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жёлтый мегамэн – у меня есть шариковая ручка [DOPEFISH034]

 жёлтый мегамэн - у меня есть шариковая ручка [DOPEFISH034]

 – Tracklist –
 01. у меня есть шариковая ручка
 02. у меня есть шариковая ручка feat. skoda the cat



 - 01. у меня есть шариковая ручка


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 Release Date : 2014.08.05
 Label : Dopefish Family

 Keywords : Bedroom, Cat, Kids, Lo-Fi, Punk, Strange.


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ジャケットイメージからあふれ出るPunkな精神がたまりません。“恐竜戦隊ジュウレンジャー”から招聘されたタイガーレンジャー。と、その下に無造作に配置された、Bicのオレンジファインぽいけど実は違う、どこぞのボールペン。インターネット感、あるいはTumblrやVaporWaveのフィールドに付随するアート、とは確実に切り離された、ストレンジなフィーリング。匂いたつ挑戦性。

ロシアン・ウェブレーベルのDopefish Familyからリリースされているжёлтый мегамэнの作品は、佇まいからして、実に奇妙です。説明らしい説明もなく、“2004”という言葉しか付されていないので、おそらくは2004年にレコーディングされたか、どこかでリリースされていた作品なのでしょう。惹きつけられるままに、耳を傾けてみたら、思わずフッと、鼻と口から空気が漏れました。つまり笑ってしまったということです。Lo-Fiな音の中でスコスコと始まるドラム(リズムマシンか?)、ベンベンと鳴るベース、それとユニゾンするように、ベロロンと力なく響くギター、突如空間に割って入る、シンセのようなメロディカのような、甲高い電子音、これらが2分半続くだけ。ただそれだけ・・・。電子音がちょっとVGMっぽい響きを醸しますが、それによってこの脱力感が消えるわけではありません。そう、この全編に満ちる脱力感がたまらなく強烈で、まるで白紙に描かれた“へのへのもへじ”のような、シュールさが漂います。何の文脈もなく、ただそこにある脱力。

2曲目はなんじゃい、どんなんじゃいと思って耳を傾けると、そしてタイトルを見ると、”feat. skoda the cat”とあるように、ただ猫の声が足されただけ!! なんだけど、1曲目にかぶせただけではなくて、どうやらテイクが違うようなのがまだ救い?なのですが、この猫の声もしっかり鳴いてなくて、のどをグルグル鳴らしてるあの感じの声が挿入されているっていう・・・、ここでも脱力だわ! 猫の声ぐらいしっかり入れればいいのによ!! 作り込み感ゼロの、あらゆる意味づけを拒否する、まさに音だけがそこにあれば他には何もいらないと言わんばかりの、往復ビンタ食らってるんだけどアレぜんぜん痛くないみたいな(ちょっと何言ってるか自分でも分からないけれど)、つまり痛みはなく往復ビンタを食らったという衝撃だけがそこにはあるとでもたとえましょうか(まあホントはこんな言葉もいらないんだけど)、柔道の技的にいわせてもらえばツバメ返しのような(キメにいった足払いをスカされて足払いで返される)。

にしてもこの音をこのタイガーレンジャー見ながら聴いてると、どうしてもニヤニヤしてきちゃうんですよねえ(笑)。何が面白いんだろう。緊張と緩和なんだろうか。で、なんでペンなんだろう、なんでタイガーレンジャーなんだろうって思うじゃないですか。調べるわけですよ。なんなんだろうって。アーティスト名の“жёлтый мегамэн”は、どうやら“イエロー・メガマン”という意味になるようで、メガマンってのはカプコンのビデオゲーム“ロックマン”の海外での名称ですから、この言葉は、黄色いロックマン、あるいはイエローデビル(ロックマンに出てくる黄色くて巨大なモンスター)を指しているんでしょう。それを象徴しているのがタイガーレンジャーだと考えることができます。じゃあペンは? ってなりますが、これは作品タイトルにヒント(あるいは答えか)がありました。Google翻訳―“у меня есть шариковая ручка” ≒ “私はボールペンを持っている”。ノーゥ!! 日本のバンドが作品タイトルに“This is a pen.”ってつけるようなもんじゃないか!! 大した意味なんてなかったんだ・・・。いや、捉えようによっては、やはりPunkなのか・・・。

いったい誰なんだ!?って、気になりますよね。こんな、あらゆる意味で力抜きまくった作品だしてきたのは!って。ここまできたら後には引かないぞって、力入りますよね(もしかして、もうみなさんは興味を失くしているでしょうか)。で、どうやらkakashtlaさんが事情を知っているようで、なぜなら、このжёлтый мегамэнのトラックをSoundCloudで公開しているんです。そこにある記述を読んでみると、このжёлтый мегамэнは、どうやら彼が学生時代にもっていたバンドのようです。なるほど・・・。今は音楽を作っている節がなさそうですが、リンク先をのサイトやブログを訪れてみると、ロシア語・キリル文字でさっぱり理解できませんで、人となりは雰囲気でしか分かりませんが、アーティスティック、アカデミックな思考の持ち主なのかもしれません。

と、ここまでくると、このトラックも何やらシリアスに聴こえなくもないから不思議です。最初の衝撃はどこへやら。笑うこともためらわれるではありませんか。音楽というのは何がしかの文脈が与えられれば、それによって評価は如何様にも変わりうるということですね(“評価”というのは、すべてそうかもしれません。現代アートなんて顕著ですね)。

ということで、今回の投稿では、音楽を聴く上で、アーティストの背景を知るのが良いのか悪いのかっていうことを、考えさせられたような気がします。そんな唐突な締めで終わりますが。

ちなみにDopefish Familyはこういうリリースばっかりではないし、そんなイメージもなかったんですが、今回フラッとサイトを眺めていたら、動画に“こんにちは!焼きうどんが登場しましたよ。是非お試しください!”と、説明をつけていたりして(まったく謎)、自分の中でレーベルのイメージが塗り替えられていきそうです。

※風邪薬で非常にフワフワした頭で記事を書いたものだから、なんかタッチが違いますが、大丈夫、自覚的です。