ABRAcaDABRA

Netaudio explorer

カテゴリーアーカイブ: Música Vermella

Julio Gutiérrez – About Magic [MV024]

 Julio Gutiérrez - About Magic [MV024]

 – Tracklist –
 01. Sparky
 02. Teardrops
 03. Wicca


+ + +


 Release Page * = pay what you wish.) :
  ≫ [ main ] / [ bandcamp* ] Download Free!

 Release Date : 2012.12.01
 Label : Música Vermella

 Keywords : Abstract, Electronic, Hip-Hop, IDM, Melodic.


 Related Links (※all links are dead. :
  ≫ Julio Gutiérrez on Facebook / on SoundCloud / on bandcamp / on Twitter

  ≫ Cremadelic Band on Facebook / on bandcamp


+ + + + + +


スペインはバルセロナと、ドイツはベルリンを基盤に活動するネットレーベル、Música Vermellaより。Julio Gutierrezの新しい作品がフリーでリリースされています。彼はもともとCremadelic Bandという名義でソロ活動をしており、一時期はユニットあるいはバンド形態にもなったようですが、これは2012年10月で終了。現在は個人名で改めてソロ活動を行っているようです。Cremadelic Band時代の作品は、上記bandcampで聴くことができますので、気になる方は是非。

バンド活動をしていたとはいっても、もとからソロであったわけで、個人名義になって作るサウンドが抜本的に変わったということはありません。多少Electronicな質感が強くなったようにも思いますが、そのくらいです。

根っこの部分にあるのは、おそらく広義の意味での電子音楽だとは思うんですが、そのほかにもたとえばAlternative Rockだったり、Post-Rockだったりといった、ギターサウンドへの愛を感じさせる部分があって(今作ではさほど強くないけれど)、音楽的な懐はなかなか深い様子。たとえば今作をプレイすると、まず真っ先に聴こえてくるのが、Abstract Hip-Hopみたいな、ElectronicでGlitchyなビート。サンプリングか何か分からないけれど、耳慣れない電子音やエフェクトが次々に聴こえてきて、徐々にストレンジな音空間が立ち上ってくる。そのまま終わるかと思わせて(実際そういう音楽も少なくない)、終盤でメロディへの志向だろう(きっとそうだ)、丸みのある電子音で音楽的なフレーズが鳴らされる。まずここで、このJulio Gutiérrezの作るサウンドが、“何か違うな”と思わせられる。

続くM-2も、やはりリズム面がユニークだ。Hip-Hopの影響を受けたビートが、やたらとダビーな空間処理で鳴らされている。引きつったスネアやキックの音が膨張しながら、サイケデリックに鳴り響く。加えて、ガラスの割れる音のようなエフェクトがリズムとして用いられていて、この奇抜さだけでも私は十分楽しめるのだけれど、ここでまた顔を出してくるのが、シンセによるIDM/Electronicaのような、望郷的なメロディなのだから、面白い。このヘンチクリンなビートと、メロディの組み合わせは、相当に刺激的だ。

そしてラストは、リズムの進行自体はストレートで(よく聴くと細かいエフェクトはあるが)、ギターだろうか、ディレイしながらミニマルに循環するメロディと、シンセによるレイヤーたちの流れ、それらの絡みが作り上げる、どこか悲しみのあるラッシュ感、その在り様はShoegazeのようでもあり、またギターサウンドを利用したIDMのようでもあり(Lo-Fiなビートに組み合わせるメロディを、もっとシンセチックなサウンドに置き換えれば、よりIDM/Electronicaタッチになるだろう)。

音楽理論を知らない私にとっては、革新的な音楽は何かって考えたときに、まっさきに出てくるのがリズムという要素だ。そしてリズム面に対してもっとも革新的になれるのは、おそらく広義の意味での電子音楽だろう。さらにその中でもHip-Hopのもつ役割は最たるものだと思う。この“About Magic”は、IDM/Electronicaといった電子音楽の中に、そのHip-Hopの要素をディストーショナルな形で落とし込み、さらにはPost-RockやAlternativeなエッセンスまでを盛り込んだ、ハイブリッドな作品になっている。しかもメロディをもたせているという点で、しっかり音楽的な作品になっている。独りよがりな音ではない。これは未来形というと言い過ぎかもしれないが、非常に希少ではあるまいか。

彼はこのあとにも、よりPost-Rock/Popに傾いた“Four Suns”、ギターとヴォーカルを生かした“Know Mars”を相次いでリリース。そして新作は台湾のネットレーベル、Sociopath Recordingsからリリースされることがアナウンスされています。要チェックですね。


+ + +


(CC) by – nc – sa 3.0 es