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カテゴリーアーカイブ: Scratchrec

Astrocowboys – Olympic

 Astrocowboys - Olympic

 – Tracklist –
 01. Today
 02. Daniel
 03. We Give Blood
 04. Low Abilities
 05. Call the Police
 06. Athletic
 07. Olympic
 08. Mayumi
 09. Girls with Preferences
 10. My Body is My Enemy



 - 02. Daniel


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 Release Page * = pay what you wish.) :
  ≫ [ main* ] / [ Motherland* ] / [ Last.fm ] / [ SoundCloud ] / [ bandcamp* ]  Download Free!

 Release Date : 2012.12.01
 Label : Scratchrec

 Keywords : ChillWave, New Order, New Wave, Pop, Post-Punk, Shoegaze, Synthesizer.


 Related Links :
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  ≫ Always Looking Up: Veins, Knhbtz, Tineidae, and Astrocowboys (on Far From Moscow


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ロシアのインディペンデントなレーベル、Scratchrecより。サンクトペテルブルクのバンド、Astrocowboysの作品が実質フリーでリリースされています。気にった方はカセットテープという形で購入も可能なので、上記のレーベルページを訪れてみてください。Scratchrecに加えて、やはりロシアのインディレーベル、Motherlandからも入手が可能になっていますが、これは彼らのシングル”we give blood”がリリースされていた関係かと思います。

彼らが2010年に発表したデモ音源は上記のLast.fmから、あるいは直リンクでダウンロードができますが(DL)、聴いてみると、まだフォーカスが定まっていなかった印象がある。Post-Rockか、気だるいShoegazeといった調子で、メロディにキラリと光る部分はあるものの、とても今作とは比べるものではない。彼らの現在のカラーが決定づけられたのは、おそらく”we give blood”からだろう。何の気なしに聴いた私の耳に流れ込んできたのは、New Orderの影響も明らかなNew Wave/Post-PunkなPop soundだった。マシーナリーなリズムときらびやかなシンセで作られる、美しく冷たい空間。そこに入り込むロマンチックなギターフレーズ、愁いをおびたヴォーカルが唄う、Popでセンチメンタルなメロディ。チープで自己主張の強いシンセと、Lo-Fiなくせにビッグな鳴りのリズム、これらが否が応にも醸すのは、レトロスペクティヴなサウンドイメージだ。ところどころにあるパーカシッヴなリズムも、Rock以降の、Punk/New Waveといった、決して新しくないサウンドからの影響を感じさせる。

彼らの影響源のひとつに、New Orderがあるのは間違いない。シンセとギターのフレーズにある独特の疾走感、抒情性は、まさにNew Orderのそれ。特にM-2, 3, 5あたりは、そのMelodicでセンチメンタルなシンセを活かした飛び抜けてPopなサウンドになっていて、その破壊力たるや凄まじいものがある。そこにあるドリーミィで悲しいフィーリングは、悲しいくせに、なぜか中毒性が高い。不思議だ。私のフェイバリットはM-5’Call the Police’なのだけれど、シンセとギターの絡みから生まれる、Sadなフィーリングの加速に、聴くたびに心がザワザワして、涙が出そうになる。鳥肌が立ちそうになる。そしてなぜかリピートする。悲しいくせに。音楽の魔法的な力が、そこにある。

そういった先人たちの影響も顕著なPop soundも彼らの魅力なのだけれど、決してそれに終始しているわけではない。M-8やM-9では、そこから一歩踏み込んで(今様になってという言い方もできるか)、ChillWave、シンセによるShoegaze的なサウンドも披露している。M-1においては、脱力したヴォーカルの後ろに’Todaaaay’というパッションあるコーラスが重なっていて、その弾けた感覚、陽性の空気は、今作の中でも異質なものだ。そこから間髪おかずにM-2になだれこんでいくことで、リスナーの目の前の景色を鮮やかに塗りかえるという演出も、見事にキまっている。

メンバー構成やプロフィールが不詳なのが残念なのだけれど、ジャケットイメージやライヴ写真にあるように、フロントマンはウサギのマスクをかぶった姿が多い。そういった部分からも、どこか隠匿的なイメージがある。他のメンバーも、部族の首長のような羽飾りをかぶっていたり、サウンドのイメージとはやや異なった外見をもっているバンドだ。またYouTubeではライヴ映像もみれるけれど、録音環境のせいもあるかもしれないが、音源よりもPost-Punk色が強く感じられて、New Orderから遡って、Joy Divisionの影もちらついていた。

Lo-Fi, Synth, ChillWave, Pop, Shoegaze, etc. こういった要素をあわせもったミュージシャンの源流にNew Orderがいるのだと思うと、彼らの存在の大きさに改めて思い至る。そして個人的に、今後の拡大を予感しているのが、そこにVGM(Video game music)ライクなセンスを注入したサウンドだ。よりシンプルで、ミニマルで、音楽としての機能性が高いもの(この場合の機能は、’BGMとしての機能’と考える)。すでにこのブログでも取り上げたアメリカのMeishi Smileがその流れにいると思うし、日本からも、Meishi Smileにインスパイアされたトラック’F/o/r/e/v/e/r’をつい最近公開したi-flsが、そこに位置付けられはしまいか。 このフィーリングを持ったサウンドは、今後まだまだ現れる。そんな気がする。

話が逸れましたが、今作は良作です。ダウンロードして損になることはありません。とりあえず聴いてみることをおススメします。次作も楽しみだ(と書きましたが、おそらく活動は停止している様子・・・)。


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