ABRAcaDABRA

Netaudio explorer

カテゴリーアーカイブ: Galactic Intolerance Records

Dead – Sad [GIR150]

Dead - Sad [GIR150]

– Tracklist –
01. Air Canister (Fuzzed Out Version)
02. Casiocean
03. Do You Even Bro, Bro?
04. Trumpette
05. GRRRF
06. The God Damn Bat Man
07. Key Bored
08. Wat
09. Mth Clss


– 02. Casiocean

+ + +

Release Page Download Free!

Release Date : 2014.10.31
Label : Galactic Intolerance Records

Keywords : Avant-garde, Electronic, Lo-Fi, Noise.

+ + + + + +

エクスペリメンタル系netlabel、Galactic Intolerance Recordsより。正体不明のDeadなるアーティストの作品がフリーでリリースされています。名義はDeadだし、作品名はSadだし、簡潔にして深い言葉が多用されていますが、ふとジャケットイメージを見ると、どこかで見た感じです。もしかして、adidas(アディダス)とnike(ナイキ)じゃね、コレ?っていう(ちなみにこのアディダスのロゴは“パフォーマンスロゴ”というらしいです)。さらによく見ると、この“sad”ってフォント、アディダスのそれと同じように見えてきます。つまり、この“sad”ってadidasのロゴをエディットしただけなのか・・・と考えると、深みとか何とかよりも、、シニカルな精神が見え隠れしてきます。サーモグラフィチックな粗い画像は、どこかVaporWaveを彷彿とさせますし、どこかしら影響を受けているのかもしれません。

そんな得体のしれない深みを意匠から感じることができる今作ですが、サウンド自体も負けず劣らずDeepです。M-1を聴いていると、Lo-Fiなシンセサイザー・ミュージックがスタイルなのかなとか騙されそうになりますが、M-2でいきなり変態的なサウンドを披露してくれます。全編聴いてもこれがフェイバリット。‘Casiocean’というタイトルのダジャレ感も人を食ってますね(‘Key Bored’もそうですが)。ビリビリとした電気ノイズをバックに、奇妙なエフェクト―ハト時計の声や、ドアが軋むような音(あるいは電気的信号)、野太い咆哮などが飛び交います。下を固めるのはLo-Fiなディスコなビートで、速度が上がったり下がったり、つんのめったりしますが、これのおかげでストレンジなサウンドがノリがよく感じられるのだから不思議です。チープなサウンドもあいまってでしょうか、四畳半でラジカセもってバリバリのノイズにまじって雄たけび上げてるようなマッドなイメージ、バイブレーションがさく裂しています。面白い。

スラムの淀んだ路地裏をイメージさせる、M-4‘Trumpette’も好きですね。Dark Ambientなゆがんだ空間に流れる感情的な音声(何言っているのか分からないけど)が、行き場のない感情のたまり場を演出します。延々と渦を巻くグレイカラーのシーンは、思考の渦にリンク。答えのない悩み事にシンクロ。終わらないリフレイン。ちょっと悲しくてちょっと怖い。

サスペンスフルなシンセサウンド‘GRRRF’(作中で一番まともかもしれない)、厚いヴェールの向こうでおぼろげにサウンドがちらつく6分半のひたすら感がIndustrialな‘The God Damn Bat Man’、いきなり視界が開けてチープなサウンドをジャンクに差し出す‘Key Bored’(確かにキーボードが主役だ)、このあとがエディット感あふれる2トラックの連打。

まずは、物体がポロポロと粒状になって分解していくような、グロテスクなドット感を約9分、ひたすらに続ける‘Wat’。動いたり止まったり雷の音が聴こえたり、刻まれたリズムが銃声のように響いたりと、何気にシネマティック。灰色の空と機関銃。ひきつった悪夢。ラストはスローかつダビーに明滅する電子音がパラライズな‘Mth Clss’。作品の最後を飾る雰囲気はありません。締めるというよりも投げっぱなし。全部キレイに片づけるぜ!というよりも、ここまで頑張ったからあとやっといて感。私としては最後に一発かまして欲しかったです。M-2みたいなやつを。

全編通して何回も聴くのはちょっとマッドが過ぎるけれど、でも‘Casiocean’のテンションはすごい好きです。自分でもなんでこういうの聴きたくなるのかすごい不思議。“オレこんなの聴いてるんだぜスゲーだろ、フフン”的な優越感に還元されるものではない気がするのです。つまりはエキサイティングなんだと思います(まあ、聴きたいもの聴けばよいんですよ、ええ。音楽は自分のために聴くものです)。

+ + +


Album Art: Bucko Crooks
Production: Bucko Crooks

(CC) by – nc – nd 3.0