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Various Artists – 4-Way Split Album「CULTURE」 [YZML-09]

 Various Artists - 4-Way Split Album「CULTURE」 [YZML-09] Cover

 – Tracklist –
 01. adustam – counting 1 – 10
 02. siroPd- repeat every day
 03. ΔMUNOA – i ωɒN̂t iẗ ThÅt ωay
 04. _yi. – my culture
 05. adustam – 1129
 06. _yi. – nightdrive
 07. siroPd – Creation
 08. ΔMUNOA – spiritual


 (all tracks are streaming on release page.)


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 Release Date : 2014.12.10
 Label : ゆざめレーベル

 Keywords : Compilation, Electronic, Pop, Shibuya-Kei.


 Related Links :
  ≫ adustam on SoundCloud / on Twitter
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  ≫ ΔMUNOA on SoundCloud / on Twitter
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ちょっと気だるげな目元のガール。明るい茶色のロングヘアーはツインテールに結ばれて。赤いスタジャンに大きなリュック。生足ショートパンツにハイカットのスニーカー(ソックスがちょっとユルめなのがまたニクい)。スマホにつないだヘッドフォンを首にかけ、手に持った鍵はどこのものだろう? チャリンコかスクーターか、家の鍵と踏んだのだけれど、あえてここはコインロッカーの鍵で推したいと思います(でもあんな形状はなさそうだな)。ライヴハウスかクラブハウスに乗り込む前に、ちょっと駅前のコインロッカーに、みたいなことで。荷物も入れたし、さて行くか、おっとその前にスニーカーのポジションを直しておくかと、足に手をかけたところで、たまたま友人に声をかけられて、「おっす」と手を挙げたのが、このジャケットイメージなんだと、勝手に想像してました。すごくPOPな光景だと思いますし、その光景はある種のカルチャー、シーンにコミットしている人なら、日常的に目にする光景でしょう。つまりこの作品はジャケットイメージからも“カルチャー”を滲ませています。ばっちり作品にハマっていて、デザイン、イラスト共にすばらしいです。

さて、日本のものづくりレーベル、ゆざめレーベルからリリースされた“CULTURE”は、新進気鋭という言葉が見事に似合う、国内外4名のアーティストがトラックを提供したコンピレーションアルバム(これでまだ9作目のリリースなんですよね。意外)。同レーベルからのPalladium -siroPd Motion Collective-”も記憶に新しい、若き才能siroPd、NoDisco Recordsからの 繊細かつ大胆な編集感覚あふれる“[kiki]”も傑作だったΔMUNOA、Sayonara Recordsからのgalapagos escalator以来、3年ぶりの帰還を果たしたadustam、そしてOTNJ_B収録のsugar rushで私のハートにその名を刻みこんだエディット・ポップメイカー_yi.、以上4名が集結。特に_yi.が今回のリリースでいわゆるネットレーベル界隈に絡んできたのがうれしいですね。歓迎です。

コンピレーションということもあり、バラエティに富んだ音像を予想していたのですが、意外や意外、一貫性のある作品になっています。顕著なのは全編にあふれる編集感覚でしょうか。途切れるレイヤーが生み出す断片的な景色。まずそれがひとつと、その中に封じ込められたPopなフィーリング。これが全編で共通しているように感じます。さまざまなサンプルとエディットを駆使して、リスナーを楽しませてくれるわけですが、この作品の聴き心地には、ひとつの“流れ”を感じ取ることができます(これが意図的に作られているのか、そうでないのかは分かりませんが)。広く使われている言葉ではありませんし、私の中に明確な定義があるわけでもありませんが、Neo-Shibuyakeiというのが、私がここに感じ取った“流れ”に当てはめたい言葉です。

表層的な部分ではそれぞれ違いがありますが、たとえばfu_mouのGreen Night Paradeや、TomgggのブロックバスターPopteen、kai takahashiのsoda pop(neo-mo-derecordsには超期待)などの作品と、今作の間には、根の部分で共振するものを感じるのです。逆に、表面的には似たことをやってそうだけど、でも根っこは何か違うよなって感じさせるのが、Superspinkの一連の作品だったり、spoomusicから出ているANgR MgMTのCut Ups EPや、Cut Ups EP2だったりします。うまく言えませんが、CORNELIUSと中田ヤスタカの違いみたいなものかもしれません。今作がどちらなのかといえば、前者・・・かと思っていましたが何回も聴いていたらよく分からなくなりましたので、この話題はこれで締めたいと思います(相変わらずの投げっぱなし)。

タイトル通りのカウントからはじまるadustamのM-1から、ピアノとLo-bitな電子音、そして弾んだリズムの絡みがファニーなsiroPDのM-2(目覚ましのアラームを模した冒頭もユニーク。繰り返す毎日)、変調ヴォーカルとアグレッシヴなリズム、伸びやかなシンセでアッパーに攻めるΔMUNOAのM-3と、徐々に盛り上がってくる構成もよいです。そして頭からバリバリのエディットで畳み掛ける、_yi.によるPopかつさわやかなM-4‘my culture’で前半部のクライマックス。

そのまま編集的な流れを引き継いだM-5がまた、クールでよいです。バックに点在するフレーズと拮抗するヴォーカルラインが不思議な浮遊感を誘いますが、途中からリズムがフラットに切り替わって、音像がShoegazingな方向に傾きます。この辺りにadustamがたまに見せるAlternativeなエッセンスを感じられて、ユニークなトラックです。次の_yi.による‘nightdrive’が、ギターとレイヤー状のヴォーカルをフィーチャーしたドリーミィなトラックで、またもや上手いつながり。統一感が非常に強い。ミニマルなピアノを主軸に、さまざまなフレーズを散りばめたトイ感覚のElectronica、‘Creation’で一息つくと、ラストはシックなシティフレーバーなポップス‘spiritual’がお出迎えです。スムースなメロディと、さまざまなフレーズが、自己主張しつつもバランスを保ったまま、混然一体となって耳に入り込んでくるさまは、とてもにぎやかで楽しくて、でもメロディはちょっと悲しくて、つまり見事にPOPです。

古今東西のサウンドを素材として利用する雑食性、それによって生まれる編集感覚やファニーなトイ感覚、そしてシックな都市感、これらはやはりShibuyakeiのイメージと重なるところがあります。ということで誠に勝手ながら、正体不明のまま連綿と続いてきた渋谷系(Shibuyakei)サウンドの最新モード、そのひとつの形を示しているのが今作ではないかと思います。大きい話を小さい視点でいうと、この作品が新しい“カルチャー”の片鱗を覗かせていることは、間違いありません。その目撃者、体験者になれるということは、非常に光栄です。ありがとうございます。

あ、ティーザーも超カッコいいんで、見ておくべきです。以下に。


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4-Way Split Album「CULTURE」 Teaser



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