ABRAcaDABRA

Netaudio explorer

カテゴリーアーカイブ: Aloe City Records

桜の下で – 悲しみモニュメント

 桜の下で - 悲しみモニュメント

 – Tracklist –
 01. 【さよならのめまい】
 02. TODAY
 03. あなたと生きた季節
 04. 見送るわ
 05. 哀しみのシャングリラ
 06. 愛しき日々
 07. 楽園のDoor
 08. なぜ?の嵐
 09. 悲しみモニュメント



 - 04. 見送るわ


+ + +


 Release Page Download Free! / pay what you wish.
 :: Lmited Edition Cassette is SOLD OUT. ::

 Release Date : 2015.11.28
 Label : Aloe City Records

 Keywords : Ambient, Chopped & Screwed, J-Pop, Melodic, Nostalgia, VaporWave, 80s.

 Related Links :
  ≫ 桜の下で on SoundCloud


+ + + + + +


UKのレーベル、Aloe City Recordsより。詳細不明ですが、“桜の下で”なるトラックメイカーのリリースです。

なんか珍しく意味が通ってますよね。VaporWave作品にしては。トラックタイトルが実に真っ当というか。まあ空でピンとくることはなかったので調べてみるわけですが、そうしましたらこれらほぼほぼが、おそらく“スケバン刑事”絡みということが発覚しました。ひとつずつ見ましょうか(相変わらず暇ですね私、いやそんなに暇じゃないぞ!)。さよならのめまい楽園のDoor、そしてタイトルトラックでもある悲しみモニュメントはすべて南野陽子のシングルと同タイトル。なぜ?の嵐は吉沢秋絵のデビューシングル、哀しみのシャングリラは大西結花のシングル、と、ここまではすべてスケバン刑事シリーズの主題歌ないしは挿入歌で固められています。おそらくサンプリング元も対応させていると思われます。

残りのトラックがちょっとどう絡んでいるのか分からなくて、たぶん関係ないのではないかと思いますが、TODAYあなたと生きた季節見送るわは岡村孝子のアルバム曲、愛しき日々は堀内孝雄のシングルから、それぞれとられているようです。いずれも80年代。引用元を開示する方もままいらっしゃいますが、トラックタイトルも含めてここまでストレートなのも珍しいのではないでしょうか。それをいったらこのジャケットイメージもモロですが(カセットテープもこのデザインで超クール)。

まあ私は特にスケバン刑事のファンだったわけでもないですし、ど真ん中の世代というわけでもない(かな?)ので、引用されている歌たちに格別に感慨があったりするわけではないのですが、やはり各曲から匂いたつ80年代らしさというやつがChopped & Screwedによる異形化の上で、ドリーミィーに、ときには眩惑的に、ノスタルジアを誘発するのです。特にM-1なんてスリラー映画のスコアのようで、ミスティックかつスリリングという按配。引き伸ばされた‘あなたと生きた季節’にあるNewAge感も面白いし、M-4, 5, 7あたりは哀愁のVHS感というか、サスペンスドラマのエンドロール感というか、ロマンチックな旅情感みたいなやつが共通していて、計算づくのChopped & Screwedでこのフィーリングを引き出しているのか、だとしたらすごいなあ、よく目を付けるよなあと、感心しきりです。

ここまで引用元を明示しておいて歌を使っていないところも珍しく感じます。思うに歌を使ってしまうと、どうしてもあのムォーン、ヴォエエとした排水音みたいなグロテスクヴォイスになってしまって、それが今作で放たれるべき何かを妨げることになるから、カットしてるんじゃないでしょうか。なんて。個人的にはこのやり方は大賛成で、歌を避けた短いフレーズをChopped & Screwedの上でミニマルにループさせることで、より包容力のある、Ambientな、ノスタルジア空間が作られていると、そう感じます。

80年代の日本の歌謡曲を使い、その中でもなぜかスケバン刑事(とりわけスケバン刑事Ⅱ)にフォーカスしたネタチョイスといい、こだわりのレトロスペクティヴ。オリジナルたちをそのまま聴くのとは明らかに違うものがあって、それが何なのか今のところ言葉にできないのですが、正体不明の曖昧模糊だからこそ、より引き込まれるのかもしれませんね。哀愁ノスタルジア。