は思うんです。シンセチック、Wavyな電子音と、Beats感を忍ばせたリズム。ChillWave/SynthWave。メロディは強くないんだけれど、なぜだかノスタルジックで、聴いていると、いろいろ思い出したり、考えたり―そう、作品とは関係なくなっちゃうかもしれないけど、2013年に急逝した飯野賢治さんが、ブログだったかTwitterだったかで、“昔は街の中を歩き回って探索することに楽しみを感じていたのが、今はそれがネットに取って代わった”、そんな旨のことを書いていたなあって、ふと思い出しました。

余談ですが、SENZU ART COLLECTIVEは日本のカルチャーにも目を向けているようで、サイト内の随所で日本語を用いたり、日本のレーベルの作品を紹介したりしています(最近だとTanukineiriから出たimai yusukeの“タイムログ”をピックアップしています! 該当記事はコチラ)。興味のある方は音源のみでなく、記事やブログもチェックしてみては。