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カテゴリーアーカイブ: TOUCHED MUSIC

keiss – The Breath [TM24]

 

 – Tracklist –
 01. Looking Around
 02. Foggy Mirror Pictures
 03. Do Your own Mistakes
 04. The Last Tram
 05. Clinic On Your Mine
 06. Little Big Secret
 07. Ocean
 08. Save Me From Myself
 09. Memory Shards
 10. Waiting For The Flight



 - 09. Memory Shards


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 Release Page :
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 Release Date : 2016.04.21
 Label : TOUCHED MUSIC

 Keywords : Ambient, Electronica, IDM, Scenery.


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NENORMALIZMからlwpssとの共作としてリリースされた“Snowfall in spring”を聴いたときにも感じたことだけれど、keiss(Stanislav Kovalev)のサウンドはとても風景的だと思います。

この作品の1曲目など、どうですか。決してネガティヴにはとらえてほしくないんですが、曇天の風景が浮かんでは来ませんか。私の脳内には一聴、曇天の空を渡る生暖かい風が吹きました。晴れでもなく、雨でもない、曇りという空模様は、見方によってはニュートラル、中庸であると考えることもできませんか。どこにも着地せず、フワリと宙を舞っているような、そんな不思議なムードを持ったkeissのサウンドには、ニュートラルなイメージが良く似合う。それは哲学的な“中庸”とはまた趣が違うのかもしれないけれど。

サウンドのスタイル、ジャンルは何かと問われれば、私はAmbientと応えるだろうけれど、これでは意味が広すぎるだろう。アッパーでもない、ダウナーでもない、アブストラクトでもない、かといってピュアなトーンでもないし、メディテイティヴなものとも異なり、やはり風景的(scenery)、あるいはイマジネイティヴなAmbientなのです。朝焼けや薄暮といった、幻想的でノスタルジックな風景や、霧に包まれた山間部のような深遠な気配、孤独な物思いといった内省的なシチュエーション―

個性的だと感じるのは、リズムはあれどもそれが決して曲を動かす役目を持っているかというと、そうともいえないところ。Drum ‘n’ Bass(DnB)のリズムパターンも多用されているし、Glitchのようなエフェクトも散見される。けれどそれが決して曲の要になっていない。さりげなく添えられているそれはまさに風景の一部であり、あくまで主役はそこにある空間になっている(なんならビートレスでも成立する作品ではないだろうか)。ときにはギターの旋律を差し挟み、感情性を漂わせる。あるうねり、流れを持った風景の中にギターで以て感情を描くのは、確かにPost-Rock的でもある。

そんなように、一聴すると確かにAmbientであり複雑さは感じないのだけれど、耳を近づけるとさまざまなサウンドのエッセンスが浮かび上がってくるのも、聴きどころかと。ボンヤリとした聴き方にも、耳を凝らした聴き方にも対応する、daydreamingなサウンドトラックかと思います。一番好きなのはM-9‘Memory Shards’。Deep Ambientな出だしから、Electronica/IDM~DnBへとテクスチャーが移行していく中、保たれるAmbientiveな空間。風景的でありながら音楽的なカタルシスも内包されており、白眉かと思います。

ちなみに現時点でもっとも新しいトラックは“life as a vital amount”。タイトルにふさわしい力強いトラックになっています。気になる方は是非、聴いてみてください―





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Mastering by Ruxpin
Original photographs and artworks by Elena Rish

keiss would like to thank: lwpss, Elena Rish, Martin Boulton and Touched Music, Ruxpin, Sobrio and all Nenormalizm Rec community.