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カテゴリーアーカイブ: Label Barbe

H-Burry – Roomwork

 H-Burry - Roomwork

 – Tracklist –
 01. To Nina
 02. Forrest Gump
 03. Orchestra Nylon
 04. Soul Child
 05. Memory
 06. Kids
 07. Reverse
 08. Galaxy
 09. Get High
 10. Love Again Part I
 11. Love Again Part II
 12. Watch Me
 13. Sub City



 - 03. Orchestra Nylon



 - 07. Reverse


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 Release Date : 2015.02.23
 Label : Label Barbe

 Keywords : Electronic, Future, Hip-Hop, House, IDM, Melodic, Orchestral.


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イギリス基盤かなあ?、フランス基盤かなあ?、ちょっとよく分かりませんが、新興レーベル/コレクティヴ、Label BarbeからリリースされているH-Burryの初作にショックを受けたので、思わず何やら書いている次第。ショックと言ってもよいショックです。

根元にあるのは間違いなくHip-Hopなんだけど、その上に色んなエッセンスを練り込んだレイヤーを配置して、大胆に塗り固めていくわけですが、音のブレンドがホントにかっこいい。決して誰もやっていないサウンドというものではない(と思う)ので、語弊はありましょうが、未来的なものを感じます。フューチャー。Future。

M-1‘To Nina’の冒頭からして、メロウなHip-Hopかと思いきや、Lo-bitな響きの電子音をいきなりかましてくる。そのまま冒頭のヴォーカルフレーズを反復しながら、ピアノやブラス、跳ねるリズムなどを組み合わせ、でも決して生な質感に走ることなく、シンセ音を随所にちりばめつつ、Electronicな響きを残している。Hip-Hopのレールに乗っていたつもりが、気が付いたら全然違うところに連れていかれました。M-3‘Orchestra Nylon’では抒情的なギターフレーズを用いつつ、TribalかつGlithcyなビートを叩き込み、しかも!オーケストラルなストリングスをぶつけてくる始末! 何だコレ! かっこいい! スリリングにストリングスを展開させつつ、例のギターフレーズと、浮遊感ある電子音を混ぜ込むことで、Hip-Hopなんだか、Post-Rockなんだか、Electronicaなんだか、もう形容するのも憚られるような、スケールのでかいサウンドを鳴らしています。サンプリングされたボイスには日本語が聴き取れるし、サイバーパンクなイメージさえしそう。

と思ったら、M-4‘Soul Child’が意外にストレートなHip-Hop/Downtempoなサウンドで、コロコロ、キラキラした音色と、サンプリングされたヴォーカルで、ひとときのChillを提供。でもここでもストリングスを大胆に挿入することで、ソウルフルでJazzyな空間を演出。実に巧み。M-5‘Memory’では、跳ね回る煌びやかな電子音(ストリングス?)とメロウなソウルフレイバーが結実。バックではさりげなくElectronicなエディットを効かせているので、ChillWaveにJazzやSoulをぶっ込んだみたいな、不思議で気持ちの良いサウンドに。

M-6‘Kids’はタイトル通り、子供の笑い声を随所にちりばめつつ、ハンドクラップをリズムとして用いつつ、ソウルなHip-Hopサウンドを披露。リズムだけでもカッコいい。M-7‘Reverse’がおそらくPop度では作中随一でしょう。安定したリズムに、ピアノ、ベース、ブラスによる、Melodicでスタンダードな構成、そこにコーラスのようなサンプリング(ノスタルジックだ)、シンセティックな電子音を散りばめつつ、にぎやかでありながら、どこかに郷愁をにじませたサウンドを聴かせてくれます。続く‘Galaxy’がシンセサウンドがアグレッシヴに攻めるトラックで、シンセがキュイキュイと繊維質に鳴り、重厚なリズムが大地を踏み鳴らす中、またしてもオーケストラルなサウンドがさく裂。バックは慌ただしいのに、表面は非常に雄々しく優雅、そして壮大(きっとタイトルからして宇宙をイメージしているんでしょう。カウントダウンも入ってるし)。

活きのよいフレーズをひたすら享楽的に反復するFuture FunkなM-10‘Love Again Part I’、それをさらにエディットしてDub Techno風に、そして長尺化した‘Love Again Part II’と、ここまで聴いても、やはりHip-Hopを軸に使いつつ、そこから無数に枝葉を生やして、種々のエッセンスをどん欲に取り込んでいるイメージなのですが、最終曲の‘Sub City’がまたニクいことに、これがIDMなのです。不穏な電子の響きからはじまり、やがて遠くから聴こえてくる、冷たくやわらかなシンセの瞬きは、まさに宇宙のイメージ、コズミックIDMなのです。中途から壮大に広がる空間の中でさりげなくさく裂するオーケストラルなサウンド。このハイブリッド感、たまりません。Hip-Hopに乗せられてきたリスナーのマインドは、ここで大宇宙に放り投げられて、終わるのです。

というように、Hip-Hopを用いながらも、決してそこに終始することなく、非常にバランスよくさまざまなサウンドをブレンドし、しかも聴きやすく(これが大事です。私の場合は)仕上げているのです。傑作だと思います。フューチャーサウンド。よくよく見たら、ジャケットイメージもなんだか未来的だ。横顔のシルエットの中にあるのは、混在する記憶の欠片、それとも未来の都市だろうか。そのスマートで、けれどカオティックなイメージは、今作のサウンドと、よく符合する。いやあ、よいです。最近こればかり聴いています。